すっごく大きくなってるよっ!!!
少年少女保護庁。
それが僕達が考えた「子供たちが逃げ出せる場所」の名前。
僕達は早速、自分たちの協力者として、僕達が通っていた学院の下級組に属するスティールとユリアを呼びつけた。
スティールは、かつて爵位をお金で買ったユリアの家を憎んでユリアをいじめていた。
しかし、僕との決闘に敗れた時、ユリアは、自分をいじめていたはずのスティールが傷ついた姿を放ってはおけずに気遣い、共に涙を流した。その時、スティールは幼いころにユリアに抱いていた恋心を思い出し、二人は恋人になった。
そんな風にしていじめのスパイラルから脱却できた二人ならば、僕達の手伝いができる。僕はそう信頼しているんだ。
「ようこそ。よく来てくれたね。二人とも。」
少年少女保護庁に与えられた建物は王都の王城近くにある役場の広間だ。
それまであった部署は、下の階に強引に移されて、やや不満が出ているそうだが、子供の命にかかわることなので我慢してもらった。まぁ、この国の第一王子が直接手をかける事業なのだから、嫌も応もなく押し付けられるのだけれどもね。ごめんね。
「よくぞお呼びくださいました。ジュリアン殿下。」
「お久しぶりでございますわ。ジュリアン殿下。」
スティールは僕よりも一回り以上大きな体を折り曲げて丁寧にあいさつする。
ユリアも淑女具合に磨きがかかったように見える作法を心得た挨拶だった。
「学生の僕達がこのような事業をするのには、当然無理があるので数名の事務員を雇っているが、直接的に活動するには、大人よりも正義感が備わっている少年少女の方がいいと僕は思う。
それは、共に生活する仲でないと見えてこないものがあるからだ。
だから、僕は学年ごと組ごとに数人の監視人を用意する必要があると思うんだ。
今はすぐに用意できないから、下級組の監視人は君たちに任せたいと思うんだ。もし、いじめを見つけたら、放置することなく僕に報告してくれたまえ。適切に処置する。
また、スティールならば力づくで、いじめられた子供を救い出せるはずだ。君の腕力は本物だからね。」
僕がそう言うとスティールは気恥ずかしそうに「殿下にはまいりましたけどね」と、言って苦笑いをする。
「スティール。ユリア。僕は思うのだよ。
最終的には、いじめられた子供たちが、気負うことなく自主的に逃げ込める場所にするべきだと、
なぜなら、他人が救いだした場合は、手遅れになっている可能性があるからね。
いじめられて、いじめられて、いじめられた子供の心は、疲弊して「その環境を受け入れてしまう」可能性だってあるんだ。そうなってはいけないんだ。
そうなる前にいじめられた子供たちが「もうだめだ!逃げようっ!!」って気軽に逃げ出せる場所である必要があると思うんだ。
そういう場所が確立するには、実績と時間が必要になる。多くの子供たちが「逃げ出してもいい場所」と気兼ねなく逃げ出せる場所になるためには多くの信頼を勝ち取らなければいけない。そのために必要な実績と時間なんだ。」
僕がそこまで言うと、二人は大きく頷いて「必ず、出来るだけ多くの子供を救っていくようにします。」と、答えてくれた。
これで信頼のおける優秀な仲間が出来たと、僕は実感し、安心した。
だが、当面の課題として・・・・・
「実は僕とクリスは、ここにはほとんど顔を出せないんだ‥‥。」
理由は簡単だ。
僕達は有名になりすぎた。
僕達は地震の2次被害者を多く救った実績により、この事業を始める権利を得たが、同時にその実績が有名になりすぎて他国まで僕達、転生者のうわさが広がってしまったのだ。
他国では、多くの2次被害者を出してしまったらしい。
そうなると、どこの国も奇跡の子である僕達を欲して狙うようになる。
しかも、災いの神ドゥルゲットの予言通りならば、転生者を手に入れた者だけが救われる事態が今後、起こるというのだ。そうなると、僕達は、他国から誘拐されかねないので、そう簡単には保護区の外には出ていけない。
皮肉なことだ。
僕達が起こした奇跡のおかげでこの事業を進めることが出来るようになったというのに、逆に今、その奇跡が僕達を縛り付け、事業から遠ざけている。
でも、
「ご安心ください。殿下。私とユリアが必ず、やり遂げて見せますともっ!!」
スティールの頼もしい一言が僕とクリスを救ってくれた。
「スティールに任せておけば、大丈夫だ!! 信用して、全てを任せておこう!!
なぁに、預言の時まであとたった2か月じゃないかっ!! あの二人なら、やってくれるさっ!!」
僕はクリスを持ち上げてダンスするのがすっかり癖になっていた。
そして、クリスはすぐに音を上げる
「こ、怖いですわっ!! ジュリアン様っ!!」
全く、仕方ない子だなぁ・・・・・。
僕はストンとクリスを床に下して違和感を覚える・・・・。
・・・・・・?
「ジュリアン様?どうかされましたか?」
怪訝な顔して尋ねるクリスを見て僕は感じたままを言う。
「クリス。重くなった?」
「っ!!」
クリスは怒って反論する。
「重くなったのではなく、大きくなったのですわっ!!」
僕は、胸を張って抗議するクリスを見る。
むにゅっ・・・・・
むにゅむにゅっ!・・・・・・
「本当だっ!! ほんの2か月ほど前は、プニ乳だったのにっ!!
いまではムニュムニュ出来るオッパイになっているっ!!」
「んきゃあああああああああああああっ!!!」
僕は、クリスが胸を張って自慢するので、実際に確かめてみたんだ。
本当に大きくなっていたんだ。オッパイがっ!!
「凄いんだ!! クリス!!
君のオッパイね、すっごくね柔らかくて、掌に吸い付くようにね、こうっ・・・・・・・」
・・・・・
・・・・・・ゴキッって鳴ったよ?
無造作にオッパイを鷲掴みにされて怒ったクリスがメイスで僕の顔を殴ったときに、ゴキッって音がね。鳴ったの・・・・。
「く、クリス。それは一応、武器だから。僕だって殴られたら、相当痛いからね?」
「オッパイ触った罰ですっ!!
いいじゃないですか。こうして治してあげているんだしっ。」
僕は、流血した頭をクリスに膝枕されながら魔法治療を受ける。
うーん。太ももも成長している?
ちょっと頭の座りがよくなったかも・・・・。
「気が付きましたか?私、3センチも大きくなったんですよ?」
「えっ!!バストが?」「ぶっ殺しますよ?」
笑顔が怖いって、クリス。
いいじゃん。君はもう僕のものなんだし・・・・。
「まだ。殿下のものじゃありません。大事にしてくれないと、他の人のところに行っちゃうかもしれませんからね。?
結婚するまで、エッチなことは禁止ですっ!!」
ん~っ!!
そんなの生殺しじゃないかっ!!
成長してエッチな体になったんだから、もうちょっと触らせてくれてもさぁっ!!
「だーめーでーすっ!!」
そういうとクリスは、僕の額に優しくキスしてくれた。
「でも、キスなら・・・・いいですよ?」
クリスは恥ずかしそうに、照れ笑いをしながら言う。
僕は体を起こすとクリスの肩を抱き寄せて、「じゃぁ、もっと刺激的なキスをさせておくれ。」といって、クリスの唇を奪う。
絡めあう舌の濃厚さから、僕達は二人の愛が本物だと確認する。
僕が優しくしないと他の男の所へ行くって?・・・・・・そんなことさせないよ?
どこのだれだろうと、僕は君を渡したりしないんだからねっ!!
そんなこんなで災いの神ドゥルゲットの予言から2か月目が過ぎようとしていた。
だが、そこでまた、新たな戦争が生まれていた。
大陸中央の国。砂漠の国ファッブル・デ・コスタが、南進して港の小国ローラインを占領したというのだ。
近隣の小国は一致団結してファッブル・デ・コスタを追い返そうと挙兵したのだ。
大陸中央の南の端は、港を有する小国が婚姻関係を結んで結束していて、事が起これば、小国が四方から団結して敵を殲滅するシステムを確立していた。
そのため、1国が滅んでも王家とその家臣は、他の小国にいったん、避難して生き残ることが出来た。
この小国同盟に手を出すことは、ハチの巣をつつくのにも似ていた。攻撃を仕掛けた国は袋叩きにあって追い返される。そうやってもう500年の安泰をこの一帯は守っていたのだ。
そして、この戦争にも我が国へ応援要請をしてきた。戦争の助力を請われれば、金銭に応じて応援を出すのが、我が傭兵王国の習わし。
しかし、その習わしも災いの神ドゥルゲットの予言により、揺らぎ始めていた。
父上は悩んでおられた。
先の戦争は長続きし、2000の兵は冬まで帰っては来れない。そこにまた、1000の兵力を貸し出してくれと頼まれたのだ。本来ならば、喜んで兵を差し出す父上であったが、今度ばかりは違った。
我が国は作物に乏しい不毛の土地。故に誰も我が国を欲しがらず、他国からの侵略戦争が起きなかった。
故に我々の先祖は他国への兵力供給により外貨を得て、国力を充実させるシステムを構築した。
だが、災いの神ドゥルゲットの予言を信じた他国が転生者を手に入れんと欲して、我が国に戦争を仕掛けてこないとも限らない。戦争を仕掛けられたとき、わが国には一人でも戦力が惜しい。
果たして、兵力を派遣することによるデメリットの大きさはいかほどか? それは父上にも計り知れないことだった。
しかし、いずれ冬が来る。我が国は今のうちにたくわえをしておかねばならなかった。
父上は、悩みに悩んだ後、報酬の上増しを要求したうえで、1000の兵力を供給するのだった・・・・・
これが、のちにどんな影響を及ぼすのかは、誰にも分らない。
しかし、それでも今できることをしなければいけないのは、仕方のないことだった。
誰にも未来は予測できない。良い事も悪い事も・・・・・・
そして、預言が及ぼす大波乱がまた起きようとしていたのだった・・・・・。




