表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/192

悩んでいる時間はないんだっ!!

僕はその一言と同時に僕は再び氷のコンテナを作り出して身を隠す。

そして、その数十秒後に次元の壁を切り裂いて、地の底の国の王の重臣じゅうしんにして防衛隊の隊長と言える高位の龍族、邪龍ギューカーン様が現界げんかいされるのだった。

僕は一つ大事なことを忘れていた。これまでずっと禁止事項きんしじこうだったから、すっかり頭から抜け落ちていた。

土魔法を禁じられていた理由を・・・・。

そう。僕らはこれまでバー・バー・バーン様にその存在を気取けどられぬようにずっと土魔法の召喚が出来なかった。だが、それが今となってはどうだというのだ?

だって、気取られるも何も僕の眼の前にその人、バー・バー・バーン様がおられるじゃないかっ!!

今更いまさら何を気にするというのか?

それに邪龍ギューカーン様は土属性の存在といえども、そもそもギューカーン様は地の底の国の王に仕えるお方。土の国の王に仕えるバー・バー・バーン様とは違う異界の王の家臣かしんなのだからバー・バー・バーン様も早々そうそう、ギューカーン様に影響えいきょうを与えることも出来ないし神聖の高さも相当な存在なので、もしバー・バー・バーン様と戦うことになっても負けることはないだろう。それは魔神フー・フー・ロー様との戦いぶりから見てもわかる。(第22話「よしっ!! もう一回、転生しよっかっ!!」参照)

それにギューカーン様は調停者ちょうていしゃとしての役割をお持ちだ。僕が魔神フー・フー・ロー様に命を狙われた時に全力で戦ってくださったのも、調停者ゆえの事。あの時は、神界のおたずね者であった魔神フー・フー・ロー様が現世うつしよの少年を殺そうとしていたのでそれを実力で食い止めるためにと戦ってくださったのだ。事実、あの時、師匠はギューカーン様に対して「調停者、ギューカーンよ。お前ほどの者がこのような子供の指図さしずにのるのか!?」と発言していた。ギューカーン様はあの時、間違まちがいなく調停者の権能けんのうを発揮しておられた。(※権能とは行うことが認められている能力、資格の事。)

そんなギューカーン様は僕が召喚できる高位の存在の中で間違いなく最強の存在。このお方を堂々どうどうと召喚できるようになったのは助かる。それに今の僕はあの頃の僕ではない。魔力の量が桁外けたはずれに高い。相当そうとう長時間の召喚が可能だろう。そうはいっても、これほどの高位の存在。おいそれと召喚などできない。それ故に足を止めて父上の関心を引いた。そのすきに魔力をめた。溜めた魔力をさとられないように会話でごまかし、右手を切るという不可思議な行為まで行った。それが出来た理由は父上は戦いながらも僕の成長を確認しておられたからだ。喜んでおられたからだ。王として転生者と戦う覚悟はあったが、その覚悟の中に決定的に足りない部分があるのだと僕は悟った。


それは、今でも父親として息子への関心を失うことは出来なかったということだ。

父上は何処どこまでも父親だった。それゆえに僕を見過ぎた。足を止めた僕に対する関心を持たずにはいられなかった。本来、僕の足が止まったのなら問答無用に魔法を撃ち続けるべきだった。それが出来なかったのは、僕が何をするか知りたかったから。自覚があったのか深層心理かどうか知らないが、父上は僕の成長を・・・・喜んでくださっていたに違いない・・・・・。


「ジュリアンよ。よくぞ私の意識を逆手さかてに取ってこの大魔法を成立させたな。

 やられたよ・・・・。だが・・・ジュリアンよ。」

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

「だが、ジュリアンよ。何故泣く?」

僕は、いつの間にか号泣ごうきゅうしていた。父上に勝ったからというわけでもなく、めてもらえたからというわけでもない。

ただ、父上に命を狙われて国を追われることになった僕に師匠はおっしゃった。

「しっかりしろっ!! 民草たみくさと国家を守らねばならぬ王として当然の仕事をしたまでだっ!!」この言葉が正しかった。僕は今でも・・・この戦いの最中であっても、父上は最後の最後の所で僕の父親であったことがうれしくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて・・・・・嬉しくて涙が止められなくなったのです・・・・・・・。


そうやって涙を止められぬ僕だったが、すぐに異変いへんに気が付く。

ギューカーン様は動かなかったのだ。

ただ、一点を凝視ぎょうししていた。そして、それに気が付いた父上もつられてそちらを見て固まっている。

何が起こったのだろうと僕も目をやると・・・・・・。


激戦のすえに、レーン・レーン・ルーンがバー・バー・バーン様に倒されていたのだった。

バー・バー・バーン様は気絶きぜつするレーン・レーン・ルーンをお姫様抱っこしながらこちらに向かって歩いてくる途中だった。二人が争った場所は瓦礫がれきの山になっているし、バー・バー・バーン様もそれなりの傷をっていて、あちこちから出血している。レーン・レーン・ルーンもその激闘でボロボロの衣服の下から出血が見られる。ぐったりと落ちた頭部を見ると口から血が流れ落ちていた。相当な深手ふかでを負っているようだった。

邪龍ギューカーン様はバー・バー・バーン様が、この次にどう出るか注意深く見ている。もし、レーン・レーン・ルーンを殺すというような調停者の仕事に関わるような事態じたいが起きようものなら、すぐにバー・バー・バーン様にとびかかるだろう。

父上もそれが気がかりなのか、バー・バー・バーン様を注視ちゅうししている。

皆が固唾かたずをのむ中、バー・バー・バーン様は「殺しはしない。」といって、土魔法で岩のテーブルを作り出すとその上にレーン・レーン・ルーン寝かせた。そしてバー・バー・バーン様がパンッと両手を打ち鳴らすと、テーブルの上をすべらせるグラスのようにレーン・レーン・ルーンを乗せた岩のテーブルは僕のところまで滑ってきた。

「その小娘は小娘の割によく頑張った。

 手当をしてやれ。しかし、戦闘可能な状態まで回復させるなよ。再び戦わせてもに勝てるわけがない。」

バー・バー・バーン様が想像もしていないような寛容かんような対応をするので、思わずキョトンとバー・バー・バーン様を見つめてしまった。

「この娘は余のターゲットではない。無益むえき殺生せっしょうこのまぬ。

 が災いの神ドゥルゲットと契約したのは、転生者の命と魔神フー・フー・ローの命。

 さぁ、それがわかったのなら、早く回復をほどこしてやると良い。

 お前が今、この空間で動けるのはギューカーン殿のお力添ちからぞえがあっての事。それもお前の召喚能力が無くなれば・・・・。ゆえに急げよ。我らと違ってお前の時間は有限である。」

それを聞いて僕はあわてて、レーン・レーン・ルーンに回復魔法をほどこす。オリヴィアのような神がかった回復魔法は僕にはない。せいぜい止血しけつ精一杯せいいっぱいだが、それにしても深手だ。

なんとか安全が確保できるまでにはしないといけない。

それと同時に、僕はこの時間を利用して作戦を立てなおさなければいけない。さっきまでの状況なら僕達の方が有利だった。なのに、レーン・レーン・ルーンが倒されてしまえば、戦力的には互角であっても、戦況は圧倒的に不利だ。

どうする? どうする? 

ああっ!! 初手で僕がザー・ダー・ザーではなくギューカーン様を召喚していれば、なんとかなったものを・・・・・・。

そう思いながらレーン・レーン・ルーンの傷を塞いでいると、彼女のこの傷も自分の責任であることに気が付き、申し訳ない気持ちで一杯になる。

そして後悔がグルグルと頭をよぎる。罪悪感と自分に対する失望しつぼう自己嫌悪じこけんおかたまりになりそうだ。

でも、僕には時間が無い。悩んでいる時間はないのだ。時間は僕の敵だ。悩めば悩むほど、僕は不利になって行く。ならばやるしかない。戦いながら作戦を考えるしかに。やるんだ、ジュリアン!! 決断力こそ僕の最大の武器だったじゃないかっ!!

そうやって、僕が悩んでいた時間はどれくらいの時間だろうか? 10秒? 1分? 3分か?

いや、それはもう問題ではない。今はすぐに行動に移ることだ。

僕が傷の手当てを終えたのをさっしたバー・バー・バーン様と父上は僕の対面に移動して集まった。

気が付くと、それを納得したかのように邪龍ギューカーン様が僕のそばに来てくれていた・・・・。

こうして、第2ラウンドとも呼べる戦いが始まるのだった・・・・・。


だが、向かい合うギューカーン様とバー・バー・バーン様の緊張感が高まって、二人が放つ殺気さっきによる毒気どくけさわって僕と父上がまるで地獄に落ちたのかと思うほどの恐怖を感じた瞬間のことだった。

突然、バー・バー・バーン様が右手を出して


「あ・・・・待て。」

「たった今、災いの神ドゥルゲットが死んだ・・・・。」


と言ったのだった・・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ