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師匠っ!! どうしたんですかっ!?

「お前たちがジュリーと呼ぶこの少年の真の名は、ドラゴニオン国王ミカエラ王の第一王子ジュリアン・ダー・ファスニオンである。

 なれば、こ奴がたさねばならぬ復讐ふくしゅうの内容もわかるであろう?」

 衝撃しょうげきの告白っ!!

 師匠は、何の相談も前ぶれもなく僕達の前に現れて、最大の秘密を暴露ばくろしてしまうのだった・・・・。 


ラグーン伯爵はくしゃくは魔神フー・フー・ロー様の言葉に一瞬だけ目をまん丸にしたが、すぐに冷静になった。そして僕を見つめて「やはり・・・そうであったか・・・。」と、言った。

この大陸で一番遠く離れたエネーレス王国にも転生者の僕の事は伝わっており、当然、伯爵もご存じの事のようだった。まぁ、師匠は情報屋を通じて祖国の情報をていたことだし、それについては意外性はない。恐らくはラグーン伯爵もその情報を知っていて、得体のしれない僕の事を恐らくは()()()()()()()()と予測はしていたらしい。

つまりは、今までは見て見ぬふりと言うか知らないふりをしていてくれていたという事か。そして、もしかしたら、あの日、役場にいた他の貴族たちもそうなんだろうと思う。


ただ・・・・。

「神よ。

 今のお話が本当であれば、もはや私の胸一つにおさめるわけにまいらぬ事態となりました。

 如何に伯爵と言えど国の大事にかかわる問題は個人の意見で同行できる問題ではございませぬ。

 王都へ戻り、全員と話し合って、今後、ジュリー・・・。いや、ジュリアン王子の我が国においての処遇を決めたいと思いますが、よろしいか。」

伯爵は跪いたまま、魔神フー・フー・ロー様にお伺いを立てる。

知ってしまったという事実を不特定多数の前で晒された伯爵はこれ以上、知らぬ存ぜぬを通せなくなったことを遠巻きに責めているようにも僕には聞こえた。そして、師匠にもそう聞こえていたようで、一瞬、イラっとするような顔を見せるものの、特にその不遜ふそんな態度を罰するようなことはしなかった。

だから、ラグーン伯爵は、その態度を許可を受けたものとして立ち上がろうとした・・・。


「ラグーンよ。お前の職務を考えれば、それは当然の対応である。

 しかし、私はそれを許さぬ。お前はこの事を公言せず、その上で我が弟子、ジュリアンの補佐をいたすように命ずる。」

師匠は、弟子の僕からしても意外過ぎる命令をするのだった。

ラグーン伯爵も魔神フー・フー・ロー様にそのような事を言われたらたまらない。なんといっても相手は神。縁もゆかりも恩義もない相手からの命令なのだが、伯爵に拒否する権利はない。

慌てて弁解する。

「魔神様。私は神のおっしゃることに逆らいたいとは決して思っておりません。しかし、神の仰ることをそのまま聞き入れること、これすなわち、主君への反逆となり忠義が立ちませぬ。

 どうか、私に騎士としての本分をつらぬけるお慈悲じひを。」

頭を深々と下げるラグーン伯爵は、心底、つらそうな声を上げるのだが、魔神フー・フー・ロー様は、かいさぬとばかりに拒否する。

「ならぬ。許さぬ。

 私の命令をお前の主への忠義を理由に拒否するのならば、お前の主を殺さねばならん。

 それでも良いならば、今すぐ、この場を立ち去りお前の主の下へ走るがよい。」


応接室にいる者たち全ての顔が凍り付いた。

「そ、・・・・そんな。神様。

 あんまりです・・・。」

シズールが思わず非難ひなんするが、ガーン・ガーン・ラーがそれをさえぎった。

「黙れ、シズール。

 これは神の言葉。これを否定する権利は弟子のお前にも無い。

 命がしければ、全員、何も申すな。」

元・神の言葉は重い。神の世界にいたガーン・ガーン・ラーは、その世界のルールを知っている。

彼女が言ったことは、つまり「命が惜しければ」という言葉には、僕達であっても情け容赦ようしゃなく殺さなければいけないという意味だった。それをガーン・ガーン・ラーに聞かされては、僕達の口からも師匠に物申ものもうすことは出来ないとさとり、思わずうつむいてしまう。

僕達のそんな様子を見て伯爵は「なんだ、この少女は・・?」と、謎の少女の一言で僕達が黙り込む様子を怪訝けげんな顔で見つめていた。


師匠・魔神フー・フー・ロー様は、僕達のそんな様子に構うことなく、伯爵にさらに申し付ける。

「ラグーンよ。お前には、ジュリアンの領民の世話を命ずる。

 ジュリアンがこの地を離れた後も領民の安堵あんどを約束し、原野の開拓をさらに進めることを命ずる。

 さらにもう一つ、この国の精鋭せいえいを100名を貸せ。」

「い・・・、いや。・・・この地を離れるですと?

 ジュリアン王子は仮にも今は我が国の御家人ごけにんであります。我が国の大事に駈けつけられぬところへ行かせるわけにはまいりませぬ。それではジュリアン王子は不忠義者ふちゅうぎものであると噂も立ちまするぞ?

 その上、この国の精鋭をお貸しすることなど・・・・とても私の立場ではご用意できませぬ。」

伯爵は、この期に及んでもなおも交渉しようと食い下がる。師匠は、その様子を目を細めてごらんになられている。何か思うところがあるのだろうか? 

そうして、しばしの沈黙の時が流れてから、師匠はため息をつくと「では、お前の主に命ずるとするか・・・。」と口にして、伯爵の胸倉むなぐらをつかんで立ち上がらせると、低い声で

「お前の勇気と忠義、見事である。その忠臣ちゅうしんぶりにめんじて、今一度の猶予ゆうよを与えるが、次はない。

 お前の交渉に応じるつもりもない。今すぐお前の王の所へ出立するぞ。」そう言っておどすのだった。

いや、正確に言うとこれは脅しではない。警告だ。警告でありアドバイスでもある。これ以上の無礼はお前のためにはならぬという意味だ。伯爵も進退窮しんたいきわまったとばかりに深いため息をつくと「神のおぼしのままに・・・。」と観念かんねんするのだった。


それから僕達は師匠に連れられて、ラグーン伯爵と共に王城へ向かう。

もちろん、王の前に立つまでは一々、衛兵えいへいに引き留められるのだが、その都度、魔神フー・フー・ロー様のお通りだと告げると衛兵たちはすごすご引き下がる。顔パスみたいなものだった。

そうやって王宮深く、王との謁見えっけんまで進んだ。そして、急な神の訪問にしばし遅れたエネーレス王国国王が姿を見せる。

王は神を見ると、引きつった顔で駆け寄るとひざまずいて挨拶あいさつする。

「これは魔神フー・フー・ロー様。急なご訪問に対応できず、遅れましたご無礼をお許しください。

 エネーレス国王のドイル・ダー・エネーレスでございます。

 して、本日はどのようなご用件でございましょうか?」

エネーレス王は頭を下げたママ、魔神フー・フー・ロー様の言葉を待った。

師匠は、そこで二つの命令を出す。

「まずは、この少年はドラゴニオン国王ミカエラ王の第一王子ジュリアン・ダー・ファスニオンであることを見しりおけ。その上で二つの命令を出す。

 まずは、お前たちはこの少年に領地をあたえた以上は、既にドラゴニオン王国とは敵対関係にあるということを自覚してもらう。

 次に復讐を果たすジュリアンへの一切の協力を惜しむな。わかるな。」

国王のドイル王は「えっ!!」と、素っ頓狂な声を上げて驚いた。

「そ、そそそ、それでは、この者は世界を滅ぼすとされる転生者ですかっ!!

 神よっ!!! それは何と無慈悲な仕打ちっ!!

 このようなものを我が領地においておけば、ドラゴニオン王国どころか、いずれ世界を敵に回すことになりかねませぬっ!!

 どうか、お慈悲下さりませっ!!」

慌てて懇願するドイル王の言葉に魔神フー・フー・ロー様は、何一つお答えにならなかった・・・・。

ドイル王は、5分以上は頭を下げて魔神様の許しを乞うたが、それ以上は無理と悟って覚悟を決める。


「神よ。ここは我が王宮。我が宮殿にして、我が国の領域。

 如何に貴方様が神と言えど、ただでは済みませぬぞっ!!」

ドイル王は何とそう言って立ち上がると、不遜にも魔神フー・フー・ロー様と対峙する。

「貴方様のいう事を聞けば、この国は滅びまする。

 貴方様のいう事を聞かなくてもこの国は亡びるやもしれませぬ。しかし、それならば、貴方様と戦って生き残る道に賭けまするっ!!」

ドイル王がそう言うと、次元の扉を切り裂いて冥界と現世の間の国から闇精霊の貴族ズー・ズー・バ―が現れる。

そして、王宮のいたるところから騎士が駆け込んできて、たちまち僕達を包囲する。

ドイル王は大声で命令する。

「ここは闇精霊の貴族ズー・ズー・バー様の領域であるっ!!

 騎士達よっ!! 畏れるなっ!!

 神様とて構わぬっ!! きれっ!! 切り捨ていっ!!」

ドイル王の命令が謁見の間に鳴り響いたのだった。

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