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師匠っ!! 鬼ですか、アナタっ!!

「ぎゃんっ!!」

頭部を蹴飛ばされて動物めいた悲鳴を上げて吹き飛ぶ魔神ガーン・ガーン・ラーに追撃として放たれた魔神フー・フー・ローの氷魔法が襲う。魔法で作り上げられた幾百いくひゃくもの氷の槍が空中に現れたかと思ったら、ミサイルのように一斉いっせいにガーン・ガーン・ラーに向けてはなたれたのだ。

「て、てめえっ!! よくも乙女おとめの顔をっ!!」

ガーン・ガーン・ラーは顔を蹴られた怒りの雄たけびを上げながらフー・フー・ローの氷の槍を斧槍ハルバードで叩き落とすと、魔法で竜巻を起こして追撃を狙うフー・フー・ローを弾き飛ばしてから、槍斧で刺し貫こうと踏み込んだ。

フー・フー・ロー、これを槍で交わしながら再び蹴りを顔面に見舞う。この一撃で一瞬、ガーン・ガーン・ラーの眼がくらんだ。その隙に手にした槍でガーン・ガーン・ラーの左太ももをつらぬく。

「きゃああああああああー-----っ!!」

自分の足を槍が貫くという衝撃的な映像にガーン・ガーン・ラーが悲鳴を上げながら、それでも反撃の拳をフー・フー・ローの顔面に叩き込む。その一撃たるやビルを破壊する発破ダイナマイトのような轟音ごうおんをあたりにひびかせる。そのたった一撃でフー・フー・ローの頭はがり、体勢をくずして右膝を地にくのだった。ガーン・ガーン・ラーもこの瞬間を見逃すほど甘い女ではない。刺し貫かれた左太ももの激痛に耐えながら、大火球だいかきゅうの魔法で追撃を加えてフー・フー・ローをはるか遠くに吹き飛ばすのだった。

咄嗟とっさはなったというのに、その大火球の威力いりょくは火精霊の貴族ギー・ギー・ドーザのそれをはるかに超えていて、まともに食らったフー・フー・ローの体は風船人形のように吹き飛んでいく。

「ははははっ!! 何が闘神だっ! 口ほどにも無いっ!!

 神格の違いを思い知ったかっ!!」

勝ち誇りながら己の傷を回復魔法でいやすガーン・ガーン・ラーは、完全に油断していた。だから、見落としていたのだ。フー・フー・ローが地面に置いた神鉄しんてつくさりを・・・・・。

フー・フー・ローは、ガーン・ガーン・ラーの左太ももを刺すためだけに近づいたわけではない。

武術において、敵に攻撃の本丸ほんまるさとらせないために攻撃個所を上下左右に散らすのは常套手段じょうとうしゅだんであった。例えばキックボクシングでは、敵の顔面にパンチを集中させながら、敵が反撃に出るときにその踏み出す足を攻撃する。もしくはその逆に敵の足を痛めつけるローキックを重ねて、相手の注意が足元へ集中したときに乾坤一擲けんこんいってきの顔面パンチを打ち込んで失神させるなど、敵の意識が一点に集中したときにその逆張ぎゃくばりの攻撃を仕掛けて倒すという戦法だ。敵は予測もしていない攻撃をまともに食らってしまうのだ。

今回、フー・フー・ローは、ガーン・ガーン・ラーの太ももを刺し貫いた。他にも刺し貫ける場所は沢山あった。腹部や頭部。致命傷ちめいしょうになりかねない場所を攻撃できたにもかかわらずフー・フー・ローがあえて左太ももを刺し貫いたのには理由があった。ガーン・ガーン・ラーが左太ももの痛みに耐えかねて注視したのは左下方だった。だから、ガーン・ガーン・ラーには見えなかったのだ。フー・フー・ローがその時にガーン・ガーン・ラーの左太ももの対角線上になるフー・フー・ローの左手側の地面に神鉄の鎖を置いて罠を仕掛けたことを・・・・。この神鉄の鎖こそがフー・フー・ローの攻撃の本丸であった。

フー・フー・ローは竜巻の魔法ではじけ飛ぶ自分の体の勢いを利用して神鉄の鎖を引き上げる。すると、罠が作動して神鉄の鎖が舞い上がり・・・・ガーン・ガーン・ラーを緊縛きんばくするのだった。


「ああああああー----っ!! なっ、なんだこれはっ!!」

まんまと罠にかかって自分の体を何重いくえにもしばり付ける神鉄の鎖におどろきの声を上げるのだった。神鉄の鎖は文字通り神の作りし鉄。如何いかに魔神ガーン・ガーン・ラーといえど、何重にも体に巻き付かれて緊縛されたら、これを腕力でブチ切って脱出するには、それなりの時間がかかる。

そしてもちろん、フー・フー・ローは、ガーン・ガーン・ラーが神鉄の鎖をぶち切る時間的余裕よゆうなど与えない。すぐさま体の自由を奪われたガーン・ガーン・ラーに足払いをして地面に転倒させると、氷魔法で両手両足を順番に氷の大地に埋め込んでいく。ガーン・ガーン・ラーの四肢は地面に溶け込む様に氷漬けにされてしまうのだった。

「きゃああああああああー-----っ!!

 や、やめてー--っ!!」

四肢を一本一本、氷の大地に埋め込まれて、敵に攻撃されても反撃できない形にされていくその恐怖に耐えかねて悲鳴を上げる。そしてガーン・ガーン・ラーは、泣き叫びながら自分が召喚した怪物たちに救いを求めるのだった。

「お、お前らっ!! 助けろっ!!

 フー・フー・ローを殺せっ!!」

召喚主しょうかんぬしのガーン・ガーン・ラーは彼らの神で絶対服従ぜったいふくじゅうの存在で、ガーン・ガーン・ラーの命令は絶対である。すぐにも窮地きゅうちけつけるために飛び込んでくる。

・・・・・・・

・・・・・・・・・・はずだった・・・・。はずだったというのは、2頭の怪物はフー・フー・ローにとびかかるどころか、飼い犬のように首を下げて大人しくフー・フー・ローの足下にいつくばっていたからだ。

そのありえないさまにガーン・ガーン・ラーは怒りの声を上げる。

「おいっ!! 貴様らっ!! 俺の命令が聞こえないのかっ!!

 もういいっ!! フー・フー・ローにおそかれねぇなら、すぐさま、この氷の大地から俺の手足を抜いて助けろっ!! これさえなければ、こんな鎖ぐらいいて、半端な魔神なんかぶち殺してやるっ・・・・。」

そう口にした瞬間にフー・フー・ローに、その顔面をサッカーボールキックに蹴飛ばされた。四肢を大地にい付けられたガーン・ガーン・ラーはその蹴りをけることも出来ずにまともに食らって、脳震盪のうしんとうを起こす。そして意識朦朧いしきもうろうのガーン・ガーン・ラーの横に腰を下ろすとフー・フー・ローは、あきれたようにため息をついた。

「やれやれ。状況をわきまえずにわめきたてるな。

 お前、今の自分の状況がわかっているのか? 神鉄の鎖と私の氷魔法でお前は身動き一つできない。

 そんな状況で私を怒らせてどうするつもりだ? ん?」

そういって、上からマジマジと見つめるフー・フー・ローに、ガーン・ガーン・ラーは、言いようのない恐怖を感じて、泣きながらもう一度獣たちに救いを求めた。

「助けろっ!! 

 ・・・・なんで来てくれないんだっ!! 助けてよっ!! ねぇっ!!!」

悲鳴のように助けを求めるガーン・ガーン・ラーをあわれに思ったのか、フー・フー・ローは落ち着いた声で説明する。


「無駄だよ。こ奴らは、私の異界の中に入った瞬間に私の支配下にはいっている。これが私の神としての権能けんのうだ。私は極小ごくしょうだが、いつでも何処にでも異界を作り出せるのだ。お前を閉じ込めたこの異界は、世界のどこかにあった異界ではない。ここは、私が世界の壁を切りいてその空間にすべました私が新たに作り出した異界なのだ。

  これでわかったかね? 異界の王の首を狙うと尋ね者の私が、どうしてどの神にも決して尻尾しっぽつかませないのかが。

 私は他の神の手の届かぬ極小の異界を作り出し隠れているのだ。

 そして、この世界に契約獣けいやくじゅうレベルに霊位れいいの低い者が入ったとしたら、その瞬間にこの世界の王である私が契約主けいやくぬしであると、私は自由に契約を書き換えることが出来るのだ。わかるか?

 だから、あいつらにいくら助けを求めても無駄だし、霊格の高いものをお前が召喚しようと思っても、この世界の王である私が入界にゅうかいを許可しない。だから、全てを封じられたお前が泣き叫ぼうとも、もはや手遅れ、すべては無駄なんだよ・・・・・。」


”全ては無駄なんだよ ”

その言葉の意味を理解したガーン・ガーン・ラーは絶体絶命ぜったいぜつめい窮地きゅうちに自分が立たされていることに気が付いて、暴れて逃げ出そうとするのだが、いかんせん、神鉄の鎖とフー・フー・ローの氷の魔法の両方で緊縛きんばくされたその体はビビり動き一つできず到底とうてい抜け出せそうにはなかった。

そして、その事に気がついた時、ガーン・ガーン・ラーは絶望したように身動きを止めるのだった。

その絶望にゆがむ瞳は、かつての勇猛ゆうもうな魔神の姿とはとても思えず、まるでおびえる子猫だった。

フー・フー・ローは、そんなガーン・ガーン・ラーの髪をでながら、なぐさめるように話した。」

 

おろかな娘だ。ガーン・ガーン・ラー・・・・。

 お前は私を何だと思っていたのだ?

 私はお前よりもはるか何倍も高位こういの神である異界の王の命を狙う魔神だぞ? 私が何の手立てだてもなく、準備もなく、切り札もなしに異界の王の命を狙っていると思ったのかね?

 愚かなことだ。所詮しょせんお前は、自分の事が強いと思っている箱入り娘に過ぎない。身の程をわきまえるのだな。」


「このにおよべば、お前の敗北を理解できよう。

 お前は身動き一つできぬまま、私に暴力の限りをくされて死ぬのだ。」

フー・フー・ローが冷たくそう言って冷たく言い放つとガーン・ガーン・ラーは悲鳴を上げて泣き叫んだ。

「いやあああああー---っ!!

 や、やめてー--っ!! 何でもするっ!! 何でもするから殺さないでぇ――――っ!」

だが、フー・フー・ローは、そんな話を聞く気はないと言い放つ。

それどころかガーン・ガーン・ラーの衣服いふくぎ取りながら無慈悲むじひな言葉をいた。

「私がお前を狙った理由を聞かせてやろう。私はお前を神たらしめる核を私の体内に取り込み、私はさらなる高位の神となる。それが私の狙いだった。

 勿論もちろん、最初に大人しく降伏こうふくしていれば、殺さずに魔術儀式でお前を傷つけずに()()を取り除いたのだが、この期におよべば、お前の体を引き裂いて、お前の体内にある()()うばうまでだ。」

衣服をはがされながら、ガーン・ガーン・ラーは、恐怖にくっしてフー・フー・ローにびをれる。

「ごめんなさいっ!!・・・。ごめんなさいっ!!

 許してくださいっ!! なりますっ!! 貴方あなたの女になりますっ!! 

 だから・・・・お願いっ!! そんなひどい事をしないでっ!!・・・・・おねがいよぉ~・・・。」

嗚咽交おえつまじりに許しをうガーン・ガーン・ラーは、フー・フー・ローにとっては只の小娘でしかなかった。だが、それでもフー・フー・ローは容赦しないのだった。


「そして、せめてもの情けで今からお前に男と言うものを教えてやろう。乙女のままでは哀れだと思う神としての私の慈悲深じひぶかさを知るがいい。

 お前を散々さんざん可愛がり、その後に殺してやる。」

そういって、今度は自分の衣服をフー・フー・ローが脱ぎだした時、別の恐怖を覚えてガーン・ガーン・ラーはさらわめいた。

「やめてっ! 助けてっ!!

 いやあああああー---っ! お父様っ!! 助けてっ!! お父様っ!! 

 いやぁ―――――っ!!」


完全な恐怖こそが人を支配する。こうして心身ともに完全に屈服くっぷくしたガーン・ガーン・ラーは、18回目の「助けてっ!!」を叫んだ後にようやくフー・フー・ローに降伏を認められ、服従ふくじゅう契約けいやくを立てることが許されたのだった。




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