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復讐しちゃうぞっ!!

一話目は、設定の説明もありちょっと長く1万字近くありますが、次回からは3000~8000文字以内に収めるので、お付き合いいただければ、幸いです。

あの日僕は走って逃げ出した。

もうなぐられたり、お金をせびられたりするのが嫌だったんだ。

だから、死を覚悟して路上ろじょうに飛び出した。

楽になりたかったのさ。ただ、それだけ・・・。

そして、僕の目の前に大型トラックがすごく大きなクラクションを鳴らして近づいてくるのが見えた・・・・・・。



それが僕の前世での最後の記憶だった。

それから何年か後の事だと思うけど、僕は異世界の傭兵ようへい王国「ドラゴニオン」の第一王子として産声うぶごえを上げていた。

生まれたばかりの僕は前世ぜんせ記憶きおくなんか、これっぽっちも残ってはいなかったのだけれども、3歳の時に父上と母上に連れてこられた大聖堂だいせいどうで王家の洗礼せんれい儀式ぎしきを受けたときに、僕は目覚めた。

僕は見たんだ。()()()()()奇跡きせきを。

僕以外の人間は目撃もくげきしていなかったのだけれども、僕は見た。大聖堂の天井からつばさやした高貴こうきな存在、天の御使みつかいと呼ばれる存在が僕の目の前にり立つのを。天の御使いは、「お目覚めなさい。この世の預言者よげんしゃよ。」と言って、僕のひたいに手をれた。

その時、僕は前世の記憶に目覚めたのでした。今でこそドラゴニオンの第一王子だけれども、前世の僕はいじめられっ子の情けない中学生だった。一年生の時は地域ちいきで一、二を争うような成績優秀な子供だったのだけれども、それがあだとなって上級生の先輩に目を付けられていじめが始まった。先輩の指示でいじめにくわわっていた同級生にもいじめられた。何もしていないのに廊下ろうかでいきなり後ろから背中を殴られたり、られたりした。彼らは、僕の学生服についた靴跡くつあとがどれだけ綺麗きれいなのかをきそい合っていたようで、一日に何度蹴飛けとばされたのかわからない。

そして、その内、お金をせびられるようになった。お金を出さないとさらに先輩たちから殴られたから、僕はお母さんの財布からお金を抜き取った。そんな日が毎日のように続いた。

 「いじめられたら逃げだしたらいいんだよ」テレビで脳なしの上に無責任なタレントのおじさんが、なんの意味もない言葉を得意気とくいげしゃべっているのを見ると腹が立って仕方がなかった。

だって「逃げろ」って、どこに逃げ出せばいいのさ!! まだ中学生の子供の僕にどこに逃げ出せって言うのさ!?

誰も助けてくれない。誰もかくまってくれない。いじめについて両親に相談そうだんしたけど、高校受験に失敗したら人生を立て直せないことを両親は気にしていた。だから、学校の先生に苦情くじょうを言うのがせきの山だった。

学校の先生に苦情を言っていじめが簡単かんたんに収まった例を親も社会の大人も見たことがあるのかい?

あるんだったら、あの日本という狂った国にいじめなんかが蔓延はびこったりするものか!!

そうでしょ? 学校の先生は弱体化じゃくたいかされて、いじめの実態じったいかくすのが精一杯せいいっぱいの情けない大人の集まりだ。

世間せけんは教師から子供を強引ごういんにでも助けだせる権力けんりょく剥奪はくだつした。その結果としていじめられる子供たちだけが人生を犠牲ぎせいにすることを強いられる・・・・。

・・・・どうしてだれかれもいじめられた子に「逃げろ」って言うのに、どうして誰も彼もいじめられた子に「逃げ出せる場所」を作ってくれなかったんだろう・・・・。

あの国の大人は脳なしで無責任な連中ほど、正論せいろんしゃべっているように見せかける。そして、その発言に対して責任を取れるような具体的ぐたいてきな活動を何もしない。子供だけが世間の綺麗きれいごとに侮辱ぶじょくされながら何人も死ぬ。

見覚えがあるだろう? 「死ぬぐらいなら逃げ出せばよかったのに・・・・」って切り捨てられる子供の姿を。

僕は逆に言いたいよ。

「逃げ出せって何年も言い続けて効果がないのに打開策だかいさくを打ってこなかったアンタたち、権力があるくせに無能むのうな大人たちのおかげでいじめられっ子は死んだんだよ。」ってね・・・・。

そして・・・・・僕もその一人だったのさ・・・・・・。



とにかく、僕はそんな理不尽りふじんな世界から脱却だっきゃくしてこの世界に転生した。

そして、僕はそのことを3歳の時に天の御使いの手によって知らされて、覚醒かくせいした。

前世の記憶がよみがえったんだ。

それからの僕は、神童しんどうとしてあつかわれることになっていく。

僕はまだ幼子おさなごだったのに、魂も知識ちしきも現代日本の中学生だった。見た目は完全に幼子なのに複雑ふくざつな計算や言語を理解りかいし、そしてこの世界の知識層ちしきそうも知らない科学を知っていたから、その事情じじょうを知らないまわりの大人は驚愕きょうがくするしかなかった。僕の化学知識は、化学が未発達のこの世界においては、魔法のようだったからだ。いや、その表現は正確ではないね。だって、()()()()()()()()()()()()()()。そして、化学の代わりになる便利べんりな魔法があるからこそ、化学は発展しなかった。

だから、なおの事、僕が大人たちに話して聞かせる科学知識は、この世界では神秘的な知識として解釈かいしゃくされた。

ある時、神殿長しんでんちょうが僕にたずねた。

「王子よ。お前はどうしてそんなにもかしこいのだ?」と。

僕は周りの大人たちが僕のことをチヤホヤしてくれるので自分が特別な存在だと理解していた。だから、得意になって天の御使いによって前世の記憶が与えられたことを話した。神殿長は驚愕きょうがくして僕のことを奇跡の子と呼び、預言者よげんしゃ認定をするのでした。

しかも僕には魔法の才能もあった。それは意外なことに科学知識が役に立ったからなんだけどね。

この世界において魔法は基本的に精霊からもたらされる神秘しんぴの知識であった。人々はシャーマンが交霊こうれいに成功した精霊から教わる形で魔法を手にしていた。精霊は魔法に必要な呪文と動作を人間に伝授でんじゅする。例えば、火の魔法は、火の魔神に魔力による助力を願いたてまつ言上ごんじょうとなえながら、その火の魔神にささげる舞を踊るのだけれども、人々は授けられた魔法を手順通りの作業をそのまま丸暗記まるあんきする形で習得する。だから魔法に上手下手じょうずへたはあっても、変化や進化はしなかったのである。人々は精霊たちが授けるいくつかの魔法の中にほんのわずかしか違いがない魔法がいくつかあっても、それらが何故、わずかに異なるのかについては一切分析は行わず、そのまま伝承していた。

でも、僕はそこに疑問ぎもんを感じたんだ。だって、そうでしょ? 万物ばんぶつには法則ルールというものがある。科学にも魔法にも法則はあるはずだとおもったんだ。

だから、僕は、先ず本当に似ているのだけれども、厳密げんみつにいえばことなる魔法に分類される魔法を集めて解析かいせきしていった。何が原因で異なる効果が生まれているのかを発見できれば、自分自身の手で魔法を変化、進化させることが出来るはずだと考えたんだ。そして、もちろん。新しい魔法を精霊に頼らずとも創作そうさくできるはずだとも考えていた。

そして、僕はまだまだ研究段階ではあるものの一定の法則を見つけ出し、魔法の原理げんりを組み合わせることで新たな魔法を捜索することに成功さえした。

秘訣ひけつは化学式だった。僕は化学式のように魔法を構築こうちくする元素に元素記号ならぬ「魔素記号」を付けて情報処理じょうほうしょりをしやすくしたのだ。結果として魔法世界を理解する糸口を見つけるという革命的かくめいてき実績じっせきを残したのだ。

まぁ、僕は前世では元々もともとは成績優秀な子供だったし、あの頃、まじめに勉強してきたことが今に生きてるんだなぁ・・・・。

そんなこんなで預言者としてだけでなく、魔法を創作そうさく出来ると僕のかぶさらに上がって僕はまだ大した事は何もしえてなかったのに14歳になるころには国の英雄のような扱いになっていった。


ところがある日の事、僕の耳に辺境へんきょうに「神童」と呼ばれる僕と同い年の村娘の少女がいるという話が届いた。

何でも彼女は、僕と同じような科学知識を有して色々と「奇跡」を起こして話題になっている上に「前世の記憶」を天の御使いからさずかったと言っているらしい!!

それを聞いて僕は興奮こうふんした。きっと、彼女も僕と同じく「転生者」であると思ったからだ。

父上も僕と同じ考えのようで「王都に呼びつけて、特別に王子と同じ学校に通わせよう。王子にも同等の能力を持つ学友が必要だ」と言って、大至急だいしきゅう、その少女を王都へ呼びつけた。

そして、彼女と初めての対面たいめんの日。僕はいつになく興奮こうふんしていた。だって、同じ転生者の仲間が出来たんだもの!

彼女の待っている神殿の大聖堂に行く途中に父上から「廊下ろうかを走ってはだめだ」と注意されながらも、気持ちを押さえられず、ダッシュで向かう。

僕が大聖堂の扉を開けた時、一人の少女がびっくりしたような目で僕を見ていた。

彼女は村人らしいみすぼらしい貫頭衣かんとういのドレスを着ていた。そのみすぼらしさが少女に幸薄さちうすそうな印象を与え僕の保護欲ほごよくを目覚めさせる。守ってあげたくなるくらい可愛い姿だ。

腰元こしもとまで伸びた赤い髪は、手入れが行き届いていないのか、毛先けさきね上がっていて、それが庶民的しょみんてきで愛らしい。

僕を見てビックリしたように大きく見開かれた赤いひとみは猫の目のようにまん丸でとても愛らしい。

小さな鼻とうすいピンクのくちびる実年齢じつねんれいよりもおさなく見える印象を与えていて本当に愛らしい。

栄養えいようが足りていないのかせた小さなその体は、逆に妙な色気を男に感じさせて愛らしい。

つまり、彼女は全部が愛らしい美少女だったのだ!!!

そう・・・・・僕は、一目ぼれしたみたいに彼女の愛らしさに固まってしまった。

お互い、じっと見つめあって10秒以上。やがて、高貴な服装から僕のことをこの国の第一王子だと気が付いた彼女があわてて、頭を深々ふかぶかと下げる。角度にして110度。いや、ぎだから。ころんじゃうから。

可愛らしい子だなぁ・・・・。

僕は出来るだけ彼女をおびえさせないように、彼女の前にひざまずいて右手を出して、その左手を手に取ってキスをする。レディに対する作法さほうだ。

「はじめまして。僕は、この国の第一王子ジュリアン。君と同じ転生者なんだよ!!これから、僕たちは同じ学校に通う学友がくゆうになるんだ。よろしくね!!」

僕がそう言いながら精一杯せいいっぱい、さわやかな笑顔を見せると、彼女は顔を真っ赤にしながら、首を何度もたてってうなずいた。きっと、レディに対する挨拶あいさつなんか生まれ育った村ではされたことが無いから、緊張きんちょうするやらずかしいやら、お姫様みたいな扱いされてうれしいやら、色んな感情が入り乱れて混乱こんらんしているんだろうね。もう、無我夢中むがむちゅうで僕の挨拶あいさつに反応してるだけって感じだ。

おいおい、そんなブンブン音がするほど首を振ったら、たおれちゃうから。

僕は彼女の手を優しく握りながら立ち上がると、彼女の肩に手をきながらたずねた。

「僕と同じ歳の可愛かわいきみ。君の名前を教えてはくれないかい? でないと、僕はこれから可愛い君のことを何て呼べばいいのかわからなくてこまってしまうよ。」

なんてキザなセリフをいう。

それを聞いて彼女は緊張のためかあわててビックリするような大きな声を上げて自己紹介した。

「わ、わわわわわわわわ、わたくしはっ!! ナザレ村のクリスティーナっ!! みんな、クリスって呼んでますわっ!! ジュリアン殿下でんかっ!!!!!」

・・・・・・・可愛い。

ちょっとジーンときた。

見た目だけじゃなくて内面的にも滅茶苦茶めちゃくちゃ可愛いぞ、彼女!!

こんな美少女とこれから6年間の学園生活を共にできるなんて考えたら、僕はうれしくて思わずニヤニヤしてしまうのでした。

「こら!鼻の下がびておるぞジュリアン。なんという()()()()()ことだ。」

僕がかれているとおくれて部屋に入ってきた父上が、だらしない顔をしている僕を見て冗談交じょうだんまじりにおしかりになられた。

そして、先ほど大声を上げて自己紹介をしていたクリスティーナを見て「なんと元気のよい娘だ。」とお笑いになられた。

それから僕の頭をでながら「私はこの娘の両親と話をしてくる。このはお前とこの娘の二人だけにしてやろう。転生者同士、話し合いたいことが山ほどあるだろう。ゆっくりと話し合いなさい。」と仰っると、神殿御付しんでんおつきの神官に案内あんないされながらともの者をしたがえて大聖堂の奥の部屋に入ってゆかれるのだった。


こうして、広い大聖堂には、僕とクリスティーナだけが残された。

クリスティーナは同じ年頃の少年と二人っきりになったのが恥ずかしいのか、真っ赤になってうつむいてしまった。

ああ、ヤバい。この、やっぱり滅茶苦茶可愛いぞ!!

今すぐきしめてキスしたいくらいだよっ!!

胸はせこけた体に合わせてうすいのだけれども、腰のラインなんかは立派に女性らしさをたもっているし、なによりも顔が可愛い!! 声も可愛い!! 仕草しぐさも可愛い!!

・・・ああ。いけないいけない。何を初対面の女性に破廉恥はれんちなことばかり考えているんだ僕は!!男って本当にバカなんだから・・・・・。

僕は、コホンとわざとらしい咳払せきばらいをすると、クリスティーナに「すわったら?」と大聖堂にある礼拝用らいはいよう黙祷机もくとうづくえそなえ付けてある椅子いすに座るようにうながした。折角せっかく、父上が僕たちのために時間をもうけてくれたんだから、時間を有効利用しないとね。僕たちは互いの情報を交換こうかんし合って、今後に生かさないといけないしね。

クリスティーナは僕の指示しじを理解して緊張した面持おももちで何度もコクコクとうなずくと、僕が指図した椅子にチョコンと座るのだった。・・・・やっぱり可愛い。

僕は、緊張した面持おももちのクリスティーナが委縮いしゅくしないように、出来るだけやさしく自分の前世の記憶を語って聞かせた。

自分が地球という世界にある日本の中学生で、どんな人間であったのか。もちろん、かっこ悪いからいじめられていたことは話さないよ? 話さないけど、別に前世の自分を立派に見せるような脚色きゃくしょくはしなかった。ちょっと地区で一二を争うような成績優秀な生徒ではあったけど、内面的には僕は平凡へいぼんだった。そこは正直に話したんだ。

前世の僕は、もう死んじゃってるからうそを言って着飾きかざったって仕方しかたないもの。

そして、僕がすべてを語り終えた時、クリスティーナが狼狽うろたえた素振そふりで立ち上がって


「お、おまえ・・・・・・山上 明やまがみあきらか・・・?」とつぶやいた・・・・・。


僕は髪が逆立さかだつかと思うほど驚愕きょうがくした。だって・・・・・だって・・・・・

だって、それはまだ誰にも話したことがない僕の前世の名前だったから・・・・。

「ど、どうしてクリスティーナが僕の前世の名前を知っているんだ? もしかして・・・僕の前世の知り合いなのかいっ!?」

僕が立ち上がっておどろくのと同時にクリスティーナは僕の胸倉むなぐらをつかむのだった。

「お前のせいで俺は死んじまったんだぞっ!・・・・あの日、お前が路上に飛び出したりするからっ!!」

クリスティーナは、無念むねんなみだをこぼしながら、人が変わったように男言葉を話して怒鳴どなりつける。

その言葉遣ことばづかいと雰囲気ふんいき・・・・・僕は知っている。

僕は覚えている・・・・あの頃の恐怖きょうふが僕の精神に残っていたからだ・・・・・

嫌な汗が僕の背筋せすじを伝う。僕は前世の記憶に恐怖しながら、聞き返した。


「もしかして・・・・・高坂 徹こうさかとおる・・・・・君?」

高坂徹は、前世の僕「山上 明」をいじめていた不良グループの一人。彼は僕の同級生だったけど、いつの間にか先輩たちに従うようになって、先輩たちと一緒に「山上 明」をいじめていたのだった・・・・。

でも、それが・・・なぜ、その彼が僕と一緒に、この時代の同じ場所に転生したんだ?

その答えは彼の発言の中にあった。

さっするにあの日、あの時。自殺覚悟で路上に飛び出した僕を追って、彼も路上に飛び出して・・・・大型トラックにはねられて死んでしまったんだ…‥。

そういえば記憶の片隅かたすみに誰かがトラックにはねられる直前の僕の肩を抱きよせようとしていた映像があった気がする・・・。

「・・・・・徹君。あれは君の手だったんだね・・・!! でも・・・君は・・・・どうして僕を助けようとしたんだ? そんなことをするくらいなら、どうして僕をいじめたんだよっ!!」

僕は前世の記憶を思い出すと堪えられないような怒りを覚えて、つい怒鳴どなってしまった。

その勢いにクリスティーナは、おびえた表情であとずさりする・・・・・。

「そ、そんなこと知るかっ!! 先輩の命令にしたがって始めたいじめだったけど、お前があんまりにもみじめったらしいから、・・・・腹が立って、余計よけいにいじめたくなっただけだっ!!」

言葉だけなら威勢いせいのいいように聞こえるが、クリスティーナは、明らかに僕におびえていたし、その声はふるえているようだった。

その矛盾むじゅん違和感いわかんを覚えた僕は、クリスティーナの細く小さい体を見て理由をさとる。幼いころから傭兵ようへい王国の次期当主として徹底的てっていてきに武術や魔術をきたえこまれた僕と、ただの村娘でしかないクリスティーナとの肉体的な差を。

そして、僕とクリスティーナとの圧倒的な社会的立場の差に・・・・・僕は気が付いてしまったんだ。

「・・・・・誰に向かって口をきいているんだ。・・・・・”クリスティーナ”」

その言葉にクリスティーナは明らかに体をビクッとふるわせていた。彼女は気が付いていたんだ。かつて自分がいじめていた相手と立場が完全に逆転してしまったことに・・・・・。

怯え切ったクリスティーナの表情を見て、僕は優越感ゆうえつかんと共に心の奥底から沸々ふつふつき上がる加虐かぎゃく的な攻撃性に高揚こうようしていった。

「・・・・お前は自分の立場が分かっているのか? 僕はこの国の第一王子。ただの村娘のお前なんかどうにでもできる。いや、場合によっては、お前の家族も村人たちも・・・・・・。」

その時の僕は、どれだけ嫌な表情を浮かべながらこのセリフをいたのだろう。考えると自分でも自己嫌悪じこけんおするくらい残忍ざんにん微笑ほほえみをかべていたに違いない。

その微笑みからクリスティーナは、僕の怒りが本物で、僕が本当にそれをやりかねないことを直感的にさとった。

「おいっ!! 俺がお前に仕返しされるのは仕方ないにしてもッ!! 村人や家族は関係ねぇだろっ!!」

「ひ、卑怯ひきょうだぞっ!! やめろっ!」

「おいっ!! 聞いてんのかよてめぇっ!!またいじめられたいのかよっ!!」

蟷螂之斧とうろうのおのとはこのことだ。せっぽちの村娘がどんなに勢いよく言葉ぎたなく威圧いあつしても、僕が怯えて引き下がるわけがない。

僕はクリスティーナに言いたい放題言わせてやるが、冷ややかな瞳で威圧いあつしてやる。僕は知っている。いじめられっ子がどれだけ視線で恐怖を感じるのかを。

今度は僕がお前をいじめる番だっ!! さぁ、怯えるがいいっ!!

ただ、僕は加減を知らなかった。クリスティーナは家族を守るために僕に暴言ぼうげんを吐いている。その覚悟を僕は甘く見ていたんだ。だから、まさかクリスティーナがなりふり構わず僕に対して決して言ってはいけないセリフまで駆使くしして威嚇いかくしてくるなんて思わなかったんだ・・・。



「いい加減にいう事聞けっ!! このっ・・・・クソがみのくせにっ!!」


クソ上。それはいじめられっ子たちが僕につけた侮辱ぶじょく称号しょうごう。前世の僕は彼らにお腹を蹴られ過ぎてらしてしまったことに由来ゆらいする、僕が決して思い出したくない前世の記憶。

クリスティーナは、その言葉を吐いてしまったんだ。

僕は容赦ようしゃしない。たとえ、現世うつしよ高坂こうさかが少女になってしまったとしても、僕には、この拳をその顔面に叩きつける権利があるっ!!

「ふざけるなよっ!! クリスティーナっ!! 今、お前に自分の立場を思い知らせてやるっ!!」

僕はいきおいよく右手を上げると、左手でクリスティーナの胸倉むなぐらをつかみにかかった。




・・・・ぷにっ




と、僕の左手にクリスティーナの小さいが確かにふくらんだやわらかいオッパイの感触かんしょくが伝わってきた・・・・。

「・・・・あれ?」

僕は、思わず自分の手元を見ると、クリスティーナが怯えて身じろぎして体をじったせいで、僕の左手は目標を外れてクリスティーナのオッパイにれてしまったのだ。


・・・・ぷにっ・・・・ぷにっ・・・・・・


や、やわらかい・・・・・。ナニコレ・・・・マシュマロなの?

僕が左手の感触を確かめてからクリスティーナの顔を見ると、クリスティーナの顔が恐怖から、羞恥心しゅうちしんで真っ赤に変化していくさまが確認できた。


「きゃあああああああー------っ!!!」


クリスティーナは、大きな悲鳴ひめいを上げながら僕にビンタを振るってきた。

幼いころから格闘術かくとうじゅつたたき込まれて来た僕にとって少女のビンタなど余裕でかわせるはずなのだが、残念ながら、僕は左手にある至福しふくの感触を手放せなかったので身動き一つできずにまともにクリスティーナのビンタをける。

「いったああああいっ!!」

クリスティーナは、自分よりもはるかに強力な存在にビンタした衝撃しょうげきに自分の手のひらが傷ついてさらに悲鳴を上げた。

その悲鳴に我に返った僕は、幼いころから叩きこまれた女性を守れという騎士道精神が発動して、怪我けがをしたかもしれないクリスティーナに近づいた。

「だ・・・大丈夫かい? クリスティーナ!! 手は大丈夫かい? 僕の頭は固かったろうに。」

僕が心配して近づいたというのに、クリスティーナはさらにオッパイを触られるのかと誤解ごかいして大声を上げる。

「いやー--っ!! 近づかないでっ!! エッチ!! 変態へんたいっ!!!」

「これが目的だったのねっ!! 最初からずっと私の体を・・・・・オッパイやお尻をいやらしい目で見てたの知ってるんだからぁッ!!」

取り乱したクリスティーナは、完全に女の子だった。

そう、そうなんだ。僕は知っている。僕自身の精神が前世と現世うつしよでは大きくことなっていることを。僕は屈強くっきょう騎士道きしどう精神を叩き込まれた傭兵ようへい王国の第一王子の精神を持った男子になっている・・・・・。前世のような情けない中学生の男の子じゃないんだ。

同様にクリスティーナもその魂に前世の記憶がきじまれていようとも、前世がどんな人物だったとしても現世では、一人の庶民しょみんの村娘になってしまっている。

僕は、その事を理解してしまい、動揺どうようするクリスティーナの姿を見ながら呆然ぼうぜんと立ちくしてしまった。

(今、彼女に前世の復讐ふくしゅうたして・・・・・僕に正義はあるのか?)

そんな考えが僕の頭をよぎった。

その時、「一体、何事だっ!」とクリスティーナの悲鳴を聞いた父上が奥の部屋から飛び出してきたのだった。

そのあとが大変だった。僕が父上にちょっと成り行きでクリスティーナのオッパイをさわってしまった話をしたら、父上は僕に



思いっきり、レバーブローをした。



皆さん。レバーブローをされたことがありますか? どれぐらいきついか知ってますか?

屈強くっきょうなキックボクサーたちは鼻をへし折られようが、顔面を骨折させられようが、肘打ちでひたいを何十針もうような切り傷を負わされようとも決して闘争心とうそうしんを失わない。そんなキックボクサーでも試合中にもらった、たった一発のレバーブローで悶絶もんぜつしてしまい、試合そっちのけでうめき声を上げながらリングの上をのたうち回るんですよ? どれだけ苦しいか想像そうぞうできますか?

そうですね。一言で言うとですね。


あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!


て、感じなんですよ。わかりますね?

僕は地面をのたうち回りながら、こんな目に合う原因を作ったクリスティーナに復讐ふくしゅうちかう。

(やっぱり、復讐してやるっ!!)と、心の中でさけんだ!!


・・・・・・・同時に生まれて初めて触れた女の子のオッパイの感触と、羞恥心しゅうちしんで顔を真っ赤にするクリスティーナの可憐かれんさに胸がドキドキしていた。

ああ・・・・男の子って、本当、バカ・・・・。

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