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蔵品大樹のショートショートもあるオムニバス

大物タレントは密室での殺しをする

作者: 蔵品大樹

奇妙な世界へ……………

 俺は鮫島忍。日本国民なら知らないはずがない大人気タレントだ。

 俺は子供の頃から皆が知っているようなタレントになりたいといつも心の奥底から思っていた。そして今、色んな犠牲がありながらも、今では毎日テレビに出ている引っ張りだこの大人気タレントとなった。

 そんなある日の事。俺は仕事を終え、家に帰ろうと、車に乗ろうとした時、後ろから声を掛けられた。

 「ん?」

 俺は後ろを向くと、そこには天狗の仮面を付けた男が、立っていた。

 「だ、誰だ!」

 「どうも、私は貴方のファンです。怪しい者ではございません」

 「怪しい奴じゃなければなんだ。こっちは疲れて今から帰る所なんだ。早く終わらせてくれ」

 「いえ、貴方のサインを貰いたいだけなんです」

 「あぁ、それなら疲れている私でもできる。何か紙と書くものは…」

 「じゃあ、ここではアレなので、少し移動しましょう」

 「はぁ?何故だ?」

 「まぁまぁ、別にいいじゃないですか。すぐに終わることなので」

 「……」

 俺はおかしいと思いつつ、天狗仮面の男についっていった。

 着いたのは人気の無い裏路地。

 「おいおい、ここでいいのか?」

 「まぁまぁ…」

 男は『まぁまぁ…』と言うだけで場所を変えようとしない。俺は仕方なく、サインを書こうとした。すると、後ろから何かに殴られた。

 「うわっ!」

 俺は殴られた拍子にその場に倒れた。薄れる意識の中、こんな会話が聞こえた。

 「こ、これでいいんだな…」

 「あぁ、ありがとよ。俺はコイツの事を憎んでいた。後はお前の口座に数億振り込んでおくよ」

 俺はそのまま意識を失った。




 「う…う〜ん…ここは…どこだ…」

 目覚めると、何故か密室に閉じ込められていた。家具は一切無く、扉とその扉の上にモニターがあるだけだった。

 「な、なんで俺はこんな所に?」

 困惑していると、モニターの電源が付き、そこには先程の天狗仮面の男が映った。

 「どうも、鮫島さん」

 「な、貴様!俺をこんな目に遭わせやがって!俺のバックには…」

 「元法務大臣の鮫島誠司、だろ」

 「なっ…」

 「貴方は父親の権力を使い、自分のやった犯罪やらなんやらを揉み消したり、擦り付ける等…。私には分かるんだよ。貴方の悪事は」

 「ぐっ…」

 「本来ならこのまま殺してしまいたいが、今回は特別に情けを与える。じゃあ、入れ」

 すると、目の前の扉から、一人の小太りで温厚そうな中年男性が出てきた。

 「コ、コイツは…」

 「あぁ、貴方も見たことがあるだろう。この男は指名手配犯の西一生。貴方が最も死を望んでいた男だ」

 この男、西はテレビで何度か見たことがある。数年前、東京都吉倉市で幼児を誘拐して、殺すという異常な精神を持ち、1年前、脱獄をした男だ。

 俺はテレビで何度も、『この男は死すべき』『早く捕まってほしい』『何故こういう奴ばかりが生きるのか』と、ずっと言っていた。

 しかし、実物を見ればどうだろうか。見てくれは良く、いかにも誘拐殺人なんかしなさそうな男だ。とはいえ、これは俺の見解に過ぎないが、こういう奴が罪を起こすのだ。

 すると、モニターから、天狗仮面の男の声が聞こえた。

 「今からルールを説明する。貴方が西を殺せば、貴方が外に出られる。所謂殺しってやつだ。しかし、そのまましにておくと、貴方と西は餓死してしまう。なぜなら、ここに食べ物は送られないからだ。後、数分に1回、武器が送られる。いるかいらないかは貴方の自由だ。武器を使い終わったら、『返す』と言って、ドアの前に置いてくれ。スタッフが武器を回収してくれる。あぁ、勿論、ドアが開いた瞬間、外に出ようなんて思わないでくれよ。一瞬で武器は回収されるからな。では、始め」

 すると、画面は消えた。部屋に残ったのは静かな空間だけだった。

 何もしないでいると、向こう側にあぐらをかいている西が話しかけてきた。

 「なぁ、アンタ、鮫島さん?だっけか。これからヨロシク」

 「あ、あぁ…」

 俺は静かに答えた。しかし、俺の頭の中にはコイツをどう殺すかを考えていた。

 (さて、コイツをどう殺そうか。じっくり殺そうか。すぐに殺そうか。イッシシシシシ)

 すると、ドアの方から声が聞こえた。

 「おい、武器はいるか?」

 「あぁ、いる」

 俺は元気そうに言った。すると、下の小窓から、1つの小刀が出てきた。

 俺は小刀を手に取ると、1つの名案が浮かんできた。俺はポケットから、ライターを取り出し、その火を小刀の刃に浴びせた。

 「な、何をしてるんです?」

 「まぁ、すぐにわかるさ」

 俺は刃を熱し終わると、西に命令した。

 「西さん、アンタのアキレス腱を見せくれないかな」

 「え?何故だ?」

 「まぁ、わかるから」

 「?」

 西は困惑しつつ、アキレス腱を見せる。そして俺は西のアキレス腱を小刀で切った。

 「ぎっ…痛ァァァァァ!」

 西は切られた方のアキレス腱を押さえながらもがいていた。

 「フフフ、アンタは幼児を誘拐して殺しただろう。これ位の事はしないと、遺族の方にも失礼だろう」

 「はぁ、はぁ…」

 すると、アキレス腱の傷が少し塞がった。

 「こ、これは…」

 実はこれには火で炙った小刀に理由がある。それは焼けて少し傷が塞がるためである。

 次に俺は左手の小指の先を切った。

 「痛エェェェェェェェェェェェェ!」

 これもまた傷が直ぐに塞がった。

 次に耳を切ろうとしようと思ったが、直ぐに飽きてしまったため、小刀をドアの前に置いた。

 「もういい。返す」

 すると、一瞬で小刀は部屋から出ていった。

 俺は震えている西を尻目にタバコをつけた。

 「ふぅ…西よぉ…お前はどうやら殺害する時、残酷に殺したんだって?確か、アイスピックで目を刺したんだっけ?使う物は違うが、それを再現してやるよ!」

 俺は火のついたタバコで目を潰した。

 「ギャァァァ!」

 俺はこの状況を楽しんでいた。

 そして、1時間経った頃、耳を2つ失い、左手の指を全部失い、更には両目とも失明し、ショック死してしまった西を見ていた。すると、扉から天狗仮面の男が出てきた。

 「やぁ」

 「あぁ、どうも」

 「どうだった?」

 「いや、ちっとも楽しく無かった。あの時のほうが全然良かった」

 「あっそう。じゃあ、私の顔を見て」

 男は仮面をはずした。そして、その顔に、俺は見覚えがあった。

 「お、お前は…」

 「どうも、久しぶりです。鮫島さん…いや、先輩…」

 そこには自分の後輩である、宮坂宏介だった。

 「み、宮坂…」

 「先輩、私はね、忘れていませんよ。あの時のことを…」

 俺は10年前の事を思い出した。

 10年前。俺は自分の所属する芸能事務所の金を横領してしまった。俺はその罪を宮坂に擦り付けたのだ。

 「私は貴方に横領を擦り付けられた後は悲惨な人生でしたよ。テレビから干され、仕事は無くなり、無職になりましたよ。そして、私はある半グレグループに入り、今ではそこの総長ですよ。クククク…後は、貴方を殺せば、私の未練は無くなり、こんなダメダメな人生からはおさらばできる!では…死んでください」

 すると、宮坂は手に持っていた包丁で俺の腹を刺そうとした。しかし、俺は宮坂の包丁を持っている方の手を掴み、包丁を奪い、宮坂の腹を切った。

 「ぐっ…うっ…」

 宮坂はその場に倒れた。

 「全く、今のテレビ界にはまだ私が必要なのだよ。にしても、西の方も馬鹿だ。折角、罪を擦り付けてやったのに、脱獄するなんてな。思ってもいなかった」

 俺はその場を後にした。





 俺は今、テレビに出ている。皆にチヤホヤされ、日本国民から、『素晴らしいタレント』と称されるタレント、鮫島忍として。

読んでいただきありがとうございました…

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