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初めての材料採取①

「ホタルさん、大丈夫? 寒くない?」

「うん、大丈夫。ごめんね、付き合ってもらっちゃって」

「いえいえ、気にしないで」

広い野原でセレスタと並んで夜明けを待つ。

空には星が瞬いている。確かに寒いけれど、綺麗だなぁ。

ってなんでこんなことになっているかと言えば、話は夕ごはんの席に戻る。


「じゃあ、今日は早く休むんだね」

「えっ? なんで?」

首を傾げる私にマダムは食事を再開しながら、さらりと言葉を続けた。

「言っただろ。ランのイヤリングは特別製なんだ。材料ももちろん特別でね。朝露のついた露草なんだよ。この時期なら四時くらいについていれば間に合うだろ」

「やっぱり、露草だったんですね。イヤリングを見た時に露草かなって思ったんです」

自分の予想が当たってちょっと嬉しくなる。


「朝露のついた露草か。なるほど。で、場所はどこなんですか?」

笑顔のまま聞く私とは裏腹にセレスタがげんなりとした顔で口を挟む。

「ホタルさん、町はずれに露草の群生地として有名な野原があるんだ」

「そうなの? 場所教えてもらっていい?」

セレスタと同じくらいげんなりした顔で今度はジェードが答える。

「領主様のお庭だよ。……俺がついていくよ」

「ジェード、明日、早番でしょ。僕がついていくよ」

「えっ、ちょっと待って。何? どういうこと?」

勝手に話を始めた二人に慌ててたずねる。


「この辺で宝飾合成に使えるくらい綺麗な露草が採れる場所といったら領主様のお庭くらいしかないのさ」

二人の代わりにマダムが答えてくれる。

「えっ? 領主様のお庭って、私がジェードにボウガンでやられそうになった所ですよね? そんな所、勝手に入れるんですか? しかも露草を採ってきたりしたら

それこそ捕まるんじゃ」

「ボウガンでやられそうになった場所ってどんな覚え方だよ」

再び首を傾げる私にジェードが苦笑する。

「でも、ホタルさんの言う通り、勝手に入って露草なんて採ろうものなら、速攻で捕まって縛り首だよ」

「だよね。嘘、どうしよう」

セレスタの言葉に血の気が引く。

「だから、俺たちがついていくんだよ。不審者でないことさえ保障できれば、露草自体はたくさんあるから、一、二本、もらうくらいは領主様の許可をいただくほどのことではないしな」

「えっ? そう言えばおばさん……ゴフッ」

もう何度目かわからないけれど、灰色の閃光が煌めき、セレスタが秒で消えた。

……だから学べって。


「マダムはどうやって露草を手に入れたんだ? 俺もセレスタも頼まれた覚えないけど」

飛んで行ったセレスタを無視してジェードがマダムにたずねる。

「私が領主様の庭に入るのに誰の許可がいるって言うんだい?」

「……失礼しました」

にやりと笑うマダムにジェードがさっと目を逸らす。

「そっか、おばさん……フゴッ」

シレッと復活したセレスタが何か言おうとした瞬間、また灰色の閃光がセレスタを遠くへと誘った。

……えっ? 何? マダムって何者? ってか、学べ! セレスタ!


「そういうわけで、ホタル、一等綺麗な露草を採ってくるんだよ。セレスタもそんな所でぼーっとしてないで、ちゃんとホタルを案内するんだよ」

「はい。……セレスタ、ごめんねよろしくね」

私はマダムに返事をし、部屋の隅で真っ白に燃え尽きているセレスタにも一応頭を下げた。

……セレスタ、生きてる?


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