表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だから人間は嫌いなんだ……!  作者: 京衛武百十
18/100

僕はお前達に崇めてもらいたいわけじゃない

「竜神様……!?」


僕の姿に気付いた途端に跳ね起きて、ヒャクはその場に平伏しようとした。


だけど僕は、


「やめろ!」


強く叱責する。すると彼女はまた固まってしまった。そんな彼女に言う。


「僕はお前達に崇めてもらいたいわけじゃない。お前達はお前達で生きればいいんだ。そうすれば僕は僕で好きにさせてもらう。


顔を上げろ、ヒャク。言いたいことがあるなら僕の顔を見て言え。自分が謙れば相手が言いなりになってくれるとか思うな。頼みごとを相手が聞くかどうかは、相手が決めることだ。頼む側にそれを決めることはできない。そのことをわきまえろ。


相手を敬えばこそ、無闇に頭を下げるな。お前達人間が何かを願う時に頭を下げるのは、相手を縛ろうとする<呪い>だ。『頭を下げられれば断りづらくなる』という心の動きを利用しようとしてるに過ぎない。


だが、人間じゃない僕にはそんなもの通じない。むしろ、お前達が頭を下げれば下げるほど、お前達の醜さが際立つだけなんだ。


ヒャク、お前は何のためにここに来た? <呪い>で僕を縛って人間の道具として使うためか?」


僕のその言葉に、


「いえ! 決してそのようなことは……!」


彼女は頭を上げて僕を見て言った。


彼女の目を見れば、なるほど僕をいいように利用してやろうという考えは彼女にないことは分かる。ヒャクは本心から自分達の窮状を打破する最後の手段として僕に懇願しに来たんだろう。


でも、僕の人間に対する不信感も、決して軽いものじゃない。ここまで散々、僕をいいように利用しようとしてきたことを忘れることはできない。


だから言う。


「お前達人間は、僕をダシにして、同じ人間を道具のように使おうとしてきたじゃないか。それを僕が知らないとでも思ってるのか?


僕は生贄を寄越せだなんて、これまで一度だって言ったことはないぞ? なのにお前達人間はこうして生贄を作り続けてきた。僕がやめろと言っても聞き入れずにだ。


どうやってだ? 僕が生贄を必要としてると、お前達人間が勝手に決め付けて、生贄を作る言い訳に利用してきたんじゃないか。


『自分達はこれだけのことをやった。だから報われるべきだ』


お前達はいつだってそう考えてきた。そのための言い訳に、方便に、僕を利用したんだ。


僕は、お前達人間のそういう醜さにはもううんざりなんだ!


お前達人間は、お前達人間の力で生きろ。そして、力が及ばない時には潔くそれを受け入れて死ね。


それが『生きる』ということじゃないのか?


死ねない僕にはできないことだけどな」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ