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幕末スイカガール  作者: 空良えふ
第一章
105/139

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居留地



『結局イギリスに戻るのかい?』

『ああ。上海の方は引き払ったんだ。しばらく日本を観光してから帰国する予定さ』

『上海と違って日本は何処へ行くにも面倒だぞ?』


クラークの言葉にリチャードソンは一蹴した。


『関係ないね』

『甘く見ない方がいい。殺傷事件が頻繁に起きているんだ。この前だって』

『東禅寺事件のことだろう』


東禅寺事件は、ちょうど怜が上海に居た時に発生した事件だった。英国軍人二名が松本藩士に殺害されるという痛ましいもので、この居留地に住む外国人は、まだ日が浅いこともあって未だ戦々恐々としている。


リチャードソンは軽く溜め息を吐いて怜を見た。


『この国はイカレてる。外国人というだけで殺害するなんて未開にもほどがある』

『子どもに言っても仕方がないでしょ』

『子どもの頃から植え付けられているのさ。見ろよ、こいつの目を。憎しみに満ちた目だ』


怜は半眼で見ていたが、マーシャルはよほど面白かったのだろうか、テーブルを叩いて爆笑している。


『ブハッ……チャールズ……クククッ……この子を、普通の子供と……思わない方が身の為だよ……ププッ』

『普通以下にしか見えないがね』


姉妹は呆れた様子で目配せすると、気遣わしげに怜に話しかけた。


『私達、これからモーリス夫人のお茶会に呼ばれているの。レイも来ない?』

『モーリス夫人?』

『アメリカの方でね、とても教養のある素晴らしい御婦人なの』

『彼女の庭園を見たら、きっとレイも驚くわ。色んな国の花や植物が咲き乱れていてね、まるで別世界よ?』


クレメンティナが思い出したように頬に手を当てた。


『あの夫妻は植物学者だからね』

『植物学者....』


ならば西瓜の知識もあるのだろうか。

例えば発芽しなかった理由、例えば肥料、天候、土壌など、そういった細かなことも植物学者なら知っているかもしれない。


怜は会ってみたいと思った。しかしーーー


『うーん.....でも』


怜はちらりとマーシャルを見た。


『行ってくるといいよ。私達はもうすぐ出かけるし』

『出かける?何処に?』

『私のお気に入りの場所に二人を案内しようかと思ってね』

『お気に入り?』




『平間寺さ』


マーシャルの言葉に、怜はサッと血の気が引いた。



平間寺と言えば別名"川崎大師"である。

まさにその場所こそチャールズ・リチャードソン一行が向かった先。彼らは東海道を東へ、つまり横浜居留地から対岸の神奈川宿へそして次の宿場町・川崎宿方面へ向かう予定だったのだ。生麦村はちょうど神奈川宿と川崎宿の中間地点である。(川崎宿の次が品川宿)


『良い所なのか?』

『ああ。正月には日本中の人々が集まるんだよ。"初詣"というらしい。今は時期じゃないが、それでも結構な観光スポットさ』

『それは楽しみだな』


とその時ーーーーー


『行ったらあかん』


怜がドンとテーブルを叩いた。


『な、何故だ?』


マーシャルは怜の厳しい表情に、身体をそらした。リチャードソンはムッツリと睨んでいる。怜は構わず言葉を続けた。


『今日は街道を利用したらあかんことになっとるんよ。薩摩藩の大名行列が通過するからね。通達きてないの?』

『......そんなものはきていないな』

『ほんなら今、私が通達したってことや。絶対に行ったらあかんよ』

『しかし…』

『もし行ったら命はないと思って』


怜が目の前まで迫ると、マーシャルは迫力に押されて『わ、わかった』と了承した。しかしーーーーー


『我々に命令するとは何様だ!日本人のくせに!ビルもビルだ。こんな子供に押されっぱなしなんて』


苛々とワインを飲み干し、リチャードソンは怜を見た。もちろん怜は冷めた視線で対峙する。二人の間に見えない火花が散った。


『貴様ら日本人が我々を止める権利はない。傲慢にも我々英国人に歯向かうとは、命が惜しくないのか?』

『傲慢なのはアンタらや。ここにおる以上しきたりには遵守するのが当然や。ここは日本であって英国じゃないんやから』

『愚かな子供だ。何故我々が劣等民族の法など守らなければならない。こんなちっぽけな島国など我々が本気を出せば一瞬だぞ』

『たかが子供との喧嘩で軍隊出すほど、英国が愚かとも思わんけどね』


リチャードソンはグッと前のめりになって怜を見つめた。


『知っているか?"戦争"とは勝者によって作られるものだ。理由など"後付け"でいい』


そして、ニヤリと口角を上げてテーブルを指で叩く。


『それにこの横浜は治外法権の町だ。ここでもし貴様が命を落としたとしても、咎める者はいない』


死刑宣告をするかのような言い草に、怜の血液が逆流する。マーシャルはオロオロしながらも二人を止めようと口を開いたが………



『まあ……、私も別に悪魔ではないからね。貴様のような何の価値も無い子供を殺して、自分の手を汚すような真似はしないさ』

『チャールズ、彼女は少々変わった子供だが悪気はないんだよ。許してあげてくれ』

『わかっているよ。ビル』

『怜もわかってくれるね?チャールズは私の大切な親友なんだ』

『ほんなら約束して。絶対平間寺に行かんって』

『……わかった』


マーシャルは降参というように両手を上げた。


『別の場所に行こう。他にも良い所は沢山あるからね』

『街道を通らんように』

『ああ約束する』


マーシャルから漸く笑みがこぼれた。

怜はリチャードソンに憤りつつも、強制的に心を鎮めた。


会って数十分。

何となくではあったが、こちらがムキになればなるほど、この負けず嫌いの男には逆効果なのかもしれないと思った。


そういう時、押しも必要だが引き際も肝心である。


『長旅で疲れたよ。少し休憩させてもらおうかな』

『ああ。もちろんさ。クラークはどうする?』

『私も少し寝ようかな。昨晩は深夜までビリヤードに興じていたからね』


マーシャルはマイケルを呼ぶと、部屋に案内するよう申し付けた。リチャードソンは伸びをしながら怜をちらりと見たが、何も言わずそのまま奥へと消えていく。見計らってマーシャルが怜の前に膝を付くと視線を合わせた。


『君は何を心配しているんだい?』


彼なりに怜の様子を案じたのだろう。

青い瞳が僅かに揺らめいた。


『今は不穏な時期やから…さっきの東禅寺の話もそうやし』

『ああ…』


あのリチャードソンがやたらと怜を、或いは日本人そのものを目の敵にしているのは、それも理由の一つであるのかもしれないと思った。


『確かに私達の認識も甘かった。君はそれを忠告する為にわざわざ横浜に来たんだね』


マーシャルは怜の意図を汲んだようで、今まで見せたこともない笑みを浮かべる。


『君の言う通り"街道"は通らない。もちろん平間寺にも行かないから安心するといい』

『うん』


怜はホッと胸を撫で下ろした。



史実では男三人と女一人が事件に巻き込まれる。

ということは、マーガレットかクレメンティナのどちらかということだ。


『じゃあお茶会に行きましょ』

『うん!』



つまり現段階で彼らが観光へ行く予定は立ち消え、史実は確実に変えられる方向へ向かっている。



そう思っていたーーーーー........




◇◇◇◇◇◇◇




江戸城



「居留地だと!?」


薩摩藩邸まで五郎の見送りに行くと聞いていた小栗は、思わず声を荒げた。


「はい。知り合いがおられるようで」


怜に外国人の知り合いがいると聞いたことはない。

むろんそういった話になったことさえないのだから、

わざわざ自分から話さなかっただけの事だろう。


「名は」

「関所の方に尋ねましたところ、名は"マーシャル"と申しておりました」

「マーシャル...」


全く覚えのない名である。

小栗は目を閉じて考え込んだ。


このところ、多忙ゆえに家に帰ることもままならぬ状況だった。道子に任せてはいるものの、怜がまた()()悪知恵を働かせたら、彼女など容易く騙されてしまうと思い監視役を数名付けていたのだ。


「いかがいたしましょう旦那様」



まだ()()をしたわけではない。

ただ、()()言わなかったのが問題なのだ。


「引き続き見張りを頼む。私も直ぐに向かう」

「はっ」



早歩きで廊下を進みながら、頭の中を整理する。


怜が何をしようとしているのかわからない。

しかし、近頃様子がおかしいのは気付いていた。

街道の地図を貸してほしいと、毎夜遅くまで見ていたこと。五郎に大名行列がどのようなものか聞きたがっていたり、何時に出発するのか、何処の道を通るのか、生麦村を通り過ぎるのは何時くらいかーーーーー



「生麦村.....」



小栗はいつしか走り出していた。




◇◇◇◇◇◇◇◇



念のため張らせておいた鈴木君が、モーリス家に姿を見せたのはちょうど半刻後だった。怜は姉妹が止めるのも聞かずマーシャル家へと戻る。


『旦那様の制止を振り切って、御二方は出発されまし た』


サスケが淡々と告げた時、怜の中に小さな炎が揺らめいた。


「あれだけ言うたのに...ッ....」

『一体どうしたの?レイ』

『途中で退席するなんて、モーリス夫人は気を悪くなさったわ』

『夫人には後でお詫びをするから大丈夫よ。それより、レイ?一体ーーー』


クレメンティナは尋常ではない怜の様子に眉をひそめる。


『ビルは!?』


怜はサスケに詰め寄った。


『だ、旦那様もそれを追ってーーー』

『レイ!?』


最後まで言い終わらぬ内に、怜は勢いよく扉を開けた


「鈴木君!ぼーちゃん!」


即座に反応した夜鷹とロバが、怜の前に現れた。


「キョキョ」

「ヒー…」

「鈴木君は上から三人を探して。ぼーちゃんは……走れる?」

「ヒー…!」


怜は後ろを振り返る。


『私が連れ戻すから、ここから動かんといて!』


すっかり気迫に飲み込まれた姉妹は黙って頷いた。怜はぼーちゃんに飛び乗ると手綱を握る。その瞬間、身体がグイッと後方へ反れてぼーちゃんが走り出した。


ロバの足の速さは時速約50キロと言われている。普通の馬に比べると20キロほど遅い。しかしこのロバは身体も小さく、足もやや短いのにもかかわらず歩幅が大きいため、翼が生えたようにビュンビュンと駆けていくのだ。


鈴木君誘導の元、人通りの多い馬車道を右に曲がり、更に左を突き当たり、直進してまた曲がる。右折左折を繰り返しながら、生麦村手前、子安付近に迫った。



◇◇◇◇◇◇◇



一方マーシャルらは馬に騎乗したまま口論をしていた。


『馬鹿馬鹿しい。何故俺達があんな子供の戯言なんて聞かなければならないんだ』


リチャードソンはせせら嗤った。

マーシャルはこの時初めて気付いた。彼らが怜を出し抜くために()()()このような行動に出ているということに。


『レイは関係ない』

『だったらいいじゃないか。二度と日本に来ることはないんだから、色んな場所に行きたいんだ』

『そうだよビル』


クラークは同調し、庇うように馬を二人の間に割り込ませる。


『役人から何の通達も無かった。関門でも何も言われなかっただろう?』

『そうだが……しかし』

『"大名行列"がどんなものか知らないが、それが我々と何の関係がある?』

『むしろその"大名行列"とやらを見てみたいもんだ。なあクラーク?』

『ああ。私もまだ見たことがない』


基本的に居留地の外国人は、好き勝手に行動は出来ない。東は多摩川、西は酒匂川までと行動範囲が決まっている。加えて横浜村は僻村として認識されており、交通の便が悪いため、仕事で横浜港へ出向く以外、居留地を離れることはほとんどなかった。また何でも揃っている居留地での生活は、彼らにとって何ら困ることがなく、更に日本人の暮らしや文化に対して、つゆほどの興味すらなかったものだから、日本に住んでいても日本社会には無知だったのだ。


『日本では外国人は狙われやすいんだ。クラーク、お前も知っているだろう?』

『ああ勿論知っている。英国人のくせに日本人如きにやりこめられるとは、全く情けない限りだ』

『クラークの言う通りだ。俺達は気高い英国人だぞ。何故こんな野蛮でちっぽけな国に遠慮しなければならない。清人ですら俺達を恐れ、皆が皆跪いたというのに』


巨大な土地を持つ清。

それよりも小さな島国である日本が、自分達に刃向かうのは許容出来ないといったところである。その言葉に含まれる侮蔑を込めた物言いに、マーシャルは溜め息をこぼした。


何を言っても彼らの耳には届かない。


『平間寺には俺達二人で行く。ビルは横浜に帰れ』


クラークは冷たく突き放し、リチャードソンはフンと鼻を鳴らして馬の向きを変える。マーシャルは走り去る二人の背を暫し見つめていたが、意を決したように後を追いかけた。


『待ってくれ!』


置いて帰るわけにも行かず、約10メートル後方を追走するマーシャルだったが、二人の左前方から夥しい数の行列を見ると手綱を締めた。


その場所は周囲を麦畑に囲み、民家と小さな商店がぽつぽつと点在する日本ではありふれた田舎の風景である。


いくつもの野太い声が近付くにつれ強さを増し、ふと右側を見れば一人の老人が土下座をしている。一体なんだと前を見れば、老若男女問わず、更に数人の日本人が額を擦り付けていた。


不審に思ったのはマーシャルだけではなく、リチャードソンやクラークもその場に止まる。合流した三人はずーっと奥に伸びた行列を目の当たりにして、これが大名行列だと初めて知った。


『まるで田舎の軍隊だな』


リチャードソンが言った。

その表現はあながち間違いではないだろう。唯一彼らと違うのは身なりと武器くらいのもので、最新式の銃を所持する母国のものに比べると、なんともお粗末である。


『何か言っているぞ』


クラークが眉間に皺を寄せた。


行列の先頭の男達が、こちらに向かって何か叫んでいる。マーシャルは耳を澄ませた。


『向こうへ行けと言っている』

『ビル、奴らは俺達に言っているのか?』

『そのようだ。戻ろう』

『馬鹿な。道幅なら充分にある。脇を通れば支障ないだろ』

『いやしかし』


リチャードソンは手を上げて二人を制した。


『何故俺達が道を譲らなければならないんだ。馬鹿馬鹿しい』


そう吐き捨て、再び馬を進めた彼をクラークは同調するよう追いつく。馬首を並べて進む二人を、マーシャルは半ば呆然と見ていた。



◇◇◇◇◇◇◇



京・長州藩邸




「貴様!何故怜を連れてこなかった!!」

「まあ落ち着けよ久坂」


殴りかからんばかりに、高杉に詰め寄る久坂玄瑞。その顔は修羅のごとく怒りの表情で、数人がその場から逃げ出し、また数人が気を失った。


「まさか!まさかお前!怜を手篭めにっ」

「……」


カッとなった久坂を、高杉は冷めた目で見る。一体六歳の子供をどうしたら手篭めに出来るというのか。聞いている方が恥ずかしかった。


「……すまぬ」


自分の妄想が変態的だと気付いた久坂は、こうべを垂れる。高杉は懐から久坂宛の文を突き出した。


「それよりも吉田から文がきてるぞ」

「そ、それを先に言え!」


真っ赤に頬を染めながら、久坂は文を分捕った。


「お前あいつに何やらせてたんだ?」

「小栗忠順の動向を調べさせていた」

「へえ…」

「ほう……薩摩の小松という男が小栗と会談したらしい」

「小松……それで?」

「はははっ…怜が家定公の娘だと。奴ら、よほど都合が悪いようだな。まあそうだろう。今更直系が出てきてもな……」


久坂の手からひらりと文が滑り落ちた。


「今、なんて?」

「れ、怜が.....」


徳川家定の娘?


「馬鹿なっ」

「嘘だろ.....」


それが事実なら、長州藩にとって脅威以外何ものでもない。


ペリー来航をきっかけに幕府の権威は少しずつ削り取られている。数年前、幕府最高権力者である井伊直弼が白昼堂々と暗殺され(桜田門外の変)、その歯車は一層加速し、現在に至っているのだ。名ばかりの将軍など彼らの眼中にはない。先立って薩摩藩の動き、更に次期将軍として名高い一橋慶喜の台頭がよほど脅威である。


そこへ突如降って湧いた徳川家定の直系。

あの少女が長州藩にもたらす影響はーーーーー



「江戸へ行くぞ」


 

◇◇◇◇◇◇◇




「下馬せよ!」



クラークとリチャードソンは互いに視線を合わせ、これはまずいと目配せした。振り返れば十数メートル後方にマーシャルがいる。必死で何か叫んでいるが、殺気立った武士達の様相に動揺し、彼らには届かなかった。


『お、おい、奴ら何て言ってるんだ?』


整然と並び行く武士達の中には、驚くべきことに鉄砲隊もいる。そして逆に彼らは丸腰である。


『とにかく戻るしかない!』


リチャードソンは慌てて手綱を引くが、その拍子に彼の馬がクラークの馬に接触した。驚いた馬は前足を蹴り上げ、意図せず武士が数歩後ろへ下がる。


『落ち着け!』

『くそッ退け!』


二人は馬の向きを変える為、強引に手綱を捌くが、それは逆効果でしかなかった。喧騒に恐れをなした馬達が自分達を振り落そうと暴れる。何とか鎮めようと悪戦苦闘しているうちに、馬が更に隊列に割り込んだ。


「無礼者!控えよ!」


一人の男が抜刀した刀を振り上げて迫り来る。


リチャードソンは馬の腹を蹴り、手綱を鞭のように振り下ろしたがーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーーーー


大名行列を完全に防いでしまった彼らに、残された道は一つしかなかった。




『クラーク!』


悲鳴と鮮血が空に散った。

馬が前脚を蹴り上げ嘶く。

その距離十五メートル。

マーシャルは次々と抜刀する男達を目の当たりにし、ハッと我に返った。


長刀を持つ武士達が何かを叫び、彼を視界に捉えたのだ。


後肢旋回しようと馬首を右へ曲げたマーシャルは、迫り来る足音に気を取られていた。馬もまた驚いて抵抗するように後退しながら首を上げる。このまま走り抜ければ途中で馬を切りつけられるのは必至で、かといって降りれば瞬く間に斬り殺されてしまう。マーシャルは『落ち着け!』と宥め、再び馬首を曲げようと手綱を握り締めた時ーーーーー



シュッと目の前を何かが通り過ぎた。




「ギョオオォオ!!」

「なんだ!?」

「鳥だ!!退け!!」

「ギョギョォオォ!」

「邪魔だ!」



武士達の間を器用に潜り抜けながら、夜鷹が旋回する。マーシャルは抵抗する馬に悪戦苦闘しながら何度も手綱を引く。



ーーーーーと、その時であった。


彼の真横を再び何かが駆け抜けた。


「Go back!!」


途端、馬は直ぐ様方向転換し、マーシャルは驚いて背後を振り返る。


「戻れ!」そう叫んだのは、小さな少女であった。







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