あの日、素直になれたら
新年度まで、あと3日。新年度に向けた買い物から帰ってきた私は、一通の葉書が郵便ポストに入っていることに気付いた。
それは、飾り気のない葉書だった。
そこに書かれた文章を読んで、私は呆然とした。
「ウソでしょ」
その知らせは幻、今この時が夢であってほしいと願った。だが、無情にも今、この時、目の前にある葉書は現実のものだった。
ギュッと手を握りしめた。
(痛い)
この痛みはきっといつまでも忘れないだろう。あの日、あの時、あの場所で先輩と会えたからこそ、今の自分はある。そう信じられる。
例えば秋のあの日。先輩たちが制服を着ていなかったら、私はきっと先輩に声を掛けなかっただろう。
例えば春の私の誕生日。先輩はプレゼントをくれたっけ。すぐに食べちゃったけれど、あのキャンディの味はいつまでも覚えている。
例えば初夏の文化祭。先輩と廊下ですれ違わなかったら私はそれ以降、二度と連絡を取ることもなかっただろう。
そして、夏のあの日、先輩は私のことが好きだとメールをくれたよね。
嬉しかった。だって、私も先輩のことが好きだったから。
今だから言えるけれど、人生で初めて私が恋した人だったんだ。
でも、私はどうしても先輩と付き合うわけにはいかなかった。
だって、先輩は当時、受験生だったもの。
先輩は良くても、私は先輩の邪魔をしちゃ悪いと思ったからね。
あの時、本文を書いてから、何度、返信するのをためらったことだったか。
でも、今、考えれば、私が出した答えが違っていたら、どうなっていたんだろう。
分からないよ、先輩。
私は手に握りしめた葉書をもう一度見た。
そこに書かれている日付は私の誕生日の二日前。ああ。私のせいだよね、きっと。
ごめんなさい、先輩。あの時、素直になれなくて。
なんか活動報告で400字弱とか言っていた馬鹿者がここを通ります。
正しくは800字弱でした。
多分、加筆する前の字数しか見ていなかったんでしょうね、そいつは。
ということで、一部ノンフィクションでお送りしました。
どこからどこがノンフィクションなのかはご想像にお任せします。