第91話 古の死霊術師・ブギーマン2
「封印解除!」
足元に沸いた上半身だけを踏みし、収納空間から数少ない火旋風の封魔弾を解放する。
左右の森の中、離れた奴に向かって投擲。数が多いから魔力反応を頼りに適当に凪げても当たる。
森林火災?知らないね!
「ええっと、封印解除」
タリアの放った封魔弾で三方を火旋風に囲われた。
逃げ場はない。向うさんも逃がす気は無いだろうさ。魔力の反応は消えていない物がそれなりに居る。
数百Gクラスの中に、さらに1000G越えが数体。3人には辛い相手だが、やって貰うしかない。
「ブギーマンは俺が!タリア、二人をサポート!」
「タリアさんは俺たちが……ええ!?」
残念ながら経験は足りないがレベルで同等、俺のエンチャント装備を付けている分、対魔物戦なら優位だろう。
スキルはまだほとんど使いこなせないだろうが、そこは気力で何とかしてもらうしかない。
サーチに引っかからない目の前の奴が、自由に動かれたらヤバすぎる。
「潔し!じゃが儂までたどり着けるか……ぬ?」
目の前に沸いた死霊犬を蹴り飛ばし、骸骨兵、動く死体、腐った熊を三手で切り伏せ、とびかかって来る|出来損ないの獣は盾で潰してブギーマンへと迫る。
「お前も俺の糧になれ!」
ガンっ!
袈裟懸けに放った斬撃はブギーマンの杖によって受け止められた。
くそっ!こいつ少なくとも俺並みにはSTRもあるのかよ。
「ぬぅ、魔術師ではないな!」
魔力感知によってブギーマンの術の流れが見える。
「魔弾!」
目の前のブギーマンを吹き飛ばした次の瞬間には、左右に剣と盾を持った骸骨兵が生まれている。うっとおしい!
死霊術師であるブギーマンの基本戦略は、とにかく数で攻める事。
どんな“価値のあるモノ”でもその特性を無視して、アンデット系魔物を召喚する。召喚するところに空間魔術の類で“価値のあるモノ”を転送する。という二つを駆使して、瞬時に大量に、かつ好きなところに魔物を大量発生させてくる。
「「カタカタカタ」」
スケルトンの斬撃を盾で受けつつ身をかわす。
今の装備なら切るだけで倒せる。スキルを使うまでも無い。
「雑魚ばっかりだな!」
切り捨てたスケルトンがドロップに変わる。
「そうかの?」
魔弾で吹き飛ばされたブギーマンは大したダメージもなさそうに笑って……魔力反応が消えてね!
ガン!激しい音がして、首筋とわき腹に衝撃が走る。スケルトンの持っていた剣が浮いていた。
彷徨う剣かよ!慌てて叩き落として切り捨てる。
「ぬ?……馬鹿な、今ので無傷じゃと?」
防具を二次職用の物にしていなかったら危なかった。ステータスだけでは確実にダメージを受ける威力があり、致命傷を狙った位置への攻撃だった。やっぱり近接戦は厳しいな。
「いい装備を使ってるんでね!」
「あの程度では防御を抜けぬか。ではこれでは?」
ブギーマンの杖が光、そこから半透明の人影、死霊が発生する。
こいつらは通常斬撃だと倒せない奴。
「封印解除!」
それを聖衝弾の封魔弾をぶつけて即座に消滅させる。作って良かったバレット系。ランスで賄えない神聖・暗黒のバレット系封魔弾は作ってあったのが功を奏した。
「これはなかなか!」
「余裕だな!強打!」
防御予測が働いて、きわどい位置に一撃を放つ……が、通らない。スキルを乗せても防御されれば通らないか。
「斬撃!封印解除!」
「ぬぅ!?」
連続でスキルを発動するとともに、炎槍を発動。
INT600越えの炎槍がブギーマンの半身を焼く。
「影の壁!」
「っ!?」
目の前に発生した薄暗い壁を咄嗟にバックステップでかわす。触れると魔力を奪われる障壁だ。
「こちらは耐えられるかの?影矢」
その瞬間十数本の矢がブギーマンの周りに発生する。なんつー数出すんだよっ!
咄嗟に壁を発生させて防ぐ。やばいな、一本一本が結構な威力がある。俺のINTとどっちが上か試す気には成らないな。
「まだまだ行くぞ。闇よ。影束縛」
「!?」
周囲に闇が広がった瞬間、黒い帯が体に絡みつく。
早い。環境依存度の高い影束縛を使うのに、周囲を暗くする闇よを使ってなお、俺がスキルや封魔弾一つ使う程度の時間でやってのける!
「暗黒爆撃」
黒い閃光が目の前に収束する。これはシャレに……。
ドゥンッ!!
弾けた闇がゆがんだ爆音とともに光を飲み込んだ。
「これならどうじゃろ?ダメージぐらいはあるじゃろうが……それとも死んだか?」
「まさかね!封印解除!」
漂う魔粒子から飛び出して、炎槍、雷槍の封魔弾を連続で叩き込む。
今のは危なかった。咄嗟に魔術無効化の封魔弾で威力を軽減してなきゃ、しばらく動けなかっただろう。
魔術無効化の封魔弾はタリアのアイデアだ。状態異常に対策が必要と相談した際、『自分にぶつけるように作ってみたら』と言われて作っておいた。
いくらDEXが高くても、相手の魔術にぶつける何て離れ業過ぎて想定していなかったが、とっさにやることになるとはね。
「ぐぅ……なかなかしぶといの。動きはパッシブスキル無しの2次職上限と言ったところか。耐性も同程度はあると見た。魔術の威力は3次職相当、こいつは厄介じゃの」
「こっちも同感だよ。その3次職並みの魔術をくらって、ちっともダメージが見えねえ」
「わはは、面白いことを言う。不死者の儂が、あの程度のダメージで怯むわけなかろう」
……そうでしたね。
アンデット系の大きな特徴は、状態異常に極めて強く、クリティカルを受け付けない事だったな。
火炎も雷撃も凍結もダメージ以上の効果は無く、頭を砕こうが、首を落とそうが、身体を真っ二つにしようが、HPに与えるダメージは変わらない。
「その力の半分くらいはエリュマントスを倒して得た物じゃろ?どうやって倒した?まだまだ奥の手があるのじゃろう?」
「それを確認するために、わざわざ襲ってきたのかよ」
「仇討ちなどと言うつもりは無いが、驚異の芽は早めに取り除いておくに限るからのぅ」
神のアナウンスで名前が割れて、エリュマントス撃破を紐づけられたのが痛いな。
魔物にはアナウンスは届かないらしいから、捕まった人間を洗脳して聞き出したのだろう。魔物の中には魔人と呼ばれる街中での活動に特化したタイプもいる。
ルサールカの眷属は幻惑や洗脳を得意としているし、ある程度の情報を集めるだけならお手の物だろう。
こいつが襲ってきたのは王都側に居たからか。
そう言う意味ではまだ運が良い。
「さて、炎の嵐も収まった様じゃの。サウザントに満たぬ力では傷もつかぬようだし、もう一段上げようかの」
ブギーマンの瞳が怪しく光る。
骨だけだった腕に、顔に、黒ずんだ肉が戻り、その身体はさらに光沢を帯びた黒い鎧へと覆われていく。杖はいつの間にか剣へと形を変え、ブギーマンは全身甲冑の騎士へと姿を変えた。
「せっかくじゃ、お主と似た姿で相手をしてしんぜよう。死者の鎧じゃ。簡単にやられてくれるなよ」
ブギーマンは両手剣を振り上げた。
ワタルはブギーマンがわざわざアインスから追っかけて来たとは思っていません。
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