第462話 最終手段と飛行装具
ベヒモスの大腿骨は、骨として取り込むと大幅にVITを上げる事が可能だと分かった。さらに身体の芯、骨の部分で魔力循環が可能となり魔力制御で操れる魔力の量と制度が上がった。細かい操作はまだ出来ないが、魔操法技のバリエーションを増やしたり、愚者の時間の準備時間を削減できそうだ。
ヘドウィグからの強奪品である極楽鳥の羽。ふさふさとした尾羽と風きり羽根2本のセットは、場所に困るので頭皮に髪として移植してみた。鱗と同じく、頭部に薄い魔力層が発生。さらに風きり羽根の効果か、周囲の風の流れをなんとなく感知できるようになった。魔操法技を使う際の魔力放出にも多少補正が入るらしい。一つ一つの効果は地味だが有用だ。
魔蝋の毛皮は、単純な効果だけなら陸竜の鱗の劣化版。だけど体毛が生えている所に違和感なく少量だけ合成するなら、こちらの方がよさそう。哺乳類の毛なので、肉体への負荷も軽い気がする。
スライムコアは移植すると、スライムの能力である粘液が生み出せるようになった。ただし使い勝手は微妙。まず、体内に移植するのか、体表面に移植するのかで生み出せる場所が変わる。体内に移植すると汗の様に滲み出すが、体表面に移植するとコアから発生した。額のコアからローションが垂れてきた時には、なんとも微妙な顔をされた。また、粘液は酸性、アルカリ性など特性を変えられるが、衣服防具を侵食する。どう考えても人向きの改造ではない。
鱗と魔狼の毛皮を表皮に、ベヒモスの大腿骨を骨に、極楽鳥の羽を頭髪に合成するキメラの設計図を、改造プランとしてスキルにストックする。人間を止めるつもりは無いが、本当に必要な時は使うことに成るだろう。集合知に無い40レベルで、合成解除のスキルを覚える事を願うばかりだ。
試想結界内でキメラ化した後長期の影響を見ることは出来な。試して効果的があるのは確認できたが、だからと言って使うのには躊躇する。出来れば使わないで済むよう祈ろう。最終手段だ。
そんな感じで人造獣使いのスキルの検証は即座に戦力増強には結びつかなかったが、時間があるからと試した錬金式ジェットブースターの試験飛行では、運よく成果が得られることに成った。
元は湖で遊具に成っているジェットバイクや、流星くん1号にも使われている大型の推進装置。それを蛸の足や蜘蛛の足に接続した、個人用飛行装具である。
外観はクロスボーンなガンダム的な、外に大きく飛び出した4機の支柱の先に、樽の様なブースターを取り付けたバックパック。蜘蛛の足ベースは向きを、蛸の足ベースだと位置も含めて自在に変えられ、最高速度は時速500キロを超える。
だた、姿勢制御が難しすぎるという問題があり、俺は元より、もっともDEXが高いアーニャですら、点火後10秒足らずで地面の染みになるほどコントロールが効かない。流星くん1号に使ったジャイロは効果を発揮するのにサイズが大きくなりすぎて使えず、浮遊を使うのはMPの消費が大きく、安全に着地できる数メートル程度の高さだと振り切って墜落する。
湖でも墜落しまくって、あぶなくてろくに練習も出来ないくらいだった。
ウェイン奪還に当たり、幽閉場所を特定したらこれで突貫&離脱をする為に設計したが、何とかコントロールできるのは現在休養中の弥生だけで、アマノハラ以降お蔵入りにしており、何とか自力制御できないかと試していたら……。
『……どれ、少し私が試してみせよう』
などとペローマ様がおっしゃった。
「いいですけど、落ちたらタリアがリタイアして強制送還ですよ?」
『神が地に落ちると思うかね?』
まぁ、仮想空間だから良いかとランドセルを背負って飛び立たせたところ、最初こそ想定と違う姿勢で舞い上がったものの、すぐにコントロールして自在に飛び回り始めた。
『景色は味気ないが、自分の力以外で飛ぶのは中々に良いな』
それを神様ずるいなぁと思いながら見上げていたら、アーニャが種に気づいた。飛び上がった後の姿勢制御は、ランドセルのブースター側じゃなく、念動力を使って重心を制御する事を見抜いたのだ。
後で確認したら、神の力を遊びで使うのも問題なので、タリアが出来る事で対処したらしい。
俺もアーニャも少し練習したら同じように飛べるようになった。これならバーバラさんやコゴロウも使いこなす事が出来るだろう。
「コントロールは難しいけど、自在飛翔より早いな!」
とは、アーニャ談。高速移動は時速100キロから120キロの間、自在飛翔は150キロ超ぐらいだから、最高速度はこっちの方が早い。
スキルは加速が一歩で済むので、初動はそっちの方が早い。これは使い方次第。
ペローマ様にお帰り頂いた後、タリアが自在に飛び回れるようになった所で試想結界を出た。
「ご協力ありがとうございました」
「うむうむ。実りが多かったようで何よりじゃ」
こちらのやり取りを見ていたであろう長老はご機嫌だった。新たな発見があったのだろう。
その後は湖に場所を移し、低速でブースターでの飛行を試した。浮遊ほどでないにしろMPは消費するので、安定飛行時の姿勢制御はエンチャントで行うことにする。
そうして夕方までブースターを試し、細かい所修正とメンテナンスを行って、バーバラさんに量産を頼んだ翌朝。
ネプトゥーヌスが見えたという移動部隊からの連絡と共に、南大陸からアルタイルさん達が帰還した。
キリが悪いので短めです。
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