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第293話 5階層ボス・陸竜2

 召喚された走竜(ラプトル)は5体。召喚の連打は出来ない。こいつらはコピーを作成する群体の劣化版で作られた中身無しの魔物。強くはないが数が居て動き回られると厄介。


死人擬態(デッドマン・デコイ)!」


 スキルに呼応して、実体のない亡者が部屋の中に出現する。

 死人を模したダミーを召喚する魔術。これ自体に戦闘力は無いが、視覚でも魔力でも判別できないデコイには敵を惑わす効果がある。それにこいつらも影を作る。


 キシャァーーー!

 雄たけびを上げてデコイに噛みつく走竜(ラプトル)の側に転移。石斬りを振り降ろすと、敵は一撃で真っ二つに成って消えた。よし、スキル無しでも狩れる。


走竜(ラプトル)の耐久度は気にしなくていいレベルです!陸竜(アースドラゴン)に気を付けて!』


 注意しているそばから、デコイの一つが奴の爪によって消される。

 召喚で来たデコイは10体。残りは8。簡単な回避行動はとるけど、目くらましは十数秒持てばいい感じだな。


十字飛斬(クロス・カッター)!縮地!一刀両断(スラッシュ・エンド)!」


 コゴロウが一気呵成に攻め立てる。どれもまともに受けたら首の一つや二つ飛ぶ威力立っての二、ドラゴンは気にした様子も無い。ダメージは入っているのだろうけど、部位破壊に至る程ではないと言った所か。こりゃHPの自動回復も持ってるな。


『みんな離れて!』


 単発で威力が高くて出が早いのはこれっきゃない。


影渡り(シャドウ・トリップ)多重詠唱(10連)魔投槍(マナ・ジャベリン)!」


 至近距離からの魔投槍(マナ・ジャベリン)10連発に、ドラゴンの身体が吹き飛ばされて壁にたたきつけられる。

 死霊術師は威力重視の中級魔術は持ってないんだ。今単純火力ならこれが一番!


「って!?」


 壁にたたきつけられたドラゴンが、首だけ起こして口を開く。ヤベェブレス!


重力鏡盾(グラビティ・レンズ)!」


 目の前に現れた湾曲空間が、光の奔流をゆがめて拡散する。


『ありがとうございます!』


 今のはヤバかった。反応速度的に間に合った1枚の盾じゃ抜かれてた可能性がある。


『魔術を当てた時の手ごたえが妙ですね』


『吹き飛ばすことは出来ましたけど、ダメージが見えないですね』


 影渡り(シャドウ・トリップ)で場所を変え、走竜(ラプトル)を切り捨てながら状況を分析する。

 コゴロウやバーバラさんの攻撃でダメージは入っている。魔術もダメージは入っているが、効果が薄い。今の魔投槍(マナ・ジャベリン)10発は直撃したにしては敵の動きに変化が無さ過ぎる。


『動きを止めましょう。高速移動なら束縛糸(バインド)系で妨害できる。中級、中級、上級、上級で』


『わかりました。私から行きますよ』


重力の鎖(グラビティ・チェーン)!」


 アルタイルさんの魔術が発動し、対象を地面に縛り付ける。


影束縛(シャドウ・バインド)!」


 そこへ俺の中級束縛魔術を重ね掛け。影束縛(シャドウ・バインド)は陰から伸びる帯が相手の動きを封じ、拘束中はMPにダメージが入る。

 だけどこれで止まるとは思っていない。先にスキルを発動したアルタイルさんは、既に上級魔術の詠唱に入っている。


「それは縺れて引き合う力の根源。原初にして最小たる魔素の同胞。その在り様は多々一点にて、万物はその在り様が故、檻の中に有る!重力子の檻(アノイン・グラビトン)!」


 先に完成したのはアルタイルさんの上級魔術。

 重力子の檻が相手を捕らえ、その身動きを完全に封じ……たかに見えたが。


「これはっ!」


 あいつ、魔術を受けると反射で魔術無効化(ディスペル)系のスキルを使うのか!

 魔力視を得た居間の俺には、ドラゴンの周囲で魔術式が乱されて発動した魔術が効果を失っていくのが見える。

 連続で魔投槍(マナ・ジャベリン)を打ち込んでもダメージが少なかったのは事のためか。


「それは千をあざなう呪詛の糸。絡みて縛り、蝕み喰らう死せる菌糸。その身は我が手と成りて、滅びの刻まで愚者を捕らえる。束縛呪糸(カースド・バインド)!」


 上級魔術のくそ長い詠唱を終えて、同じく拘束魔術を発動する。

 漆黒の帯が手と成ってドラゴンを縛るが、掴んだそばから消えて行ってる。詠唱時間に対して効果時間が短い!


『単発で効果力を当てて行かないとダメですね』


 あの系統の対魔魔術は自分のスキルも妨害するので、常時発動は出来ないのだろう。

 あれが発生している間はあいつもブレスや召喚を使えないが、こちらもスキル・魔術共にほぼ意味が無くなる。


『時間を稼いでください。隙を見て重力子爆発(バースト・グラビトン)を使います』


『了解。俺は近接に切り替えます』


 アルタイルさんが使おうとしているのは、重力の魔導師が覚える上級魔術の中でも、特に破壊力が高い物。

 詠唱が長いし、詠唱中は他の魔術やスキルが使えない。けれどその威力は、単体相手ならストーム系よりはるかに強力だ。


 アル・シャインさんが敵の牙を受け止め、その頭を短槍で跳ね上げる。チャンス。


「螺旋正拳!」


「血華斬!」


 二人がそれぞれ上級スキルを放つ。俺に出来るのは普通に斬るぐらいなのが悔やまれる。


「ええぃ!二刀流・×字剣(ぺけじけん)


 石斬り、霞斬りがドラゴンの堅い鱗を物ともせず、その身にバツ印を刻む。

 良し!武器の性能のおかげで通常攻撃でもダメージが入る!


 しかし接近するという事は当然、攻撃を受けるリスクも上がるという事。


「くっ!?」


 尻尾の薙ぎ払いを受けて、バーバラさんが吹き飛ばされた。


『バーバラさん!?』


『……大丈夫です!』


 人の様子を気にしている余裕はそう無い。爪の一撃をギリギリで躱し、疾風斬りを乗せた斬撃でダメージを与える。


『ワタルさん!臨時の防具で平気ですか!?』


『見劣りはしないから!』


 鎧を預けた俺は、今は借り物の魔蚕の防具を来ている。防御力が見劣りすることも無く、さらに軽くて動きやすい。俺は戦いなれてないから金属鎧の安心感は欲しくなるが、実質問題はないはず。


 周囲を囲まれてうっとおしいと感じたのか、ドラゴンは毒のブレスをまき散らすがそれは無駄だ。直撃したら解毒しようが大ダメージには変わりないが、魔素で模倣されただけの速度の無い気体は、魔術無効化(ディスペル)で打ち消すことが出来る。

 そして魔術無効化(ディスペル)持ちが3人居るのだ。


「うぉぉぉぉ!貫通螺旋撃!」


 アル・シャインさんのスキルが肩に突き刺さり、鱗を吐き落とす。

 上級スキルの連打はダメージになるらしい、相手の攻撃から焦りが感じられる。同時に通常攻撃しか出来ない俺への警戒が弱まった感じがする。なら!


『アルタイルさん、呼び寄せます。全員、同時に退避を!』


『『『『了解』』』である!』


「影と共に、何処(いづこ)かに在れ!影渡し(シャドウ・デリヴァー)!」


 遠方にいたアルタイルさんを取り寄せる。

 それと同時に全員がドラゴンから距離を取り……。


「吹き飛べ!重力子爆発(バースト・グラビトン)!」


 魔術がはじけた。

 空間が歪み、ドラゴンの体内に向けて力場が収束、周囲の者が巻き込まれながら圧縮され、その身体が醜くゆがむ。

 そして次の瞬間にはそれが破裂し轟音と共に膨らんではじけた!


 グギャァァァァ!?

 これまでとは明らかに違う方向。鱗は剥がれ落ち、全身からは体液が吹き出ている。

 しかしその目はまだ死んではいない。口からは炎のブレスをまき散らしながら、高速移動スキルを発動させて包囲から逃れようと足掻く。


「止れ!迫りくる壁(スタンプ・ウォール)!」


 グベシャッ!と肉の潰れる音。アル・シャインさんが敵の行く手を阻んだ。素晴らしい動き!。


「往生するである!剛剣一閃・一刀両断!」


「ダメ押しです!螺旋正拳!」


 コゴロウの斬撃が首の半分以上を切り落とし、バーバラさんの一撃が鱗の無くなったその身に食い込むと内臓を書きませながら破壊していく。


 ……どちらが決め手になったかは分からない。

 けれどその攻撃で力尽きだ陸竜は、全身の力がだらりと抜けると、地に倒れ伏して光となって消えていく。


 ……勝った。

 後にはドロップ品が残されたのだった。

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