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第288話 死霊術師のダンジョン攻略

訓練とダンジョン攻略を並行して進めながら一週間。

順調かどうかは不明だが、4階層の踏破済み領域を経て、そろそろ5階層へのめどが立ってきた。


ダンジョンを攻略する上で注意しなければいけないのが、踏破領域の解体と他の冒険者に鉢合わせをすることである。

俺達は4階層の未踏破領域から侵入し、迷宮を広げる形で進んできた。しかしダンジョン内のメイン通路でそれをやってしまうと、先に冒険者パーティーが居た場合閉じ込めてしまうことになる。

そこで、深層探索している冒険者に出くわさないようルートを選び、4階層から5階層へのルートを潰さない様に考慮しつつ、一部のルートを封鎖して分岐を減らしていく。

迷宮を取り込んでいない通路や部屋は、潰してメンテナンス経路として迷宮化する。今は開いた穴を埋める手立てが無いので、迷宮壁で防御した方が魔物が沸かなくていい。


トレーニングの方もぼちぼち順調だ。最も伸びているのはやはりアーニャで、まずキューブの4面目に突入。

碑文に記されていた15の呪法を体得し、更に魔弾の術式も体得した。これはスキルに含まれる『呪文書へのアクセス』と『効果発動式』を完全に分離した物で、魔操法技(クラフト)の操作精度はスキルの比では無くなった。


後に続くのは何とコゴロウ。現在3面攻略中。これは武器を預けてしまってやる事が無いからであるが、これまで魔力操作など考えもしなかったであろう彼が伸びるのは予想外。

一つの事に集中して伸びるタイプなのか、呪法の発現には至っていない。


タリアとバーバラさんは抜きつ抜かれつ2面攻略まであと一歩。呪法も初級はクリアした。

二人は別のトレーニングもやっているので進みが悪い。特にバーバラさんは生産職の訓練を並行しており、亡者全員分の装備を作れとエルダーから言われたらしい。なかなかに大変そうだ。ただ、何があったのか知らないのだが、ここに来てから表情が明るい。教えてくれているタテマル氏と話して、何か心持が変わることがあったのだろうか。


俺はと言えば、キューブの攻略は2面の途中。呪法は『明かり』『発火』『そよ風』の3つまで発動できるようになった。おそらくどれも使わない。

俺の成長が遅いのはダンジョン攻略の所為だ。代わりにレベルは45まで上がった。新しく覚えたスキルは、上級拘束魔術束縛呪糸(カースド・バインド)。スキルはMP回復向上Ⅱに、死霊術範囲倍化。それにステータス補正だ。


死霊術範囲倍化は、死霊術に限って効果距離がINT×2メートルとなる。影響があるのは死霊術だけだが、効果範囲が広がる恩恵は大きい。残りの固有スキルは47で覚える死霊術効率向上と、50で覚える仮初の命の二つを残すのみだ。

ちなみに、単体で1番価値が高かったのは初日に戦ったコボルト将軍であり、あれ以上の強敵は見かけていない。ただ、魔石をはじめそれなりにドロップが手に入るので、使わなそうなものは冒険者ギルドに売り払っていたりする。

そうすると自然とダンジョンの話も入ってくるわけで……。


「縮んでいるんですか?」


「ああ、聞いた話じゃ結構なエリアが消えてるらしい」


俺達が地下からダンジョンの攻略を始めた影響が出始めているらしい。


「一番ひどいのは4階層って話だが、全体的に縮んでいる……特に迷宮と一体化していなかったエリアが減っているようだな。1階層、2階層でもダンジョン壁が無くなって、単なる洞窟に成ってるところがいくつかある。危ないから。今内部工事を行える術者を募集中だよ」


魔物ダンジョンが消えると、そのままそこは空洞として残る。耐久力に不安があるから、そこは差し当たって崩れないよう補強するようだ。


「2階層から3階層に繋がる別ルートが見つかって盛り上がってるところだから、上も臨時の資源投入を行うらしいぜ」


「へぇ、どれくらいですか?」


「品質はいつも通りだが、30万Gくらいを想定しているそうだ。儲け時だぜ」


「そりゃまたリッチですね」


正直止めてほしい。

魔物ダンジョンはドロップの無い魔物と、ダンジョンが生成すると言われる魔石がメインのドロップ品だが、それ以外に特殊な効果の付いた武器や防具が出に入る。

この武器や防具の出所は、ダンジョン内で倒れた冒険者の遺品だったりするのだが、ダンジョンにはこれらにエンチャントや錬金効果を付与して魔物装備とする能力があり、ドロップとなる際には強化された状態になる。


これを悪用して、わざとダンジョンに低価格のアイテムを投入し、強化されたアイテムを回収するのが、ペローマが国を挙げて行っているダンジョン運営だ。

元々は数百Gくらいの量産品の武器などでも、数千Gから1万Gクラスの装備になる。回収した装備を錬金術師や鍛冶師が再加工すれば、数万Gになる物も出てくる。数が作れるなら全体の価格を抑えて、比較的強力な装備を量産できるわけだ。


……むろん。中身有りの魔物が大量に発生するリスクも存在するわけだが。


「まぁ、強い魔物が沸きやすくなるからな。お前さん達は大丈夫だろうが、他のパーティーが困って居たら助けてやってくれ」


「ええ、分かってます」


迷宮村に建てられた冒険者ギルドのは派出所でそんな話を聞き、あわてて迷宮に戻って相談をする。


「そりゃ、今ダンジョンに活性化されたら面倒だろうな」


(コクーン)の集会所を兼ねている広場に集まって迷宮管理組に話をすると、聞いたムネヨシ氏が顔をしかめる。


「1万G級が大量に出現すると面倒だな。どう考えても今の4階の攻略を叩きに来る」


集まっているのはエルダーとサポートの数名だ。ムネヨシ氏、タテマル氏などエルダーたちに加えてメリッサさんもいる。


「5階層へつながる迷宮通路は無いんでしょうか?」


「把握している限りないな。5階層は迷宮から分捕られた迷宮壁が使いまわされているだけだ」


ボス部屋と階段を潰すと面倒なので、避けて5階層に入りたい。それから一気に探索。

……ちょっと面倒だな。4階層から5階層はボス部屋を回避するように迷宮通路を伸ばしてしまえばいいが、5階層のスタート地点は潰せない。間違いなく魔物が集る未来が見える。


「数で来られた場合、全員で当たってもちょっと辛いです」


1万G級に成って来ると、カマソッツのように上級スキルを使ってくる奴も出てくるはずだ。

数で来られると全員で戦っても対処できない。


守護兵(ガーディアン)を盾にするか?」


「まだ5人の中に操作できるものが居らん。いても数体では意味がない。それに、他の冒険者に見られたくはない」


「他に助力を頼めそうな者はおらんか?」


「どこの(コクーン)も似たようなもので、修業中で外に鑑賞できるものが居らん。ワタル氏が来てくれているだけでもマシな方じゃ」


まいったな。エルダーたちにも良い手はないか。

まぁ、無いから迷宮に侵食されても自動迎撃状態の守護兵(ガーディアン)ぶつけるくらいしかできなかったわけだけどさ。


「いやいや、人手なら十分足りてるでしょ」


エルダーたちが頭を捻っていると、メリッサさんが呆れたようにそう言った。


「貴方、死霊術師(ネクロマンサー)なんだから抱えてる亡者を使いなさいよ」


「ああ、確かに今……54人いますけど、同時運用は無理ですよ」


死霊術効率向上を持っていないし、持っていたとしてもその人数じゃあっという間にMPが無くなってしまう。


人格再填(リ・ロード)までは使えるんだから、行く先々でダンジョン壁から常時MPを吸収しつつ、本人は後衛で魔石からMPを吸い続けなさい。ちょうど死霊術範囲倍化も覚えたんでしょう」


……確かに。ダンジョン攻略中にMPの心配をしなくていい位なんだから、54人同時運用できるか?


「ふむ。それが可能なら、5階層に複数の侵入ルートを設けたほうが良いの」


「あとは亡者の編成ね。その人数なら職業に偏りがあるんじゃない。この際、職の見直しレベル上げ、それにとパーティーの組みなおしをして、効率的に運用できるようにしましょう。魔物に侵入されているの、ここだけじゃないし」


「……俺が掃除するんですか?」


「経験値には成るでしょう?移動拠点にもしたいみたいだし」


むぅ。確かに移動拠点に使いたいのは事実。

それじゃあ、いつも通りアルタイルさんに相談してみましょうかね。


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アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~

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