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タケダ(1・2)
B−1章 「タケダ」
1
タケダは平凡な暮らしをしていた。飲食店で朝から晩まで唐揚げを揚げて、帰ってもこれといった趣味はないからネットで時間を潰し、適当な時間に寝る。性格も顔も平凡の見本のようであった。秘められた才能もなかったし、父も母も平凡な人間であった。
普通、多くの者は
「自分は他の奴らとは違う」
という想いを抱いているがタケダは違った。
本人も、自分は平凡だと心の底から思っていたし、それを願っているふしさえあった。
2
両親が事故で死んだ。だから大学に行けなか
った。だから夢を捨てた。
みんなおれをこういう境遇だと思っている。
事実、親があの事故に巻き込まれなかったらおれは大学に行っていただろうし、夢を追おうとしていただろう。
・・・しかしそれは「本物」なのだろうか?
おれは本気で大学に行きたかったのだろうか?大学で学びたかったのか?違う。学歴が欲しかった。
夢をおれは心から追っていたか?違うな。
金がなくても大学に行く方法はあった。大学に行かなくても夢は追えた。おれはそれから逃げたんだ。
親の死を理由に。
おれは画家になりたかった。




