Kaguya awakening
A−1章 「かぐや」
1
元々美しい赤色を売りにしていたそのヘッドホンは、かつての持ち主の血を浴びより一層その赤に深みを増したように見えた。
かたわらではボロを着た少女が生首から毛糸の帽子、また別の死体からワッペンでごわごわしたパーカーを剥ぎ取り、着こなし、耳を押さえ、
「まだうるさい」
少女はヘッドホンとスマートフォンの一種を乱暴に手に取ると、まるで何度も使っていたものであるかの様な動きで機械一式を身に付け、曲を適当に回し、満足そうに国道の向こうの闇夜に消えて行った。
2
むかーしむかしか遠い未来か。どこかにおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは朝から昼前まで竹を取り、昼頃帰っておばあさんのご飯をたべて、食べたらある日は竹を細かくしたり、ある日は竹を真っ直ぐにしたり、ある日は加工したり・・・という風に父から教わった竹細工を作る。おばあさんは毎日ご飯を作って、川で洗濯をして、竹細工を買いに来た近くの集落の者と物々交換して、たまに家を開けて二人で竹細工を街道に売りに行く。それがおじいさんとおばあさんの、50年も前から続く変わりのない、平穏な生活でした。
ふたりの暮らしは突然に、でも必然に終わりを告げました。おばあさんの死です。
おばあさんは産まれた時から身体が弱く、子供を持てなかったのもそのためでした。とはいえ充分に長生きしましたがね。
おじいさんにとっておばあさんは「空気」の様なものでした。おじいさんには、自分が悲しいのかすらわかりませんでした。
おばあさんが死んで、5年の歳月が経とうとした、ある日のことでした。




