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Kiss*チュードク  作者: MIA
Kiss*チュードク
9/38

5-1

 生徒会室。

 いま、あたしの横にはいつも通り本に目を向けている雲雀くんがいる。

 それを横目でみてタイミングをはかる。

 そして顔を近づけ…


 ーバンッ


「いたっ」


 頭を叩かれた。

 しかも硬い本で。


「いたいよ!? 雲雀くん」


 頭を手で抑えて雲雀くんを睨みつける。

 だけどその本人は、全く気にしていない様子で本に目を向ける。


「承知の上だろ」


 いや、タイミングをはかってもこうなることはわかってたけど。


「シュウ先輩。弟くんがキスさせてくれません」


 違う机のイスに座っているシュウ先輩に振り返ると、助けを求めた。


「だったら俺がしてあげよっか? 」

「ほんとですか!? 」


 ソファから乗り出すようにしたあたしを、クスッと笑うようにして


「 う そ 」


 笑顔で返される。

 …からかわれた


 おとなしく諦めて、ソファの上でぐったりする。

 そんなあたしに呆れている人が一人。


「バカバカしい」


 横にいる雲雀くんが呟いた。


「っ…」


 その言葉は嫌いだ。

 あのときのことを思い出してしまった。


 どのくらいの沈黙が続いただろうか。

 シュウ先輩と雲雀くんは喋ろうとしないし…

 この2人は家でも話をしてなさそうだ。


「そろそろ、帰る」


 急に立ち上がったシュウ先輩。

 シュウ先輩が帰るってことは…


「雲雀くんも帰るの? 」


 雲雀くんをみるとやはりまだ読書をしていた。


「まだ、いい」


 本に視線をむけられたまま答えられた。

 シュウ先輩はそれを聞くとスタスタと出口に歩いていき、この生徒会室から出て行った。


「雲雀くんって、シュウ先輩とあまり話さないの? 」

 シュウ先輩がこの生徒会室からでたのを確認すると、興味本位で聞いてみた。


「話す目的がないと話したりしない」


 やはり、視線は本にむいたままに答えられる。


「目的って…。家ではどこかで鉢合わせしたりするよね。そのときも話したりしないの? 」

「そうなるな」


 ページをめくる姿は、ちゃんとあたしの話を聞いているのか疑問になる。


「じゃあさ、シュウ先輩のこと、なんて呼んでるの? 」

「 … 」


 聞いてみると、雲雀くんの本を読む動作がとまった。


「……呼んだことなんて…ない」

「え!? 」


 思いっきり驚いた。

 だって、ずっと一緒にいるのに一回も名前を呼んだことがないなんて、ありえないと思う。


「ほんとにほんと? 」

「 … 」


 声にだしていないが、肯定したとわかる。


「兄さんって、呼んでみなよ」

「 … 」

「それがいやなら名前呼びでシュウとか」

「 … 」


 なにも反応を見せない。

 どうしてこんなにも兄のシュウ先輩と話さないのかな…。

 それよりシュウ先輩を探すときとか…

 考えていてもわからないときは本人に聞くしかない。


「シュウ先輩を探すときとか、人になんて聞くの? 」


 雲雀くんをの横顔をただ見つめる。


「生徒会の会長、どこ? 」

「 …… 」


 涼しい顔をして言った雲雀くんに、少し引いてしまう。




 雲雀くんとシュウ先輩の話をした次の日の放課後。


「シュウ先輩。雲雀くんとはあまり話をしないんですね」


 今は生徒会室でシュウ先輩と二人きり。

 キスのほうも大事だけど、昨日からこれが気になっていた。


「まあ、そうだね」

「小さい頃からそうなんですか?雲雀くんがシュウ先輩の名前とか、一度も呼んだことがないって言ってたんですけど…」


 あたしの質問に、シュウ先輩は考えるような顔をして視線を下げる。

 雲雀くんだったらこんなに考えてくれないんだろうなあ、と思いながらもシュウ先輩の答えを待つ。


「雲雀は覚えてないと思うけど…」


 シュウ先輩はつぶやきながらに顔を上げると、少し遠くをみるようにした。


「雲雀が小さい頃には『にいさん』って呼ばれてたし、一緒に遊んだりもしてた」


 シュウ先輩は気づいてないのかな…自分の顔が緩んでいることに。

 シュウ先輩。ほんとうは雲雀くんともっと仲良くしたいんじゃ…。


「シュウ先輩、また遊びましょうよ。子供の頃と同じように」

「いや、でも…」

「よし! じゃあなにかして遊ぼう!トランプとか鬼ごっこ、かくれんぼ! 」


 勢いよく立ち上がってガッポーズをとる。

 だって、シュウ先輩と雲雀くんの間のぎこちなさをなくしたい。

 それに、雲雀くんがシュウ先輩のことを『にいさん』って呼ぶ姿をみてみたいし。

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