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Kiss*チュードク  作者: MIA
Kiss*チュードク
6/38

3-2

 家に帰ってきて、猫を触る。

 喉元を撫でてあげるとゴロゴロと喉を鳴らす。

 いま、一番落ち着くものだ。


『おれは覚えてるから』


 小さい頃から今まで好きだったなんてありえるの?


『写真を毎日のように見てたから、気持ちが変わらなかったんだと思う』


 写真好きな吉田陽斗。

 一途だね。

 モテるというのに一人の女子だけを好きのままなんて、時間がもったいない。

 もっと恋愛しようよ。

 …あたしが言えることじゃないんだけどね




 朝、昨日のことは気にしなくてもいいって言われたから、気にしていない。


『ただ、おれが好きってことを伝えたかったから』


 変な男の子だね。




 放課後。

 生徒会室に来るとそこには2人いた。

 驚いたのがあの恐い人、桐生恭弥がいること。

 あんなにも嫌そうにしていたのに…


 考えながらいつものソファへと向かう。

 その場所には葵先輩がいる。

 そこに座ると、やはりあの言葉が言われるだろう。

 でも、この状況であれはしづらい。

 だって向かいのソファには恐い人がいるんだもん。


「咲夜ちゃん。今日も、する? 」


 やっぱりきた。

 あたしはう~ん、と迷っているふりをする。

 今の言葉は恐い人に聞こえているよね…

 なんのことかわかるかな。


「今日は…いいです」


 笑いながら答えると葵先輩の目が一瞬、見開くのが見えた。

 だけどすぐ、いつもの表情に戻り「 そう 」と答えた。


「 … 」

「 … 」


 恐い人と二人きりになってしまった。

 葵先輩はあのあとすぐに「帰るね」と言って帰った。

 …今更思うが、みんな自由すぎる。


 なにもやる事がないから、ここにいなくてもいいと思うけど…さ、なんか寂しいな。

 じゃなくて、いま考えることはそんなことじゃない。

 この沈黙な空気をどうするかだ。


 なんか、ないかな。話題とか…

 それともあたしも帰っちゃおうかな。


「お前って…」


 帰ろうか迷っていると、なんとあの恐い人から声をかけられた。

 なんなのかと、あとに続く言葉をまつ。


「俺に無理やりしたこと、いつもやってんの? 」

「は? 」


 それはどういうことだ?

 俺に無理やりしたこと?

 それって…


 あ、思いだした。

 たぶんそれはあのときのことを言ってるんだろう。


「そうって、言ったら? 」

「ほんとにバカなやつだな」


 普通にひどいことを言うなあ。


「なんでバカなの? 」


 納得いかずに聞く。

 するとなにも考える素振りも見せずに

 口を開く。


「お前もバカだけど、お前を相手にするやつもバカだ」


 バカ、バカってうるさい。

 恐い人の話は続く。


「だってそういうのって、フツーは好きなやつとするもんだろ」


 ……え?

 いまこの人、なんて言った?


「いま好きなやつって言った? 」


 聞き間違いかと聞いてみると、恐い人はさらに恐い顔をする。


「そうだけど? なに? なんか文句ある? 」

「文句なんてないよ。だけど恐い人からそんな言葉がでるなんて思ってなかったからさ」


 顔を緩めながらに言う。

 なんというか…微笑ましい。

 恐い人はあたしが恐い人と言ったことになにも言わないで、黙ってしまっている。

 だからあたしから話題をだす。


「もしかして好きな人がいるとか? 」


 だってそういうこと言ってるんだもん。

 だけど話ははぐらかされて


「そういうお前は、いるのかよ? 」


 聞かれてから少し考える。

 だが、そういうことを考えたことがなかったあたしは、考えることがない。


「 いない 」


 そう率直に答えると「ふ~ん」と軽く受け流された気がした。

 けど…


「寂しいやつだな」

「なっ…。だったら恐い人も寂しい人でしょ? 」


 だけど違うらしい。

 首を横にふった。


「俺がお前のこと寂しいやつって言ってるのは、ああいうことして寂しさを紛らわしてるんだなと推測したから」

「…っ」


 正解だ。

 息がつまるような感覚がする。

 なんでそんなこと…


「なに黙ってんだよ? 」


 無神経に聞いてくる。

 まるで『正解だろ? 』と聞かれているかのよう。


 この人は、相手を不快な気持ちにさせていることをわかっていないのか。


「正解だよ。だからなに?そういうのっていけないことなのかな」

「別にいけないとは言ってないだろ」


 知ってるよ。ただそういう風に聞こえてしまっただけ。

 あと、なんか疑問が溢れてくる。

 さっきまではなにも思いつかなかったのに。


「あとさ、キスは好きな人とするって言うけど、その好きな人が一番ってわけでもないでしょ。どうせ、何年かしたら違う人を好きになるんでしょ?

 だったら同じだよ。あたしとなんら変わりない」


 早口言葉で言いたいことを言うあたしを、ずっと見ている恐い人。

 だけど、どんな表情をしているのかわからない。

 冷静に判断できなくなっている。


 言い終えたあと、少し沈黙を過ぎると落ち着いてきた。


「 おれ… 」

「…もう、帰るね」


 なにか言おうとしていたけど、それをさえぎるように立ち上がって出口に歩きだす。

 もうこれ以上聞きたくない…

 あたしだって、なんでこんな自分なんだろうって思うときだってある。


 まえは健全だった。

 こんな自分になった原因は知ってるけど…

 キスされただけでこんな自分になるのかと不思議に思う。

 変な感じだ。

 なにか忘れてしまっている気がするんだ。


 ドアに手をかけてガチャっと開けると同時に、目の前に誰かが立っていることに気づく。


「あ、咲夜ちゃん」


 顔をあげると、吉田陽斗がいた。

 今の、聞いていたの?


 そう思いながらも、ここから早く立ち去りたいあたしは「どいて」と言う。

 そうすると素直にどかれる。

「ごめんね」と言われて。


 どいてもらうと早歩きで廊下を歩く。

 早く、早く、この学校からでたい。

 早く、いつも通りの自分に戻りたい。


 さっきの表情からは聞いていたということがわかった。

 本当に学校生活を崩されそうだ。

 いや、崩されつつある…か。

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