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Kiss*チュードク  作者: MIA
Kiss*チュードク
36/38

キス*チュードク2 6-1


『 おれが守るよ。

咲夜ちゃんはおれが守る。

てか、守らせて 』

これは…ハルの声?

暗闇の中でただ一つだけ響く。

ハルはどこ?

どこにいるの?

声は聞こえるのに姿が見当たらない。

『 ハル? 』

呼んでも返事は返ってこない。

どうして返事が返ってこないの?

確かにさっきの声はハルだった。

もう一度呼んでみよう。

「 ハル… 」

目を開くと、暗闇だったのに視界が明るくなりそこは自分の部屋だと気づく。

瞬きを繰り返して時計を見て時間を

確かめる。

まだぼやけている頭でその時間をじ~っと見つめて

「 ま…まじか 」

これはもう遅刻が決定した。

あの悪夢のゲームが始まってから

ちゃんと寝れない日が時々あったんだが

「 今日は休んじゃおうかな… 」

時計を見るために上半身だけ起こした体をまたベッドにゆっくり落とした。

目を開くと、暗闇だったのに視界が明るくなりそこは自分の部屋だと気づく。

瞬きを繰り返して時計を見て時間を

確かめる。

まだぼやけている頭でその時間をじ~っと見つめて

「 ま…まじか 」

これはもう遅刻が決定した。

あの悪夢のゲームが始まってから

ちゃんと寝れない日が時々あったんだが

「 今日は休んじゃおうかな… 」

時計を見るために上半身だけ起こした体をまたベッドにゆっくり落とした。

学校に行ったって、楽しかった生徒会室は重苦しい空気でいっぱいだし

悪夢のゲームを三週間、三回ちゃんとやっただけでも褒めてもらいたい。

…褒めてくれる人なんていないけど。

三回目にはりぃくんに助けてもらって、二回目にはあの雲雀くんに助けてもらった。

最初の日、一回目は ハル 。

「 ハルのウソつき 」

あのとき、俺が守るよって言ってくれたハルだったけど最初の一回目しか助けてもらってない。

それからは…なぜかハルの姿が見当たらない。

なんでかなって考えていたけどその答えはわかるものでもなくて。

微かにハルを疑ってしまった。

もしかしてあの言葉は嘘なんじゃないかって、ただあのときにでた言葉なんじゃないかって。

「 ナイト、だと思ってたのになあ 」

少し残念だ。

「ん? 」

ベッドに置いておいた携帯がブルルッと揺れた。

今更ながらに時間を確認するためにわざわざ時計なんてみないで携帯を見れば良かったと思ったことはおいといて

「 … 」

携帯をいじりメールを開くと

葵先輩からだった。

…内容を見るのが怖いんだけど。

どんな内容が送られてきたのか緊張してゴクッと喉をならし止まっていた手を動かす。

内容は…

〈 咲夜ちゃん。

もしかして寝不足? 〉

誰のせいで寝不足になってると思っているんだ。

知らないうちに上半身を起こしていた。

〈 いま、起きてるかな?

だったら遅刻してでも学校来てね。

来なかったら…わかるよね 〉

これは脅迫か。

文章を見ながら一言一言

心の中で呟く。

〈 まあ、放課後にやってる楽しいゲームは今日で終わらそうかと考えているんだ 〉

なに!?

驚いて一瞬嘘なんじゃないかとその文章を読み返してからその下に書かれていることも食い入るように読むと

〈 だから俺の気が変わらないうちに

来てね 〉

これが最後の文。

オチは?

オチはないのか?

嘘だよー、とか

冗談だよ。信用した?とか

「これは… 」

早く学校へ行かなければ。

葵先輩の気が変わらないうちに。

携帯をベッドの上に置き立ち上がると

すぐに学校に行くための身支度をする。

「 よし、制服も着たし鞄も持ったし

忘れ物はないね 」

異様にはりきって学校に向かった。

『 咲夜ちゃん、いるよね。

今日はお知らせがあります 』

放課後、構内放送で学校中に葵先輩の声が響き渡る。

悪夢のゲームが始まるという合図だ。

お知らせという言葉は初めて聞いた。

『 君の…ナイト、だっけ?

その人はさ俺が閉じ込めてるんだよね 』

は…?

今、信じられないことを聞いた気が…。

てか、ナイトってなんで知ってるの?

それより、ナイトって…ハル、のことだよね…?

『 だからさ、その人を助けたければ

俺のところまで来てね 』

どういうこと?

葵先輩の構内放送は『ゲーム開始』という言葉で終わった。

このゲームが今日行われると知っていたあたしは図書室で呆然と立ち尽くす。

静かな空間。

考えるには最適の場所。

だけどなにも考えられない。

あ、そうだ…とポケットに手をあてる。

あれ?

あれ?

だけど必要としていたものが無かった。

あ、そうだ…とまた同じことを口にして

「 携帯、家だ 」

ぽつりと呟いたものは静かに響いてすぐに消えてしまった。

どうしてこんな日に忘れてしまうのか

このゲームが今日で終わるかもしれないと他のことが考えられていなかった。

携帯はベッドの上に悲しく残っている。

ハルに電話して本当かどうか確認しようとしたのに…

これじゃあ、そんなことできない。

はあー…と大きな溜め息をつく。

これまで一番怖くて逃げてきた葵先輩のもとへ自分から行かなくてはいけないのだから。

ハルの姿が見当たらないのはもしかして

葵先輩の言っていることが本当だからなんじゃないかと思う。

本当のことを言っている確率が高い。

だからあたしは葵先輩のところに行く決心を小さくした。

ー*ー

ハル、これじゃあハルがナイトではなくてあたしがナイトだよ。

廊下を歩きながらそんなことを思う。


あたりを見渡すと男どもの姿が見当たらない。

外を見てもそこには誰もいなくて。

すごく違和感がある。

だってこのゲームの日は男たちがいるはずなのにいないんだ。

そのおかげで廊下を歩いていられるんだけどさ

なんかおかしい。

妙な気持ちになりながらも保健室を開けて葵先輩がいるか確かめるが、誰もいなくて。

やっぱりあそこか、と保険室のドアを静かに閉めた。

「葵先輩。

見つけました」

生徒会室のソファに座ってあたしを見ている葵先輩の前まで行くと無表情で言葉をだした。

本当は逆の立場なんだけど。

このセリフは葵先輩が言う言葉。

「素直に来たんだね。

もしかしてナイトのことが好きとか? 」

ナイト…つまりハルのことか。

「好きですよ」

少なくとも葵先輩よりは好きだ。

満足気に笑ってあたしを見ている葵先輩から目を離さずに相変わらずの無表情で答える。

「へえ…」

すると満足気な笑みは消えて

意味深な笑みと視線を向けられた。

たぶん葵先輩の考えている“好き”とは違う意味だけど訂正する気はない。

それより

「ハルはどこですか? 」

「さあ? どこでしょう? 」

どこでしょう?…って

「助けたければ自分のもとへ来いと言ったのはどこの誰ですか? 」

イラついた様子を醸〈かも〉し出しながら質問をする。

「誰だろうね」

だが笑われて答えになっていない答えを返される。

その答えは知っているけど嫌味で言った質問に軽く返されたことにまた一層イラつきを増して

「葵先輩! 」


大声を出してしまった。

少し静かになる空間。

これは葵先輩がいけないんだ。

勝手にこんなゲームを始めて、ハルをどこかに閉じ込めてるとか言い出して

そんなことされたら誰だってイラつくよ

誰だってその人を恨んじゃうよ。


「なに? 」

なのになぜそんな気楽そうな声がでるんだろうか。

じっと葵先輩の顔を見つめると、少し寂しげな表情が浮かんで見える。

だけどそんなものは気のせいだろう。

「なにじゃありませんよ… 」

もう呆れてしまう。

「落ち着いてよ」

「落ち着いてます」

自分の座っている隣を手でポンポンッとする姿を見る。

これは、ここに座れという意味だ。

深く考えたあと渋々〈しぶしぶ〉と葵先輩の隣に座ることにした。

どこにやろうか決まっていない視線を

適当なところにやっていると

「 …? 」

目の前に鍵を差し出し来た。

「これはナイト…

ハルのいる場所を開けるための鍵」

それを無意識に取ろうとすると

ひゅっと軽くよけられた。

「だめだよ。

タダではあげられない」

なにをすれば良いのかと声に出さず

うかがうように葵先輩を見れば

「なにをすれば良いのかって顔してるね」

そうだな…と考える素振りをする。

「キスしてもらおうかな」

よく笑いながらそんなことが言える。

睨みつけるように見るがそれはきかないのか葵先輩の表情は変わらない。

だんだんと距離が縮まる。

葵先輩が体と顔を近づかせてくるからだ。

「やめてください」

本当にあたしは心から嫌なんだなあ

と、さらに実感した。

自分でもわかるんだ。

顔が歪んで眉間にシワがよっていることを

「 … 」

葵先輩は素直にしようとしていることを

やめた。

だけど顔は至近距離のままで息がかかるほどのところにある。

「そんなに嫌だ? 」

どうして葵先輩から寂しそうな空気が漂っているんだろう。

変な気持ちになりながらも抵抗を試みる。

あたしの両手首をソファに押し付けるように押さえられているから顔を背けることぐらいしかできない。

「嫌です… 」

「そっか… 」

答えてみると葵先輩もあたしと同じように言葉をだした。

「じゃあどうしよっかな」

あたしから離れてソファに自分の体重を預けるようにもたれかかった。

どこかを見て考えている様子の葵先輩の横顔を見る。

その表情はここに来た最初に見たものと同じだった。

楽しんでいるような

先が見えているような表情。

まるでこのことを想定していたかのようだ。

あたしがここに来て、キスを拒否って

次は……なに?

葵先輩の横顔をじっと見つめる。

「代わりにさ、バレンタインの

チョコちょうだいよ」

「…は? 」

顔を向けてきたと思ったら予想もできないことを言ってきた。

「もちろん手作りの」

あたしのとぼけた声を無視して満足気に笑いながら自分の用件だけを伝えてくる。

「あ…あの、ちょっといいですか? 」

なに?…といった感じで見てくるから

あたしも伝えたいことだけを言う。

「話が全然見えないんですけど…」

いや、見えてるけど

チョコをあげれば良いってことだけの話だろうけど

どうして葵先輩がチョコなんて欲しいのか

チョコとあたしのキスって同党ってこと?

なんかそれはそれで悲しいような…。

「話、見えない?

簡単な話なんだけどなあ」

うん。

簡単な話だとあたしも思うよ。

だからそういうことを言ってるわけじゃないんだって。

「葵先輩って、チョコ好きですか? 」

「は? 」

上を見ていたのか天井に向けていた顔を

ぱっと向けてきた。

「…あれ? 」

違った?

葵先輩とあたしとの会話にはハテナが飛び交う。

「なんか…咲夜ちゃんって敏感にみえて

鈍感だよね」

「え、と、鈍感ではないような」

「そっか、鈍感じゃなくて天然か」

なぜかこの話が葵先輩の意味不明な言葉でまとまろうとしている。

天然なんて絶対ないと思うんだけど

…ま、いっか。

「バレンタインにチョコをあげればいいんですね」

そうすればハルも解放できてこのゲームも安らかに終わるかもしれないんだ。

「約束だよ? 」

「約束ですね。

…ところでハルは? 」

早くハルを助けたいんだけど。

「あー…それね」

まさか嘘とか言わないよね?

苦そうな顔をする。

だけどその表情は見かけだけでなにも問題なく、はい、と鍵を渡されればその鍵をじっと見てから

「どこの鍵ですか? 」

これをどこのドアに使えばいいのか疑問に思う。

「そこの鍵」

そう言って指差されたところをたどって見てみるとそこにはなにもなくて

「どこですか? 」

「だからそこ」

葵先輩の指をじっと見てから差されている場所を見てみるがそこにはやっぱりなにもなくて

「だからどこですか!? 」

「だからそこだって」

これは遊ばれているのか

葵先輩の顔を見るとそういうわけではなさそうでちゃんと真面目に答えてますって感じだ。

また指差されている場所を確認する。

そこにはやっぱりなにもない。

あるとしたら不自然にあるカーテンで…

まさか

そこでひらめいた。

この自分の考えが当たっているのか確認しようと立ち上がり指差されている場所へと向かう。

葵先輩にはなにも言わずに歩いていった。

不自然にあるカーテンを横に引いてみるとそこにあったのは…

「なんでこんなところにドアが… 」


って、ことはここに部屋があるってことだよね?

「ここの部屋は俺の場所だけにしようと思ってシュウに頼んだよね。

カーテンで隠してもいい?

って 」

いつの間にか後ろにいた葵先輩が説明してくれた。

懐かしいような表情をして話すところを見るとあたしが生徒会に入る前からなんだろう。

シュウ先輩…久しぶりに名前を聞いた気がする。

じゃなくてそんな頼みがとおったことに驚きだな。

まえからどうしてあんなところにカーテンがあるんだろうって思ってたけど

まさか部屋があるなんて

「思ってもみなかった? 」

「 …はい」

葵先輩は心が読めるのかと一瞬

ビクッと驚いたけど平常心で答えた。

「ほらこれで開けてみな」

渡されたのがさっき見せつけられた鍵。

その鍵に手を伸ばせばさっきのようによけられることもなく、今度はちゃんと自分の手の中に収まった。

この中にハルがいるんだと鍵をじっと見てからドアを見る。

この間にもハルは助けを待っているんだ

はっとしていち早くもハルを助けなければと鍵を鍵穴に差し込んだ。

カチャッと音がして鍵が開いた音がする。

なぜか緊張しながらもドアに手をかけて

ゆっくりと開けた。

中に入ってみればそこには本当にハルがいて

「 ハル 」

呼びかけてみればこの部屋にある二つのうちの一つのベッドに仰向けているハルが上半身を起こした。

駆け寄ってみるとあたしの想像していたものとは違う反応をする。

「良かった。

これでゲームは終わりだね」

自分のことのように嬉しそうに笑って言われた言葉はあたししか知らないと思っていたことで

「どうしてハルが

そのことを知ってるの? 」

そう聞けば不思議そうな顔をされる。

「どうしてって…葵先輩に言われたんだよ。ゲーム中、おれが助けたりしなかったらこのゲームはすぐに終わりにするって

だからおれ、我慢してこの部屋にいたんだよ」

ハルの声がぼやけて聞こえるのは

あたしの頭の中で整理できないほどの情報が普通に話されているから。

「それで今回が最後だって言われて……って、咲夜ちゃん。

聞いてる? 」

「はは…。

聞いてるけどなにを言われているのか

さっぱりで…」

待って、少し待って。

ハルの言っていることが本当なら

あたしは…

だまされた?

「ハルは閉じ込められてたんじゃないの? 」

「まあ、閉じ込められていたと言われたらそうかな」

ん?

ちょっとまた疑問が浮かんでしまった。

だったらゲーム三週間目、りぃくんと生徒会室にいたときはハルもここにいたってことになるんだ。

なんで気づかなかったんだろ…。

「葵先輩…このゲームは最初から終わらせるときが決まっていたんですか? 」

後ろにいる葵先輩に振り返ってみれば

「うん。そうだよ」

笑顔で答えられてしまった。

「だましましたか? 」

最初から終るときが決まっていたなら葵先輩とあのチョコの約束もキスされそうになったことも全部意味ないものへと変わることになる。

なんせ“終わるとき”が決まっていたんから

「うーん、そうなるのかな? 」

そうなりますよ!

心の中だけでツッコミをいれる。

もう疲れた

ふーっと体中の力が抜ける感覚に落ちる。

「咲夜ちゃん!? 」

どうやら感覚だけじゃなくて本当にそうなってしまったようだ。

ベッドの端に手をかけて体重を預けるようにする。

床には片膝をつけて。

こんなにもこのゲームが重荷になっていたなんて今更ながらに驚いた。

ハルが心配してあたしの名前を呼んでくれたのに言葉を返せる余裕がない。

「もうやだよ~…」

ベッドの端に手を置きながら頭も押し付けながらに言った。

まるで子供が駄々をこねるようだなあと

恥ずかしいことだと思える余裕もない。

こんなゲーム、永遠に終わってほしい。

やっと健全になったんだ。

「大丈夫?

もう一つベッドあるから少し寝れば? 」

ハルとは違って落ち着いた声で心配そうに気遣ってくれる葵先輩。

だけどもとはと言えば葵先輩がいけないんだよね。

このゲームを始めた張本人なんだから。

『 おれが守るよ 』

まただ、ハルの声。

少しハルを疑ってしまったことがあったけど、この言葉は本当だった。

ハルのおかげでこの四週間目、つまり四回目のゲームで終わってくれたんたんだ。

葵先輩に言われて素直にベッドに移動すると横になった瞬間、意識が途切れた。

だからこれは夢なんだ。

ハルのこの言葉が夢に出るのも最後になるのかな。

もうハルに守ってもらわなくてもすむからね。

起きたあとに葵先輩にちょっとした打ち明け話をされた。

今回、誰もゲームに参加していなかったこと。

なぜ参加していなかったかというと

あたしが寝不足で朝に来れなかった今日、構内放送で流したらしい

もうゲームは終了だと。

ほんとにもう、なんなんだろうね。

今回のゲームは意味ないものだったと言われたも同然だ。

帰りは二人に送られてハルには

おつかれさま

と言われ

葵先輩には

約束、守ってよね

と言われてしまった。

まあ、ともあれ

悪夢のゲームが終了した。

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