キス*チュードク2 5-1
いつも通り来た生徒会室には
葵先輩 ただ一人いた。
…これは気まずいぞ。
なにか言われるんじゃないかと
身構えながらも
いつもなら座らない
葵先輩の座っているソファと
向かいあうソファに座った。
普通なら葵先輩の隣に座って
いるんだが…
こんな誰もいないところで
ましてや、あんなところを見られたんだから普通にいられない。
「 咲夜ちゃん 」
「 …! 」
名前を呼ばれただけで
体がびくついてしまう。
葵先輩があたしをじっと見ている。
あのときみたいに。
「単刀直入に聞くけど
アイツ だれ? 」
鋭い視線があたしを捉える。
いつもの葵先輩ではない。
いつもならこんな険しい顔なんて
しない。
それに先生のことを
アイツって……。
相当やばそう。
テーブルを挟んだ向かいのソファに
座っているけど
この威圧感は感じる。
「 だから、幼なじみ、だよ? 」
息が詰まるような感覚。
絞り出した声は
静かにこの生徒会室に響いて消える。
「 それ、聞いたんだけど
全然そんな風に見えなかった。
て、ことでやり直し 」
「 …… 」
こ、こわい…!
こわいです!
カイ…助けて……
なんて言っても
ここに来ないことぐらいわかってる。
「 …… 」
幼なじみ意外になんて言えばいいの
だろうか。
他に言うことなんて
ほんとにない。
「 幼なじみ……しかないです 」
葵先輩の強い視線が怖くて
下を向いて
ぎゅっと手に拳をつくった。
すると聞こえてくるのは
「 頭ポンポンされて
ほんとに 幼なじみな関係しかないの?」
少し優しくなった声。
ほんとうにほんの少しだ。
それより、見られてたんだ。
あのときも強い視線を感じていたんだ
けど。
見られてたとは…。
「 ねえ、どうなの? 」
なかなか答えないから
疑惑を持たせちゃったかな…。
「 ほんとになんでもないです。
あるわけないです 」
はっきりと言ったよ。
これで疑われなくすむ。
「 そう…まあ、良かった。
もしそうじゃなかったら
言いふらすところだった 」
あたしをうかがうように見ているのは
わかる。
これがわかってしまう。
だからその言葉に「はは…」と笑う
しかなかった。
変な反応を示したら逆にやばいから。
「 …? 」
手招きをされて
なにをすればいいのかと考え
「 早くこっち来て 」
と言われ、何事かと思いながら
素直に行ってみると
「 ここ、座って 」
ソファをポンポンッとされる。
ほんとうは座るところだったところ。
いつもあたしが座っているところ。
葵先輩の隣。
いまの葵先輩からは
大丈夫だという空気が漂っている。
だから安心して葵先輩のとなりに
座った。
「 … 」
「 … 」
いま、あたしは葵先輩に
頭をポンポンされている。
葵先輩を見ると
優しい目をしていた。
「 葵先輩。 どうしたんですか? 」
あたしより背の高い葵先輩を
下から見上げて見る。
「 頭ポンポンしたいから 」
「はあ…そうですか 」
そんなにしたかったなら
言ってくれれば…というか
なにも言わずにすれば良かったのに。
「 てのは、
咲夜ちゃんに触りたい口実 」
ニコッと綺麗に笑った。
そのセリフと表情にドキッときたのは
気のせいだろうか。
笑いながら
そのセリフはずるい。
「けどさ… 」
いきなり話が変わった。
なんの話かなあ、と思いながら
ぼけーっと聞く。
「もし、なにか俺に逆らったりしたら
みんなに言うから 」
急すぎで、なんの話かわからないぞ。
でもいい話じゃないことだけは
わかる。
「 なにを、ですか? 」
ニコッとしていた表情が消え、葵先輩の
顔は真剣そうになった。
「 咲夜ちゃんが
男の家に入ったこと 」
「 ……………へ? 」
いまなんて…。
「 あれ…?
もしかして当たっちゃった? 」
あたしよりも驚いているんじゃないかと
思うぐらいの表情をされた。
もう意味がわからない。
葵先輩。
意味がわからない。
聞きたいのはこっちのほうだから。
『 当たっちゃった? 』
って…もしかして…
「 カマかけてみたんだけど
…まさかの当たりとか言わないよね? 」
慎重に聞かれる。
けど
それ、当たりだ。
当たりだけどハズレというか
葵先輩の考えていることとは違う。
「 あたりのような…
ハズレのような? 」
「 …… 」
葵先輩が黙ってしまった。
やっぱりなにか勘違いしている。
「 や、あの、葵先輩が考えているようなことじゃなくて… 」
なんて言えばいい?
なんて言えばいいの?
あ…そうだ
「 ほら英語、再テストあるって
言ったじゃないですか。
それでカテ…、カテキョーしてもらった
んですよ 」
やばい、噛んだ。
これじゃあ動揺しまくってるって
わかっちゃうじゃん。
もしかして信用ゼロだったり…。
「 ふ~ん 」
納得してくれた?
「 まあ、それが本当だとしても
咲夜ちゃんの弱み
もらっちゃった 」
その言葉と
そのなにかたくんでいるような表情に
冷や汗をかきそうだ。




