キス*チュードク2 4-3
だけどなにも聞かない。
聞いたところでなにかを試されるに
決まってる。
カイは自分の言ってることが
相手に伝わらないと
いきなり試してくるんだ。
だからそれが怖い…。
「 今日、どこか行かない? 」
ちゃっかり朝食をカイの家で
食べていると、
カイがそんなことを言ってきた。
あたしの愛猫のソラも
ちゃっかりご飯を食べている。
だけどあたしのご飯を食べる手は
止まる。
ソラがキャットフードを食べている
音だけが響く。
「 …… 」
はたして、
カイと外に出歩いていいのか?
もし他の生徒に
カイと一緒にいるところを見られたら?
そんなこと考えたら
軽く答えられない。
結局答えてしまった。
『 いいよ 』って。
「 ね、どこ行く? 」
あたしの隣には楽しそうな
カイの姿が。
そういう誰かが楽しそうにしているのは
好きだ。
だけどまわりの視線が気になる。
もし生徒たちに見つかったりしたら…
「 どうしたの? 」
顔を傾けてあたしを覗いてきた。
まずい…答えなければいけなくなる。
まあ、いいか。
これはカイにも言っておかなきゃ
いけないことだし。
「 もし、他の生徒たちに見つかったり
したら? 」
カイはどうするの?
なんて言うの?
それ次第で先生を辞めさせられたり
するんじゃないの?
カイは、う~ん…と軽く考えて
「幼なじみって言えばいいでしょ 」
軽く答えた。
「 いや、幼なじみって言えるほど
古い付き合いでもないでしょ 」
カイの語尾をまねして言った。
「 あれ? そうだっけ?
咲夜といた時間は長いように
感じていたけど 」
とぼけるように答えるカイは
ほんとうにそう思っているのか疑問だ。
「 そうだよ 」
古い付き合いでもないよ。
あたしが小5のときに会ったときの
カイは高一。
それで高三を卒業したとともに
カイはあたしのまえからいなくなったんだから。
たったの二年間しか一緒にいなかった。
それを幼なじみと言えるのか
いや、言えないだろう。
のど乾いたときにちょうど近くにお店があって、そこに入った。
あたしはメロンソーダを
カイはブラックコーヒーを
…って
「 それ、苦くない? 」
いかにも苦そうなコーヒーだ。
「 飲んでみる? 」
飲んでいたコーヒーカップ
差し出してきた。
その中を覗いてみると
色が黒い…。
「 いらないよ。
わざわざそんなに苦そうなもの
飲みたくない 」
「 そう、お子ちゃまだね 」
笑いながらコーヒーカップを
皿に置き直す。
そんなカイの言葉に反抗する気なんて
ない。
カイの言うこと一つ一つに
返してられないから。
あ、あ、あれ…?
「 葵。 なにこの子
知ってる人? 」
メロンソーダをストローをくわえて
飲んでいると
あたしの横に通り過ぎようとしていたのは
葵先輩。
と
二人組の女。
屋上で見た女とは違うとわかる。
じゃなくて
この状況はさすがにまずいんじゃ……。
「 あれ?
もしかして くりゅう先生ですか?
なんで一緒に…?
この子どう見ても生徒、ですよね? 」
女の一人がいらない質問をしてきた。
葵先輩にじっと見られているのは
わかるが、いまはそれどころじゃない。
( どうするの!? )
助けを求めるようにカイを見つめる。
「 この子ね、僕の担当の英語のテストで
赤点とっちゃってさ。
だから次はちゃんと点数とってもらわなくちゃいけないから
教えてあげることになったんだ。
幼なじみの仲で 」
さ、さすがカイ。
笑顔でスラスラと嘘が……って
それ、当たってるんですけど…。
なんでカイがそんなこと知ってるんだ。
あたし、なにも言ってないのに。
「 へ~そうなんですか!
それは良いですね 」
『 幼なじみの仲で 』を強調されて
言われたのが効果あったのか、
そこに話がいった。
「 いいな~なんかそういうの。
ね、葵 」
「 …! 」
びくっと体が揺れてしまう。
葵先輩…なんて答えるのか。
まだ痛い視線があたしに刺さっている
気がするんだ。
だけど葵先輩のほうを向けないし、
顔を見れない。
なんて言うのか…。
なんて……
「 そうだね。
先生、英語、ちゃんと教えてあげて
くださいね。
じゃ、俺はこれで 」
「 …… 」
それだけ言うと葵先輩は行ってしまった。
そのあとを追って
二人組の女もいなくなった。
なんかあっけないというか
寂しいというか。
「 咲夜。 危なかったね 」
楽しそうに笑うカイ。
楽しそうに言うことなのか
これは。
「 そう、だね 」
脱力して
テーブルにゆっくり突っ伏した。
「 大丈夫? 」
「 ん、大丈夫…なのかな…… 」
頭上から心配してくれるカイの声が
した。
その言葉にどっちなのかわからない
回答をすると
頭がポンポンとされた。
これ、けっこう落ち着くし
心地いい。
眠くなる……
…って、寝ちゃいけない…!
「 カイ。 もうここから出よう 」
同じ店に葵先輩がいるというだけで
気まずい。
それにね…なんか強い視線が感じるんだ。
「 わかった。 そうしよっか 」
その一言で店から出た。
それからはいろんなところを周り、
他愛もない話をして
時間が過ぎていった。
『 今度は計画してからデートしようね 』
などと言われてしまった。
少しは自分が学校の先生ということを
自覚してほしい。
そしてあたしは生徒だってことも。
それとなぜかあたしの愛猫のソラが
とられてしまった。
『 ソラに会いたかったら
僕のところに来れば会えるよ 』
なんて…
ソラはあたしの猫なのに。
これじゃあまるでソラが
人じちならぬ猫じちだ。
あたし…家に一人じゃん。
誰もいない家は実に悲しい。
ソラがいたときはこんなにも
寂しくなかった気がする。




