キス*チュードク2 4-2
「おじゃましま~…す 」
あのあと、なぜかここに連れて来られて
しまった。
車に乗らせられて
どこに行くかと思えばカイの家だし。
家の中を見渡しながら中に入る。
「 ベッドにでも座って 」
適当に座らせようとしているカイ。
言われたとおり座れば
カイは複雑そうな顔をあたしに向けた。
「 男の部屋に来て、
咲夜…少し警戒心なさすぎだよ 」
…え……
と思ったときにはドサッと音がして
さっきと同じく、
押し倒され状態になってしまった。
視界に映るのはやはりカイと
その後ろにある天井だけ。
「 カイ…? 」
カイの行動に頭がついていかない。
さっき、恭弥から助けてくれたのに
なんでこんなことをするのか。
ただの事故?
「咲夜、
ずいぶんあれていたみたいだね」
あれていた…?
あれていたって…
「 キスのこと?
でも、どうして… 」
知ってるの?
あれていたってほどのことじゃないけど
たぶんカイは
いろんな人とキスしてきていたことを
言っているんだと思う。
「あの生徒会の
読書をしている人に聞いたんだ」
読書…って、雲雀くんか。
生徒会で読書している人なんて
一人しかいない。
雲雀くんがそんなこと言ったんだ。
「それって、もしかして
おれのせい?」
「 … 」
カイが裏の顔になってる…。
いつもは『 僕 』のくせに
なぜか『 おれ 』になってる。
呼び捨てにされたときから
危ないかな…って思ってたけど…ね。
「 …そう、だよ 」
あのときカイにキスされたから。
そもそも、お酒なんてあったのが
いけなかったんだ。
それがなかったらこうなって
いなかったかもしれない。
まとめてしまえば
やっぱ
カイが…いけないんだ。
「 そっか。
ごめんね 」
謝られても困る。
謝られてもなにも変わりはしない。
いまは、自分自身で変わろうとしてる
からカイに問い詰めたりなんてしないけど
もしかしたらカイとは普通に
話していなかったかもしれない。
「だったら…おれもしていい? 」
いまさら
この押し倒されている状態が
危ないと思った。
「 いいかな? 」
「 だめだよ 」
「 なんで? 」
不思議そうな顔をされた。
そんなカイを見たくなくて目をそむける。
カイは自分の立場が
わかっていないのか。
学校の先生という立場を…。
まだ、じっと見られてる…。
はあ…
「 カイは学校の先生でしょ。
あたしはカイの生徒。
だからだめ 」
そう言ってカイの様子を
ちらっと見たら
瞳がゆれていた。
「…そんなの関係ないよ」
「関係ある。
ないわけない 」
弱々しいカイの声に気にせず
強く言い放った。
「 … 」
すると、黙ってしまった。
カイの瞳はあたしを捉えたまま
静かに。
もうなんでかな…
これじゃあ
あたしが悪いみたい。
「 カイ……ッ! 」
思わず目を見開く。
だめだと言ったのにカイは
あたしの唇を奪った。
カイは自分を止めるということを
知らないのか。
「 しちゃったよ? 」
カイはあたしから
顔を離すとニコッと笑った。
なにが『 しちゃったよ? 』だ。
しちゃったんじゃなくて
したんでしょ。
小悪魔のような笑みをむけられて
思ったこと。
りぃくんの笑みと少し似ていて違う。
それと
りぃくんには悪いことをした。
なにが『嫌いになっちゃう』だ。
あたしがりぃくんに近づいて
そういう関係にもなったんだから
あたしが悪い。
のに……
「 咲夜? 」
その声にはっとした。
こんな危ない状況なのに
他のこと考えていたなんて…。
「 なにか考えごと? 」
「 まあ…そんなもの 」
カイの目は見ない。
内容もカイに言うものじゃない。
こんな話したって逆にこの場の
危険度が増すだけ。
「 もしかして…
男のこと考えてた? 」
「 …! 」
危険度が増す…。
カイの言ったことに
びくっと反応してしまった。
…あたしの正直な体は……。
自分を恨む。
恐る恐るカイの表情をうかがうと
わら…、笑っていた…?
もしかして気にしていないとか?
耳に はいってこなかったとか?
それとも…キレてる…?
あたしは予想もしていないカイの表情に
パニックになった
こうやってパニック状態にさせることが
カイの思惑だと
いまは頭の片隅にもおいていなかった。
「 よくこんな状態で
そんなことが考えていられるね 」
顔を囲むようにして
右手があたしの頭の上にまわる。
すると自然的に至近距離になる。
顔なんて
もう少し近づけばキスできる状態だ。
「 … 」
息が顔にかかる。
それにいまさらだが、
香水をつけているのか
カイからは甘い香りがする。
「 いっそ、もう
なにも考えられないように
してあげよっか? 」
ニコッと笑って
そのセリフは言うものじゃない。
ほんとうにそのセリフのようにされたら
あたしだけではなく
カイまで困るはずだ。
学校の先生、だから。
トラブルが起きてしまう。
はあ…
いい加減 疲れてきた。
「 カイ……。
くりゅう先生 」
いつも学校で呼んでいる呼び方。
こう呼べば少しは自覚するかと
思い、言ってみたが
…これは
「 なんつった? 」
…怒らせた…
「 く……んっ… 」
また呼ぼうとしたのに
それは言葉にならない。
強引に唇を奪われたせいだ。
カイがもう一回言えみたいな
返しをするから…。
「 もう一回、呼ぶ?
それならまたこうするけど 」
その有り無しを言わせない質問に
ただ首を横にふった。
まるで、なにか言ったらやばいという
ものに縛り付けられているみたいだ。
「 いい子だね 」
「 … 」
その言葉と、カイの笑みに
視線をそむける。
こういうときだけ子供扱いして…。
「 そろそろ咲夜のかわいい反応を
みるのは終わりにしようか 」
あたしの上から退いた。
かわいい反応…って、
もしかして遊ばれてた?
「 カイ…もう、あたし帰ってもいい?」
起き上がってカイをみて言うと、
考えるようにしてから
「 今日は一緒にいようよ 」
いつものニコッとした表情をした。
…今日は一緒って、ここに?
それはさすがにやばい気が…。
ここに来てすぐ
あんな状態になってたし。
それに
「 家でソラが待ってるから無理だよ 」
あたしのかわいい猫。
家でご飯をもらえるのを
待っているはず。
「だったら咲夜ちゃんちに
上がり込んじゃおうかな 」
語尾に音符がついたような
機嫌の良いカイが目の前にいる。
さっきまでのカイはどこにいった…。
「 だから、だめだよ… 」
だんだんと声が小さくなったのは
自分でもわかる。
カイとあたしの仲だとしても
カイは先生になったんだ。
あたしはその生徒。
どう考えてもそんなこと
しちゃいけないというくらい
カイにもわかっているはずなのに…。
「 だからあたし
帰るっ 」
ゆっくり帰ろうとしたら
どうせカイに止められる。
だから座っていたベッドから勢いよく
立ち上がり、ドアに向かった
はずなのに…
手首を掴まれたと思ったら
視界がぐるっと
わけわからなくなって
なにも見えなくなった。
つまり真っ暗ということ。
「 … 」
「一緒にいようよ…。
ずっと咲夜に会える日を
待ってたんだよ? 」
そんな甘い声で言わないで。
あたしを求めないでよ。
どうやらあたしはカイに
抱きしめられているらしい。
「咲夜…明日は学校、休みでしょ?
だから今日だけ、ね? 」
背中に回っている腕がゆるめられ、
背の高いカイは
あたしを上から覗くように見る。
「 … 」
いつもカイはずるい…。
こういうときはいつもいつも、
カイは語尾に絶対、相手に聞くような
ものをつけるんだ。
だから断わるのも承諾するのも
あたしが決めることになる。
あたしの一言で全てが決まる。
あたしは……
「 いいよ 」
いつも流される。
カイの思惑通りに進んでいるんだって
わかっても。
だめだな、あたしって。
りぃくんにはあんなことだけで
嫌いになるなんて言っといて。
冗談で、とっさにでた言葉だけど
りぃくんを傷つけたと思う。
りぃくん…けっこう考えすぎだから。
だからいまもあたしの
あの一言で悩んでいるかもしれない。
「 ほんと? 」
またあたしは答えなきゃいけないのか。
「 いいって言ってるでしょ 」
こういうときでもいまは
りぃくんのことを考えている。
あたしには小さいことでも
相手にとっては大きなことかもしれない
から。
だから
早くりぃくんに会って謝りたい。
『 なんのこと? 』
りぃくんのことだから
そう言うかもしれない。
だけど自分の気持ちを言おう。
あれから全然喋れてないから。
なんか、まえにもあったな
こういうこと。
まえはハルとだった。
でもいまはちゃんとハルと
喋れているから、りぃくんとだって
ちゃんと喋れる日がくるはず。
あと、葵先輩との仲もおかしくなって
きている。
葵先輩があたしを避ける。
あたしに見せつけるように
葵先輩と同い年の人とキスしていた。
それも二人の女の人と。
まえに屋上でみたことがあって、
いつもこうしているのかなって
少し考えたこともあったけど
そうなのかもしれないと
あのとき思った。
雲雀くんとは大丈夫だけど。
今日ので、恭弥との仲が悪くなって
しまった気がする。
どうしてかな…
こんなにも人との仲を考えたのって
初めてだ…。
そのあとはソラを車に乗せて
カイの家に連れてきて、ご飯もあげた。
そしてまた、カイの頼みに負けて
同じベッドで寝ることになり……
朝起きても抱きしめられ続けていた。
もう心臓の鼓動が半端ない。
なんか…恭弥に言われたとおり
キス中毒がなおった途端
純粋少女になってしまったみたいだ。
いまだってバクバクする。
だけどそのことはカイには隠しておく。
そんなこと言ったら
絶対遊ばれるから。
「 カイ…そろそろ起きてよ 」
もう困る。
あたしを抱きしめているカイは
熟睡している。
なにも反応なし。
「 カイ……はあ… 」
溜め息がでる。
こうなるんだったら
頼みなんて聞くんじゃなかった。
……でも
よく見たらかわいい…かも?
無防備な姿になぜかドキドキする。
カイはあたしの上に乗っている状態になっている。
カイの頭はあたしの心臓の上あたりに
あるけど
寝てるからこの心臓の音は聞こえてないよね?
体は動かせないけど
手は動かせる。
よし…と心の中で小さく決心して
カイの頭に手を伸ばす。
カイの髪の毛は
いままで触ったことのない感触。
柔らかい髪の触り心地。
りぃくんの髪の触り心地もいいけど
カイのも良い。
なんか…落ち着いてきた。
「 落ち着いてきたね 」
「 …! 」
落ち着いてきた心臓がドクっと動いた。
だって寝ているはずのカイの声が
すぐ近くで聞こえたから。
それに落ち着いてきたって……。
「 カイ…もしかして起きてた? 」
「うん。 バッチリとね 」
まだあたしの上に頭をおいている
カイは心臓の音を聞くようにして
耳をあてられる。
「咲夜って、けっこう
こういうことには慣れてない? 」
こういうことには…って
どういうことだ?
「 別に、なにも慣れているつもりは
ないけど… 」
いちよう答えた。
ほんと、なんのことやら。
「 へえ…そうなんだ。
なんか嬉しいな 」
顔を上げて意味深な目で見られては
明るい笑みを見せられる。
その意味がわからない…。




