キス*チュードク2 1-3
「先輩。なんか変なこと想像してない?」
その言葉にしてない、してないと首を横にふると、また笑われた。
なんか…ペースが、年下いきになっている。
「髪の毛とか触られたりすると気持ちいいでしょ。だから先輩もそうだったらいいなあって 」
そういうことか。
まあ、髪の毛を触られたりするのは悪くないということをいま初めて知った。
だから
「 気持ちいいよ 」
と答えた。
少し早く撫でるようにして頭をポンポンっと二回されてから
髪の毛を触るのに飽きたのか手が離れていった。
それであたしへの子供扱いが終わったと思った…が、
「あともう一つ。先輩、やっていい? 」
「なに? もう一つって? 」
なんだろうなあと思っていると、さっき髪の毛を触っていた手があたしの頬へと触れた。
「キスさせてよ」
……は?
あたしの聞き間違いか…?
「いま、なんて? 」
「だからキスさせてよ。先輩 」
また顔が近づいてくる。
が、なんでそんなことを立夏くんが。
立夏くんってそういうことしなさそうなのに。
「立夏くんって…そういう人? 」
思わず反射的に聞いてしまった。
そのことに、きょとんとした顔をしてから微かに笑った。
「そういう人だよ。って答えたら、していい? 」
そういう問題ではないだろう。
おかしな答えに変な視線を向けると、もっと顔が近づいてきて顔に息がかかるほどの近さになる。
「先輩は、そういう人なんでしょ。聞いたんだよ 」
頬にずっと触れている手ともう片方の手で頬を包まれて
「ねえ、先輩。してもいい? 」
じっと瞳の奥を見られる感覚。
求めるような瞳、真っ直ぐみる瞳、だから聞くなら実行に移してほしい。
なんというか、焦らされてる感じ。
「 いいよ。好きなだけしてよ 」
そう言って片手を立夏くんの頬に触れた。
あたしの行動にびっくりしたのか、頬に触れた瞬間 目を見開いた。
だけどその表情は余裕なものへと変わり
「じゃあするね」
と唇が重なる。
立夏くんの頬に触れた手は居場所をなくし、ベッドの上に体重を預けるようにおくとその手に温かいものに包まれる。
その温かいものはきっと立夏くんの手だ。
包まれるように手が重ねられ、微かにぎゅっと握られる。
「 … 」
「 … 」
静かに離れる唇。
だけどまだ重ねられている手は離されない。
その手をじっと見ていると、気がつくと急に顔が近づいてきていた。
またキス…
そう思ったら立夏くんの顔はあたしの顔の横にいって、キスはされなかった。
一瞬、なにがしたいのかわからなかった。
けど…
「 先輩。 これからもよろしくね 」
耳元で囁かれて背筋がゾクゾクっとした。
あたしは耳が弱いのに…
こうやってされると耳に熱い息がかかるし、なんというか声が…声が響く。
なによりくすぐったい。
知らないうちに閉じていた目。
開けるともう目の前には立夏くんがいなくて。
ドアのほうをみるとちょうど手をかけてあけようとしていた立夏くんの後ろ姿。
ふと、なにかを思ったのかこちらを振り向いた。
なにか言われるのかとなぜか、少しの身構え。
で、口を開いたのは
『 先輩って、耳弱いんだ 』
「 …………… 」
家に帰ってきてベッドに座るが、なにも考えられない。
耳はほんとだめなんだって。
息吹きかけられた時点でだめだし。ただ囁かれたぐらいでもだめだし。
まえもあったな、こういうこと。
確かシュウ先輩にやられた気が……だめだ。
両耳を両手で隠して頭を抱えるように顔を下にさげる。
思い出しただけでも耳がむずがゆくなってくる。




