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Kiss*チュードク  作者: MIA
Kiss*チュードク
15/38

7-2

「なに?…じゃねーよ」


恐いです、恐いです。

誰か助けて…


「なにやってんの? 」


え?…えと、救世主が現れたようです。

その人の声は後ろから聞こえる。

恭弥からはその人の姿が見えていて、あたしからはまだ見えない。


恭弥がその人をじっと見てから、めんどくさそうに後ろにさがった。

後ろにさがったのを確認すると後ろをむいてその人を確に……

確認した。


「 ハル…どうしてここに? 」

「来てほしくなかった? 」

「別にそういうわけじゃないけど…」


というか、救われた。

なぜかハルは、いつもと違って突き放すような言い方をする。

いつもの柔らかく微笑むハルはどこへ…


「ハル? 」

「なに? 」


恐る恐る名前を呼ぶと、無表情で返事をされる。


「なんか、怒ってる? 」

「あたりまえでしょ」

「え!? 」


まさか本当に怒っているとは思ってなかったから、自分で質問したことなのに驚きの声をあげてしまった。


「え、じゃないよ。え、じゃ」


まさか、また ハルのお説教が始まったりして…。


「恭弥、どこ行くの? 」


恭弥がベッドから降りて歩きだそうとしていた。


「どこって、どこでもいいだろ」

「 … 」


よくない。よくないよ。

あたしを置いていかないで。


「ここにいてお前が説教されるとこなんて見たくねーし」

「 … 」


知っていたのか、そのことを。

だから早くここから出ようとしているのか。

まさか恭弥もハルのお説教くらったことがあるのかな。

じゃなきゃ知らないか。


「じゃーな。ま、がんばれよ」


意味深な笑みをむけられる。

その笑みからはいろんなことが伝わる。


さも、楽しんでいるようで。

ざまーみろと言っているようで。

心から言っているもののようで。

ともかくいい意味はない。


そんな風に思っているうちに、恭弥はドアの前についていて。手をかけて開けると、出て行ってしまった。


「 … 」

「 … 」


なんなんだろう。

すごく気まずい。

あたし、なんか悪いことをしてしまったのか。


「 咲夜ちゃん 」

「 はい! 」


反射的に正座しちゃったよ…。

ベッドの上に正座しているあたし、その前に立ってあたしを上から見下ろしているハル。

これは親子の、あれか。


ハルはお父さんであたしは娘で、お説教タイムか。

だとしたら優しいお父さんだな。

静かに、うん、と頷いた。


「咲夜ちゃん。おれがまえに言ったこと、覚えてる? 」


まえに…といったらあのときのしか思いつかない。


「なんとなく…」


視線を下にさげながらに答える。


「キスしてって、咲夜ちゃんから言ったんでしょ?恭弥はそういうことしないから」

「まあ…」


言っただけじゃなくて、したよキス。

だけどいまは言う必要ないよね。

だから言わないで、ハルの話しを聞く。


「他の男だったらこんなところで、それだけで終わると思う? 」

「 … 」


思う。思うよ。

だって、ここでそうしてきたから。

ハルは心配しすぎなんだよ。


「もうちょっと警戒して…」

「ハルは心配しすぎ。そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

「心配しすぎじゃないよ」


いままでだって大丈夫だったんだから、大丈夫に決まってる。


それにハルって…


「ハルって…あたしのなに?…お父さん? 」


不思議そうに問いた。

そうだよ、ハルってあたしのなんなのかな。

どうしてこんなことでお説教を受けなくちゃならないの。

なにも知らないのに、わかっているようなこと言われるのはなあ…。


「幼なじみだよ」

「 … 」


だけどそのときの記憶は全くないし。

なんとも言えない。


あたしが黙っていると苦笑いをされた。

たぶん考えこんでいる表情をしていたからだと思う。


「咲夜ちゃんのことが好きな男の一人と思ってくれてもいいよ」

「だったらさ、キスなんて普通にするものじゃないの? 」


他の男たちはそうだ。

いや、好きじゃなくてもしようとしてくる。

なんでハルはこんなにも拒否するんだろう。

好きだからしないって言ってたけど、よくわからない。


「普通にするなんて、おれには考えられないな」

「そう、なんだ」


普通にしないなんて、それこそあたしには考えられない。

だってあたしはしてるよ。

もしこのことを言ったら、気がかわるのかな。

試しに言ってみよう。


「でもさ、もし好きな人が他の男たちと普通にしてるとしたら どうする? 」


うかがうように下から見上げると、ハルの顔はなんのことかわかっていない表情をしていたけどそれが少しゆがむ。


「…もしかして咲夜ちゃん。そういうことしてるの? 」

「 うん 」


恭弥は言わなかったんだ。

言ってくれていればこんな複雑な話にならなくてすんだのに。


「…何回? 」

「わからない」

「わからないほどしてるの? 」


その言葉に、うん、と頷くと複雑な話に ふさわしい表情をした。


「どうして? 咲夜ちゃんの好きな人ってそんなにいるの? 」


質問ぜめだ…。


「好きな人はいないよ。ただしてると落ち着くっていうか…」


そんな感じだ。


「もっと大事にしてよ…」

「もう、遅いでしょ? 」


たくさんしてきたんだから。


「そうだけど…さ」


悩ましげな表情を浮かべている。

これを知ったら、もういいよね。


「ね、キス、してよ」


他の男たちに言っていることと同じことを言う。

普通ならここでしてくれる。

だけどハルは嫌そうな顔をした。


「咲夜ちゃんって、そういう子だったんだ」

「そうだよ」


なにか文句ある?


「おれさ、そういうのは嫌いなんだよね。なんで好きな人じゃないのにそんなことできるのかわからない」


冷たく言い放たれる。

いつものハルと全然違う。

嫌味を言っているような感じで。

まさか怒ってる?


「ハル…」

「ごめん。なんかおれ、おかしいからもう教室に行くね」


ハルが出ていった。

傷つけたのかな。

あんなに苦しそうな顔して…。


ハル。ほんとうにあたしのことが…好きなんだ。

だけどあたしは、そういう人を必要としてないんだ。

だからさ、キスなんて普通にする人になってよ。

なってくれたら構ってあげるから。

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