6-3
「はあ、はあ」
走ってきてついたところは保健室だった。
ベッドに近づくとベッドにつっぷす。
なぜこんなことになったのかはわからない。
なんであの髪の長い女があたしに向かって走ってきたのか、すごくよくわからない。
そういうドッキリみたいなのは他の人にやってほしい。
もう心臓に悪いよ…。
落ち着いてベッドに座っていた。
そこにガラッとドアが開いて葵先輩が来た。
まだタキシード 着てる。
「さっきはすごかったね」
「そうですね…」
そこはもう忘れてほしい。
葵先輩はあたしのとなりに自然に座る。
「葵先輩のところのホストクラブはどんな感じでしたか? 」
「女の子たちが積極的でかわいかったな」
なにを思ってか、ニコッと笑ってあたしを見る。
反応をじっと見るかのような目。
なにかを求められているようだけど、それに答えれるかわからない。
「そうですか。それは良かったですね」
「キスもした」
「……あたしになにを求めてるんですか?」
突拍子もない発言に、葵先輩を不思議に思いながらに見た。
葵先輩は遠くをみて、ん~…と考えるようにしてから
「咲夜ちゃん、このごろキス断るからさ、こういう話したらなんか言ってくるかなって思って」
こちらを向いた。
「 … 」
どう返事していいかわからずにただ無言になる。
あのときからずっと断ってるんだよね。
「どうして? 」
首を傾げて覗くように見られた。
「どうしてと言われても、まあいろいろあって… 」
「ふ~ん」
興味なさそうに返された。
もっと聞かれるかと思ったけど
聞かれなっ…
ーバタッ
「俺、咲夜ちゃんの全部、知りたいな」
この人は……。
急にベッドの上に押し倒された。
押し倒した犯人、葵先輩はなにを考えているのかよくわらない。
意味深な笑みを向けられる。
これは答えるしかない状況。
答えなきゃ解放されなそうな状況だ。
「別に…対したことじゃないですよ」
ほんとうに対したことじゃない。
言ってもどうせわからない。
「キスしたあと、罪悪感が残るようになって、それであまりしなくなったんですよね…」
自分でもなに言ってるかわからなく、視線をそらしながらに言う。
「それって、誰に対してもそうなるの?」
「え? 」
「だからその罪悪感ってやつ」
まさか信じてくれるとは思ってなくて驚いた。
でも…
「それはわからないです。ただ何人かの人たちとして、罪悪感が残って、それでしないようになったので」
なんか、変な言い訳にしか聞こえない。
「そう。じゃあ試してみていい? 」
顔が近づかれる。
不覚にもドキッとしてしまった。
だって、こんな状態でそんなセリフ…
「いいよね」
拒否権ないじゃないか。
「…んっ……」
ひさしぶりにしたキスは
「どう? 罪悪感、感じる? 」
ドキドキした。
「しないです…」
「もしかして咲夜ちゃん、俺が好きとか? 」
「それは違うと思います」
「きついね」
はっきりと言うあたしに苦笑いをした。
だって、恋愛感情の好きとかよくわかってないし。
「じゃあ、なんで俺だと罪悪感がでないのかな」
あたしの上から自然な行動で退くと、さっきのように座った。
それを見てからあたしも、起き上がる。
「それは… 」
違う。葵先輩だけじゃなかった。
ふと、思い出したものはシュウ先輩の顔。
「葵先輩だけじゃなかったです。シュウ先輩のときも罪悪感がでなかった、気がします」
「 … 」
それを聞くと黙ってしまった。
葵先輩は驚いたような顔をしている。
葵先輩までもがこういう反応するとは思ってなかった。
雲雀くんに言ったときも声に出さず、驚かれた気がする。
「シュウ先輩ともしてたんだ…。ちょっと意外」
誰に向けられるものでもなく小さく呟いた。
その‘意外’はシュウ先輩のことを言っているとわかる。
「ま、難しい話はいいよね」
「どうせ考えてもわかりませんし」
開き直るように明るい声を出した葵先輩に、相づちをいれた。
そんなあたしを見るとおかしそうに笑った。
まあ、自分のことなのに考えてもわからないなんておかしいよね。
「俺もあるんだよね。自分のことでわからないことが」
ベッドに片手をつき、距離を縮まれてじっと見られる。
そんな行動に少し動揺。
だけど後ろには下がらない。
下がったら、また顔を近づけてこようとすることはわかってるから。
「なんですか? そのわからないことって」
聞いたほうがいいのかわからずに、気になって聞いてみた。
「知りたい? 」
至近距離で聞かれる。
「…知りたいです」
そこまで重要なことなのかと、身構えする。
「じゃあ、教えてあげる」
あたしが言った言葉が葵先輩の待っていた言葉なのか、満足そうに笑った。
「さくや……」
耳をばっと抑えて葵先輩の声が聞こえなくなった。
だって…だって、口を耳まで近づけてきて、耳元で話そうとするんだもん。
顔はまだいいけど耳は…
「ちょっと、教えてあげるって言ったでしょ。 ちゃんと聞いてよ」
不機嫌そうにしようとする葵先輩の顔は笑っている。
両手を掴まれて耳から外されてしまった。
また耳元で話そうとされて、手で隠そうとするが両手とも掴まれていてできない。
「咲夜ちゃんの相手。なんでしちゃうんだろうって」
びくっとして、鳥肌が立ちそうになる。
話の内容が頭に入ってこなくてただ聞いている。
「俺、実はね、年下は全く相手にしてこなかったんだよね。なのに… 」
そこで、とまった。
無意識にぎゅっと閉じていた目を開けると、すぐ近くに葵先輩の顔が視界に映る。
「なんできみの相手をしてるんだろうね」
「そ…そんなこと…」
至近距離で葵先輩に見つめられて、つい視線をそらしてしまう。
「教えてあげたんだから今度は咲夜ちゃんが教えてよ」
手がぎゅっと握られると同時に、体も近づいてくる。
そんな葵先輩の表情は、からかうように笑っている。
「葵先輩。からかわないでください」
「からかってなんかないよ。これさ、ほんとうに悩んでるんだよね」
だったらその、からかうような笑みをやめてください。
「だって…いまだってキスしてあげたいって思ってる」
「 ………ん 」
いきなりキスされた。
あたしはなにも言ってないのに…。
「…ちょ……」
いつものキスとは違うものに驚く。
やめてもらうために抵抗したいけど手が握られていて、なにも抵抗できない。
葵先輩の片手が肩にまわしてくると解放された手で胸板をおす。
「 葵先輩っ 」
そこでやっと唇が離された。
「…なに? 」
「なに? じゃ、ありません」
あたしが抵抗したことに不満そうな葵先輩。
息を切らしながらに口でも抵抗する。
次の答えをまつかのようにじっと見られてるから、望み通りに口を開く。
「いきなりしてきてどうしたんですか。あたし、なにも言ってませんよ」
「咲夜ちゃんが好きだから」
「…真面目に答えてください」
葵先輩のペースにのまれそう。
「 他の女の子たちより かわいくて好きだよ 」
「 そうですか… 」




