6-2
文化祭当日。
『早く行ってこいよ』
喫茶店での休憩中、恭弥に言われた。
やだと何度も言ってるのにあたしの性格をしってか、挑発的な言葉を言ってきた。
『苦手じゃないならいいじゃん。それとも、まえに言ったことがうそだったとか? 』
そういうことで現在、お化け屋敷のまえにいる。
ぼうぜんと立ち尽くしている。
「 ……… 」
ほんとうに入らなくてはいけないのか?
この以下にも怖いこんな場所に。
「そこの人、入るのか入らないのかはっきりしてくれない? 」
ええ、入りますとも。
入らなくてはいけないんですよ。
…って
「雲雀くん! 」
わざわざうるさい人だなと思った人は、机の席に座っている雲雀くんだった。
「なに? 」
「どうしてここに」
「受付」
机の上に置いてある紙を持ってるシャーペンで、トントンと差した。
「受付って、必要なの? 」
お化け屋敷で受付して、なんの意味があるのかわからなかった。
「抽選で、この中の誰かの人になにかがあたるって言ってた」
「なにかって、なに? 」
「知らない」
やっている本人が知らないって、そんなこといいのか。
まあいいや、早く終わらせよう。
雲雀くんの席の前まで行くと、シャーペンが渡されて紙の項目欄に名前、学年を書く。
「ほんとうに入るんだ」
書いていると後ろから見覚えのある声がして、ふりかえってみると葵先輩だった。
葵先輩は黒い服、いわゆるタキシードを着ていた。
うん、似合ってる。
葵先輩のところのホストクラブ、なんか女子たちがうるさそう…。
「大丈夫なの? 」
「大丈夫…ですよ…」
はは…と笑ってごまかす。
「なんなら俺も一緒に入ってあげようか? 」
「いいんですか!? 」
「いいけど」
感激したものの、恭弥にあとでなんて言われるかが想像できてしまった。
絶対に
『一人で入ったんじゃねーのかよ』
って、対したことねーなって言われる。
どうしようかと悩んでいる間に、葵先輩は紙に自分の学年と名前を書いている。
書き終わるとあたしをみて手を差し出してきた。
「怖いと思うから、ね」
「ありが……」
その手をとろうとするが途中で止める。
いけない。
これじゃあ、あとで恭弥に
『一緒に入ってもらったあげくに手までつないだのかよ。お前、どんだけ怖がりなんだよ』
なんて言われる。
…なんか恭弥の言うことがわかってきた。
「全然 怖くないから大丈夫です。さっ、入りましょ」
先頭を切って入っていった。
笑顔で言っていたつもりだけど引きつっていたかもなあ。
覗いてみると中は真っ暗なもので、不気味な空気を漂わせている。
「 … 」
「入らないの? 」
「は、入りますよ」
なんでこんなに強がってしまうのかと、自分に問い詰めたい。
だめだ…怖いものが苦手なあたしがお化け屋敷なんて…。
「 っ… 」
もう序盤でこんな、こんな…
「咲夜ちゃん。やっぱり怖いんだね」
「こっ…怖くないです」
葵先輩をみて否定すると、思わぬほど近いところに顔があった。
「 …… 」
この状況を確認すると、あたしが葵先輩の腕に絡みつくように密着していた。
だから少し安心していたんだと納得。
離そうとすると「このままでいいよ」とあたしが絡みついていない腕の手で止められた。
それからは髪の長い女がでたり、得体のしれないものがでたりと…生徒が作ったものなのに意外と怖かった。
「 はあ… 」
出口にたどり着いて溜め息を吐く。
「怖かったね」
「そうですね」
「あれ? 認めるんだね」
ここまできて、強がりはもうしたくない。
恭弥の前だけで強がればいいや。
「雲雀くん…なんであんなに怖くできちゃってるの? 」
雲雀くんの座っている席まで行き、机の上につっぷすようにして見る。
「だいたいがオレの案だ」
「そうなんだ。…雲雀くんが珍しいこと」
珍しいことはあまりしないほうが自分にもいいし、周りの人にもいいんだよ。
雲雀くんのことだからそういう系の本を見て、いろいろ追求したんだろうなあ。
「後ろ見て」
雲雀くんに言われてなんとなく後ろを見た。
見た…
「 …は…… 」
そこにはさっきの髪の長い女がいた。
その女はこちらに歩いてきて、あたしは無意識にその女の人をみて後ずさる。
だって、なんかあたしのほうに向かってきている気がするから。
もっと早く後ずさると、あろうことかあたしに向かって走ってきた。
あたしは反射的に叫んでその場から逃げ出す。
叫びながらに耳を抑えて猛ダッシュで廊下を走った。




