6-1
朝。
今日はなんとなく屋上に来た。
初めての屋上の景色は最悪なものだった。
「葵~今度はわたし」
「はいはい」
「葵、こっち」
「わかってるよ」
男一人と女二人。
男子はフェンスに寄りかかって、女子二人と絡みつくようにキスをしている。
こんなことをする人がいるなんて思ってなかった。
普通の人から見たらあたしも異常だと思うけど、この光景のほうが異常だ。
屋上なんて来なければ良かった。
そしたらこんな光景を見なくてすんだのに。
なにも思わずに、じーっと見てると男子と目があってしまった。
「 … 」
けっこう気まずいぞ。
こんなところ見られたくなかっただろうし、見てはいけないものを見てしまった感じだ。
男子が女子にキスをする行動を止めて、まだあたしを見ている。
そんな男子に、女子は不満そうに男子のことを見上げている。
たぶん、上目遣いで、だ。
これ以上ここにいたら邪魔になるから、屋上をあとにして別の場所に向かうことにした。
やっぱり、あたしの居場所は保険室。
ベッドに座ってただ、ぼけーっとしている。
今日は誰も来ない。
このごろあたしはおかしいようだ。
あの恐い人に言われた言葉のせいでほんと、だめだ。
キスしたいはずなのに、したくないというか…あとに罪悪感が残る。
だけど、シュウ先輩にされたときは罪悪感がなかった。
なんでだろ。
なんかおかしいよ。
だんだんあたしが…
そこでガラッと保険室のドアが開いた。
現れたのはさっき屋上にいた男子だ。
「葵先輩。なにしに来たんですか? 」
「咲夜ちゃんに会いにきた」
あたしの座っているベッドまで来て、普通にとなりに座る。
来られたのは良いけど。
なにか話をするってわけでもないのか。
「葵先輩って、他の人にもあんなことしてるんですね」
沈黙なのも嫌だからと思い、聞いたことだが
嫌味に聞こえるようなものを言ってしまった。
「咲夜ちゃんもそうでしょ? 」
これは仕返し?
「まあ、人それぞれですね。同じことをしているあたしはどうこう言えないです」
ほんとうは今、困り中なんだけど。
キス…ってなんなんだろうって思ってしまっている。
あの恐い人が原因だけど、吉田くんに
説教されたのも原因かも。
「来てくれたところ悪いんですけど、もう教室に戻りますね」
これ以上、なにも考えたくない。
みんなが生徒会室に集まるようになってきたごろ、文化祭がはじまろうとしていた。
もう、決まった出し物の話をしている。
同じクラスのあたしと恭弥とハルは、喫茶店をやることになってる。
シュウ先輩のとこは演劇。
葵先輩のとこはホストクラブらしい。
あとは読書中の雲雀くんだけだ。
みんなの視線が集まる。
その視線に気づき、めんどくさそうに口を開く。
ただ一言。
「おれのとこはお化け屋敷」
あたしの苦手なものを言った。
「お化け屋敷か…。咲夜ちゃん、一緒に行かない? 」
ハルに聞かれるが、それは嫌だ。
ハルと行くのが嫌なわけじゃないけど、お化け屋敷が…ね。
「あたしは…行かない。自分のクラスのことがあるし」
ただの言い訳。
ハルは残念そうに諦めた。
ハルをハルと呼ぶようになったのは
『吉田くんじゃなくて、陽斗でいいよ。てか、ハルでいいよ』
と言われてからだ。
あたしが小さい頃は、そう呼んでいたらしい。
「つーか、苦手なだけじゃん? 」
この恐い人を恭弥と呼ぶようになったのは『ちゃんと名前で呼べ』と…いわゆる強制で。
それよりばれてる。
「苦手じゃないし」
「そう言うなら入って来いよ、一人で」
「いやだよ」
このなにかを企んでいるような笑み、見透かされているんじゃないかと思ってしまう。




