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短編集

妄想少女

作者: カバン

 街路樹が立ち並ぶ簡素な歩道。夕闇に揉まれる紅一点といってもいいほど私たちは輝いている。

私は彼が大好きだ。

「けんじ」彼は私の彼氏。すごく愛しい人。

世間一般ではきっと私たちのことをラブラブのバカなカップルだと罵るでしょう。でも言いたい人には言わせておけばいい。私たちの邪魔にはならないもの。

デートといったらいつもこの人気の少ない歩道を歩く。特別変わった所や映画館などにはいかない。欲を言えば行きたいけれど、私はけんじと一緒ならばそれが幸せ。

スタスタと歩いていくけんじの横をキープする。

けんじはいつもまっすぐ前を見つめている。私をあまり見ないのはすごく照れ屋さんだから。それは長いこと一緒にいる私だからわかること。

他の子には理解できないこと。

「けんじー」

ちょっとだけじゃれてみたくなるときだってある。

人懐っこい笑みを浮かべて猫なで声で腕に抱きつく。

それをけんじは突き放す。

「もう、照れ屋さんなんだから!」

真っ赤に頬を赤らめてそっぽを向くけんじ。

まえは少し筋肉がついていたのに抱きついた腕は細かった。


「もう、けんじ。運動しなきゃダメだよ!」


その言葉を投げ掛けても知らんぷり。挙げ句の果てには「あなたは誰ですか?」だって。

ほんと恥ずかしがりやのけんじくん。

可愛いったらありゃしない。

そして歩き疲れてきた頃いつも街路樹が途切れ曲がり角に着く。

その曲がり角を曲がると暗い森の小道に続く。

そう。いつもけんじはロマンチックで森の高台から見上げる星を見せてくれる。

無数の星がきらきらと暗い夜空を飾り付ける。そんな綺麗な光景にいつも涙を流してしまう。

きっと今日もけんじに泣いてる顔を見られてしまうんだね。

しかし、けんじは行くことを拒むように逆方向に足を向けようとする。

まるで逃げ去ろうとした手をそっと掴む。

大量にかいたであろう汗は緊張のためかねっとりとしていてそれでも私は離さなかった。

だって私はもう星空を眺めたい気分なんだから。

青ざめた表情が彼のシャイな一面をあらわにしている。

私はけんじくんを連れて森の高台に登っていった。

木々が開けたその場所はベンチがひとつと夜空がひとつ。

とても綺麗で吸い込まれるように走っていく。


「とっても綺麗!ありがとうけんじくん。あなたのおかげよ。」


私は涙をこぼす。

あふれでる涙は止まらない。前が見れないほど流れ落ちいく。

繋いだ手をずっと離さず私は彼を抱き締める。

ぎゅうっと、強く、強く。そして眠りに落ちてしまうの。

深い深い眠りに。それも落ちていくという言葉のそのままのイメージで。


 目が覚めると誰も居ない我が家のベットの上。

居間にはいるとテレビが着いたまま。ニュース番組が流れるのをただ聞いているだけ


『-先日で行方不明届けが十件と数多くの人が姿を消しているようで、いずれもまだみつかっておらず捜索は現在も続いています。』


大変だなぁと呟いてみる。他人事。当たり前だけど自分には関係ない。

だって私にはけんじがいるから。

身支度を整えて元気よく誰も居ない家にいってきますと挨拶をする。

出ていって向かう先はけんじの横。けんじ以外に何もいらないから。


「けんじー」


「え!?あんた誰?人違いじゃね?」


「あー、また照れ隠しして!もう。」






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