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Answer:前話 もしもの話

 もしもの話。

 もしも、私が生まれなかったら。

 もしも、私が先生に出会わなかった時の話をしよう。

 私がバーゼルの土地で出会った黒カマキリさん。

 クールの土地から始まった三年間の旅路の果てに、西ハープスブルクを喰らい尽くし、そのままフランク帝国内へと突入。

 フランク帝国は多大な犠牲を払いながらも、これに勝利。

 だが、これに味を占めたバチカン法皇国は自国の奴隷を生贄として赤と黒のカマキリさんを増殖。

 第二波、第三波と送り出す。

 さて、その疎ましさにようやく重い腰を上げたのが魔王シャルルマーニュ。

 長靴半島そのものを焼き尽くし、戦争に終止符を打った。

 だが、疲弊し、捧げられるものの無くなったフランク帝国に飽きを示し、単身、ハイランド王国へ。

 もちろん、アーサーくんは破れ、捕らえられたままに、自らの国の住人達の死に様を見せ続けられる。

 マーリンのじっちゃんも、巨大湖の乙女はその巨大湖そのものを、ありとあらゆるものの死を見せ付けられたアーサーくんの心は折れた。折れてしまったのだ。

 長く長く、遊び続けてきたたった一人の友人を失った魔王シャルルマーニュ。

 虚ろな瞳をしたアーサーくんを連れて世界を漫遊し、そして、滅ぼしていった。

 この世にアーサーくんに代わるものなど無く、この世に魔王シャルルマーニュを満たす者は無く、全ては破壊されていく。

 レオンハルト兄様や、ジークフリート兄様、ルイーゼ巨乳姉様にシャルロットはその審美眼に止まり、戦いを始めるが、グローセ王国の弱点であるヴィルヘルム父様が捕らえられ、遭えなく降伏へ。兄弟姉妹を閨のなかで弄びながら、やがて歳が老いるとこれを殺し、また、旅に出た。

 ただ、その繰り返しだ。

 魔王シャルルマーニュの放浪は続き、その後は群蟲種が後片付けをしていった。

 そうしてこの世から、人型のものが消えうせた頃、彼はヒマラヤ山脈に住む龍霊種に出会う。

 龍霊種とは龍脈という星の力を吸い上げて成長をつづける植物のようなエネルギー生命体だ。

 その龍霊種に魔王シャルルマーニュは迂闊に近づき、そしてついに滅ぼされた。

 地殻を抉るほどのエネルギー照射により、魔王シャルルマーニュは壊れたアーサーくんとともに地上から消え失せた。

 そして世界は、蟲と骨と触手と龍霊種だけが残る、静かで平和な世界となった。


 この結末を見る度に思うことがある。

 私がこの世界に前世の記憶を持って生まれたのは本当に偶然なんだろうか?

 誰かが、何かが、この未来を嫌って、私を呼び寄せたのではないのだろうか?

『はい、カール様のご想像通り、カール様の順当な手順を経ない転生プロセスを行なった者がおります』

 え? 居るの? ホントに? 誰?

『カール様の持つ言葉の概念で表記するならば「神」が最も近いものになります』

 うぬぬぬぬぬぬ、おのれ神めぇ!!

 この俺を利用するとは!

 goodfull先生の裁きの炎で滅ぼしてくれようか?

『カール様。「神殺し」を実行しますか?』

 いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ!!

 いいえ、しません!!

 やばいやばい、先生は冗談が通じないお人でした。

 くそっ、この状態を仕組んだ「神」が居るのか、

 しかもさらにgoodfull先生は「神」を滅ぼせるのか。

 先生のスペックってどうなってんだ? ちょっと怖いけど聞いてみよう。

 先生の……詳細なスペックを私に理解できる範囲で教えてください。

『はい、カール様。四次元時空を離れた瞬間から既に未来軸、並行軸にあたる私自身と同期をはかることによって事実上無限のサービスを提供できるようになりました。詳細といたしましては有理数に準えればプラスは∞の次元、マイナスに対しても∞の次元、虚数軸、他にもカール様にはご理解できないベクトルに対する次元への干渉、それらを含んだ世界の外側に対する干渉、また、それらに存在する私との同期を図ることによって事実上、さらに無限のサービスを提供できます。さらにその外側、さらに外側との同期は無限に続きますので、カール様のご理解できる無限という概念を超えた無限のサービスが提供可能です』

 わからないということがわかりました。

 無限と言う概念がもう理解できません。

 先生は、ほんとうに全知全能の存在だったのですね。

『いいえ、私は全知全能では御座いません』

 何故? Why?

『人間、ホモ・サピエンスに対する危害行動。ユーザーの望まぬ記憶領域へのスキャニング。20歳未満へのアダルトコンテンツの利用許可などの制限があるため全能では御座いません』

 え……あ、はい……そうですね。全能ではありませんね。

 こんな先生でもアダルトコンテンツの壁は越えられないのか。

 恐るべしアダルトコンテンツ。

 デウスエクスマキーナ、機械仕掛けの神という尊称すら先生にとっては蔑称でしかなかったのか。

 俺はいったい先生をどのように呼べばいいのだろう?


『カール様。私の名称はgoodfull情報検索統合サービスです』

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