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Q3:前話 冬きたる

今更ですが、作品を楽しむために、あえて先生のマップで調べやすい名前を利用しています。そのため、実際にはその都市や地名そのものではなく、その周辺の出来事とお考えください。もちろん、そのものの場所もありますけれど。

 旧世界、中世における冬と言う季節は恐ろしいものだった。

 街の外、村の外、時には家の外に出ることも出来なくなる。

 植物は実りをもたらさず。

 狩るべき獲物も見えなくなる。

 雪が去るまで、春が訪れるまで、ジッと息を潜めて生きる他ない。

 それは今の世界にしても同じことであるのだが、今の世界は事情が少々違う。

 雪の中でも元気に動き回る者達が居るのだ……。


 そう、それは……死後世界種のスケルトンさんです!!

 そう骨だけの彼等に冬の寒さなど関係ないのです。

 ちょっと雪が動くのに邪魔なだけで、基本的に精神生命体である彼等は凍死したりしないのです。

 うっかり夏のうちに肉を腐らせきれなかったスケルトンさんはゾンビとして凍ってしまいます。

 おそらく仲間内から一冬「ぷぷーっ、だっせーww」と指差され続けることでしょう。

 恐ろしいことです。実に恐ろしいことです。

 現に今も一人(?)の半スケルトン半ゾンビのハーフスケルトン(ハーフゾンビ?)さんがケタケタケタと指差され笑われておりました。

 いじめ……かっこわるい……でも面白ぇぇぇぇぇぇ!!

 あははははは、だっせーーーーっ!!

 俺も一緒になって笑ってしまいました。


「だから言っただろ? はやく肉を削ぎ落としとけって!」

「あはははは、凍ってやがる。ばーーーかっ!!」

「うるせぇ! このやろう! 俺がこの体になったのは秋口で腐らせるのが追いつかなかったんだよ!!」

「いやぁ、半分はないわぁ! 半分は! ゲラゲラゲラゲラ!!」

 楽しそうです。先生の翻訳サービスで彼等の会話を聞いていると、とても和やかな気分になってきます。

 平和で優しい世界。

 死者の世界、それは殺し殺される殺伐とした生き物の世界よりも平和でした。びっくり。

 指をさされて半泣き(多分)になっている彼も悪友とつるむかのような感じです。

 死を思わせる骨の体。腐臭漂う肉の体。

 それが生者に対して嫌悪感を持たせてしまい、彼等を天敵として扱わさせるのです。

 人間、顔じゃないし、肉でもないんだね。

 とは言え、彼等と生者が仲良くすることも出来ません。それは、本能なのです。

 彼等にとって生命体を攻撃することには二つの意味を持ちます。

 一つは、自らを維持するための精神エネルギーである魂魄の摂取。

 もう一つは、自らの子孫を残すための生殖行為としての魂魄汚染。


 いやぁ、なってしまえば楽しいスケルトンライフ。

 ただ、魂魄とは自身の中核を示すものですから、それが残ることを生とするか、自分自身の根源を作り変えられることを死と呼ぶかは、とてもとても難しい問題です。

 ただ残ることを生きると言うのなら、不死に近い生命を得られるでしょう。

 ですが、自分自身と言うものが根本から掻き消されてしまいます。

 実に、難しい問題です。

 でも、なんだか楽しそうですけどね、皆。

 ここは物質的な執着から解放された、ある種のユートピア。

 昔々、ロシアと呼ばれた国の首都モスクワ。

 夏が生命に溢れた季節だとすると、冬は彼等の生命に溢れた季節、繁殖期です。

 彼等の天敵である塩水も、凍ってしまえばただの氷。

 北の国の冬は彼等に味方します。

 あんまり寒すぎるとお骨に悪いそうですが。



 そんな彼等が「俺達のシーズンが来たぜっ!!」とスノーボーダーな若者達のようなことを口にしながら、大軍団を作って西へ西へと旅立ちました。

 少々の捕食と子作りのために。



 ……あれ? こいつら強姦魔の群れなのかしら?

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