最終話 十三番目の席の主
キャメロット城の円卓には十三の席がある。
その十三番目の席に座る者は居ない。かつて、その席に座る者はランスロットであった。
そして、その後、誰一人として座る者は居なかった。
なぜならば、その席は呪われた席であったからだ。円卓会議の進行役の席であったたからだ!!
皆が揃って嫌がった、その呪われた席に今、俺は座らされている。
い~や~だ~、おうちかえる~っ! 廃嫡されて国外追放されてるけど~っ!
……家なき子でした。同情するなら家をくれ。
ある日、マーリンのじっちゃんが言いました。
「このハイランド王国の副王を決定する。その者にはかつての副王ランスロットの剣、アロンダイトにあやかりし剣であるアダマンダイトを授ける! 我こそはと思わんものはキャメロットに集いその剣の腕を見せよ!!」と、俺が居ない間に。
俺がアダマンダイトを取りに行った瞬間、ハイランド王国全土に流布され、戻ってくると大会が開かれ、そして俺が勝ちました。
先に配布されたパンフレットには副王を決定すると書かれておりました。
俺が見たパンフレットには、書かれておりませんでした。
えぇ、そして授かりましたよ? アダマンダイトを、俺の手から俺に。
副王とは、国家元首の代理と補佐を務めるものであり、アーサー13000ちゃいの面倒をみる係りなのです。
生き物係りとしてはハムスターとかウサギとかの方がまだ手が掛からないと思うんだ。
ふむ、今からでも遅くない。
アダマンダイトを巡って殺しあう地の獄に変えてやろう、そうしよう。
その晩のこと、マーリンのじっちゃんがお話があるそうなので、拳で語り合おうかと思います。
神製T・A・M・S・D!!<タクティカルアーマードマッスルスーツD型>
拳を極めしこの分子結合崩壊拳をお見舞いしてやりましょう。
埋葬の手間すら省いてやるエコロジーな優しさに感謝せよ。
「ワシももう歳でのう、アーサーの面倒を見るのはつらいのじゃ」
「うっさいわ、アーサーとほぼ同じ年だろ」
「それは違うぞ、ワシの方が二百年長く生きて居る!」
「一万三千年のうちの二百年になんの意味があるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
戦争とは情報だよ。
そして、誤った情報に基づく決断は、誤った結果を生むんだよ。
それが今の俺っ! この恨み、はらさでおくべきか……。
「大体じゃな、アーサー王の名誉をかけた戦士と戦士の一騎打ちに横槍をいれておいて、知りません存じ上げませんという道理が通るとおもうたか?」
「知りませーん、存じ上げませーん」
僕はなにもやってませーん。全ては先生がやりましたー。
『銃は人を撃ちません。人を撃つのは人です』
先生に、説教をされてしまいました。ごめんなさい。
「正直、どうやったのかは解らぬ。あの魔王シャルルマーニュからいかにして魔力を失わせ、アーサー王に勝利をもたらしたかは解らぬ。シャルルマーニュとワシの間には天と地ほどの魔力の違いがあった。だが、異常な<マナ>の乱れに気付かぬほど老いぼれてはおらんわっ!」
どうやったか?
先生に頼んで、ちょっと<マナ>を移動させただけですが?
幻想世界において<マナ>は空気のように偏在するものです。
その<マナ>を取り込むことによって自らの魔力とし、様々な形で利用することが<魔法>です。
なので、シャルルマーニュくんを中心として<マナ>を弾く斥力場を形成。
これによりシャルルマーニュくんの周囲は<マナ>の真空地帯となって魔力の自動回復が行なわれなくなりました。
アーサーくんは治癒の加護だか呪いだかを持っていますので、シャルルマーニュの体内に残留する魔力が使い果たされるまで時間を稼げば良かったのです。
充電しながら戦うケーブル付き汎用人型決戦兵器アーサー王と、電池式魔王シャルルマーニュ。
長期戦に入れば勝って当然の戦いでした。
いやぁ、心が折れなくて良かった良かった。
本当は、アーサーの想いを考えると俺は横槍を入れたくはなかったんだ……。
でも入れたくないことと、やらないことは別だよね!?
注射はしたくないけど、やらなきゃ駄目なことだよねっ!?
だから、横槍を入れました。
「いや、さっき老いぼれたって自分で言ってたじゃない。勘違い勘違い。200年の差は大きいなぁ」
「ふん、それだけではないわ。魔王シャルルマーニュはフランク帝国内においても恐怖の象徴。それを倒したとなればアーサー王はフランク帝国内でも英雄として扱われ、そして救世主としての道を強いられる。それを避けるために強引にハイランド王国へ連れ帰ったのじゃろうが!! 弱き者に懇願されればアーサーは戦わざるを得ない。そういう心根の持ち主だ。そしてそれはハイランド王国の国民を巻き込む戦争じゃ! だからシャルルマーニュを倒した後、それを誇るでもなく逃げ帰るように帰った、違うかっ!!」
「老人特有の勘違いじゃないですか?」
やだなぁ、このじっちゃん、人のことを見透かしたように言ってさぁ。
実際そうなんだけど。
「フランク帝国の民達のために、ハイランド王国の民に犠牲を強いる。そんな英雄にアーサーをさせなかったことには礼を述べよう。本当に侵略をしたいのであれば内乱で弱りきったところを叩けば良いだけじゃからな。茨の道を歩き、自国民に血を流させ、フランク帝国に平和をもたらす。そんな血塗れの英雄にさせないために貴様は道化をうったのだろうが!! シャルルマーニュに無惨極まるな死に様を晒させ、戦士達の溜飲を下げ、都市を襲うこともなく、そしてまっすぐに帰れるように、最初から戦場に海辺を選んだのもそのためじゃろ!!」
「いや~この年になると、歩くのが面倒くさくて。老いって怖いですね」
あ~やだやだ、老人の愚痴はききたくなーい。
「アダマンダイトを奪い、そして渡さなかったのも他の部族のものたちに下手に野心を抱かせぬためであろうが。海の外へと攻め込ませぬように。……そして、あの日、落ち込んでいたのはシャルルマーニュのためだったのだろう?」
「いやそんな、一度しか会ったことない相手に、そもそも殺したのはスペシャルなエクスキューショナーさんですし?」
案外どころか随分喜んでいましたね、まさか、自分のこの醜い顔がハイランド王国の役に立つなんてって。
お・ま・え・の・顔が~役にたつのさ♪
「お主が必要なのだ、13番目の席に!! アーサーは英雄だ。だからこそ出来ぬことが多い、見せられぬものも多い、この国にはお主の様なものが必要なのじゃ!」
「本当に? 必要ですか? もう戦争は起きないのに? それとも内戦でも始めるんですか? 嫌ですよ、付き合いたくない」
元フランク帝国は大内乱中、ハイランド王国の国力は大きく、いったい何を仮想敵にしているのでしょう?
マーリンのじっちゃんは耄碌しましたか?
「僕は11歳児ですよ? 貴重な青春時代をこんな何も起きない平和な国の副王なんて閑職で過ごしたくないですよ。もっと恋愛とかそういうのを楽しみたいですね。せっかくの平和なんだし副王にならその辺の箒でも置いておけば十分なんじゃないですか? あぁ、そうだ、アダマンダイトを一本刺しておきましょう。それで十分でしょ? 本当は一本につき山一つと同量の金を代価としていただくのですから大サービスです。アーサーもランスロットのことを思い出して政務に励むんじゃないですか? 望みは薄いですけど」
襲ってくる国などない。
内部分裂しようにも、英雄アーサー王とその二本の剣があるかぎり敗北は無い。
今、他の部族の手にある武器では勝ち目が無いからだ。
絶対の暴力が頂点に居る。
魔王シャルルマーニュがフランク帝国をその力で支配したように、英雄アーサー王もまた力で支配しているのだ。
アダマンダイトが普及すれば、その絶対性は揺らぎ、暴力に支えられた王権も揺らぐ。
一万五千のアダマンダイトを突きつけられればアーサーくんであっても流石に敗れるだろう。
善政は王権を支えはするが大黒柱はやはり暴力なのだ。ただ、それが隠されて見えないだけで。
「なるほどのぅ……戦争は、起きないか」
「えぇ、起きません。私の国には平和ボケって言葉があるのですが、戦争ボケでもしてたんじゃないですか?」
戦争は必ず起きる。ただし「いずれ」と言う言葉がつく。
ハイランド王国の「いずれ」はとても長いものになるだろう。
「では、キャメロットの地下に眠らせた、一万五千の兵を支えるアダマンダイトの装備類はなんのじゃ?」
「平和だからって次の戦争に備えておかないわけにはいかないでしょう? それにこの世界には何が起きるか解りませんから。どうか、封印のこと頼みましたよ?」
キャメロット城の地下、<魔法>による封印が施された部屋にカーンでの決戦で使われた装備は封印されている。
人間は、襲ってこない。だが、他のモノは解らない世界だ。
だから、備えは残しておく。
「なるほどの……カール。よくわかった。この国にお主は必要ない。それは素晴らしいことじゃ。ちなみに、副王の座は既に認められたものであるからな。辞任は出来ぬ。だが、ペンドラゴンを縛り付けることは出来ぬ。おぬしの好きに生きるが良いわ」
「言われなくても好きに生きますよ。僕の人生ですから」
まぁ、もう語るべきことも無いだろう。
一つ黙っておいたことは、カーンで使用されたアダマンダイトの装備にはおっさん達の汗と涙が染みこんだままで、封印が解放されるころには素晴らしい呪いの装備となっているだろうことだけであった。
「最後に一つ、聞きたいのじゃが、おぬし、本当に11歳か?」
「…………どうなんでしょ?」
「さぁっ!! 選ぶが良い!!」
並べられた200本のアダマンダイトの剣。
その中から最もアロンダイトに似た剣を探させます。
ウォーリァーを探せっ!!
「ぬううううううううううううっ!! どれも、これも、似て……全部寄越せっ!!」
「やるかっ! アホウ!! 一本だけだ!! さらにその一本は俺の手に渡るのだがな。ふはははははははははは!!」
イジメかっこわるい。……でも楽しいっ!! びくんびくん!!
200本の黒い剣を一本一本眺め、手に取り、振り、あーでもないこーでもないと迷い続けるアーサーくん。
お茶を片手にニヤニヤと、マーリンのじっちゃんと共に見物です。
うろうろ~うろうろ~うろうろ~うろうろ~。
決断力の無い奴だ。これでは国主失格だなっ!!
副王として教育してやろう!!
「カール!! やはり全部寄越せっ!!」
「やらんわっ!!」
結局、その一本を決めるまでに十五日の日々が掛かりましたとさ。
いやぁ、国主がこんなことに時間を避けるなんて平和って良いなぁ……。
あぁ、その間に溜まった政務については副王である俺が、責任を持って仕事をしませんでした!
そう、心を鬼にして、アーサー君を鍛えるためです!!
それこそが副王の役目!!
つらいな~、悲しいなぁ~、笑えるなぁ~。
後日、アーサー君が泣きついてきましたが副王として全無視してチェスでマーリンのじっちゃんを楽しみました。
「アーサー王、チェスの邪魔なんで仕事しててくれません?」
「仕事が終らないんだ! 書類が減らないんだ! どうしてこうなった!?」
いや、あなたが15日間もサボってたからですよ。
夏休みの最後になって泣きつかれても知りません。
ちなみに、チェス暦一万三千年の超ベテラン、マーリンのじっちゃん。
「ここ一万年は負け知らずなのじゃがのぅ」と、ほざいたので、グランドマスターが百万人乗っても大丈夫な先生と勝負していただきました。
200戦全勝。じっちゃんの誇りは打ち砕かれました。
こうしてマーリンのじっちゃんを引き留めることによって、誰もアーサーくんを助ける者はなく、彼は政務の辛さを覚えたのでした。
副王の仕事って辛いわー、ほんと辛いわー。俺、今日八時間しか寝てないわー。つれー。
王のいたらない点を補佐する=自ら勉強させる。
うん、副王の鏡ですねボクは。
さて、そんな楽しいキャメロット城の日々でしたが、そろそろお暇いたしましょう。
ちなみに、私のハイランド王国内での評価は、英雄アーサー王と魔王シャルルマーニュの決着に水を差し、その誇り高き復讐の権利を掠め取った盗人です。
さらに、一度与えたアダマンダイトを返させた屑やろうの守銭奴でもあります。
アダマンダイトが欲しいなら山のような金銀財宝を持ってくるんだな、あはははははは、と、少々過少評価されました。
山のような、ではなく、山そのものです。
比喩表現ではありませんから、当商会をご利用の際はお間違えなく。
そしてそんなクソ野郎でありながら副王で、それなのに全く執務はせず、毎日毎日、遊びほうけてるばかりの無責任野郎だそうですよ。
それでも、みんなの憧れペンドラゴンという事実が、憎しみを倍増させるのでしょう。
と、言うわけで自主的に国外追放とまいりましょうか。
まずは13番目の席にアロンダイト似のアダマンダイト剣をグッサリと。
これを見て政務に励んで欲しいものです。
そうして「寝取られ号」に乗り込もうとしたところ、アーサー君に見つかりました。
「国を出るそうだな?」
「何処でそれを?」
「我がドラゴン「ドゥースタリオン」に「寝取られ号」が別れの挨拶に来たのだ」
それはうっかり。
そうね、アダマンダイトについては話すなと言ったけど、出立について話すなとは言ってない。
そもそも兄弟のドラゴンとして別れの挨拶くらいしますわな。
「マーリンから聞いたぞ。どうやってかは解らないが、余とシャルルマーニュの戦いの際、カールが手を貸してシャルルマーニュの魔力を失わせたのだと。感謝はする。感謝はするが、殴らせろ。戦士と戦士の決闘を汚された者としての怒りだ!」
マーリンのじっちゃんめ、やはり始末しておくべきだったか。
「解りました。認めます。魔王シャルルマーニュから魔力を失わせたのは私です。どうぞ、殴って良いですよ。正々堂々受け止めます」
怒っているわけではないのだろう。
これはケジメなのだ。
王として、戦士として、騎士として……そして友としてのケジメなのだ。
「どうぞ、殴ってくださいアーサー王」
友として、戦友として、つけるべきケジメだ。
ちゃんと、俺も受け止めよう。
俺は、目を瞑り、彼の拳を待った……。
「では、行くぞ!! 歯を食いしばれっ!!」
アーサー王の拳が堅く握り締められ、俺の顔をぬるりんと滑った。
「………………………………………………っ????????」
ふふふ、生まれ変わった神製T・A・M・S・Dの次元湾曲回路、それは空間を捻じ曲げ、攻撃のベクトルを変えて身を守る装甲。
和名:うなぎバリア。
えぇ、いくらでもどうぞ? 正々堂々と受け止めますよ?
「これで終りですか? では、行きますね?」
「まてぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 納得がいかん!! まだだ、まだ殴らせろぉぉぉぉぉっっっ!!」
児童虐待がまた始まりました。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
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ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
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ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
「え? まだですか? まだ満足しないんですか?」
「まだだっ、まだっ、余は負けぬっ!!」
歯を食いしばり、瞳に炎を燃やし、拳を握り締める。
あぁ、その顔、見たことあるわ。
魔王シャルルマーニュと戦ってた時の顔だわ。
「行くぞおぉぉっっっっ!!!!」
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
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ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
肩で息をするアーサーくん。
途中からは明らかに<マナ>を利用した光り輝くシャイニングナックルであった。
だが、効かぬ。我には通らぬよ。巧夫が足りぬなぁ!!
「ん~? 効かんなぁ? 心が折れるまで、相手をしてさしあげましょうかぁ?」
「余の心は折れぬっ!! 魔王シャルルマーニュでさえ余の心は折れなんだのだぞ!! カールッ!! 貴様には折れると言うのかぁっ!!」
「えぇ、どうぞ? アーサー、余は君のその無駄な努力を愛そう。そして心が折れるまで付き合ってやろう。いくらでも……いくらでもなぁっ!! 余は、君の徒労を愛しているゆえ、いくらでも殴られようぞ!!」
挑発に完全に激昂したアーサー君。
両の拳に光を纏わせて乱打を始めました。
さて、心が折れるまであと何時間でしょう?
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。
ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬるりん。ぬる(ry
「余は、余は…………悔しいっ!!」
いや~まさか十四時間も続くとは。
今、俺の目の前でアーサー君が泣いております。心が折れたようです。
俺は脳内インターネットシアターで過去の映画をずーーーーーーっと見てました。
やっぱ映画のブレイブなハートは良いわ。
あの、歩兵同士が突撃するふりをして、立ち止まるところとか、最高にかっこいいわぁ。
あとハイラ○ダーね。
海外ドラマ方の、これも良かったわぁ、でも、まだ第二シーズンの途中だから続けてていいよ?
第六シーズンまであるから。
それに映画のほうもあるからまだまだいけるよ?
「余の……………………………………負けだっ!! 敗北だっ!!」
まったく、この俺を魔王シャルルマーニュ程度の小物と同列に扱うからこうなるのだ。
好きの反対は無関心。いい言葉です。
ず~っと無視を決め込みました。
結果、折れました。
それでも14時間良く頑張ったわ。偉い偉い。
「では、余の勝ちだな。くっくっく、余を魔王シャルルマーニュのような小物などと同じに扱うでは無いわ。我は超魔王カール大帝なるぞ。ふふふ、アーサー、貴様の無様を余は愛するぞ。ふはははははははははははは!!」
あぁ、完全に、おーあーるぜっとの形になって泣いております。
絶世の美少年の泣き顔、堪らない人にはたまらんのでしょうなぁ。
俺は興味ないけど。
うん、友としてこれで完全にケジメはつけたな。
俺が上で、お前が下な。
ふはははははははは!!
「では、余は去るが、最後に一つだけアーサーに良いことを教えてやろう。戦士と戦士の決闘を汚されたと言ったがな、シャルルマーニュは戦士ではなく「魔王」だぞ? では、さらばだ! 飛べっ「寝取られ号」よっ!!」
俺の言葉にハッと気付いた顔をして空を見上げるアーサーくん。
飛び立った「寝取られ号」の背から見下ろすと、両手で頭を抱えながら地面をゴロゴロと転がりまわっておりました。
「我が主カールよ。アレは……酷いのではないかな? 流石の我も、少々引いたぞ」
「心を鬼にして、副王の務めを果たしたまでですよ。……ふはははははははははは!!」
あ~、楽しかった。




