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第十話 奴隷バイバイ

 結果から言うと、フランク帝国は崩壊しました。

 従属国が全て独立を宣言したためフランク王国になりましたから。

 従属国を持たなければ王国ですよね。

 結果として現在のフランク帝国周囲のご様子は多数の皇子、皇女が正統フランク帝国を主張し、そしてそんな皇帝の血族を憎む者達が立ち上がり、ならびに元・従属国の宣戦布告の数々。

 ほんとうに、あの化物一人で成り立っていた帝国だったのですね。

 怖い怖い、あの化物を殺したアーサー君は本当に怖いナマモノです。


 あのカーンでの決戦の後、ハイランド王国軍は即座に帰国をきめこみました。

 対岸の火事、ドーバー海峡という遠い対岸で火事を眺めるために。

 火事場見物は遠くでするものです。 あはははは、超うけるんですけどーと皆で笑顔で見物とあいなりました。

 それから、アダマンダイトの装備類は貸与であって譲渡ではない旨を元々伝えてあったので、渋々ながらの返却と相成りました。

 買い取りたいという交渉には山と同量の純金を持ってこいとだけ答えておいたので、いつか貯金箱がいっぱいになったとき購入に参られることでしょう。

 ちなみに、旧時代における金の総産出量は50mのオリンピックプール一杯分だそうです。

 いつかアダマンダイトを手にするために金を貯金するおっさん達、頑張ってね?

 ハイランド王国内にてペンドラゴンの称号は便利です。交渉の大半がこれで済みました。

 思えば遠くに来たものだ。

 故郷から「寝取られ号」でおよそ七時間。

 スープが冷めてしまう距離ですから、とても遠い土地です。


 いやしかし、廃嫡された王子というのはつぶしが利かないナマモノですね。

 竜騎士にしかなれないなんて。

 む、無職じゃないよ? ホントだよ!?

 ほら、ゲームとかだとジョブって言うじゃない? 竜騎士! そう、俺は竜騎士!! そして愛ドラゴンは「寝取られ号」。

 …………ものすごーく駄目な気がする最終的幻想の四番作。

『カール様は竜に乗っておいででも、騎士として叙勲を受けていませんので「竜乗り」が正しい表現に相当すると思います』

 そうでした、私は騎士ではないのでした。

 そう、私は……奴隷商人なのだからっ!!

 ぐへへへへ、乱世になると奴隷の供給量が高まって商売どきよのぅ。


 グローセ王国によるフランク王国に対する宣戦布告は突如行なわれました。

 グローセ王国はフランク帝国と不可侵条約を結んでいても、フランク王国とは不可侵条約を結んでいないからだそうです。なんという言葉の綾。

 レオンハルト兄様を筆頭に、ではなく、あの玉座に座っていることが仕事であるはずの男、ヴィルヘルム禿陛下が陣頭に立ち指揮を行ないました。ライン川を渡河しベルンから南西へ、ジュネーブ方面へと進軍。

 過去のフランク帝国軍のジュネーブ攻略のおり、なぜか、いつのまにか、完全に破壊されていたベルン以西の城塞は未だ復旧がなされておらず、防衛線を張る間もなくほぼ十日でベルンからジュネーブを陥落。

 そして解放された西ハープスブルク王国領はグローセ王国に併呑されず、新たな王を抱いて西ハープスブルク王国として復権しました。

 現在、ハープスブルク王国を名乗る国が、東ハープスブルク王国に戻すかどうかで揉めているそうです。

 父上、いや、もう関係のないおっさんでしたっけ。 あのハゲは碌なことをしませんね。

 ちなみに現在の西ハープスブルク王国の国王は、あの懐かしの第一チェックポイントである第一城塞の司令官を務めていたラウリン卿です。

 かつて、レオンハルト第一王子と共に肩を並べ、黒カマキリさんとの激闘に身を投じた西ハープスブルク王国の大英雄です。

 彼には王家の血筋が入ってたのですねぇ。

 えぇ、入っていたと言ってしまえば入っていたことになりますから、入っていたんです!!(異論不可)



 悲しいことに黒カマキリさんの大移動によってベルン以東の人々は亡くなってしまいました。

 そして、ベルン以西の人達はジュネーブに避難しておりました。

 ベルン以西の土地はもともと黒カマキリさんが来る前に住人達が避難していたため、カマキリさんに蹂躙されることもなく農村などの生産業は生きておりました。

 つまりそれを利用するためには人手となる奴隷が必要になるわけでして、フランク帝国の管理の元、奴隷として元の村や街に戻され使役されておりました。

 可哀想。ほんとうに可哀想です。

 お人よしのヒルヒルの部下だった人達が儲け損ねて。



 ただし、生産業に携わらなかった人たちは違います。

 農奴としてフランク帝国内の西へ東へドナドナられました。ドナドナ仲間としては心苦しいものです。

 フランスという土地は64%が平野ですから、農奴がどれだけ居ても耕しつくせない土地なのです。

 この世界では生産業に携わらない≒軍人さん、ですので、鍬を片手に元気にやっておりました。

 元気な奴隷と言うものは実に魅力的な人材なので買い付けましょう。

 そこで先生の案内の下、購入された大農家の方々のお家にお邪魔します。


「あなたが購入された農奴なのですが、彼を七掛けの値段で買い取りたい。売ってください」

 先生のお力により、お幾ら万円で売買されたのかは把握済みなのです。

「七掛け? 馬鹿言ってんじゃねぇよ。購入したいなら二倍、いや、三倍払え。このガキが」

 なぜでしょう? 大抵の方々がコレに似た台詞を言うのです。

 11歳児のこの体が悪いのでしょうか?

 仕方が無いので「寝取られ号」が屋敷の目の前にドン!!

「貴方は奴隷の売買を認めているのですから、今から貴方と貴方の家族を奴隷として浚っても何の問題もありませんよね?」

 経済は不思議です。七掛けで良いと言ったのに無料になるのですから。

 世の中には不思議なことが多いものです。

 時折、「俺も連れてってくれ!!」と声を挙げる人達も居たので、先生の検索記録から犯罪者等ではない人に限り買い取ることにしました。

 不思議なことにこの人達も無料になるのですから、奴隷の主はどうやって商売をしているのでしょうか?

 ダンピング行為はいけないと思うのです。

 本当に七掛けで売るという人には七掛けで買ってあげるのに、奴隷売買の根本を壊してはいけないと思うのですけどね?

 七掛けの理由はUSEDだからです。適切な判断でしょ?


「我が主カールよ。最近、全く眠っていないのではないか?」

「8時間睡眠を取ったことと同じ効果がある便利な薬があるのです。だから大丈夫ですよ?」

「そうか、それなら良いが……」

 「寝取られ号」の心配は最もなのですが、お取り寄せしたタブレットは本当にそれだけの性能を持ちますから、本当に問題はないのですけどね。なーいしょ♪


 こうして農場、炭鉱、娼館、砦、貴族の屋敷、軍の奴隷部隊、etcetc、さまざまなところを回りました。

 いやぁ、ドラゴン砲艦交渉は便利ですね。

 タイミングが大事、最近は阿吽の呼吸で登場するようにまで成長しました。

 まず11歳児が舐められる、そこに怖いドラゴンさんが登場、意識が空白になったところで圧倒的に有利な条件(無料)を押し付ける。

 パーフェクトなビジネスですね。

 和名:にこにこヤクザビジネス。

 たまには接待としまして「寝取られ号」にブレスを吐をはかせて炎会芸を見せると金貨や銀貨のお捻りまでいただけます。

 いやぁ、接待は大事です。皆さんの懐が緩みますから。前世を思い出してしまいます。

 皆、ほんとうに気前が良いですなぁ、金貨や銀貨に宝石類がたくさん集まりました。


 ほんとうに奴隷バイバイって儲かるんですね。

 これは止められません止まりません。

 そういえば最近、歳のせいか「寝取られ号」が購入した奴隷をよくジュネーブ近郊で落としちゃうんですよ。

 まったく、老いと言うものは怖いものです。僕も頑張って脳トレしないとなりません。

 それにしても、泣きつこうにも泣きつく先のない乱世というものは実に便利なものですね?




「ふぅ、太公望太公望……」

 こうして作業が一段落こと全終了しましたので、湖畔で釣り糸を垂れておりました。

 奴隷バイバイの結果、フランク帝国軍の侵略以前に比べて83.7%の方々が西ハープスブルク王国にお戻りになられました。

 若干、西ハープスブルクと関係の無い人も居ましたが、帰りたければ勝手に故国へ帰るでしょう。

 いやぁ、大漁大漁。八割強も残ったならば国として再起は十分可能でしょう。

 このまま釣りも大漁と行きたいところなのですが、マーリンのじっちゃんがやってきて隣で釣りを始めるじゃないですか。

 ふふふ、あなたマーリンでしょ?

 湖で俺に敵うとおもったのですかな?

 相手をしてやりましょう、ふははははは!!


「その生き方、辛くはないのかの?」

「生き方ではなく世の中が世知辛いのです」

「なるほどのぅ……」

 沈黙が、しばらく続きます。

 まぁ、釣りとはそういうものですけど。

「泣きたくは、ならんのか?」

「男の子ですから」

「なるほどのぅ……」

 また、沈黙が続きました。

 魚が逃げないように黙って糸を見つめることが大事です。

「どうして、落ち込んでおるのじゃ?」

「人を殺したからです」

「なるほどのぅ……」

 話すたびに魚は逃げるので、静かにして欲しいのですが。

 年寄りは口うるさくて敵いません。

「どうして、糸に釣り針が付いておらんのじゃ?」

「魚を傷つけたくないからです。でも、夕食では美味しく頂きますよ?」

「なるほどのぅ……」


 夕食では美味しく食べると約束したのに、どうしてこの国の料理は美味しくないのでしょうか? いやホント。

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