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Q1:前話 グッバイ前世。ハロー今生。

ぼちぼちと、自分のペースで生きているナマモノです。

週一、いや、隔週……月に一度は、生暖かい目で見てやってください。

苛めちゃいやよ?

 転生キター!

 異世界キター!

 チートキター!

 無双キター!

 肉食ハーレムキター!

 そう思っていた時期が俺にもありました。


 三十前半にして動脈硬化による心筋梗塞、ぽっくりと逝ってしまったこの私。

 あんたメタボなんだからダイエットしなさいよと口うるさく言ってくれてた母ちゃんゴメンよ。

 こうして若くして死んでしまったことは悲しいけれど、こってり系を止められなかった自分が悪い。

 俺の馬鹿。

 今生では野菜もちゃんと食べて好き嫌いなくデトックスにもダイエットにもBMIにも気を付けるよ。

 残してきた両親には悲しく辛い思いをさせるだろうけども、兄や弟が支えてくれることを祈ろう。

 本当に、すまない。

 ハードディスクその他諸々の夢の産物については弟と交わした紳士協定が守られることを祈るだけだ。

 グッバイ前世。ハロー今生。


 さて、そんな過去世の後ろ向きな話はさておき、今生についての前向きな話に移りたいと思う。

 以下の質問にお答えください。


 Q:あなたはニトログリセリンの製造法を知っていますか?

 A:NO

 Q:あなたは革新的な農法を実践できる段階で習得していますか?

 A:NO

 Q:あなたは透明なガラスや曇りの無い金属鏡の製造法を記憶していますか?

 A:NO

 Q:あなたは炭素鋼を作るにあたっての成分、およびクロムやチタン等の原材料を特定する技能を有していますか?

 A:NO

 Q:あなたは……

 A:NO! NO! NO!


 職業柄エクセル・ワードはもちろんパワーポイント等の操作、あとは普通自動車免許を持ってます。

 あ、免許はミッションですから古い社用車でも大丈夫です。

 くそっ、現代知識が役にたたねぇ。

 いや、現代でしか役に立たない現代知識しか持ってない。

 これが農家の生まれなら農業無双も出来たのでしょうが無い袖は振れない。

 ジャガイモの収穫量が小麦に比べて多いとか、連作障害があるとか、そういった漫画レベルの知識はあっても、それを実践するまでには高い高い壁があるものです。

 そもそもジャガイモを探すところからだ。異世界に「あれば」の話だが。

 現代知識で無双する? 無理無理。生兵法は怪我の元。

 孫子の兵法? 敵を知り己を知れば百戦危うからずという一文しか知りません。

 そして己の無力はよーく弁えております。


 しかーし、今生の俺は生まれからして王族の三男というチート職業。

 さらに二人の兄と一人の姉が多重かつ特級の<加護>持ちというリアルチーター。

 <加護>というのはいわゆる魔法属性のようなもので、さらにその強度を五級から一級までと規格外として付けられる特級の六段階で表現される異能力のことだ。


 <剣>の特級加護を持つ二十歳の長兄、レオンハルト・フリードリッヒ・フォン・グローセの剣技は凄まじく、文字通りに山を砕き海を割るのだから洒落にならない。毎日の素振りで大空の雲が細切れになっていくのは爽快でもある。レオ兄さまは他にも<戦・力・太陽>の加護を持ち、いずれも特級という「黄金の獅子」という二つ名の方が霞んでしまうほどの金髪イケメンチーターだ。

 だって、獅子なんて雑魚じゃない。


 <弓>の特級加護を持つ十八歳の次兄、ジークフリート・ルートヴィヒ・フォン・グローセの弓は目標に必ず命中するという一見地味なチートだが、空に放った一本の矢が幾万にも分裂して幾万の標的の頭部や心臓に必ず命中するあたり、この世界の質量保存則がどうなっているのかが心配になる。金の矢を放たせれば金が万倍になるのだろうか? 他にも<影・月>という特級加護を持ち「月影の聖弓」という二つ名を持つ銀髪イケメンチーター。

 荒々しく勇ましいレオ兄さまとクールで知的なジーク兄さまは、城内城下の全女性を騒がせる二大巨頭である。


 そして十五歳の長女であるルイーゼ・フォン・グローセは宮中男性の憧れの華だ。

 おっとりとした天然と、たまにでる悪戯心が堪らない彼女だが、ルイーゼ姉さんも特級の多重加護持ちである。<槍>をその手に取れば鋼鉄の鎧を豆腐を貫くように貫通し、その先の城壁にまで大穴を空けてしまう始末。その他にも<結界・生命>という二つの特級加護を持っている。金糸の長く美しい髪、そして巨乳の我が愛しの巨乳の姉だ。大事なことだから何度言っても良い。巨乳だ。弟特権でふかふかを何度も堪能させてもらった巨乳の姉だ。十五にして巨乳の姉だ!! むしろもう<巨乳>が加護で良いんじゃないかな!?


 ここまで兄さまや姉さまが化物、もとい傑物揃いならば、俺こと三男カール・グスタフ・フォン・グローセに与えられる加護への期待はいやがおうにも高まるばかりである。グローセ王家には珍しい黒髪、黒い瞳、そして彫りの浅いのっぺりとした顔立ち、醤油系のアッサリとしたお蕎麦やおうどんがとっても似合いそうな雰囲気。あれ? 西欧風の遺伝子はどこにいった?


 双子の妹にあたる次女のシャルロット・フォン・グローセは同じ10歳にして銀の髪に白磁の肌、紫の高貴な瞳に月の女神を想わせる美貌を兼ね備えているのに、なぜだ?

 僕の周囲は中世ファンタジー世界なのに、何故僕はデフォルト日本人なのでせう?


 えぇ、嫌な予感はしていたのですよ。

 転生キター!

 異世界キター!

 チートキター!

 無双キター!

 肉食ハーレムキター!

 そう思っていた時期が俺にもありました。

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