はじまりはじまり
魔法都市デュミナスに存在する。世界でただひとつの魔法を学べる学園。それが学園デュミナスだ。
そこでは宮廷魔術師や英雄に憧れる少年少女が日々厳しい鍛練に励んでいる。
そんな学園デュミナスにある騎士科の教室からのんびりと空を見上げている少年が居た。
真っ黒な黒髪にちょっと吊り目がちで血のように赤い瞳。この国では黒髪は珍しいので一度会えば顔を忘れる事はないだろう。
窓の外に広がるのは青い空に白い雲。どこまでも平和な光景だった。ふと教壇の方に意識を戻してみると淑女然とした風貌の女性が貴族のマナーについての講釈をしていた。
「であるから貴族にとって(以下略」
一瞬で興味を失った少年はまた視線を窓の外に移した。
何故騎士を目指す自分が貴族の機嫌取りにしか使えないような講義を受けなければいけないのか、はっきり言って少年には全く理解が出来なかった。
自分は力を求めて学園デュミナスの門を叩いた筈なのに。
考えるのも馬鹿らしくなった少年はこの貴重な時間を睡眠に当てる事にしたらしい。
隣の席の友人に授業が終わったら起こしてくれるように頼むと少年は死んだように深い眠りに堕ちていったのである。