1 黄の華市国
<幸浦 漣 黄の華市国>
ずっと昔のこと。
ここは、「日本」という国の一部だったらしい。
その「日本」という国が内戦状態になり、4つの市国に分かれた。
それらは赤、青、黄、白の華国と名付けられた。
その所以は古い書物に記されている。
『……そして科学者達は、土によって咲く花の色を変えることに成功した。信じられないことではあるが、その土に植えればどの種類の花でもその色になる。例えば、薄桃色が当たり前の桜だが、今私の目の前にある桜はなんと黄色である……』
桜が黄色なんて、というより花が黄色なのは当たり前のことで、そんな時代があったなんてにわかには信じがたい。まばらな色で花が咲くなど、毒々しい光景じゃないのか?
『この日本で内乱が起きたことにより、国が4つに分かれることになった。その際にこの土をつかい、咲く花の色によって領土がわかるようにしたのだ。……』
これが本当かなんて僕にはわからないけれど、実際うちの国に咲く花は全て黄色なんだ。他の色で花が咲く光景を見てみたい気もするけれど……。
バシン!
「よっ!れん!」
いきなり肩を叩かれた…痛い…
「もー、何ですか突然~…れおさんやめてください…」
「まーまー、いーじゃねえか!あはははは」
豪快に僕の肩を叩き、豪快に笑い飛ばしているこの筋肉ゴリ…じゃなくて、筋肉ムキムキのこのお方は
「あ?今むっちゃ失礼なこと考えて無かったか?」
「いいえこれっぽっちも」
「そ、そうか…?」
筋肉ムキムキのこのお方は礼於さんだ。僕のその…認めたくないけど…年齢的に…一応先輩警察官…
「おい?またなんかめっちゃディスられてないか!?」
「そんなわけないですよ~」
「そ、そうか…???」
この人ははっきり言って絡みがうざい。
それこそ巡回中に話しかけてくるじさまやばさま並みにうざい。
「な、なぁれん…?」
「巡回中のじさまやばさまについて考えていただけですよ!」
「あ、あぁ!そうか!お前いつも声かけられまくってるもんな!」
そう。昔は警察と言えば物騒な事件に対応するものだったようだけれど、今の警察、つまり僕たちは違う。
事件なんて起きないから、まぁ、言ってしまえば形だけの警察だ。街を巡回しているくらいのものだ。しかしその時に話しかけてくる高齢者が…
『あっらー、漣君!大きくなったわねぇ~、警察になったのぉ!頼もしいわねぇ~。』
とか
『かわいかねぇ~、いくつ?』
とか、すこぶるめんどくさいのだ!
「それにお前は女の子達に逆ナンされるしなぁ」
そう。何よりもめんどくさいのがこれだ。
『え、警察!?えまって可愛くない?何歳?』
よく聞けばお年寄りと同じ事を言ってますよ~、なんて心のなかで突っ込んでたら
『ねー、遊びいこう?名前なんていうの?彼女いる??』
『いや、あの今お仕事してるんでちょっと…』
『大丈夫ってすこしくらい!』
『いや、あの……失礼しましたぁ!!!!!』
といって全力疾走で逃げるのが警察の僕の日課だ。ある意味平和ではない日々を送っている……。
「いいじゃないか、漣!俺なんか通るだけでみんな怖がって逃げていくんだから………うぅぅ」
ドンマイとしか言いようがないけれど…こうも筋肉ゴリラでは仕方ない…
でもこう見えて心は傷つきやすいれおさんは、隅っこで体育座りを始めてしまった。
……やっぱめんどくさい。放置しよう。