事変
VRMMOシステムが完成したのは極々最近の事だ。
VRMMOシステムに危険性が無いか、それを調べるための被験者であった俺はダンジョン作成、ダンジョン攻略型VRMMO「ラビリンスワールド」をプレイしていた。
主な実験はVRMMOシステムによる思考加速における脳への影響だ。
俺たち被験者の検証によって規定通りの使い方をすれば10倍速迄は危険性は無く、一般的に発売される物は最高速5倍になるらしい。
俺が被験者となったのは無論社会貢献だとか医学の為とかそんな高尚なものではなく、報酬が魅力的だったからだ。
検証時プレイしていたデータの保存及びVRMMO機器の製品版とある程度の金だ。
当時大学生だった俺は知り合いにこの話を紹介された時、一二もなく飛びついた。
俺のプレイしていたゲーム「ラビリンスワールド」はプレイヤーはそれぞれ二つのアカウントを持ち、一つはダンジョンマスター用、もう一つは冒険者用としてプレイできる。
基本オフラインでも出来るが、オンラインでのダンジョン同士の対戦や、冒険者として誰かのダンジョンを攻略するなど様々な要素がある。
検証時の10倍速で過ごしたVRMMO生活のおかげでゲーム正式サービス開始時にはストーリーはクリア済で、後はひたすら強化の毎日だった。
運営から他のプレイヤーの目標にと設定され、一年を過ぎたあたりから俺と十分に戦える猛者(廃人)が現れ始め、ゲームが一層楽しくなった。
そんなある日の事だ。
何時ものようにラビリンスワールドにログインする…
ラビリンスワールドに降り立った瞬間に視界全体にノイズが走った…
なんだ?バグか?こんな大規模なバグは初めてだ…何が起こるか分からん、ログアウトしておこう。
ん?ログアウト出来ない?
視界のノイズは次々と広がっていく…
ノイズが俺の視界を全て埋めた瞬間、突如視界がブラックアウトした。
…こうして1人の人間が世界から消えたのだった……