第六十三話 忠勝と半蔵
偃月刀の精霊と対峙する忠勝。蜻蛉切の切っ先を顔ぐらいに落として上段の構えを取っている。
「お前も織田家の人間か!」
偃月刀の精霊が隙を見せることなく、威圧するかのように聞いてくるが忠勝は平然としている。
「いや、某は徳川家の者だ」
「ちっ、狸の援軍かよ」
忠勝の眉が少し反応する。どうやら家康を狸呼ばわりされた事に怒りを感じたらしい。だが忠勝は冷静に現状を判断する。
「朱蘭、そなたは信長公の元へ」
「はっ」
忠勝の傍に控えていた朱蘭だが、家康を狸呼ばわりされた忠勝は一騎打ちが望みらく。主の望みを感じ取った朱蘭はその場を後にして、武田の精霊が取り巻いている信長公の元へ向かった。
そして朱蘭を見送る事無く忠勝は一気に飛び出す。そして間合いの少し外から軽く跳び、相手に向かって蜻蛉切を振り下ろした。
突然の奇襲に精霊は驚くが、それでも攻撃をかわして見せた。
だが忠勝の攻撃はこれで終わりではない。地面に突き刺さった蜻蛉切は幾つもの地割れを引き起こし、そこから炎を噴出させる。
「こんな物効くかよ!」
偃月刀を振るうと精霊の周りには風の壁が出来て炎を完全に遮断してしまった。
「だが、これならどうだ!」
切っ先が地面に突き刺さったまま蜻蛉切を振り抜くのと同時に、幾つもの炎で焼け爛れた岩が飛んでいった。
「くっ!」
これは風の壁でも防ぎきれない。しかたなく避ける事に専念する精霊だが、ふと後ろにさっきを感じた。
咄嗟に偃月刀を後ろに出す精霊。そして偃月刀と蜻蛉切は剣戟音を鳴り響かせる。
「お前、どうやって後ろに回った」
鍔迫り合いをしながら精霊は忠勝に尋ねた。よほど後ろに知ることが不思議らしい。
「某の属性は火山。故に燃えた岩に乗るなど動作も無い」
つまり忠勝は自分が隠れられるほどの岩を幾つも飛ばして、完全に陰になる岩のうえに乗っかってここまで移動したに過ぎない。
「よく燃えなかったものだな」
「言ったであろう、某の属性は火山。地と火を自在に操る事が出来る。炎の上に立つことなど地に立つのと同じ」
「なるほど、そういうことか」
火山の属性は火と地の力を持つ。もちろん専門の属性には及ばないが、組み合わせる事でそれ以上の力を持つ事が出来る。
「だから焼けた岩の上でも平気という事か」
「それだけではないぞ」
忠勝は笑みを浮かべると一気に力を解放する。
突然地面から噴火のような炎が幾つも噴出し、それは忠勝もろとも飲み込んでいった。だが偃月刀の精霊は咄嗟に察知したのだろう、灼熱の炎に体の半分を焼かれながらも何とか逃れた。
天を突くように吹き上げる炎の柱は未だに止まることなく、精霊は炎が無い場所から辺りを窺う。
忠勝が火山の属性を持っていることはとうに知れている。だからこれしきの炎は何とも無い。だが、やっかいなのは炎が忠勝自身を覆い隠して姿が見えないことだ。
もちろん忠勝もそれを狙っている。
吹き上がった炎の勢いに身を任せ、遥か上空まで跳んだ忠勝は精霊の位置を確認すると後ろにある炎の柱に飛び込む。
火柱を一気に舞い降りる忠勝。そして着地するのと同時に蜻蛉切を突き出して横に薙いだ。
むっ、しくじったか。
手応えが無かった。どうやらよけられたようだ。
そしてすぐに忠勝に向かって偃月刀が振るわれる。
攻撃が行われたので忠勝の位置が把握できたのだろう。咄嗟に炎の柱から出て偃月刀をかわす、だが相手はそれを狙っていた。炎から出れば忠勝を確実に捉える事が出来る。
一気に攻勢に出てくる精霊。忠勝は退きながらも打ち合うが、まったく引けを取っていない。後退しながらも互角に渡り合っている。
忠勝は相手の攻撃を避けるとなるべく距離を取るために後ろに飛ぶ、だがそれでも相手がすぐに追いつける距離だ。けど、それだけでよかった。
蜻蛉切を地面に突き刺して一気に炎を噴出する。地面は焼け爛れて真っ赤になったところで迫ってきた精霊に向かって投げつける。
何かをやってくることは察していたのだろう、精霊はなんとか焼かれた岩を避けきる事が出来た。だが、その次までは読めなかったようだ。
避けきった岩は地面に幾つも転がっているが、その一つ一つが炎を精霊に向かって噴出させた。
突然の攻撃に精霊は避けるしかなかった。そして炎をは縦横無尽に噴出している。
「くっ、一体なんなんだよ。……そうか!」
ここまで炎が走ると動きが制限させれてくる。つまり忠勝の狙いは動きを止めた所を仕留めると精霊は読んだ。
「思い通りにさせるかよ!」
精霊は風を一気に集中させる。
風の集まる力は最速を有している。精霊の手に集まった圧縮された風を一気に開放させる。そして突風が巻き起こり炎を吹き消していった。
だが、これも忠勝が予想していた事だ。
炎が消されたか。だが、まだ足りないようだ。
再び蜻蛉切を地面に突き刺すと炎が巻き起こる。だが今度は柱状の炎ではなく、忠勝と精霊を囲むかのように炎の壁が展開した。
「くっ」
完全に炎に囲まれた精霊は動きを制限させるが、炎の属性を持つ忠勝には何も影響が無い。
更に忠勝は中央にも巨大な火柱を生み出す。辺りは熱気で包まれて景色が歪んで見えるほどだ。
そんな中で忠勝は火柱を通り越して、一気に精霊へと迫る。
なんとか忠勝の攻撃に反応する精霊。忠勝は猛攻を繰り出して精霊を一気に追い詰めていく。
だが相手も負けてはいない。出来るだけ攻撃の一点に力を集中させて忠勝の猛攻と渡り合っている。こうでもしないと押し負けてしまうのだろう。
けれども忠勝が優勢なのは確かだ。偃月刀の精霊には決め手が無いため、更に風を巻き起こし炎で自分の周りを囲み隠れ蓑に利用する。
だが炎は縦横無尽かつ多種多様に入り乱れる。辺りの熱気は更にまして灼熱地獄のようだ。
そろそろだな。
機が熟した。忠勝は一気に勝負に出るために大地を一気に吹き飛ばし、大量の炎も一瞬にしえ消え去った。
そこにすかさず忠勝は一撃を入れる。だが炎の障害物は無い、忠勝の動きは丸見えで備える事は簡単だった。
突き出される蜻蛉切。偃月刀の精霊はカウンターを狙うべく蜻蛉切を弾こうとする。
タイミングを合わせて蜻蛉切を偃月刀で打ち付ける。
(なんだと!)
精霊が驚くのも無理は無い。なにしろ偃月刀を蜻蛉切に打ち付けたはずだったのだが、まるで手応えが無い。
そして精霊が全てを知ったのは蜻蛉切が胸を貫いた時だった。
「ぐはっ、ぐっ、なぜ?」
「分からぬか、先程の炎で辺りは揺らいでいる」
「そういう……ことか」
つまり簡単に説明すると蜃気楼の応用である。
忠勝は蜃気楼の中でも下位蜃気楼を利用した。これは空気が熱せられ密度が低くなると実際の物より下に見える現象だ。
つまり精霊が見た蜻蛉切は実際の位置より上にあり、よって空を切り本物の蜻蛉切には当たらなかった。
もちろん、忠勝はこれを狙って大量の炎を出して辺りの温度を上げた。かなり派手な攻撃方法だが本当の狙いを悟らせない為には有効だ。火山の属性を持つ忠勝だから出来た攻撃だろう
蜻蛉切で貫かれたまま精霊は忠勝に目を向ける。
「本多……忠勝だったな?」
「うむ」
「その名、後世忘れずにいよう」
そう言い残して偃月刀の精霊は光の粒子となり消えて言った。
一方の半蔵はというと、未だに矢を一本も食らうことなく。だが間合いを近づけられないでいた。
放たれてくる矢は全て飛苦無という、現代で言う投げナイフのようなもので打ち落としているが、それだけで後はどうする事も出来ない。つまり防ぐだけで精一杯のようだ。
せめて間合いを詰められれば。
それは閃華も思ったことだが、半蔵もその点で苦労しているようだ。相手は適正距離を決して崩そうとはしない。こちらが特攻を試みれば逃げの一点にされてしまう。そのため、半蔵も距離を詰めることが出来ずに、放たれた矢を打ち落とすのが精一杯だった。
このままでは無理、なら忍びの技を使うか。
両手に合計八本の飛苦無を持つと同時に放つ。さすがにこれには相手の精霊も避けるのが精一杯だろう。その間に半蔵は次の準備をする。
半蔵の周りに浮かぶ幾つもの虚数空間、その数は二〇を超えている。そして両手には一二本の飛苦無。
そして先程放った飛苦無を弓の精霊がかわしたところで半蔵は一気に攻撃に出る。
まずは両手に持った飛苦無を一斉に放ち、虚数空間からも連弩のように飛苦無が発射される。
数多く迫ってくる飛苦無。さすがの精霊もこれには如何する事も出来ず、避けきろうとするがどうしても何本か食らってしまった。
だが相手もやられっぱなしではない。攻撃が止まるのと同時に弓を構え、出来る限りの矢を作り出した。その数は先程の半蔵が行った攻撃数と引けは取らない。
そして矢を放つと無数の矢が半蔵に向かって放たれた。
半蔵はというと先程の攻撃ですぐに動ける状態ではない。つまり、交わしきることは不可能……なはずだった。
無数の矢は半蔵に向かって一直線に向かっていくが、半蔵に当たる直前にその姿が消えた。無数の矢は半蔵がいた場所を通り過ぎていく。
突然の事態に戸惑う暇も無く、本能的に回避運動を取る精霊。
突然消えたとなれば何かをやってくると思ったのだろう。それに矢が一点に集中していてくれため、反撃に出やすいのだろう。そして反撃に使うものとすれば一つだけである。
それは属性。たぶん半蔵は物理移動、又はそれに属する属性を持っているのだろう。そうなると弓に精霊は戦術を変えざる得ない。
下手に矢を放てば、また先程のよう姿を消されてしまう。そうなると取るべき手段は一つ。
弓の精霊は精霊武具である弓その物の形を変える。形は弓その物だが、上下の刃となっている。これにより遠距離攻撃も出来るが接近戦も出来る。
つまり遠距離攻撃だけを諦めて接近戦も考慮に入れるようだ。
たしかに半蔵の能力は遠距離の戦い方だけだと不利だろう、だから接近戦も交えるしか得ない。
幾つもの矢を放ち、その後を追って精霊が半蔵に迫る。
半蔵はというと精霊武具である忍装束をまとい小太刀を二本手にしている。そうやらこれが本来の戦闘スタイルらしい。
小太刀で矢を薙ぎ払うと小太刀を交差させて相手の弓を受け止める。このまま鍔迫り合いになると思いきや、弓の精霊は弦を引き絞る。
咄嗟に体を回転させて相手の後ろに回る半蔵。半蔵が立っていた場所には数本の矢が突き刺さっていた。どうやらゼロ距離射撃もできるらしい。
本来なら距離を取るべきなのだろうが、それでは的になってしまう。半蔵は間合いを開けることなく一気に攻めかかる。
弓に刃が付いているとはいえ補助に過ぎないのだろう。精霊は半蔵の攻撃を防ぐだけで精一杯だ。
だが防戦だけで終わる相手ではない。
半蔵の攻撃をしのぎきった時だった。精霊は回避運動と同時に弦を引き絞って一気に矢を幾つも放つ。ゼロ距離射撃が出来るのだから、こんな事は簡単に出来るのだろう。
思っても見なかった攻撃に半蔵の動きが一瞬だけ遅れる。だがそこは忍、なんとか避けるが完全に避けきる事が出来ず、何本かかすってしまった。
だがそれだけで半蔵の動きが鈍るわけではない。何事も無かったように攻勢を続ける半蔵。
相手の精霊は多少の隙が出来ると思っていたのだろう。だが早すぎる半蔵の攻撃にまた手詰まりになってきた。
こうなってはしかたないのだろう、相手の精霊は一気に勝負に出る。
攻撃の継ぎ目で一気に後ろに下がる精霊。だが半蔵もすぐに距離を詰めてくる、それが狙いだと気付かずに。
弓を引き絞り半蔵を狙い矢を放つ。
半蔵は同じように矢を叩き落すが、小太刀が矢に当たった瞬間に爆発。辺りは爆風と熱気が充満した。
……見失ったか。
爆発の衝撃で噴煙が上がり、半蔵の周りは何も見えなくなっている。だがそこは忍、辺りに注意を払う。
……上!
気付いた時には頭上から大量の矢が降り注いできた。噴煙で相手が見えないのは精霊も同じ。だからこそ、あえて狙いをつけずに大量の矢を上から注ぐように放ったのだろう。
やるか。
上から注いでくる矢をまったく避けようともせず。半蔵は力を一気に溜めて属性を発動させる。そして噴煙の中には大量の矢が降り注いだ。
一方、噴煙の外では精霊はまったく油断をしていなかった。この程度で倒せる相手ではないし、狙い打つ事も出来ない。先程の降り注いだ矢は全て半蔵を噴煙の中から出すためだ。
「んっ?」
とうに矢は降り注いだはず、だが一向に半蔵は噴煙の中から出てこなかった。もしやと思い、噴煙の向こうにも矢を連発するが当たった気配が無い。
これはおかしい。そう思って接近戦に備えようと弓を長刀のように構えたときだった。
突如精霊の背中に突き刺さる半蔵の小太刀。
「ぐはっ、な、なんだと」
突然の事態に痛みだけは伝わるが状況は理解できない。はっきりと状況を理解した時は半蔵が口を開いた時だ。
「終わりだ」
後ろを振り向くとそこには半蔵が小太刀を二本、背中に突き刺している。
何故こうなったかなど分からない。先程まで半蔵は噴煙の中にいたのだから。
「な、どうして、そこにいることができる?」
半蔵は表情を崩すことなく、消えていく精霊に向かって説明した。
「我が属性は空、空間を知り移動できる属性だ」
「なるほどな……そなたにとって空間移動など簡単に出来るということか。では、なぜ今までやらなかった」
「あまり属性を見せびらかせると警戒される。だから必殺の時以外は使わん」
「そうか……それも、そうだな」
半蔵は更に小太刀を突き刺すと精霊は軽くうめき声を上げて、光の粒子となって消えていった。
その頃閃華達はというと、辺りを囲む精霊はすでに八〇を超えているようだ。それでも一気に攻めかかれるわけではなく、閃華達が疲れるのを待っているかのように押しては退いている。
くっ、まずいのう。このままではいつまで持つか分からんぞ。
最初から戦っていた蘭丸と人間の小松にはすでに疲労の色が出ていた。
大技を使いたいところじゃが、それでは皆も巻き込んでしまうからのう。大きすぎる力というのも使い勝手が悪いのう。
だが形勢は悪くない。忠勝の精霊である朱蘭が来てくれたおかげでなんとか戦線を維持できているからだ。
だがこのまま時間が経てば形勢は悪くなるばかりだ。
くっ、一体いつまで待たせるつもりじゃ。いい加減に来て欲しいんじゃがのう。
来るはずの援軍。それは未だに来ていない、そのため閃華達だけで戦うはめになっている。
閃華は隙を見て辺りを見回す。もちろん援軍の確認のためだが、逆に嫌な物が来てしまった。
くっ、武田め。信玄亡き後でもこれだけの精霊を有しておったとは。
閃華が見たのは武田の援軍。たぶん今いる精霊と合わせれば百になるだろう。それほどの精霊を有しているのだから武田が最強といわれる所以も分かる。
信長の元へ向かってくる二〇ほどの精霊。だが突然その精霊達の足元に地割れが走ると一気に炎が走る。
なんじゃ!
斬りかかって来た精霊をさばいた閃華はそちらに目を向けると、忠勝が武田の援軍を叩いてくれたようだ。
全てを倒したわけではないが、半分ぐらいは減らせたらしい。
そして閃華の元へも援軍が駆けつける。
はっきり言って閃華を囲んでいる精霊だけでは、閃華は倒せないだろう。だから隙を窺おうと様子を見ていたのだが、その三分の一が一気に切り伏せられた。
これには驚く閃華。
倒れた精霊の後ろには半蔵が立っていた。そして閃華と合流する。
「遅くなった。まだ戦えるか」
「私は大丈夫じゃ。じゃが小松がまずいかもしれん、そっち行ってくれるか」
「承知。それから先程確認したが、織田の軍勢が近くまで来ている」
それだけ言うと半蔵はその場から消えると小松の傍に移動する。
半蔵の属性である空は空間を意味している。つまり力が及ぶ範囲なら空間内で行われている会話や動作が知る事が出来る上、空間移動も出来る。つまりテレポートと考えていいだろう。
それは小松の属性とは違ってくる。小松は影や闇を使って移動するが半蔵は空間を移動する。
だがこれにも短所はある、間に遮るもの、つまり壁などがあると空間を繋いで移動することが出来ない。便利そうな力ほどある程度の制限が付くのが属性の規則らしい。
ちなみに小松の属性は繋げる事が出来れば間に何があろうと移動することが出来る。だがそのためには影や闇が必要となってくる。要するに一定の場所にしか瞬間移動できないということだ。
やはり属性というのも万能では無いという事だろう。
そして半蔵の言葉を聞いた閃華はやっと笑みを浮かべた。
やっと来たか。
それは今まで閃華が待っていたもの、つまりこの戦いに終止符を打つ最後の一手。
そして織田の援軍は閃華が思っている以上よりも早く来た。
信長の周りにいる精霊達が吹き飛ばされ、切り伏せられる。
「大丈夫ですか、御館様!」
泣きそうな顔をしながら秀吉が信長に向かって叫ぶ。だが信長は軽く笑みを返すだけだ。
「ふっ、サルめ、やっと来たか」
信長の無事を確認した秀吉は契約した精霊達に命令を出す。
「ヨッタ、ゼッタお前達は御館様を守れ。エキサ、フェムトお前達は儂に続け!」
それぞれ美女の精霊達に命令を下した秀吉は一気に戦場へと突っ込んで行く。
どうやら秀吉と契約を交わした精霊達はこの国で生まれた精霊ではなく、海の向こうで生まれた精霊達らしい。それに例外に無く、それぞれの精霊達は美しかった。秀吉が精霊と契約した事がよく分かるという物だ。
これで織田方の精霊と契約者は十一人。だが信長はもちろん、閃華、忠勝、半蔵と一騎当千の精霊達がそろっている。
そして武田方はというと、精強な精霊は先程忠勝と半蔵に倒されてしまった。つまり、現在信長を囲んでいるのは三下に過ぎないが、これだけの数が揃うとやっかいだ。
だがそんな中でも閃華と忠勝は猛威を振るう。さすがに戦闘に疲れてきた小松と蘭丸は信長の元まで下がり警護に当たっている。そして秀吉達はそれぞれ組んで先頭に臨んでいる。
その中でもやはり重要な役割を果たしているのは半蔵だろう。半蔵は遊撃兵となり相手の連携を防いでいる。そして相手が崩れたところに忠勝か閃華が一気に突っ込み切り伏せて行く。
その戦術で武田に大打撃を与えた。
そして武田も精霊がもういないのだろう。これ以上の援軍は無い、つまりここにいる精霊を倒せばこの戦は勝ったも同じだ。
だいぶ精霊の数も減り、秀吉も一度信長の元へ戻った。
「そういえばサル」
「はっ、なんでしょう?」
「鉄砲隊の指揮は誰が執っている」
「それは家康様に任せてきました。林様では鉄砲はともかく鉄兵までは使えないと思いまして」
「ふっ、サル知恵とはよく言った物だ」
それは信長の褒め言葉なのだろう、そして秀吉もそれは良く分かっていたからこそ満面の笑みを浮かべる。
そして信長は改めて回りを確認する。
武田の精霊は大部減り、その数は総数の半分以下になっていた。
「小松、蘭丸、まだ戦えるか?」
「はっ、この命尽きるまで」
「御館様のためならどこまでも」
小松と蘭丸はそれぞれ戦える事を主張する。それを聞いた信長は会心の笑みを浮かべる。
「もう守りは不用。いくぞ、一気に武田を撫で斬りにする!」
それは総攻撃の合図。
周りの者達は頷くと一気に駆け出した。
閃華と忠勝と半蔵、それから秀吉の精霊二人が前線に出ていた為。信長を含めて七人は一気に敵陣へと切り込んで行った。
信長を中心に切り込んでいく一団。それは信長を司令塔に完璧な連携が取れた戦い方だった。
閃華達との遊撃兵的な戦い方とは違い、戦としての戦い方だ。それ故に崩しにくく、相手をする方も完璧な連携を要求されるのだが、先程の戦いで武田方の司令塔は忠勝と半蔵に倒されてしまった。
つまり、今の武田は総崩れに近い。
そんな中での突撃である、武田の士気は下がる一方だ。
例え精霊とはいえ逃げ出す者もいた。そして織田方は怒涛の勢いとなり一気に武田の精霊達を突き崩しす。
閃華、忠勝、半蔵の遊撃兵が武田の連携を突き崩し、信長を始めとする一団が一気に相手を殲滅する。こうなってくると勢いは完全に織田方にある。最早数などは関係ない。今の戦場に必要なのは連携と勢いだけだ。
そして、それを完璧に手にしたのは信長だった。
それからあまり時を置かず、武田の精霊達は壊滅した。さすがに何人かは逃げたようだが、数の油断があったのだろう。まさか織田方がここまでやるとは思っていなかったらしい。
そのうえ閃華だけでなく、忠勝と半蔵という一騎当千の精霊まで参戦してきたのだから三下の精霊たちにはどうにもできなかったようだ。
これで精霊戦は終わりを告げた。後は長篠で行われている戦だけだ。
武田騎馬隊は未だに馬防柵を超える事が出来ずに鉄砲と精霊砲の餌食となっている。それに精霊砲にも工夫が施されていたらしい。
属性を組み込む時にさまざまな属性を入れたらしい。だから着弾するのと同時に炎上する物や雷を撒き散らす弾丸も発射するようだ。
そして精霊達を撃破した信長が再び戦に目を向けたときにはすでに変化が起こっていた。
鉄砲に鉄兵、更には精霊による襲撃も失敗したからだろう、武田はすでに退陣に移っていた。
精霊だけでなく、鉄砲と鉄兵でも多大な被害を出している。これから再起するにも大分時間が掛かるかもしれないし、もしやしたらこのまま潰れる可能性があるぐらいに叩き潰されていた。
たった一度、たった一度の突撃だけでこれだけの被害をこうむるとは勝頼は思いもしなかっただろう。まさか鉄砲だけでなく鉄兵のような兵器まで用意してあるとは思うことすら出来ない。
だからもう退くしかないのだろう。
兵を引いていく武田、だが信長は追撃をしようとはしなかった。逆に満足したような顔をしている。
そう、これは信長にとって戦ではない。新兵器を試すための実験でしかなかったのだ。それに織田と徳川が有している精霊の力を確かめるための物、ただそれだけだった。
つまり、信長に目には最初から武田は写っていなかったのだろう。信玄亡き後の武田など恐るべき相手ではないのだ。
こうして武田の敗北によって長篠の戦は終わった。
だが全てが終わったわけではない。まだ武田の他に信玄と並び立つ上杉謙信が顕在している。これもまた織田家の脅威となるだろうが、信長には何かしらの手があるのだろう。
だが問題は閃華達だ。閃華達にとっての脅威は思わぬところから忍び寄っているのだった。
え〜、そんな訳で今回は確認作業を手抜きにさせてもらいました。
だって、しかたないじゃん!!! 仕事で疲れて頭が真っ白なんだもん!!!
そんな訳で、誇示脱字、その他慣用句の誤りがあったら教えてください。明日ぐらいには直します。
さてさて、寝ます。
ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。それからこれからもよろしくお願いします。更に評価感想、それから投票、人気投票とお待ちしております。
以上、最近ブログでエレメのキャラと座談会をやってる葵夢幻でした。