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エレメンタルロードテナー  作者: 葵 嵐雪
純情不倶戴天編
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第四十八話 綺麗な花はトゲだらけ

「ああっー、もう! 海に来てなんで本格的な戦闘をしなきゃならないのよ!」

「それはこっちのセリフ」

 いい加減に喧嘩に飽きたシエラと琴未は荒い息と文句を言いながら昇達の元に戻ってきた。

「ようやく戻ってきたようじゃのう」

『ただいま』

「じゃあお昼だし、そろそろお昼ご飯にしようか」

「そうね」

「ご飯〜」

「でも荷物はどうするのよ」

「それなら任せておけ」

 閃華はそう言った後で突然精界を張った。そして精界は昇達がいる場所だけを飲み込んだ。

「って、閃華! いきなり何やってんのよ!」

「じゃから荷物を片付けるんじゃよ」

「精界を張るワケを聞いてるのよ!」

「こんな事は人に見せるわけにはいかんからのう」

 それだけ言うと閃華は昇とミリアが片付けた荷物を虚空へと移転させた。

「荷物はこれで大丈夫じゃろ」

「……精霊って便利ね」

 同感です。

「まあ、これは初歩的な術じゃからのう。少し学べばエレメンタルを持つ琴未にも出来るようになるぞ」

「……あとで習ってみようかな。便利そうだし」

 別に止めませんけどね。けど、こんな所で精界を張って大丈夫なのかな?

「閃華、それで精界から出る時はどうするの?」

「んっ、それなら安心せい。精界にちょっと工夫をして表からは私達が消えたようには見えておらん。術だけを見えないようにしただけじゃ」

 ……本当に便利ですね精霊って。

「さて、精界を解くぞ」

 閃華が手を上にあげると精界にヒビが入って一気に崩れ去った。

「では昼飯に行くとしようかのう」

「そうだね」

「やっとご飯だよ〜」

「というかシエラの所為で余計な体力を使ったから余計にお腹がすいたわ」

「そうね。最初の津波の時に琴未をもっと流してたら私にもチャンスがあったのに初手をしくじった」

 いやいやシエラさん、あれ以上派手な事されると僕が困るんですけど。というかそれだと琴未の傍にいた僕も流されるんじゃ。

「シエラ、お昼の前にグーで殴っていい」

「嫌」

「というか殴るわ」

「じゃあ千倍返しで」

「ほう、じゃあ一万回殴ってあげるわよ」

「ほれほれ、そこまでにしとくんじゃ」

「ご飯〜、ご飯〜」

 閃華が仲介に入ってミリアがとうとうダダをこねだしたものだから、シエラと琴未はひとまず休戦しておとなしく昼食を取りに海の家に向かうのだった。



「ごちそうさま〜」

 元気の良いミリアの声が響いて昇達の昼食が終わった。

「というかミリア、あんたよくそんなに食べたわね」

「だってシエラと琴未の所為で散々お預けをくらってたんだもん。これぐらい当然だよ」

「……ミリア、あんたさりげなく喧嘩売ってるの」

「じゃあ百倍返しで」

「う〜、シエラも琴未も顔が怖いよ」

 そう言いながらもミリアは素早く昇の影に隠れる。

 その事に逸早く反応するシエラと琴未だが、それを遮り二人の女性が昇達に声をかけてきた。

「はいはい、ちょっといいかな」

「へぇ〜、二人もいるなんて思わなかったわ」

「ちょっと、なんですかあなた達は!」

 琴未は立ち上がるといきなり声をかけてきた二人に噛み付くような言動をする。どうやら相当機嫌が悪いらしい。

 だが昇は声をかけてきた二人の女性にに見とれていた。

 まあそれもしかたないだろう。

 声を掛けてきた女性の一人は十九歳ぐらいだろうか、ビキニ姿のその女性は長い髪を後ろで編んでいるため体の線がよく分かる。それは琴未以上のスタイルだから昇の目には更に新鮮に見えた。

 もう一人も同じ位の年齢みたいで、長い黒髪をそのまま下ろしていてその姿はまるで大人びた日本人形にワンピースの水着を着せたみたいで、シエラとはまったく違う雰囲気を出していた。

 どちらにしても共通に言える事はシエラ達には無い大人の魅力を持っているという事だ。昇は始めて感じる大人の魅力にすっかり飲み込まれていた。

 はぁ〜、綺麗な人達だな。というか美人って言うのはこういう人たちの事を言うんだろうな。う〜ん、シエラ達も確かに綺麗なんだけど、なんというか、やっぱり年下や同年代に見えるからこういう雰囲気は出てないよな。

 すっかり二人の魅力に魅入られる昇だが、それは周りにいる男性陣も同で視線は昇も含めてその二人に集中していた。

 だが昇は気付いていない。昇の後ろにはもの凄い殺気を出している女性が三人いる事をすっかり忘れていた。

 同時に昇の頭を三人の拳が殴りつけたその後で、琴未は昇と二人の女性の間に立って昇と女性達をさえぎる。

「それで、何のようですか?」

 琴未の問いに二人は少しだけ相談した後で髪をまとめた女性が口を開く。

「悪いね。どうやらお嬢ちゃんじゃないみたいだから、その後ろに居る男の子と話をさせてくれる」

 ……って、僕ですか!

「昇に何か用があるんですか」

「そうね、用があるのはそこにいる皆なんだけどね。だけどその男の子があなた達のリーダーみたいだからね」。

「じゃあ私達になんのようがあるんですか」

「ふふっ、だから、その前にそこの男の子と話がしたいの。それにその子もまんざらでもないみたいだし」

 その言葉に琴未の頭には怒りのマークが三つぐらい浮かんだのは昇の気のせいではないだろう。

「常磐、いい加減に遊びすぎ」

 今まで黙っていた女性がついに口を開く。

「だって竜胆、このお嬢ちゃん結構からかいがいがあるんだもん」

 更に琴未の頭に怒りのマークが浮かぶ。

 というか、この人達っていったい。

「まあ、常磐の言うとおりだけど、それはそのお嬢ちゃんが人間だからでしょ」

「そうね。後ろの精霊の三人は気付いてるみたいだけど」

 えっ、それって、まさか!

 昇が気付くのと同時に琴未も気づいたみたいで警戒態勢に入る。

「どうやら気付いたみたいね」

「う〜ん、私としてはこのお嬢ちゃんともう少し遊びたかったんだけど」

「常磐、どうせ後で遊ぶ事になるんだから後にしなさい」

「それで、一体何用で私達に近づいてきたんじゃ」

 閃華の言葉を合図にシエラとミリアが立ち上がる。

「いやね〜、そんなの決まってるじゃない」

「この辺で契約者は私達のほかにはいないの、だからあなた達を見つけたらからとりあえず挨拶をしに来たってワケ。あなた達は観光客でしょ」

「そうじゃが、その挨拶も言葉だけじゃないんじゃろ」

「当たり前じゃない」

 まさかこの人達が精霊でこのまま戦うことになるなんて。はぁ〜、せっかく海に着たのになんでこんなことになるんだろう。

 うんざりする昇だがこれも契約者の義務であり、決して避けられない事だと気合を入れなおす。

「じゃあ、私達の用件が分かったところで場所を変えましょう。ここで精界を張ったら目立ちすぎるわ」

 竜胆は昇達を促して、昇は皆の顔を見回して頷くと竜胆達の誘導に従って海の家を後にした。



「さて、ここならいいでしょ」

 竜胆が案内した場所は海岸から離れた岩場で段差が激しく歩きにくいところだった。

「なんでこんな場所まで来なきゃいけないのよ! 歩きにくくてしょうがないわ」

「だって〜、ここなら人は居ないでしょ。だから精界を張っても大丈夫なの」

 確かに昇達の周りには他に人は居ない。どうやらここは観光名所でも釣り場でもなくただの岩場のようだ。

 確かにそんなところに好き好んで来る人なんていないだろう。

 そして海を背に竜胆と常磐が昇達と対峙するが、琴未は一歩前に出ると思いっきり竜胆達を指差す。

「ところで、このままやっちゃっていいの。そっちは二人だしこっちは五人よ。それでもやるつもり」

「ふふっ、でもそっちの精霊は三人でしょ。だからあまり関係ないわよ〜」

「残念だったわね。私の能力はエレメンタル、だから精霊と同じ戦闘能力を持ってるのよ」

「あら珍しい」

 それでも常盤はあまり驚きはしなかった。

 どうやら最初から人数差は考慮していたようだ。それでも琴未は勝ち誇ったように胸を張る。

「なんだったら手加減でもしてあげましょうか」

「ダメよ〜、それだとつまらないでしょ」

「……」

 さすがにこの発言には琴未も固まる。というか以前にも同じような事を言われたような気がするのは間違いではないだろう。

「閃華」

「なんじゃ琴未」

「デジャブかしら、前にもこんなことがあったような……」

「安心せい琴未。あやつらは好戦的じゃが戦闘狂ではないようじゃ。私達に近づいてきたのも好奇心からじゃろう」

「そうなのよ〜、この辺じゃ契約者なんて見てないから珍しくてね」

 常磐の言葉にまるで動物園の珍しい動物のような気持ちになってくる琴未。そこまで珍しがられるのも困るだろう。

 というか僕達ってなんでこんな精霊にばっかり絡まれるんだろう。

「そういえば、あなた達の契約者は?」

 シエラの問いに竜胆は困った顔になって常盤は笑いながら答える。

「ふふっ、私達の契約者は迷子になってるのよ」

 いや、そんな楽しそうに言われても困るんですけど。

「常磐、迷子になってるのは私達でしょ。あんたが勝手な行動をするから」

 そうなんですか、というかあなた達は契約者を探さなくていいんですか。

「だってつい、それで私達の契約者を探してる最中にあなた達を見つけたの。それで挨拶に来たってワケ」

 いやいや、それよりもあなた達の契約者を探してあげましょうよ。

「まあ、あなた達と遊ぶ方が楽しそうだったからね」

 いやいやいや、そんな楽しそうだったからという理由であなた達の契約者は放っておくんですか。

「ふむ、相当好奇心が強いやつらじゃのう」

「そうね。好奇心だけで契約者をほったらかしにするぐらいだから」

「私そんな精霊なんて聞いたこと無いよ〜」

「はぁ〜、また変なのに絡まれたものよね」

「というか、本当にあなた達の契約者は放っておいていいんですか?」

「う〜ん、まあ、そのうち帰ってくるんじゃない」

 いや、犬じゃないんだから。

「だから私達の契約者は気にしなくていいわよ」

 いやいや、そういう問題じゃないと思うんですけど。

「それであなた達の契約者はどうするの。なんだったらはずしましょうか?」

「いや、僕も戦うよ」

「へぇ〜、やっぱり男の子はそれくらいの勇気がないとね」

「ふっ、昇を甘く見てるとあなた達が痛い目を見るわよ!」

「ふふっ、それは楽しみね〜」

「……閃華」

「なんじゃ?」

「この精霊達って頭がおかしいの?」

「私に聞くでない」

「失礼ね。私達の頭は正常よ」

 いや、そんなことを胸張って言われても困るんですけど。

「戦闘が数の差だけじゃないことをお嬢ちゃんに教えてあげるわよ」

「上等じゃない。出来るものならやってみなさいよ」

「やれやれ、琴未は完全に頭に血が上っているようじゃな。どうする昇?」

「……僕と閃華で琴未をフォローしよう。シエラとミリアは組んでもう一人をお願い」

「うむ、間違ってはおらんが昇も無理してはいかんぞ。私達は完全にあやつらのペースに乗せられておるからのう」

「うん、分かったよ」

「さて、じゃあ話がまとまったところで始めましょうか」

 竜胆とシエラは同時に対峙する中心点に精界の柱を生み出すと一気に広げて、かなりの広範囲を精界で包み込んだ。

 精界が完成すると昇達はそれぞれの精霊武具を身にまとい、常磐達も精霊武具に身を固める。

「風陣十文字槍<風巻く槍>」

 常磐が手を前に出して叫ぶと槍が出現して刃が左右にも突き出して漢字の十に似た形になる。そして常磐は十文字槍を掴むと今度はその身を渦巻く風で隠して防具を身にまとい姿を現した。

 十文字槍を手にした常磐の精霊武具は女性用の大鎧姿で平安末期の女性武将を思わせるものだ。

「灼熱斬馬刀<熱する斬馬刀>」

 竜胆が地面に手をかざすと、地面から竜胆の身の丈ほどある柄が一気に飛び出して竜胆は柄を掴み一気に引き抜く。

 現れた刃は柄と同じ位の長さで横幅は完全に竜胆の体を隠すほどに大剣以上に大きな刃だ。それもそのはず、そもそも斬馬刀とは馬に乗った武士を馬ごと斬る為に作られたものだが、その大きさと重さゆえに誰も扱えなかった武器なのだが、竜胆は軽々と斬馬刀を振るって刃で身を隠すと防具をまとう。

 そして精霊武具を身にまとった竜胆は、シエラのウイングクレイモアを軽く上回るほど大きい斬馬刀と軽装な防具の上に火消し羽織をまとった忠臣蔵にでも出て来そうな姿だ。

「うわっ、デカイよ!」

 竜胆の斬馬刀を見てミリアは思いっきり驚く。だがそれは昇達も同じで始めて見る斬馬刀に驚きを隠せなかった。

 そんな昇達に竜胆は斬馬刀を見せ付ける。

「珍しい武器でしょ。この斬馬刀は作ったのはいいけど誰も使えないから忘れ去られた武器なんだけど、私にとっては丁度いいのよね」

 その言葉を証明するように竜胆は斬馬刀を軽々と振るい、岩場を大きく切り裂いてみせる。

「そんなに大きいのは卑怯だ!」

 いや、だからミリア、別に卑怯では無いと思うんだけど。

「くすくすっ、なんだったらあなたもこの斬馬刀を扱ってみる。まあ、これくらい大きな物を扱える精霊なんてそうそういないけど」

 確かにそうかもしれない。シエラのクレイモアも大きいと思うけど、あの斬馬刀の大きさは軽くクレイモアを上回ってる。

 そうなると琴未の刀だとあの斬馬刀に対抗するのは無理か。

「琴未、閃華、僕達はあの常磐っていう精霊の相手をするから、シエラ達はそっちの竜胆の相手を」

「分かった」

 昇の指示に従いそれぞれ組む昇達。そんな中で常磐は昇に注目する。

「あら、あなた達の契約者って何か特別な力があるのかしら。精霊武具並みの武装が出来るなんて、それに能力もエレメンタルって感じがしないわね。一体何の能力なの?」

「そんなこと教えるわけないでしょ!」

「ケチ!」

 いや、ケチって言われても困るんですけど。

「それに武器が銃火器っていうのも珍しいわね。精霊武具は接近戦の武器が基本だから飛び道具自体珍しいけど、それにしても近代兵器を武器に出来るなんて相当特別な力ね」

 昇の二丁拳銃には竜胆も興味を示したようだ。確かにエレメンタルアップ自体が珍しい能力で、しかも昇の武装はそのエレメンタルアップの応用だから二人に推測が付くはずも無かった。

「まあいいわ、常磐、油断しないようにね」

「分かってるわよ。それに面白そうな事になりそうだしね」

 そんな昇の未知な能力にも常盤と竜胆の二人は怯む事もせず、逆に好奇心に更なる火を灯したようだ。

 いい加減にそんな二人の態度にも慣れてきた昇達はそれぞれ戦闘体勢に入り、売られた戦いの火蓋は切って落とされた。







 さて、ちょっと更新に間が開きましたが、実はそれにはちょっとした訳がありまして。

 先の後書きに書いたと思いますが私はうつ病持ちです。それで眠れない日々が続いてたのですが、そこで私はあることに気付いた。そうだ、酒を飲もう。

 まあ、そんな訳でアルコール度数43度の泡盛を購入してその日にビンの三分の一ほどロックで飲みました。翌日、二日酔い。……というか、私自身が一番驚きました。二日酔いなんて何年ぶりかです。それどころか翌朝の朝食中に吐き気をもよおし、全部吐きました。うわ〜、何年ぶりだろ、そこまでなるなんて。さすが泡盛、抜群の破壊力でした。

 それでその日は一日中寝てました。いや〜、あそこまで寝たのも久しぶりです。

 まあ、そんなこともありまして更新が遅れました。皆さん、この時期はお酒を飲む機会が多いと思いますけど、決して私の真似をして泡盛をロックで飲み過ぎないように、……すごいは、あれ。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価感想、そして投票もお待ちしております。

 以上、こりずに泡盛を適度に飲み続けようと思ってる葵夢幻でした。

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