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エレメンタルロードテナー  作者: 葵 嵐雪
ロードナイト編
31/166

第三十一話 戦闘狂再び

 昇が扉を開けると、そこは広いホールでその真ん中にその精霊は立っていた。

 あいつ……、確かミラルドさんを追って来た。

「来たか」

 静かに呟くその精霊マルドは床に突き立てていたバトルアクスを肩に乗せると、腰を落として戦闘体勢に入いる。

「さあ、来るがいい」

 なんか、静かな割には短気な精霊だな。でもこいつを倒さないと先には進めないか。

「昇、さっさとこいつを倒して先に進もうよ!」

 やる気満々のミリアを通り越してシエラは一人で前に出る。

「シエラ?」

「昇、私達には時間があまり無い。だからこいつの相手は私がやる、昇達は先に行って」

「でも……」

「目標を見失わないで、私達の目的はサファドの野望を阻止すること、そして雪心を助け出すこと、それが一番大事だから、そのためには私一人でこいつの相手をするのが一番効率がいい」

「……分かった。ミリア、隙を見て一気にあの扉を目指すよ」

「う、うん」

 目標はマルドの後ろにある扉。シエラが道を作ってくれれば僕達は一直線に扉を抜けられる。後はシエラに任せるしかない。

「シエラ、気をつけて」

「大丈夫、私はこんな奴に負けない」

 シエラはウイングクレイモアを構えると大きく翼を広げる。それを見たマルドもすでに迎撃体勢に入っている。

 翼が大きく羽ばたくとシエラは一気に加速してマルドとの距離が一気に詰まる。

 だがマルドはハイスピードで突っ込んでくるシエラに動じることなく、冷静にタイミングを計るとバトルアクスを振り下ろした。

 激突するクレイモアとバトルアクス。だがシエラはこの時を待っていた。

「ブースト」

 羽先から光があふれ出すと共にウイングクレイモアをマルドごと押し上げる。そのまま天井にマルドをぶつけたシエラは急旋回、今度は壁に向かってマルドを吹き飛ばした。

「昇!」

「ミリア、行くよ」

「う、うん」

 一気に駆け出す昇、ミリアはシエラの方を気にしながらも昇の後を追いかけていく。

「させん」

 壁にめり込むほど吹き飛ばされたマルドだが、すぐに這い出すとバトルアクスから白い霧状の物が昇立ち向かって一気に伸びていく。

 だが白い霧は突如発生した突風によってすべて吹き飛ばされてしまった。マルドは風を巻き起こした方を見ると、そこには翼を大きく羽ばたかせているシエラの姿があった。

「翼で風を巻き起こしたか」

 冷静に現状を確認するマルド。だからこそ、もう昇達を追う事はしなかった。今から追っても間に合わないことはわかっている。それにシエラの妨害があるはずだから。

 マルドは地面に降り立つと、宙に浮かんでいるシエラに向かってバトルアクスを構えて徹底抗戦の意思を示す。

 二人とも分かっているからだ。相手を倒さない限り昇達を追うことが出来ないということを。



 その頃、琴未達の目の前には重々しい扉があった。

「ふむ、どうやらここが迷路のゴールみたいじゃのう」

「はぁ、やっと抜けたのね」

「はいはい琴未、油断しないでね。その扉の向こうに精霊反応が二つあるから確実にロードナイトが待ち伏せしてるよ」

「そうか、では琴未、慎重に……どうしたんじゃ」

 与凪の報告を聞いてから琴未は顔を下に向けていた。閃華が覗き込むと琴未は笑っているみたいだ。

「ふっ、ふふっ、ふふふっ」

「って、琴未どうしたの!」

 モニター越しに与凪が聞いて来るのだが琴未は軽く笑い続けて、閃華は呆れるのを通り越してもう諦めているようだ。

「心配するでない与凪。琴未は例の病気じゃ」

「例の病気って何?」

「まあ、琴未の本性が表に出るだけじゃ。じゃからあまり心配することではないぞ」

「というか、そんな状態でロードナイトと戦えるの?」

「ふむ、意外と奮戦するかもしれんのう」

「……そういうものなの?」

「この際じゃ、琴未の本性を見ておくがよいぞ」

「なんか、あまり見たくない気もするけど」

「さて、では行くか琴未」

「ふふふっ、あーっはっはっはっ。オッケー閃華、今までさんざんイライラしてきたから全部奴らにぶつけてやるわよ」

「……まあ、気をつけてな」

「じゃあ、閃華、行くわよ」

 そう言って琴未は重々しい扉を一蹴して、一気に開けてしまった。

 ずいぶんとまあ、派手にやってしまったのう。まあ、この際じゃから仕方なかろう。

 そうして琴未達が踏み入れた場所は、真ん中に大きな柱が立っており、そこに寄りかかるように見覚えがある精霊が二人いた。

「やれやれ、またあいつらの相手をせんといかんみたいじゃのう」

「おや、ずいぶんな言い草だね。そんなにあたい達とやるのが不満かい」

 羽室はそう答え、その隣でスクラウドが軽く笑っている。二人とも、この前襲ってきた戦闘狂達だ。

「別に〜、不満なんて無いわよ。今の私はあんた達をぶっ飛ばせばいいだけだからね」

「おや、この前の人間のお嬢ちゃん。ずいぶんな口を聞くようになったじゃないかい」

「けけっ、それでこそやりがいがあるっているもんじゃねえか」

「そうね、この前の決着を今ここでつけてあげるわよ」

 ……なんじゃろうな、なんか、戦闘狂が三人になったような気がするのは私の気のせいであって欲しいものじゃな。

「どうやら、私達には言葉は要らないみたいだね」

 いや、言葉は大事じゃぞ。言葉でしか伝わらぬこともあるからのう。

「そうね。今の私達に必要なのは、この刃だけよ」

 いやいや、ちょっと待て琴未、お前はいつからそんな性格になったんじゃ。

「けけっ、よく分かってんじゃねえかよ。人間」

「当たり前よ! 今までさんざん迷路にイライラさせられたんだから、その恨みをここで全て晴らしてやるわよ」

 琴未、その返し文句はどうかと私は思うんじゃが。

「おや、そいつは難儀だったね。まあいいさ、楽しませてくれるんなら楽しませてもらうだけさ」

「ふふっ、いいわよ。充分楽しませてあげようじゃない」

 ……おーい、琴未。出来る事ならそろそろ戻ってきて欲しいんじゃが。

「よし、じゃあ人間のお嬢ちゃん、この前の決着をつけてあげるさ。そいうわけでスクラウドはあっちを頼むさ」

「けけっ、了解」

「閃華、私はあの羽室って奴を切り刻んでやるから、閃華はあっちの爪の奴をお願い」

 いや、それはいいんじゃが、琴未、頼むからその戦闘狂ぶりは今回だけにしてくれ。

 閃華が溜息を付く頃にはすでに琴未と羽室はお互いの距離を縮めて刃を交えていた。それと同じくスクラウドも閃華に向かって突っ込んできたが閃華は静かに呟くだけだった。

「水流激」

 龍水方天戟から離れた水の龍は一気にスクラウドに向かうと、その胴に噛み付いてそのまま壁を突き抜けて隣の部屋に行った。

 それを見ていた与凪が急に閃華の横にモニターを出現させる。

「あの、閃華さん、あまり戦力を分散するのはよくないかと……」

「なに、今の琴未なら大丈夫じゃろう。それに琴未にも見せ場を作ってやらねば。可哀相であろう」

「いや、閃華さん、そういう問題じゃないと思うんですけど」

「まあ、良いではないか。琴未もそれなりにやる気を出しておるようじゃし。それより与凪、あっちの部屋の広さはわかるか?」

「はいはい、ちょっと待ってください。……今いる部屋よりも少し小さいみたいです」

「そうか、では私はあっちで戦ってくるとしよう」

「琴未とあの精霊の一騎打ちで大丈夫なんですか?」

「与凪、琴未は昇の修行を手伝っておったのじゃぞ」

「だからなんです」

「昇が強くなったように琴未もまた、強くなったということじゃ。まあ、そんなに心配せんともよかろう」

「はぁ……、そういうもんなんですか」

「そういうもんじゃよ。では行って来るぞ」

「あっ、はい、お気をつけて」

 こうして琴未対羽室、閃華対スクラウドの戦いの幕が切って落とされた。



 あれ、遅い?

 琴未がそのことに気付いたのは羽室と刃を交えてから、少し経ってからだった。

 以前は鋭く感じられた羽室の剣さばきだが、今の琴未には以前ほどの鋭さが感じられなくなっていた。つまり羽室の剣が琴未には少しずつ見えてきたわけだ。

 ……そっか、昇の弾丸はこれよりも早かったから、私もいつの間にか見切る力をつけてたんだ。そうと分かれば反撃開始。

 羽室の剣線を完全に見切った琴未は紙一重でそれをよけると、一気に自分の間合いにもっていく。そして右袈裟から切り下げるが羽室は大きく後退してそれをかわした。

 そしてその行動が意味する物を琴未はちゃんと理解していた。

 動揺してる。前とは違ってここで反撃が来るとは思っていなかったのね。なら、攻めるなら今。

「雷撃閃」

 雷閃刀から放たれた数本の雷が羽室に迫る。だが羽室はその雷さえも切り裂いてしまった。

 やっぱりこいつには雷は通用しない。純粋な剣の勝負でしか決着をつけることが出来ないみたいね。上等、こっちだって伊達にじっちゃんの稽古を受けてきたわけじゃないんだから。

 雷を放ち、そのすぐ後を追っていた琴未は雷閃刀を下段に構えたまま疾走していた。そして琴未の間合いに羽室が入る。

 私の剣術を見せてあげるわよ。


 ─新螺幻刀流しんらげんとうりゅう 三段斬り返し─


 額、喉、胸、その三箇所に突きを入れてすぐに左右逆袈裟を入れる琴未。だが、羽室も負けじと刀を振るい、両者は交差してお互いに距離を取る。

 そして膝を付く羽室。

 最初の突きはかわされたけど右の逆袈裟は手応えがあった。けど致命傷にはならないはず、だからまだ終わってない。

 琴未はすぐに振り向くと再び刀を構えるが、羽室は逆にゆっくりと立ち上がる。そして静かに笑い出した。

「くっくっくっ、いいね、いいよ、この感じ、この痛み、最高だね。それでこそ、やりがいがあるってもんだよ。ねえ、人間のお嬢ちゃん」

 あいつ手傷を負わされても笑ってるの、うわ〜、私にはそこまでは理解できないわ。

 思ったことを口にして、もし傍に閃華がいれば、少しは理解できるのかと思われるようなことを考えながら、琴未は改めて自分が相手にしている異常さを感じざる得なかった。

「さて、ここまでやってくれたんじゃ、こっちも答えてあげないと悪いさね」

 何こいつ! 今まで本気を出してなかったの?

 そう思うほど羽室は一気に殺気と力を放出、琴未は羽室の力が高まっていくにつれて、少しずつ恐怖という物を感じる。

「さあ、本番はこれからさ!」

 そう言うなり、一気に距離を詰めてくる羽室。琴未も迎撃のために刀を下段に構えるのだが、一瞬で羽室の姿が消えるとすぐに左肩に痛みを感じる琴未。

 くっ、何今の、全然見えなかった。いったいどうして?

「さーて、これでさっきの借りは返したよ。さあ、楽しもうじゃないか、人間のお嬢ちゃんさ」

「くっ!」

 この時、琴未は初めて戦闘狂というものを理解した。戦闘狂は戦いを楽しめればいい、そのために一番言い方法は相手のレベルに合わせること、つまり弱い相手には自分も力を抑える。そして例えどんなに傷つこうとも、決してそれ以上の力を出そうとはしない。それが戦闘狂のサガ。そして先程の攻撃こそ羽室の本気なのだ。

 せっかく優位に立ったと思った琴未だが、その自信が一気に崩れ落ちていく。

 何て事なの、あいつは今まで本気で戦っていなかったってこと。くっ、随分と舐めた真似をしてくれたじゃない。こうなったら絶対にあいつを倒してやる。

「ふふっ、ふふふっ、あっーはっはっはー」

 突然笑い出した琴未に、さすがの羽室も驚きを隠せないようだ。

「どうしたんだい、人間のお嬢ちゃん。もしかして、さっきの頭がいかれたのかい」

「あははっ。……あんたは、絶対に倒す」

 急に静かになった琴未の言葉に羽室も笑みを浮かべる。

「そうこなくっちゃね。さあ、かかってきな」

 羽室がそういった直後に琴未は一気に走り出して羽室の間合いに入る。羽室の二本の大太刀は琴未の刀よりも長い。つまり、この距離なら羽室の攻撃は届くが琴未の攻撃は届かない。それは充分分かっているはずなのに琴未は進んで羽室の間合いに入って行った。

 もちろん、羽室が攻撃をしないわけがない。羽室の太刀が琴未に迫るが琴未は一本の太刀を紙一重でかわしてもう一本を弾き飛ばした。その動きは先程とはまるで比べ物にならに程に俊敏な動きだ。

 これにはさすがの羽室も下がるのだが、琴未も羽室に合わせて自分の間合いを保ち続けてるために羽室に追いすがる。

「くっ、なんなんだい、人間のくせにこの動きは、いくらエレメントでもここまでの力が出せるかい」

「言ったでしょ。あなたは絶対に倒すって」

「それにしては随分とやってくるじゃないさ。あんたも本気で戦ってなかったのかい」

「そうね。あえて言うなら私が使ってる新螺幻刀流は活人剣じゃなくて殺人剣なのよ。だからじっちゃんも私に教えたけどよっぽどの無い事が無い限り使うなって言われてるのよね」

「なるほどね。今時そんな剣術を会得してるなんて思ってもいなかったさ」

「そう、私の剣術は人を殺める剣。けど今の私には人だろうが精霊だろうが関係ない。私はあなたを全力で倒すだけよ」

「あははっ、いいね、その気迫、その覇気、久しぶりに昔を思い出すよ。あの人斬りが横行してた楽しい時代をさ。くくっ、あーはっはっはっーーー」

「面白いじゃない。それ以上の楽しみをあんたに与えてあげるわよ。ふふっ、ふっはっはっはっはーーー」

 羽室が琴未の力に驚く中で、隣の部屋ではその理由を知っている閃華が悠々と構えて、呆れていた。



 やれやれ、琴未はまた例の病気が出たようじゃのう。まあ、これで心配はあるまい。例の病気の原因は琴未の心にあるのじゃからのう。それは決意の表れであり、また本来の性格が噴出すことでもあるからのう。

 ……というか琴未、いい加減にその本性を直さないと昇に嫌われるのではないか。じゃがまあ、そんなこともないか。昇のことじゃから、琴未の本性には尻に敷かれるのが関の山じゃな。

 閃華がそんな事を考えている間にもスクラウドは閃華に攻撃を仕掛けてきているのだが、閃華は楽々とその攻撃を弾いていた。

「くっ、テメー、いい加減に本気で戦えよな」

「おおっ、そいつはすまんかったのう。隣があまりにも楽しそうなんでな」

「けけっ、じゃあこっちも楽しく行こうじゃねえか」

「悪いが、私はそなたのような戦闘狂に付き合う気は無いのでな。さっさと終わらせてもらうぞ」

「つれねーこと言ってんじゃねー!」

 再び閃華に向かって爪を振るいだすスクラウド。

 こうして、戦闘狂達との戦いは続いていくのだった。







 …………疲れた。……なんか前にも後書きでいきなりこんなことを書いたような気もしますけど、まあ、この際そのことは放って置きましょう。

 といいますか、最近いろいろとありまして、HPがかなり減っております、このままでは確実に死んでしまうので、とりあえず執筆のペースを落とすかもしれません。

 というか、ポーションをくれ、もう薬草でもケアルでもホイミでもいい。とにかく回復してくれ。……まあ、そんな感です。

 はい、それではワケの分からないことはここまでにして、いつものを行きます。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に感想評価もお待ちしております。

 以上、HPが残り3ぐらいの葵夢幻でした。

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