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エレメンタルロードテナー  作者: 葵 嵐雪
ロードナイト編
22/166

第二十二話 新たなる力

「さて、何処から話そうかのう」

 ロードナイトと名乗る襲撃者を退けた、その日の夕食後。全員揃って昇の部屋に集まっていた。

 それは閃華が何かを掴んでいて、それを皆に報告するためだ。

 でも、何で僕の部屋に集まるんだろう?

 そんなことを思いながらも昇は黙って、机の備え付けてある椅子に腰掛けた閃華が口を開くのを待っていた。

 だが、先に口を開いたのはシエラ、その日一番の疑問を閃華にぶつける。

「とりあえず、なんで昇が襲われた事から」

「うむ、そのことか、それは簡単じゃ。この付近、正確に言うとこの町全体を見回しても契約者が昇一人しか確認できなかったからじゃろ」

「えっ、でも私も閃華との契約者だよ」

「琴未はエレメンタルで精霊の状態で昇と契約してしまったから、契約者とは認識しずらいんじゃよ」

「ああ、確かにあの時、閃華はいろいろとややこしい関係にしたから」

 シエラは遠い目をしながらそのことを口にする。どうやら琴未と戦った時の事を思い出しているようだ。

「まあ、その関係の所為で琴未は契約者と認識されなかったようじゃ」

「じゃあ森尾と与凪は、あの二人も一応契約者と精霊だよ」

「ミリア、森尾先生は教員なんだから、ちゃんと先生と呼ばないとダメだよ」

「う〜、べつにいいじゃん、そんなこと」

 そこで閃華は咳払いをすると、話を元に戻す。

「とりあえず、あの二人は与凪の能力により契約者であることを隠している。それもよほど強度の高い術を使っているらしく、あの二人を見つけることはまず、不可能じゃろう」

「それで、唯一見つかった契約者の昇を襲ってきたってワケ」

「まあ、器の争奪戦の最中だからそれも普通だと思うけど」

「そうじゃな、じゃが、これからはあくまでも私の推測に過ぎないんじゃが。今回の襲撃者には黒幕がおり、その黒幕が何かを企んでおるみたいじゃ」

「それが昇とどう繋がるの?」

「うむ、たぶんじゃが、その黒幕は自分の企みを邪魔されたくは無いのだろう。じゃからこの町で唯一見つけることが出来た契約者を潰しておけば、例え企みが他の精霊にばれてもすぐには手を出せないと、こういうことじゃろう」

「つまり、その黒幕はとてつもない事を企んでると」

「うむ、そう考えるのが妥当じゃろう。そして、その障害となる者を今のうちに排除しておけば、計画はスムーズに行われるじゃろうな」

「その計画ってなんだろう?」

「それは分からん。じゃが与凪に頼んでいろいろと調べておる最中じゃから、そのうち分かるじゃろう」

「でも……」

 視線が一斉に昇に集まる。

「その計画がとんでもない物なら、止めないと」

「ふむ、昇はやはりそうでるか。じゃが私達で止められるとは限らんぞ」

「でも閃華、その計画がとんでない物で、それを止められるのが僕達だけなら何とかしないと」

「やれやら、やはり昇はそう動こうとするんじゃな。まあよい、じゃがこの件に首を突っ込むとなるとこれからの戦いは激化するばかりじゃぞ」

「うん、覚悟はしとくよ」

「では、修行でもするか」

「ちょっと閃華、何でそうなるのよ」

「昇のエレメンタルアップはここぞという時には最大の効果を発揮するが、普段はあまり役にはたたん。正直、足手まといでしかない」

「閃華! そこまで言うことないでしょ」

「いいんだ琴未、僕もそれは前々から思ってたことだから」

「昇」

 そう、僕はあまり役に立ってない。戦うといっても皆が戦うだけで僕は何もしていないから、しょうがないと今まで納得してたけど、戦えるなら僕も戦いたい。

「閃華、どうすればいいの」

「ふむ、覚悟は出来ておるようじゃのう。修行といっても簡単じゃ、なにせエレメンタルアップを自分にかければいいじゃからのう」

「えっ、それってどういう」

「エレメンタルアップは契約した精霊の能力を上げる特殊能力じゃ。その力を精霊ではなく自分に寄与できれば、昇の力は飛躍的に上げる事ができるはずじゃ」

「そうなの?」

 思わず昇はシエラに振るが、シエラは首を横に振るだけだった。

「まあ、これは私が与凪と調べたことじゃから、理論上は可能なはずじゃ」

「でも、どうやって?」

「とりあえず昇、エレメンタルアップの状態を詳しく話してみい。アドバイスができるとしたらそれからじゃ。何しろ特殊能力が分かるのは契約者のみじゃからのう」

 とりあえず昇はエレメンタルアップ時の黒い空間の事、そして思いが繋がった時に現れる赤い糸の事を皆に話した。

「ふむ、なるほどのう。つまりエレメンタルアップはその赤い糸をを通して私達に力を送ってるわけじゃな。そして糸の容量以上の力は送れない。糸の容量を上げるには互いの思いを強くしないといけないわけじゃ」

「まあ、そんな感じかな」

「では昇、まずはその黒い空間とやらに入って自分に力を送れるか試してみい」

「えっ?」

「つまり、契約した精霊に力を送るのではなく、自分自身に力を送って能力を上げる。もしやしたら、昇も精霊に負けないぐらいの力を得るかも知れんぞ」

「けど、そうすると私達の能力アップはどうするの?」

「それは昇の力しだいじゃな。昇の力が強ければ自分自身を強化しながら、私達四人も強化できる」

「う〜ん、そこまで出来るのかな?」

「じゃから、昇には修行をしてもらうわけじゃ」

 そういわれても、どうすればいいんろう。

「とりあえず昇、まずは黒い空間に入って自分に力を送れるか試してみい」

「今ここで?」

「そうじゃ」

「うん、分かった、やってみる」

「あと、私達はあまり昇と思いを重ねないようにそれぞれ昇のこと以外考えておれ」

「分かった」

「昇のこと以外を考えればいいんだね」

「りょ〜か〜い」

「うむ、では昇、やってみい」

「うん」

 昇は精神を集中させると意識を沈めていく。そして黒い空間へと意識を漂わせていた。

 う〜ん、今まで急いでやってからそんなに感じなかったけど、この空間に一人でいるのはちょっと怖いな。

 えっと、とりあえずどうしよう。いつもは糸が出てきて、それを掴んで力を送ってるから、自分に手をつけて力を送ればいいのかな?

 昇は自分の胸に手を当てると、いつもは糸に送っている力を自分に送る。

 あれ、すんなり入ってく。もしかして、成功した? ぐへぇ。

 昇の意識は突然、現実へと引き戻されて、気が付くと壁に寄りかかるように座っているようだ。

 あれ、何があったんだろう?

 混乱する昇はとりあえず辺りを見回すと、みんな驚いたような顔をしながら、なぜか閃華の手には龍水方天戟が握られていた。

「あれ、えっと、どうしたの」

「どうしたのじゃないわよ。昇、あんなことしたら家が壊れちゃうじゃない」

「えっ、えっ?」

「昇を中心点に力が放出されて、それが余波へと変わり地震を巻き起こした」

「そうなの?」

 シエラは黙って首を縦に振る。

「びっくりしたよ。昇からあんな力がいきなり出て来るんだもん」

「えっ、えっ、そんなに力を出した覚えは無いんだけど」

「ふむ、昇の力は私が思っていたより、遥かに強力なようじゃのう」

「えっと、僕の力ってそんなに凄かったの?」

 昇を除く全員が首を縦に降る。

「じゃから私がこれを昇に叩きつけて無理矢理意識を現実に引き戻したわけじゃ」

 そういって閃華は龍水方天戟を指し示すと、もう用はなくなったので消した。

 もしかして僕、閃華の方天戟で思いっきり打たれた。ああ、だから背中が痛いんだ。

「もう少し、優しく止められなかったの?」

「うむ、突然じゃったからのう。これが精一杯じゃ」

 その割には未だに体中が痛いんですけど。

「じゃが、これではっきりしたことがあるわけじゃ」

「なにが?」

 不思議そうな顔をする昇に対して閃華は笑みを浮かべるが、何故か昇にはその笑みが嫌な感じがした。

「とりあえず、昇の力は強すぎてコントロール出来んようじゃ。じゃから、これから毎日放課後は力のコントロールの修行じゃな」

 はぁ、やっぱりか。……でもしかたないか、危険がすぐ傍まで来ているのだとしたら、しっかりとそれに備えておかないと。……でも、ちょっと不安。

「でも、力のコントロールの前に武器だけは精製できるようにしとかないと」

「ふむ、それもそうじゃのう。では、出掛けるか」

「えっ、今から?」

「もちろんじゃ。とりあえず、そうじゃの、確か近くの川原なら誰もおらんから昇の力を発動させても大丈夫じゃろう」

「でも、さっきみたいになるんじゃ」

「あれは昇が自分に力を送ったから起こった現象じゃ。これからやるのは自分の武器と防具、まあ精霊武具のような物をイメージして実体化させるというわけじゃ」

「だから昇、今のうちに自分に合った武器と防具をイメージしといて」

「それに失敗しても、あそこなら被害は出んじゃろう。精界を張ると大事になりかねんしな」

「はぁ、分かったよ」

「じゃあ、準備してくるね」

「って、ミリアもいくの?」

「当たり前だよ」

 その時、閃華は昇の肩に軽く手を乗せるのだった。

「このメンバーがお主から離れると思っておったのか」

 そういえばそうでしたね、閃華さん。

 結局、全員出かける準備を済ました後、昇の母である彩香に一応出かけることを告げてから、一同は川原へ向けて歩き出した。



 それにしても自分に合った武器と防具といわれてもな。

 歩きながらも昇は自分に似合う武器と防具を必至に考えているのだが、なかなかイメージが浮かばない。

 結局、何が僕に似合ってるんだろ。

 そう思いながら昇を囲む全員を見渡す。

 そういえば、皆は剣とか槍とか近接戦闘の武器だけだよね。それに琴未は違うけど、精霊は皆かなり歳を取ってるはずだから、武器も古い形だよね。まあ、琴未は剣術をやっているから分かるけど。

 そうすると、僕に似合うのは、いや、この中で必要な武器と言ったら、……あっ、もしかしたらあれかもしれない。

 昇がイメージを描き始めた頃にはすでに川原へと付いていた。

 川原は雑草が生い茂っている部分と小石などの砂利が混じったところがあり、まさに昇の修行場としては持って来いの場所だった。

「昇、イメージは出来た」

「うん、たぶんだけどこれでいけると思う」

「ほう、そいつは頼もしいのう」

「けど昇、あまり無理しないでよね」

「分かってるよ、琴未」

「昇、がんばって」

「ありがとう、ミリア。じゃあ、ちょっと行って来るよ」

「ふむ、力は送らんでいい。ただ思い描いたイメージを実体化させることだけを考えるんじゃぞ」

「えっと、あの黒い空間でイメージすれば大丈夫なんだよね」

「うむ、察するにその黒い空間は昇の力の溜まり場、または深層意識とも言える場所じゃからな。そこでうまくイメージできて、後は外に出すだけじゃ」

「うん、分かったよ。やってみる」

 そして昇は砂利道を進み、大きく開けた場所の真ん中辺りへと立つ。

 えっと、ここら辺でいいかな。

 昇は精神を集中させると意識を沈めて行き、黒い空間へと漂う。

 とりあえず、武器のイメージから、そして防具、というか服だなこれは、けどいいや、とりあえずこれで。

 イメージを終えた昇に黒い空間から光の粒が現れて昇るへと集まっていく、そして両手には武器を、体には服を光の粒が作っていく。

 そして全てを作り終えた昇は意識浮上させていく。もちろん、光に全身を包まれたまま上っていく。

 そして現実ある昇の体が突如光を発すると、その光はすぐに消え、昇の姿が変わっていた。

 ゆっくりと目を開ける昇。そして両手に握られている物を改めてみてみる。

 うん、だいたいこんな感じかな。

「ふむ、どうやらうまくいったみたいじゃのう」

「うわっ、閃華、いつの間に」

「そこまで驚くことは無かろう。それにしても二丁拳銃とは考えたものじゃな。それにその服も似合ってるといえば似合っておるぞ」

 今の昇は両手にリボルバー式の拳銃を持っており、服は体型が判るほどの密着した黒いシャツ着てコートを羽織っている。

 だが、女顔の昇に真っ黒な服はどうかと思うが、これが意外にも似合ってたりもしていた。

「うん、似合ってるよ、昇」

「シエラ、なにドサクサ紛れに昇と腕を組むのよ」

「妻としては常識」

「そんな常識はないし、私はシエラを昇の妻とは認めてない!」

「別に琴未の承認なんて要らない」

 そしていつものように二人は騒がしくなり、昇は溜息を付くのだが、今度はミリアが背中に思いっきり抱きついてきた。

「昇、昇、なんかその姿もかっこいいよ」

「そ、そう、ありがとうミリア」

『ミリア』

 抜け目の無いミリアにそれを見破るシエラと琴未の声が重なり、昇は再び溜息を付く。

「さて、一段落したところで……」

 ああ、やっと今日も終わりか。

「次に行こうかのう」

「まだやるの!」

「昇、なにを言っておる。当たり前じゃ」

「え〜、これ以上なにやるの」

「ふむ、昇がその状態で戦いながらどれだけの力を私達を送れるかじゃが」

「つまり、この状態でエレメンタルアップを使えと」

「まあ、今の昇もエレメンタルアップの改良版のようなもんじゃが、昇だけが強くなって本来のエレメンタルアップが損なわれるようじゃ、あまり意味がないからのう」

「まあ、そうだけど」

「では、皆も準備してくれ」

 そしてシエラ達は各々を精霊武具を出して、昇を囲むように展開する。

「とりあえず、皆は昇の事を思ってくれ、そして昇は皆のことを思うんじゃ。そうすれば思いは繋がるはずじゃからな」

「分かったよ」

 そして昇は再び黒い空間へと意識を沈めていく。

 そして少し待つと四方から四本の糸が昇の前まで伸びて来て、昇はその四本の糸を一気に掴むのと同時に意識は現実へと回帰する。

「エレメンタルアップ」

 昇を囲む四人は湧き上がる力を感じる。

「あれ、なんか、昼間よりも力が沸いてくるんだけど」

「それだけ琴未を含めて、私達の絆が深まったということじゃ」

「へぇ〜、そういうもんなんだね」

 感心する琴未とミリアをよそに閃華は昇のほうへ顔を向ける。

「昇、その二丁拳銃は実弾か?」

「いや、さすがにそこまでは作れないよ。だから僕の力を弾丸として撃ち出すようにしてあるけど」

「ふむ、それでよい。そのほうが効率はいいからのう。では昇、空に向かって撃てるだけ撃ってくれ。シエラ、済まんが防音の結界を張ってくれ」

「分かった」

 シエラは意識を集中させると手の平に透明な四角い箱が現れ、それが一気に広がり、昇達を箱の中に入れてしまった。

「さて、これでどんな音がしても外には漏れん。じゃから昇、思いっきりやってみい」

「はいはい、分かったよ」

 いい加減に疲れてきたのか昇は適当に返事をしながらも、真剣に両手の拳銃を空に向けると引き金を一回だけ引き続ける。

 それと同時に拳銃のリボルバーは高速回転を始めてシリンダーが銃身に合わさるたびに弾丸が発射された。

「ほう、まるでガドリングガンじゃのう」

「けど閃華、この状態であれだけの力の弾丸を乱射できるということは」

「うむ、昇の力は私達が思っていた以上に潜在する力が大きいようじゃのう」

「そうみたいね」

 エレメンタルアップを利用しての武具の精製、そしてシエラ達へのエレメンタルアップ、そのうえ力の弾丸をあれだけ乱射できるんだから、昇の力はシエラ達が思っていた以上に大きいようだ。

 そして昇はいい加減に疲れたのか、銃の乱射を止めると閃華に顔を向ける。

「閃華、もういい?」

「そうじゃのう、今日はいろいろとあったからのう。それでもそこまでの力を出せることを証明できただけでも凄いことじゃからな。今日はここら辺で引き上げるとするか」

 やっと終わった。

 さすがに今日はいろいろと有り過ぎたので、疲労の色を隠せない昇を伴ないながら、皆揃って家へと帰っていった。







 そんな訳で、只でさえ一話の話が他の人より長いのに、今回は更に長くなってしまいました。携帯読者の皆さん、がんばって付いてきてくださいね。

 ちなみに、今回の話を文庫本サイズに直すと16ページぐらい、いくみたいです。普段でも10ページ以上書いてるのに今回は更に長くなってしまった。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価感想もお待ちしております。

 以上、これからの昇の活躍に期待する葵夢幻でした。


 追伸

 やっと修正作業も半分終わりました。いや〜、長かった、本当に長かった。けど、まだ半分残ってるんだよね。ああっ、もう、風邪はひくは、出かけることになるは、いろいろと忙しいです。

 まあ、詳しい事は私のホームページ、冬馬大社にブログに書いてあるので興味がある人は読んで見てください。

 ではでは、そろそろ新章のプロットを考えないとなと思った葵夢幻でした。

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