アイリッシュコーヒー(四百文字お題小説)
沢木先生のお題に基づくお話です。
「アイリッシュコーヒー」をお借りしました。
大人の雰囲気が漂うカクテルバーのカウンターに並んで座る男と女。
「このカクテルはね、アイルランドのウィスキーをベースにしているからアイリッシュコーヒーって言うんだよ」
男が薀蓄を語っている。女はそれをウットリとした表情で聞いている。
「ベースがスコッチウイスキーならゲーリックコーヒー、ベースがコニャックならロイヤルコーヒー、ベースがアクアビットならスカンジナヴィアンコーヒー、ベースがカルヴァドスならノルマンディコーヒーって呼び名が変わるんだ」
男は酔いも手伝ってか、更に豆知識を披露した。
「そうなんですか。カクテルに詳しいんですね、須坂先輩は」
頬をピンクに染めたほろ酔いの後輩社員蘭子の言葉に須坂君は飛び上がって喜びそうになった。
「次は何を頼もうか」
須坂君はメニューを捲りながら言った。
「お任せします」
蘭子は頬杖を突いて微笑みながら応じた。
(本当は全部知ってたけどね)
気遣い満点な蘭子だった。
頑張れ、須坂君(ムフ)。