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6話 登録は衝撃に

前回の荒筋(嘘):4人パーティー揃った勇者一行。魔王との再戦を決意していざ魔王城へ! と思ったら魔王の方が勇者たちの前に現れた。

「正直魔王やるのが面倒になった。何か面白いことはないか?」

色々言いたいことはあるが魔王の『面白いこと』が想像できない勇者たちは人肌脱ぐことにした。

劇を見る。

海で遊ぶ。

世界征服。

世界の明日はどっちだ?

武具を選んだ翌日、俺たちは王子に連れられてギルドに来ていた。来ていたんだが、


「趣味悪いな」

「凍、帰ろう」


建物がマゼンタ90%なのだ。この建物デザインした奴頭おかしいんじゃないか? 恥ずかしくて入りたくないんだが。


「いいから入るぞ。入らなければ何も始まらん」


王子も嫌そうな顔だが入るよう促してきた。

昨日選んだ武器は調整をするらしく手元には無い。だが慣れておくに越したことはないと言われ同種の武器を渡されている。

俺は銃身が分厚いリボルバーを2丁、焔は腰に吊るした鞘に蛇腹剣を収めている。

防具はあってもなくても変わらないのだが王子が面白半分に防具屋で選んだ。

この世界の防具は魔石を装備していれば普通の服でも鎧としての役目を果たす。鎧に魔石を装着すればさらに固くなるので騎士団はそうしているだけだと言う。


で、俺は両腰にホルスターを装備して前の締まった白いロングコートみたいなのを着ている。焔が着ているのは修道服を動きやすくしたような服だ。

あの蛇腹剣、本当に法剣テンプルソードと呼ばれる教会御用達の武器の1つだったらしい。ちなみに俺の服も教会の戦闘員が着ている物に近いらしい。紛らわしいんじゃないかとも思ったが本職は背中に大きな円模様が入るらしい。

教会についての説明は分からないからしない。その内詳しく聞くこともあるだろう。


嫌々ギルドに入る。

扉までマゼンタだなんて、心が折れそうだ。マゼンタじゃないのは精々看板くらいだ。窓枠までマゼンタな辺り徹底しすぎててむしろ清々しい。

だが中に入って安心した。年期の入った木製の建物は西部劇のバーのようだが、荒んだ様子はない。事務所兼バーと言った雰囲気だ。

王子が迷い無くカウンターに進んでいくので後に続く。

周りから俺たちを見ている冒険者たちの視線は友好的ではないが敵対的でもない。本当に観察してるだけって感じだ。


「新人2人だ。登録を頼む」


王子がカウンターに居るアゴヒゲがダンディーな筋肉隆々の男に話しかけた。落ち着いた雰囲気の男はゆっくりと俺たち2人を見てから口を開いた。


「オッケーよ~ん。じゃあこれに書けるとこだけ書いてね~」


出オチ! 初っ端の落ち着いた雰囲気が台無しだよ! この見た目でオネエとか勘弁してくれよっ! もう色々と残念過ぎて辛いんだよっ!


「凍、やっぱり帰ろう。他の方法探そうよ!」


是非そうしたいです!


「だが恐らくここでなければお前たちの欲しい情報は手に入らないぞ。こんな見た目だが腕は一流だしな」

「失礼しちゃうわねっ、私は男として男が好きなのよ!」


なお悪いわっ!


「と言うのは冗談で、普通に妻も娘も居るわよ。こんな私を受け入れてくれた大切な家族がね」


良い台詞のはずだけどギャグにしか聞こえない。見た目と話し方のギャップが強すぎて引いてしまう。こんな人、空想の中にしか居ないと思っている時期が僕にもありました。


「さっさと書いてしまえ。私はそろそろ公務に戻らねばならん」


仕方がない。もう色々と諦めて書くことにしよう。

え~と、項目は、


名前――コオル・サトウ

年齢――16歳

何かコメント――


項目少なっ! これだけかよっ!? もっと色々書き込むもんじゃないのかよ!?

漢字だと違和感あるからカタカナで書こうって焔と決めてたけどまさかここまで何も書かないとは思わなかった。


「はいは~い、終わったのね~。コオルちゃんにホムラちゃんね。

何々、コオルは私の嫁

あら、大・胆・ねぇ」


シナを作るな色気を出すな息をするな読み上げるな口を開くな俺を見るな今直ぐ書き直させろっ!

焔も何を書いてんだよっ!


「コメントって言うからつい」

「絶対コメントの意味違うからな!」

「アリよっ!」


アリなのかよっ!?


「じゃ、ランクの説明をさせてもらうわね。

ギルドに所属している人は冒険者って呼ばれるわ。冒険者の証の指輪は後日渡すわ。ちなみにギルドってのは旅をしてたり身分証明のない浮浪者なんかでもなれる審査も無しのとんでも組織よ」


自分で言っちゃったよ。


「ありとあらゆる人が寄せてくる依頼を階級に応じて振り分けてるの。依頼の内容も千差万別でね、魔獣の駆除から日曜大工までなんでもあるわ。

でも殺しだけは厳しい制限があるの。殺しの対象は重犯罪者や危険な山賊みたいな死んでしまった方が良い人たちだけ。傲慢かもしれないけど王都に害を為す危険人物にまで優しくすることはできないわ」


シビアだな。死刑執行者みたいだ。


「階級についてだけど、D、C、B、A、Sの5階級よ。

Dは登録したての初心者。雑用みたいな依頼を10個ほどこなすとCランクよ。魔獣の討伐なんかはこの階級からね。Cランクの依頼を20個ほどこなすとBランクになるわ。この階級になると山賊や逃走中の危険人物なんかを相手にすることになるの。

で、問題はここから。AランクとSランクには人数制限があるのよ。Aは20人、Sは5人ね。

年に1回Bランクの上位4人とAランクの下位4人、Aランクの上位4人とSランクの1位以外で戦ってもらって入れ替えが行われるの。

Dランクの貴方たちにはまだ関係ないしBランクになるときに確認するから覚えてなくても大丈夫よ。

あ、言い忘れてたけど自分の階級よりも上の依頼は受けられないから気を付けてね。下の階級の依頼も月に受けられる上限があるから受けすぎちゃダメよ?」


最後にウインクされてしまった。

キャー恥ずかしー。

……調子に乗ってすいませんでした。


「じゃ、早速依頼しても良いかしら?」

「大丈夫だ」


昨日王子が教えてくれた話ではBランクにならないと強力な魔獣の情報は入ってこないらしい。Aランクになって目立つのは御免だからBランクを目指す。

焔はどうでも良いと言っていた。こいつ村に帰る気すらないな。


「診療所からの依頼でね、薬草を取ってきてほしいんですって。これが薬草の外見と生えてる場所よ。欲しい数と報酬はそこに書いてあるから行きながら見ておいてね」


メモを渡された。結構親切だな。


「じゃ、よろしくね~」


やっと恥ずかしい建物から出れた。

さて、行くとするかな。


今回の纏め(嘘):面白いことが見つからない魔王は不貞腐れて魔王城に引き篭ってしまった。毎日毎日グータラしてる魔王に業を煮やした配下たちは勇者一行にお願いをした。

「魔王様を前のキリッとした状態にもどしてくだされ」

本末転倒? 意味不明? そんな魔法使い見習いを置いといて勇者たちと魔王の配下の交渉は進んでいく。そして魔法使い見習いは決意した。

「魔王、ボコそう」

魔王の明日はどっちだ?

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