7話 活動開始
ジー……ペラ……ジー……ペラ……
凍「作者が本の世界から帰ってこないな」
焔「留学中に新刊が5冊も出てたんだって」
雷「ラノベ3冊に漫画2冊ね」
花子「買い込みましたね」
まさかあんなに一杯出てるなんて思いませんでした
いつも雷が凍と一緒なんてズルイ! と焔が騒いだために今回は俺が焔に勉強を教え、雷と花子がギルドに行っている。
昼は帝都名物の自殺桶定食を食べた。名前は悪いが味は面白い。桶の中で定食物のオカズとご飯と味噌汁が区切られている。レモンとトマトを混ぜたような味の肉野菜炒めだったのだが不思議と美味かった。
メス3匹は普通に生姜焼き定食とか狐うどんとか野菜丼だった。誰がどれとは言うまい。順番はバラバラだぜ?
で、宿で焔の勉強を見ていたんだが、
「久しいな。まさかホムラと2人きりだとは思わなかったぞ」
何で雷と花子は王子を宿に連れてきたんだろうか? 確かに王子が帝都に居るのは不思議じゃないが普通会わないよな?
「アズマに無理言って案内してもらった。非常に面倒な事態だ。協力してくれ」
面倒な事態って、学校が既に面倒な事態になってんだが? てか今日中に終わるのか?
焔は辛い勉強とはいえ俺と2匹だけの空間を邪魔されてメッチャ殺気立ってるし。
「帝国には話を通した。お前たちは事態が終息するまで学校を休むことになった」
焔さん嬉しそうにしないの。雷と花子も事情は知らないらしい。
「拒否権はないんだろ? だったら条件だ。花子の刀をオッチャンに作らせろ」
「寧ろ俺に作らせろい! って言うつもりだったんだが?」
部屋の入口からオッチャンが入ってきた。居たのか。
「くっくっくっ、おあつらえ向きに長ものの得物たぁ、これも俺の日頃の善行の裏返しかねえ。これで新型サーベルの実験ができるってもんだぜいっ!」
おいおい、またしても変な物作ったのか? オッチャンのトンデモ武器は俺の銃で間に合ってるぞ?
「今回は水のゴーレムの作り方を応用して水の刃を作れるようにしたぜ! あれは自動で動くがメインは拠点防御、今回は違う! 歩兵の近接戦闘能力を上げることに特化した伸縮自在で水さえあればいくらでも刃が出せる優れ物!それも刀ってこたぁ居合いもできんだろ?
皆まで言うな聞いてねえ!
居合いで水を飛ばしゃあ遠距離攻撃だって可能な最高傑作でいっ!!!!」
まさか聞いてねえと言われるとは思わなかったぞ。しかしまたおかしな物を作ったが、何故先に水ゴーレムができたんだ? 普通オートってのは後じゃないのか?
「やっぱ違う国の研究に触れるってのは良いもんだぜ! 魔石にもオリハルコンと同じで別の物体同士を固定する力があるってのは帝国が発見した技術なんだぜ? しかも魔石に特定の処理を施しゃあ形を自由に設定できるしな!」
「魔石で動く戦車は我が国とこの国の合作だからな」
ん? 何の話だ?
てか魔石のそんな特性知らないぞ。オリハルコンの話は銃を貰ったときに聞いたが。
「この国は魔石の力の研究が盛んなのだ。対して我が国は鉱物の研究が盛んだ。私が載っていた戦車は魔石を効率的に使うリストカット帝国の研究と我が国の鉱物加工の技術を合わせて造られたものなのだ。台数は少ない上に国内で使う機会はないがな」
王都で戦車なんて見なかったから何であんなもんがあるんだと思ってたけどそう言うことだったのか。
「では本題に入ろう。現在帝都の周辺で例の魔獣が確認された」
……まさか
「お前が黒スライムと呼ぶアレだ」
マジかよ、海を越えられるのか? いや、そもそもがこっちの大陸の魔獣だって可能性もある。どっちにしろ問題なのは居るって事実だ。
でも猪に変わったことはないか聞いても何も無いと言ってた。黒スライムはこっちじゃ当たり前なのか?
「確認された日付は王都が魔獣の進行を受けてから5日後、残党の線は薄いと考えている」
そりゃそうだ。王都から都までで3日はかかる。都から帝都までは更に7日以上かかる。どう考えても元からこっちに居たってことだ。
生息範囲が広いのか? それにしては誰もあんな魔獣の存在を知らない。図書館で調べてみたがあんな魔獣の情報はどこにも無かった。
世界中を旅した冒険家や勇者伝説にも出てこないんだ。これは完全に新種だと決めつけても問題なさそうだな。
「私は黒スライムを魔獣リストに新規登録しようと思う。既にキスタニア王にもリストカット帝国の霊帝にも進言済みだ」
ここの帝王は霊帝って言うのか。そう言えば依頼にも心霊現象がどうのこうのってのがいくつかあったな。心霊系に寛容な文化なんだろうか?
魔獣リストというのは各国共通の魔獣の辞典のことだ。魔獣は人間にとっては等しく危険だからどの国も活発に情報提供しているらしい。新種報告は稀だが既存の魔獣の行動パターンや生息範囲、好物などがよく増える。
「で、王子様は私たちに何をさせたいのかしら?」
「そうだよ、話が長いだけで飽きちゃうよ?」
落ち着こうな焔に雷、聞き入ってる花子を見習ってくれ。
「そうだったな、お前たちに人間の建前は不要だった。依頼は簡単だ、黒スライムを討伐してくれ。それもこの国の騎士団、侍所が動き出す前に」
何故? 協力した方が絶対良いぞ?
「先日霊帝との謁見があったのだが、その時に奇妙な感じがした。妙に帝宅の地下に惹かれたのだ。魂が引っ張られるような、上手く言えん感じがしたのだが」
おいおい、霊帝が信用できないからって俺たちに先に殺らせようってのか? 無茶苦茶言ってくれるな。
「何も絶対と言うわけではないのだが、できるだけリストカット帝国が介入する前にカタをつけたい。もし国政に関わる人間に取り付いたとしたらと思うと、胸がザワつくのだ」
王子の勘か。どこまで信用できるかは神のみぞ知る、だな。
「じゃ、早速俺は武器の作成に入らせてもらうぜ?」
「ああ、頼む」
「そっちの黒い嬢ちゃん、刀の調整に付き合ってもらうぜ?」
「えっと、凍君」
あ~、人間だもんな。
「俺も行くよ。花子は人見知りなんだ」
「おうよ。ついでにお前さんの銃も見せてみろ。どっか不具合がねえか見たかったんでい」
「はいよ」
俺の銃はかなり繊細な作りになっている。焔の法剣も手入れの難しい武器だが俺の銃は輪をかけて難しい。色々な機能がある所為で他に影響があるかもしれないのだ。
「さて、話は済んだ。学校には既に通達してあるからお前たちから何かを言う必要はない。担任がいやに残念がっていたから復帰したら慰めてやることだ。
では、黒スライムの件、頼んだぞ」
行ったか。オッチャンも花子の手のサイズ、握るときの力の入れ方、足の位置などを見てから帰った。どこに泊まってんだ? てか先生が残念がってるって言われてもな。
「何だか、追われているような錯覚に陥るわね」
「黒スライムが俺たちを追っているのか、俺たちが黒スライムの居る所に行ってるのかは分からないけどな」
前者は錯覚で後者が正解だってのは分かってるけどな。
「学校なくなった!」
「焔ちゃん、それでもお勉強はしましょうね?」
「ええっ!!」
当然だ。
焔「…………」
ん?
凍「焔はどうして不機嫌なんだ?」
雷「凍との時間を邪魔されたからじゃない?」
花子「作者さんが凍君との絡みを書いてくれないからじゃないでしょうか?」
凍「そう言えばそんな話もあったな」
雷「で、作者は書いてるのかしら?」
書いてありますよ。
あと数話で問題の話になります。
焔「(ニコニコ)」
凍「分かり易いな」
雷「それが焔の良い所よ」
花子「素直ですよね。良い意味でも悪い意味でも」




