5話 同族初回
凍「ん? 5日毎に更新するんじゃなかったのか?」
焔「日付数えるのが面倒だったから5の倍数にしたみたいだよ」
雷「あの作者は本当に駄目ね」
花子「こ、更新は早くなったんですし良しとしましょう?」
焔「花子優し~」
雷「31日の月はどうするつもりなのかしら?」
凍「5の倍数で更新したんだろうな」
雷「本当に無計画な作者ね」
「は?」
「女ができる祝いの品は必要だろ? さっさと寄越せ!」
コイツは何を言っているんだ? このカブトムシは俺が時間を掛けて、集中して、自分の力で狩った最高に俺の心を満たしてくれる最高に愛しい獲物だ。それを寄越せ? ……死にたいのか?
「おいおい、反抗する気満々じゃねえか? 何だよ、そんなに嫌だったか? だけど知らねえよ。俺が欲しいっつったら、俺の物なんだよっ!」
「キャアアアア!」
「ガッ!」
炎狼のメスが何か叫んだが痛みにのたうち回ったのは俺じゃない。正面から飛び掛ってくるからカブトムシを振り回して迎撃してしまった。甲羅は硬いからな~
「くっそ、こいつっ!」
「俺の獲物に手を出すな!」
「ほざけっ! テメェだって後ろのメス見たらぜってえ欲しくなるぜ? それが見向きもしねえでたかがカブトムシ1匹に固執しやがって!」
コイツ今『たかが』っつったか? 今この状況でメスよりもカブトムシが格下だって言いやがったか? 舐めてんのかっ! 俺が1日森に篭って気配消して樹液見張って食い終わるの待って子供にゃ辛い力使ってまで仕留めたカブトムシを何だと思ってやがるっ!!
「撤回しろ、このカブトムシは、そこいらのメスより価値がある」
「はんっ、ガキが! そんな虫1匹よりもメスだろ、メス! 良いメスはそれだけで良いオスの証明だろうが! そいつの面見てみろよ! 村のメス共なんて束になっても敵わねえくらいだ! それを無視してテメェは何熱くなってんだっての!!」
「黙ってろよ万年発情期の犬っころ。メス追っかけるしか脳がねえ三下に構ってたら折角の脳味噌が腐っちまうだろうが。そこを退くか掛かってくるかさっさと選べ」
「このっ、言うに事欠いて犬なんかと一緒にしやがって!」
またしても正面から飛び掛るコイツを下から甲羅で打ち上げる。空中で引っ繰り返ったコイツはそのまま背中から地面に落ちた。
「てめっ、ぎゃああああああっ!」
何か言おうとしていたが氷の爪で左後ろ足を切り落とす。リーチは短いが斬れ味だけなら大人顔負けの爪で切られた足からは骨と地肉が覗いている。
「てめっ、同族のっ、それも同じ村の奴に!」
「知るか」
そもそも俺は同じ村だからどうとか言われてもピンと来ない。肉は肉、敵は敵、餌は餌だ。
「大体前から目障りだったんだよ。手当り次第にメスに手出して、お前1匹で狩りもしたことないだろ? そんな雑魚がデカい顔してメスメス言いやがって。子供ができたってまともに養えねえ分際で威張り散らしやがって。ここで素直に死んどけ」
魔獣社会では体に障害のある奴は直ぐに殺される。集団に利益が無いどころか何もできない足で纏いは邪魔なだけだ。コイツは村に戻っても直ぐに追い出される。そうして他の魔獣に殺されるだろう。
……ちょっと勿体ないな。
氷狼の肉はまだ食ったことがないと思ったがコイツの肉だと思うと腹を壊しそうで食う気が失せそうになった。しかしこれは数少ないチャンス。今を逃したら氷狼の肉なんて食う機会はそうそうないだろう。
……よしっ、食べよう!
「さて、まずはシッカリと息の根を止めておくか」
「待っ、待て! 何する気だ!? 来んな! 来んじゃねえ!!」
足が1本無いために逃げるのが遅い。でもウザイからもう片方の後ろ足も切り落とす。またギャアギャア騒いでいるが無視。切り飛ばした足の所為で辺り一面に血が飛び散ったが、変な臭いだ。鉄と腐った魚の臭いがする。きっと昼に魚食ってたんだろうな。
前足しかないが動かれても面倒なので落ちている長めの木の棒を使って地面に貼り付けにする。実は何回か普通に刺そうとしたが上手くいかなかったので木の上から全体重を掛けてようやく貫通した。まあ何回か刺そうとした時点でかなり衰弱していたのだが。
こういうのって気分が大事だろ?
まるで蝶の標本のようになったコイツの首に噛み付き息の根を止めにかかる。最初は力の限り抜け出そうと必死にもがかれ噛む力が上手くかけられなかったが段々抵抗が弱くなっていった。何やら『苦し』とか『息がっ』とか最後は『ぁぁぁ』とか呻いていたが問題無く仕留めた。
さ~て食べるか!
まずは木の棒を抜いてっ、レッツイーティング!
木の棒が刺さっていた位置の肉を……不味! 何これ酷い! 消化中の魚があると思って胃は避けたのに他の部位も不味い! こんなに不味い肉初めてだ! 同族の肉は不味く感じるって村長に聞いてたけど本当だった!
ん? 炎狼がこっち見てる?
「どうした?」
「あっ、その……」
何だ? 俺がコイツのように襲いかかってくると思ってんのか? 心外だな。俺は純愛派だ。無理矢理は恋人同士のプレイ以外認めませんよ!
まあ何でも良いや。
「一緒に食べる? スッゴイ不味いけど」
見た感じこの炎狼はかなり細身だ。ちゃんと食ってるのか不安になる。炎狼の村の食料事情が心配になるくらいだ。
「そのっ、私は」
ぐうぅぅぅぅ……
……何このお約束。炎狼から明らかに空腹の時に鳴るアレが聞こえてきたんだけど。
こんなに食事に困ってる娘にこんな不味い肉は食べさせられないよな~
気まずい雰囲気を無視してカブトムシを爪と歯で解体し始める。欲しいのは脳味噌だ。だが、ただ頭を切り落とせば良いと言うわけではない! 脳髄に刺激を与えないように甲羅に中の繊維を少しづつ爪で削り、頭と胴体が急に切り離れないように噛んで抑え、そうしてようやく至高の脳味噌は最高の状態で取り出せるのだ!
切り離した甲羅を器にして脳味噌を移す。うむ、見事な出来栄え!
「君炎狼だよね? じゃ火でこの甲羅炙ることできる?」
「う、うん」
俺が聞いたらシッカリフサフサの尻尾を使って翅を炙ってくれた。脳味噌に直接火が当たらないように配慮してくれている。出来た娘だな~
あ、丁度良い感じ。
「それくらいで良いよ。じゃ、どうぞ」
「へ?」
「お腹空いてるんだろ? そういう時は美味いもの食べるべきだ。あんな不味いもの間違っても口にしちゃいけない。味覚がおかしくなるからな」
完璧に俺の持論だが。
「でもっ、これ、頑張って取ったんでしょ?」
「それでも君が食べるべきだ。美味いものは必要とされる相手に食われるべきだ。それは金持ちでも俺みたいな趣味に生きるものでもない、腹を空かせた奴だ」
「…………」
何か黙りこくったと思ったらガツガツ食べ始めた。本当に腹減ってたんだな~
ぐうぅぅぅぅぅ……
「「…………」」
今度は俺の腹からだ。コッチ見んな。
狩りに夢中で昼食ってなかったんだった。
あ、器こっちにずらしてきた。
「お腹、減ってるんでしょ?」
「……」
「美味いものはお腹を空かせている奴が食べるべきなんでしょ?」
「……はい」
まさかそう返されるとは。結局仲良く2匹で脳味噌を食った。やっぱり軽く器で炙ると最高に美味いな~
「林焔」
は?
「私の名前。あなたは?」
ああ、自己紹介か。
「佐藤凍だ。よろしく」
オスに近付くのは怖いかと思って敢えて顔は離しておいたんだが、向こうから挨拶の頬擦りをされた。気を遣って返さないなんて逆に失礼な気がするので普通に頬擦りを返す。すると強く擦ってきて顔中舐められ、最後には全身に臭いをすり込むように擦られ舐められた。これ水浴びしても落ちるか怪しいだけど?
「凍っ、これからよろしくねっ!」
これが焔との出会いだった。
「と言った感じだ」
「肝心の焔の気持ちがさっぱりね」
やっと説明が終わったと思ったら雷に駄目出しされた。俺は焔じゃねえからな。
「知りたかったら焔に聞くんだな」
「そうするわ。でもあなた、食に貪欲だとは思ってたけど同族まで食べたのね。私と初めて会ったときの言葉、あながち妄言でもなかったのね」
そう言えば黒スライムに取り付かれた雷を食いたい的なこと言ったんだった。
「あ、猪だ」
「依頼は終わったも同然ね」
雷はめでたくCランクになりました。
花子「凍君、雷を食べるって何の話ですか?」
凍「は、花子っ、刀をしまえっ。怖いぞ」
焔「本当に、凍って見境ないよねっ」
雷「いきなりだったからちょっとドキドキしたわ////」
凍「わざとらしっ!」
花子「凍君っ、そのナンパな根性正してあげますっ! そこに正座してください!」
焔「凍、今なら結婚してくれたら許してあげるよ? 浮気しても他のメスに手を出しても怒らないから結婚はしよ?」
凍「さっさと次の話行くぞ次!」
雷「残念、5日までお・あ・づ・け」
焔「凍っ!」
花子「凍君っ!」
凍「作者ああああああああああっ!!」




