5話 子供は親の言うことだけ聞いていれば良いのだ!
名言ってどうしてもガンダムが多くなるな~と思いつつ投稿
「これより蝶族の王、山田太郎と氷狼の少年、佐藤凍の決闘を始めます!
時間は無制限、ジャングルの被害もありますから人化した状態で戦ってもらいます。どちらかが戦闘不能になるか審判が止めた時点で終了です。能力も武器の仕様も許可します。
では、始めっ!」
王妃様の合図と共に王様が腰の刀を鞘に収め、高速すり足で俺に迫ってくる。迎え撃つ俺は銃をどちらも散弾に設定して銃口を王様に向ける。
さて、いきなり決闘という妙な展開になったのにはわけがある。王様の親馬鹿が爆発したのだ。
……それだけだ。
愛しい娘の気になる男の子たる俺が娘に相応しいか試してやるからさっさと死ねと言うわけだ。
何か、俺の狼生ってやたら死がまとわりつくような? 気にしたら負けだな。
「その刀もジャングルで死んだ冒険者も物ですかっ!」
「その通りだ!」
居合による横一閃を上に飛ぶことで避け、両手の銃から散弾を発射する。
左右の銃口の射線上の間に入ることで回避しようとした王様は散弾だったことに驚き、モロに散弾を至近距離で受けた。
しかし所詮は低威力、王様の分厚い筋肉の鎧に阻まれ効いた様子は無い。
「その程度の威力で花子を守れる気かっ!」
「俺の役目ですかソレ!?」
太い木の後ろに回り込み弾倉を入れ替え右を単発、左をステークに変える。
視界の端に映った刀の煌めきを見た瞬間、地面スレスレまで屈んだ。
頭の数ミリ上を刀身が横薙に通過し、太い木を切り株に変えた。
「自分のジャングル壊す気ですか!」
「凍君が切られれば済む話だ!」
縦切りをサイドステップで右に躱し、至近距離で単発の銃弾を当てるがやはり筋肉の鎧に弾かれる。
オッチャンが射程削って威力重視にしたって言っててもコレか!
「弾種を変えられるとはっ、面妖な銃だ!」
「もっと驚かせてあげますよっ!」
上から下に振り切っていた刀身が俺目掛けてその軌道を跳ね上げた。
右の展開刃を出し受け止め、左の銃口を脇腹に突き付け、オリハルコンのステークを撃ち込んだ。
「取った!」
「この程度でっ!」
ステークを撃ち込んだ脇腹は内出血のように変色しているものの戦闘不能と言うほどではない。寧ろ撃ち込んだことで気の緩んだ俺を鞘で強打して弾き飛ばした。
どんな筋肉だよ。
ふんっ! とか気合入れたら脇腹の傷も治っていく。
「反則臭い能力ですね」
「自己回復は紳士の嗜みだ」
聞いたことのない嗜みだなオイッ!
「しかし我に1撃入れるとは、息子たちにも見習わせたいな」
「俺は狩りが専門ですから」
「ふっ、さぞ楽しいのだろうなっ!」
刀と鞘の2刀流となった王様に対抗し、左右とも展開刃を出し、打ち合う。
「銃で斬撃、突き、打撃をも行うかっ!」
「人間の技術力って、凄いですよねっ!」
体格差で正面からの打ち合いは不利だ。だが絡め手を行えば豪腕で吹き飛ばされる。
ちょっと能力試すか?
「氷の刃だと!?」
「能力の仕様はルールで認められてますよ!」
展開刃を氷で刃渡り30センチくらいに伸ばす。これで少しは間合いを稼げる。これ以上は扱いづらい。
数度打ち合い、砕けた氷を王様に蹴り放つ。
「先程の銃弾よりも低威力の攻撃などっ!」
「物は使いようです」
王様が刀で迎撃する直前に未だ単発モードの右の銃で氷を撃ち砕く。
「なっ!」
「言った通りでしょう!」
「があっ!」
破片が目に入るのを防ぐために目を閉じた王様の右手の甲をステークで撃ち抜く。刀を持てずに落としたので蹴って遠くにやる。
「ごふっ!」
まさか右手の甲を撃ち抜かれた直後に鞘で鳩尾を突き飛ばされるとは思わなかった。
しかも殆ど目を閉じた状態で正確に鳩尾を突くなんてどんな体術だ?
「彼、凄いわね」
「お母様っ! 2人を止めてっ!」
「無理よ。父親が娘の前でカッコつけようとしているのよ? それにつき合うなんて、良い子じゃない。もう20若かったら私が狙ってるわ」
「我が妻はやらんぞっ!」
「例え話でしょうがっ!」
今までで1番鋭い突きだった。反撃するだけの体勢も保てない。バックステップなら追撃されるしサイドステップなら横凪ぎに振るわれるだけ。つまり受け止めろと?
敢えてしゃがんで上から降り下ろさせ、両の銃で受け止める。力勝負じゃ負けるのは目に見えてるので横に流して距離を取る。
「娘だけで飽き足らず妻までもっ」
「やっぱ花子のこと見送るの嫌なんですね?」
「当然だっ!」
だったらもうちょい普通に花子のこと止めてくれないか? 傍目には理解ある父親演じたいんだろうけど。
「誰が可愛い娘を嫁になんぞやるかっ! 確かに凍君、君は良い男かもしれない! だがそれと娘をやれるかは別問題だっ!」
俺は欲しいなんて言ってないんだが? まあ、花子が俺を意識してるのは確かだろうな。どのレベルかは本人のみぞ知る、だが。
ええいっ、さっきから1撃1撃が重いんだよっ!
「とにかく、さっさと終わらせてジャングルの防衛手段考えよう」
「くっ! 我など歯牙にもかけぬと言うことかっ!」
「建設的なことしようって話ですよっ!」
子供を手放したくない父親の気持ちは俺には理解できない。だから正面から言い合って、倒すしかない。
そもそも魔獣が決闘なんてすること事態がかなり奇特だ。普通は食うか食われるか、殺るか殺られるかだ。
何で俺は王様の決闘受けてんだ?
「次が、最後だ!」
ここは、ちょっと恥ずかしいが受けるしかないか。
「受けて立ちます」
「良い心がけだ」
王様が腰を落として両手で突きの構えを見せる。俺も銃を両方ともステークに変え、銃口を王様に向ける。
「もう、終わりなのね」
「あ」
王妃と花子の呟きを合図にしたつもりは無かった。単純に俺と王様の間を葉が遮っただけだ。
前に高速すり足で出ることで突きのスピードを速める王様の鞘を避けなければ俺の負け。俺が鞘を躱して懐に入られたら王様の負け。
シンプルで分かり易い勝負って好きだな。
「おおおおおおおおおっ!」
雄叫びをあげながら俺の胸を狙って放たれた突きは、更に前傾姿勢になることで躱そうとした俺の頬を掠って後ろに抜けた。
渾身の突きを躱されたことで隙だらけの王様の胸に2つの銃口を突き付け、引き金を引く。
トリガーが引かれた感触を確認したのと、俺の頭に振り抜いたはずの鞘が直撃したのは同時だった。
氷狼VS蝶王はちゃんと1話に収まりました~
下手したら2話構成になるかとヒヤヒヤものです
凍「あんな筋肉の化物と2話分も戦ってられるか」
蝶王「ほう、まだ元気そうだ」
妻「あらあら、若い子って良いわね~」
蝶王「そこに直れい! ぶった斬ってやるっ!!」
凍「断る!」
……何か焔と雷が居なくても状況同じ?




