8話 病んだラブコメは出歯亀
今期のアニメに偽物語があると聞いて見た感想。
何あの八九寺無双? ちょっとハーレダビットソンごっこしたくなった!
「さて、どういうことか教えてもらおうか?」
「それはあれですか、コレの話でございますか?」
宿で正座させられシスターに尋問されている。とりあえず小指立ててシスターに巫山戯てみた。小指曲がらない方向に曲げられた。
ギャーッ!
「凍、時と場を選ばないお巫山戯は挑発と同じだと思うの」
「凍ーっ! 大丈夫? 痛い? 早くベットに行かないと! 看病なら私がしてあげるからっ!」
服を脱がそうとするな! 小指変な方向に曲げられてベットはねえよ! 胸で挟もうとするな! 舐めるのは切り傷だ! ツッコミの順番がグチャグチャだっ!
「ヘンリエッタも落ち着きなさい。そもそも焔は凍以外には何の興味もないのだから焔とあの戦闘員が恋仲になることはないのよ?」
「凍っ、凍ーっ!」
「そ、そうだな」
焔、少し静かにしようね? 雷の説得タイムだから。
あ、分かってくれた。
「ここはいっそのこと告白させてしまってはどうかしら。フラれたところをヘンリエッタが慰める形で仲を深めれば良いと思うの。あわよくば既成事実を作ってしまいなさいな」
「き、既成事実っ!?」
「ええ、さっさと押し倒して戦闘員の」
「ピーーーーー!」
「を自分の」
「ピーーーーー!」
「に入れてしまいなさい」
被せたのは僕です。
焔、可哀想な子を見る目でこっち見ない。結構必死なんだから。
「凍っ、私は今すぐでも大丈夫だよっ?」
「俺は2年後まで不能だ」
「ヘタレの間違いじゃないかしら」
「凍がヘタレでも不能でも私は受け入れるよっ」
「何て重い優しさだっ!」
まさかそう来るとは思ってなかった。そして雷の言葉のナイフに慣れてきた俺が居る。
「あなたと彼、見ていて焦れったいのよ。叶わぬ恋なら綺麗に散らせてあげるのも優しさじゃないかしら?」
詭弁じゃないか?
ちなみにシスターは雷の下ネタからずっと真っ赤だ。
「このままじゃ、彼は一生童貞を貫きかねないわよ。生き物の本質を無視するのは体に良くないわ。だから、あなたが彼を救ってあげれば良いのよ」
シスターにすり込むように耳元に口寄せて話してる。
あいつは悪魔だな。
「私が、ジャンを?」
「そう、あなたが彼を」
シスターの目からハイライトが消えかかってる!?
「あなたが彼を、救う」
「私がジャンを、救う」
落ちたな。これでシスターは雷のオモチャ確定だ。
「そうと決まったら彼の所に行きましょう。焔に告白するキッカケを作らないといけないわ」
「えー、凍以外から告白されるのー」
「後で凍に願いを1つ叶えてもらえるように交渉してあげるわ」
「さっ、人間から告白されに行こっ! フルけどっ!」
何て悪女コンビだ。そして焔は何をお願いする気なんだ? 子供とか嫌だぞ?
翌日、今日は教会の戦闘員が砂浜で訓練する日だ。
昨日は熱血戦闘員に告白させてしまおうと決まったが上手くいくんだろうか? 全てに決着が着いたら告白する、とか考えてたら面倒なことになりそうだ。だってあと6日もあるんだぞ? 待つのは面倒なんだ。
「居たわ。焔、お願いね?」
手製の台本をヒラヒラさせて見送る雷と見送られる焔。
学芸会の芝居を始めるようなノリだな。
「うんっ」
ちょっと嬉しそうな焔が熱血戦闘員に近付いていった。そんなに俺にさせることを楽しみにしているのか?
とりあえず俺たちは岩場があったので隠れている。
「なっ、ホムラさんっ!?」
突然好きな子が近くに居て戸惑う。定番中の定番な反応だな。
「あ、凍を捕まえようとした人間」
後ろからでも分かる。焔は熱血戦闘員を睨んでる。
「あっ、あの時はですねっ」
「聞きたくないよ。どんな理由も関係ないもん」
確かにそうだがもうちょっと手加減してあげて。これじゃ益々告白できなくなる。
「そう、ですね」
「じゃ、さよなら」
「あっ、待ってくださいっ! えっ、ちょっ、本当に待ってくださいっ!」
焔、本気で無視するのは止めよう? 熱血戦闘員、わざわざ前に回り込んでまで止めに来たぞ。
「ホムラさんにとって、あの少年はどんな存在なんですか?」
「それは私も気になる話題だわ」
「私も興味があるな」
こいつら別のことでノリノリになったな。
さて、焔の返答はいかに。
「分かんない」
「へ?」
え? いつもあれだけ絡んどいて? かなりストレートなアピールしておいて? 無理矢理も辞さない言動しておいて?
「怖いことから守ってくれた。それだけで良かったのに、優しくしてくれた。だから、大好きだけど、どんな存在なのか分かんない」
言ってることが抽象的過ぎるだろ! あれじゃ誰にも伝わんないぞ。そして最初に助けたのは偶然だっ!
「でも、凍が私を守ってくれたんだから私も凍を守る。凍が私を守ってくれるから、凍の敵は、私が殺す」
「う、あっ」
焔の本心初めて聞いたな。そして殺気放ちすぎで熱血戦闘員が呼吸困難に陥りそうだ。
「今度こそ本当にさよなら。もう凍にも私にも近付かないでね」
言いたいことだけ言って帰ってきた。熱血戦闘員はまだ息が苦しそうだ。ついでに言えば悔しそうだった。
て言うか告白されるって話はどこ行った!
「おかえりなさい。完璧だったわね」
「でしょっ?」
あれで計画通りなのかよっ!
「ちょっと待て。ジャンに告白させるんじゃなかったのかっ?」
「それじゃまた童貞への道に走ると思ったから変えたのよ。今の彼ならいい感じにヤサグレてるんじゃないかしら。ほら、チャンスよ」
「うっ、そうか?」
「ええ。だから速く行ってあげなさい」
「仕方がないな」
口では不満そうだが足取りは軽そうだった。正直な奴だ。
「本当に計画通りだったのか? 熱血戦闘員の質問がなかったらどうなってたか分からないぞ?」
「ええ、計画通りよ。ほら」
台本を開いて俺に向けてきた。
何々……これまでの会話が1言1句違わずに載っていた。
「……予言書?」
「台本よ。私が焔のために書いた私たち全員の動きを示した台本」
打ち合わせもなしに完璧に全員の動きを読んだそれを予言書と言わずに何と言う!
「ふふっ、計画通り(キリッ)」
ドヤ顔で新世界の王(笑)の決めゼリフだとっ!? 悔しいが、似合う。
「凍、私台本通りにできたよ。褒めて褒めてっ」
「あ、ああ。偉い偉い」
頭撫でてやった。
「えへへっ。でねっ、お願いがあるのっ」
「子供とかは無し」
「いつもいつも駄目って言われてるんだからそんなこと言わないよ」
スネたように頬を膨らました。
可愛い。
「まずは人化した状態で一緒に寝て愛を確かめ合えば良いんだよっ!」
「いつも通りだろうがっ!」
焔はやっぱり焔だったか。期待した俺が馬鹿だった。
シスター、速く全部終わらせて宿に帰らせてくれ。焔と雷をこれ以上抑えておけないんだ。




