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6話 面倒な交渉は安息

「焔、落ち着け」

「はーい」


不満そうにしないの。


「確認が取れるまで俺を監視していれば良い。そこのシスターなんて適任じゃないか?」

「私?」

「なっ、ヘンリエッタをか!?」

「偏見溢れた戦闘員よりはマシだろう? 王都に確認の使いを出して黒い魔獣の話と王子の話の確認さえ取れば良いんだ。精々7日といったところだろ」


いい加減飽きてきた。やっぱり働かないで宿でダラダラしてれば良かった。金もあるしな。


「……だが、僕にはそんな権限は無い」

「誰ならある? 悪いが司祭は却下だ。魔獣に寄生されていた間にどうにかなっている可能性がある」

「司祭様以外に、その判断を下せる者は居ない」


ダルいな。シスターに頼もう。


「シスター、暴露して良いか?」

「仕方ないだろうな。私にも責任がある」


戦闘員と騒ぎに気付いた住民がシスターに注目する中、シスターは服の下に隠していた小さな宝石で装飾された指輪を取り出し宣言した。


「この場はキスタニア王国第1王女、ヘンリエッタ・キスタニアが預かる! 教会の者たちは冒険者たちの言に従え!」


あ、全員ポカーンとしてる。




あれから都は大騒ぎだった。シスターの持っていた指輪は王族しか持っていない特別な物、つまり絶対的な強制力のある物だったらしい。

ついでに言うならシスターの淡い恋心は砕けたっぽい。熱血戦闘員の態度は王族に対する敬ったものになり、前みたいに気軽に話せなくなったのが残念だと言っていた。

王族は大変だなと思う。王子の恋もシスターの恋も俺がぶち壊しにしているのだが。

犯人は、俺だっ!

何を言ってるんだ俺は。


「さて、コオル。私に何か言うことはないか?」


俺たちが取っている宿でシスターがそんなことを聞いてくる。


「王子と揃って王族に知り合うとロクなことがない。俺に関わるな」

「私の恋をぶち壊しにしたのに悪意が無いだとっ!」

「あなたは凍の平穏をぶち壊しにしたんだよ? 死ぬの? 死ぬよね? 凍の平穏をぶち壊しにしたのに自分が被害者みたいな顔してるんだもん。表情作れなくなるように顔の皮削いだら少しはその傲慢な考えもなくなるかな? かな?」

「すみませんでした私が全面的に悪かったですっ!!」


早口っ! 殆ど聞き取れなかったけど土下座したから言いたいことは分かった。でも焔はやり過ぎ。流石に法剣を首に巻きつけるのは止めろ。


「あら、焔。削ぐなら全身にしてあげないと不公平よ。顔だけ削がれたらお肌の手入れが面倒だわ」

「あっ、そうだったねっ」


削いだら手入れも何も無いから! そもそも削ぐな! 同調すんな! そしてシスターをこれ以上苛め過ぎんな! 弱い者苛めしてる気分になるからっ!


「コ、コオルッ! 私は今ほど人に感謝したことはないぞ!」


俺は氷狼だけどな。シスターにはこの先も教える気はないが。


「だけどお姫様の恋路を応援するのも面白そうね」

「私の恋が面白いと言われたんだが?」

「分かるよ。誰かを好きになるって嬉しいよね。相手に全てを捧げる感じが堪らないの!」

「私の恋はもう少し大人しいのだが?」

「恋か。良い思い出、無いな」

「コオルッ、戻って来いっ! 目が、いや顔が死んでるぞ!」


過去に村の氷狼とかに告白する前に焔と付き合っていると思われて告白すらできなかった苦い思い出が蘇る。何てショッパイ記憶なんだ。


「でも私たちの所為で1つの恋が終わったなんて嫌だわ」

「そうだねっ。何とかできれば良いんだけど」

「シスターの恋を応援でもするのか?」

「そうね。7日間は暇なのだしそうしましょうか?」

「良いねっ。やろうやろうっ」

「私の恋が暇潰しに使われる!?」


そりゃ驚愕だわな。俺もビビッたよ。


「差し当って何からするべきかしら? 私は恋をしたことがないから何をしたら良いのか全く分からないわ」

「簡単だよっ! 相手に自分の気持ちをぶつければ良いのっ」


俺には君の気持ちが重いんだが?


「そ、そうなのか?」


満更でも無いだとっ!?


「経験者が語っているんだもの。これでいきましょう!」

「そ、そうだなっ!」

「善は急げって言うし早速実践しに行こうっ!」


……失敗の空気しかないんだが? って行っちゃったよ。




「私は、私は駄目な奴だ」


2時間くらいで帰ってきたシスターは泣きべそかいて部屋の角で体育座りしている。

何があった? いや、何もなかったのか?


「相手は見つかったのよ。でもね」

「相手は緊張しちゃってるし、ヘンリエッタは強ばっちゃって、ね?」


何となく想像はついた。告白もできずに何も話せなくてその場を後にしたんだな。

……もしやナカーマ?


「そもそも告白って緊張しないか?」

「そう言えばそんな話も聞いたことがあるわね」

「えっ、そうなのっ?」


焔はいつもオープンだから分からないだろうけど普通はそうなんだよ。


「自分の気持ちを伝えるだけなのに何故あんなにも緊張するんだ? 心臓はバクバクいって止まらないし、速く止まれ速く止まれ速く止まれ速く止まれ……」

「焔、シスター羽交い締めにして」

「分かったっ」

「は、離せっ! 私はこの五月蝿い心臓を止めなければいけないんだっ!」

「全く、少しは落ち着きなさい」

「クペッ」


雷、その首折りは酷いと思うんだ。確かにシスターの自殺は止められたかもしれないけどもうちょい方法は選んで。


「あなたの要求は難しいわ」


どこがだ。


「じゃあ俺が熱血戦闘員の気持ちを聞いてきてやろう」

「へ?」

「直接聞くんじゃなくてシスターのことをどう見てるのかを聞くだけだ。好きかどうかまで聞く気はないぞ」


そこまで出歯亀精神には溢れてない。正直面倒だしな。


「ま、待て!」


ここまで来て往生際が悪いな。


「わ、私も聞く」


あ、そっちですか。




さっさと熱血戦闘員の気持ち(?)を聞くために教会支部を尋ねたら砂浜に居ると言われた。岩場で自主練しているらしい。

で、見つけた。


「こんちわ」

「うわっ!」

「そんなに驚かれると傷つくな」


あと危ないぞ。岩場でコケて頭打ったらシャレにならないし。


「ちょっと聞きたかったんだけどさ、あんたとシスターって同僚だったのか?」


直球は聞き耳立ててるシスターの心臓に悪そうなので避ける。

まあ次の質問は直球になるかもしれんが。


「シスター? 王女のことか……そうだ」


苦い顔してんな。


「いつも、訓練のときに皆に差し入れしてくれて、別にそんな義務ないのに、口調は男っぽいけど、優しくて」


ほうほう。


「急に王女だって言われても、前の、彼女との、気安い関係は心地よかった……僕が壊したのは分かってる! でも、どうしようもない」


はあはあ。


「じゃあ聞くが、シスターが前みたいに話したいって言ったらどうするんだ?」

「王女がそう言ったのか?」

「質問に質問で返すなよ。ただシスターが不景気な顔してるからそうなのかと思っただけだ」

「そうか……できることなら、前みたいに話したいな」


言質とったで、シスターはん!

何で大阪弁やねん。

さて、どうしたものか。


凍「このお話は」

焔「私とっ」

雷「私の」

焔&雷「恋愛相談でお送りしました~」


雷「私のキャラじゃないわね」

凍「自覚はあるんだな」

焔「大丈夫っ、雷も恋したら平気なキャラになるって!」

雷「恋、しなくちゃいけないのかしら……」

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