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3話 噂のあいつは危険人物

各話タイトルはテキトーですが章毎に規則があります

でも意味はない

漁師組合の事務所から借りてきた地図によれば魔獣の出る岩礁はかなり深い位置だった。この辺に居る魚が食事時に出てくるのを漁船で捕っているのだろうか? 漁に詳しくないから何とも言えないな。別に細かいことなんて知らなくても良いな。


「ここなら人間に見られる心配をしなくても良いか」


地図で示された地点は洞窟だった。


「そうだねっ」

「久しぶりに幻狼の本領発揮かしら」


漁師たちの話では問題の魔獣は巨大らしい。人間サイズは平気で超えてくると言っていた。どんな味がするのか楽しみだ。


「キャー、暗いよ~」


わざとらしく引っ付くな。


「あら、骨があるわ」


狼形態で噛み付きたいです。


「駄目ね。かなりボロボロだわ」


簡単に噛み砕けてしまう骨など何の意味があるのだ!


「あ、魔獣だよ」

「でも逃げ出したわね」


そりゃ普通の魔獣が幻狼に挑むわけないだろう。王都付近の魔獣たちは黒スライムの影響でピリピリしてたから襲ってきたのだ。


「ついて行ってみましょう。何か見つかるかもしれないわ」


ついて行くも何もこの洞窟は1本道だった。特に迷うこともなく何匹もの魔獣を追い詰めてしまい仕方なく近くに居たイカの魔獣に質問することにした。


「この洞窟に人間よりも大きいサイズの魔獣が居るって聞いたんだが知らないか?」

「そっ、それなら奥ですっ! ヒッ、食べないでっ!」


実は最初に恐慌状態で全く話が通じなくて焔が脅したのだ。かなり素直に答えてくれるようになったが罪悪感が募る。

さっさと進んでしまおう。


「俺たちが用があるのはそのデカイのだけだから他は避難しとくように言っておけ。別に追い立てて食おうなんて考えてない」


目に涙貯めてお礼言われた。よっぽど焔が怖かったんだな。気持ちは分かるぞ。


「凍、宿に戻ったらちょっと付き合って」


スネた表情で言われてしまった。考えてることがバレたな。ナンテコッタイ。


で、洞窟の一番奥に着いたんだが、


「ヨソモンが何の用じゃい!」


デカイって、10メートルのタコかよっ! デカ過ぎるだろっ! もうちょっと手加減しろよ! これどう考えてもCランクの依頼じゃないよな!?


「黙ってないで何か言わんかい!」


足を伸ばして足を掴まれた。

俺はそのまま宙吊りに、焔は手を上に揃えて縛られて拘束されてる感じに、雷は両足を広げられている。そのままウニョウニョと残りの足が2人の体を舐める。

このエロダコめっ!


「凍以外が私に触るなっ!」

「あなた、死んだわ!」


焔は強烈な炎を纏った炎狼に、雷は激しい電撃を纏った雷狼に戻っていた。

あまりの刺激にタコは拘束を解いてしまった。

あ、死んだな。

焔の炎を纏った爪が切り裂き、雷の電撃を纏った腕が叩き潰す。

俺を吊るしてた足以外は原型も残さず切られ、潰され、巨大タコは死んだ。

とりあえず食材に使えそうな足は持っていこう。宿のオバチャンに調理してもらえるか聞いてみないとな。


「お疲れさん。しかし派手に殺したな」

「だって私に触ったんだよ? 凍以外が私に触るなんて絶対嫌だもん」

「あんな見た目で私に触ろうなんて不愉快だわ。生きていたことすら認めないわよ」


過去形すら認めてもらえないのか。厳しいっすね!


「じゃ、報告に行くか」


しかし、このままテキトーに依頼受けてたらその内Bランクになっちまうな。まあAランクにならなきゃ良いだろう。目立つと人間じゃないってバレるかもしれないしな。この髪の時点で大分怪しいんだから大人しくしてないと。


漁師組合の事務所に到着。


「依頼の魔獣倒しましたよー」

「お、お前らか。確認部位を見せ、見せてください」


焔、睨まないの。えーって顔も無し。


「はい、目な」

「おう、確かに。あ、ありがと、よ」


どもり過ぎてて焦れったい! さっさとギルドに戻ろう。


「依頼終わりましたよー」

「えっ、もう終わったの!?」


驚くくらいならあんな依頼紹介すんなよ。洞窟の魔獣に怯えられて地味に傷ついたぞ。


「はい、これが報酬ね。いや~、こんなにあっさり解決するなんて思わなかったよ」


何でも漁師組合は厳つい見た目で高圧的だから事務所で時間をくうと予想していたらしい。

最初からそう言っとけば焔が暴走することも無かったのにな。おかげで漁師たち焔にビビりまくりだぞ。

何はともあれ建前の労働は終わった。宿のオバチャンにタコのこと聞いたら都の定番料理とか見てくるか。


「私も行くっ」

「私も行こうかしら」

「んじゃ皆で行くか。じゃ、また偶に顔出すよ」

「うん、首を長くして待ってるよ」


あまり来たくはないんだよな。どうせ長居はしないんだし。

そう考えながら都の街並みを見ていると俺たちが見られていることに気付いた。と言うか焔が見られている。


「あっ、ようやく見つけたぞ! こんな所で何してるっ」


息を切らせたシスターが問い詰めてきた。何だと言うんだ?


「お前たちが漁師組合の事務所で抜剣したのが問題になってるんだ。このままじゃ教会がお前たちの拘束に乗り出すぞ!」


何故教会が? え、教会って警察みたいなもんなのか?


「この都では騎士じゃなく教会が罪人を裁くんだ。だが教会ってのは信仰心で成り立ってるからな、正式な逮捕状も罪状も無視してしまうときがあるんだ」


それが今ってわけか。宗教は政治に関わるべきじゃないな。


「よし。都を出よう」


下手したら焔が大量虐殺を始めかねん。


「そうね。ゴタゴタに巻き込まれるのは御免だわ」

「何で皆血の気が多いんだろうね」


お前もだお前も。だが焔が漁師から情報を聞き出さなかったらもっと時間がかかったはずなので結果オーライとする。


「シスター、教えてくれてありがとう」


さっさと宿に戻ったら、宿の前に教会の戦闘服を着た人間が周囲を警戒していた。

なんてあからさまな。あれじゃ気付かれて戻ってくるものも戻ってこないぞ。


「賊の特徴は?」

「青白い髪の男が浴衣、紅い髪の女がミニスカ浴衣。黄色い髪の女がチャイナ服だ」

「そうか。オノボリさんだな」


知ってるよ! つか俺の意思じゃねえ! 俺は被害者だ!


「王都から来た商人の話では青い男と紅い女は人間とは思えない技を使うらしいぞ」

「何?」

「恐らく邪教の技だろう。この都で悪魔の技など使わせるものか」

「そうだな。我ら教会が収める都で悪魔崇拝者をのさばらせるわけにはいかん!」


熱血ですね。悪魔じゃなくて魔獣だけどな。

そもそも銃で氷を飛ばせるかと思ったが無理だった。魔石から放たれる魔力が銃弾の正体だが氷自体を飛ばす方法が無かった。ただし展開刃を氷で伸ばして間合いを広くすることは可能だった。

つまり相変わらず至近距離でしか氷は使えないのだ。悲しいのう。

さて、これからどうしたものかな。


雷「あなたに足りないもの、それはっ!

  情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ、

  そしてなによりもーっ!

  性欲が足りない!」

凍「お前は慎み深さが足らねえよっ!」

焔「凍に足りないものなら私があげるよっ!」

雷「でも焔のエロさは凍には渡せない」

凍「貰ってたまるかっ!」


作「スクライド好きなんです」

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