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2話 海水浴は時間性

「何だ、これ」

「教会の戦闘訓練じゃないかしら」

「あははっ、凍残念だったね」


マジか? マジなのか? マジで戦闘訓練を浜辺でやってんのか? これじゃ海水浴も海釣りもスイカ割りも素潜りもアワビ取りもできないじゃないかっ!


「ん? お前たちか」


あ、金髪のシスターが居た。訓練しないで何してんだ?


「私は飯を届けに来んだ。そろそろ腹が減る時間だからな。それとこの服を着ているのは非戦闘員だ」


見た目と違って繊細な気遣いのできる人のようだ。口が裂けても言えないけど。

てか修道服は非戦闘員なのか。焔普通に戦ってたな。


「浜辺は教会の貸切なのか?」

「ああ。海を楽しみにしていたなら悪いことをしたな。明日は1日使えるはずだ」

「そりゃ良かった」


明日まで駄目だったら教会に殴り込みをかけているところだ。


「海は楽しむものだからな。それにいつまでも占領していては反発に合う」


理解しているじゃないか。危うく俺は焔を暴走させようかとも考えたくらいだが。


「凍、泳げないなら買物しよ? 泳げないなら海に来てもつまんないよ」

「海を背景にむさい男の訓練なんて拷問よ。速くここから離れましょう」


言いたい放題だなお前ら。シスターなんて頬が引きつってるぞ。


「じゃ、俺たちは戻るよ。訓練頑張ってな」

「言われるまでもない」


そう言って訓練している人間たちを見て微妙に頬を染めるシスターが印象的だった。誰か好きな奴でも居るのだろうか? ああ、あの一際気合の入った戦闘員か。




「凍、あそこ行こっ、あそこ!」

「分かったから引っ張んなって。そんな急がなくても店は逃げないだろ?」

「時間は逃げるんだよっ」

「さいですか」


もう何も言うまい。


「あなたたち、若い男女と言うよりは親子みたいね」


グハッ! まさかのダメージだった。まさか16で父親扱いされるとは。


「凍は枯れてるからね。もっと若いリビドー全開にしちゃって良いのに」

「そうね。そうすれば既成事実が作れるものね」

「うんっ!」


良い笑顔ですね。内容は心が折れるものだが。

何? 欲望に負けていいの? 負けちゃうよ? 無理だけど。


「もう日も暮れるわね。宿に戻りましょうか?」


他愛もない駄弁りを続けるのは面白いと感じる今日このごろだった。




翌朝、昨日買った水着を浜辺の更衣室で着て、いざ海へ!


「凍、お待たせっ」


焔と雷の着替えも終わったみた、い……


「あら、何を惚けた顔をしているのかしらこの駄狼は。そんなに私たちの水着が衝撃的だったの? 鼻の下を伸ばしてだらしないわね。もしかしてこの後どんな風にいやらしい展開に持っていくか悩んでいるのかしら。度し難い変態ね。オスならここは『似合ってるよ』くらい気の利いたことを言えないのかしら。だから貴方はヘタレなのよ」

「凍、そんなにジッと見られたら恥ずかしいよ。でも凍が観たいって言うなら、良いよ。好きなポーズも言ってくれたら頑張ってみる。でも水着脱いでって言うのは2人きりのときにしてほしいな。凍以外に見られても何にも嬉しくないし凍以外に見られるのはスッゴク嫌だから。ねえ、凍、どんなこと、してほしい?」


ごめん焔、鼻血出そうだから上目遣いで擦り寄ってこないで。色々と限界。雷の言葉じゃないけど似合ってる。だから離れて! マジで頼むからさあっ!


雷はキワドい黄色のビキニ、焔は白いスク水だった。

両方ともなんてチョイスしてんだよっ! 驚かせたいから見てからのお楽しみとか言ってる時点で不安覚えろよ俺っ! 焔なんて胸の所にご丁寧に平仮名で『ほむら』って書いてあるよ! 何か周りの視線が痛く感じるよ! 本当は焔と雷でハーレムなのを妬んでるって分かってても深読みしちまうよっ! そして雷のビキニはギリギリ過ぎるだろっ! 教会の戦闘服は胸元開けてたし深いスリットのチャイナ服だしお前もしかして痴女か? だったら付き合い方考えるわ~

……ツッコミ疲れした。


「あ、ああ、似合ってるよ。あと焔、別に今はしてほしいことないからその話は違う時にな?」

「えっ……わかった~」


一瞬ヤンデレ入りそうだったな。焔は『私のこと邪魔なの? そうならそうだって言って。凍が私のこと邪魔だって言うならちゃんと塵1つ残さず消えるから』とか言いかねないからな、下手に断ると死ぬし断らなかったら社会的に俺が死ぬし……もうちょっとバランス取るべきだな。


「じゃ、遊ぼうぜ」

「うんっ」

「そうね」


日が傾くまで遊んださ。




更に翌日、金はあるとは言え無職でダラダラってのも性に合わずギルドに顔を出してみた。

街のときみたいなマゼンタな建物ではなく、東方風の赤いレンガの建物だった。入口の横にはチョウチンなんかもかかってた。正面の看板には『ギルド』と大きく書かれていた。自己主張の激しいギルドだ。


「こんちわー。他のギルドから来んだけどここで依頼って受けれる?」


カウンターで書類と睨めっこしてた眼鏡イケメンの兄ちゃんに聞いてみた。ちなみに雷もCランクになっている。街の防衛の功績だそうだ。王子、職権乱用しすぎだろ。


「ああっ、丁度良いところにっ! 今直ぐ受けて欲しいCランクの依頼があるんだ。頼めるかな?」

「内容による」


もし変な依頼だったら断るからな。そして都のグルメ調べとかの依頼だとなお良し!


「依頼は漁師組合からだよ。魚が住処にしてる岩礁に魔獣が住み着いたらしくてね、それを退治してほしいんだって。漁業はこの街の大事な稼ぎだからそれが滞るのはマズイんだ」


訓練してるんだし教会には頼まないのか?とも思ったが言わない。余所者が裏事情に首突っ込んでもロクなことにならないしな。


「2人とも、この依頼で良いか?」

「大丈夫だよっ」

「問題ないわ」

「良かった。じゃあギルドリングをかざしてくれ」


多分ギルドに入ってから渡された指輪だろうとあたりを付けて水晶みたいな魔石にかざす。


「これで君たちはこの支部に登録されたよ。じゃ、よろしくね」


とりあえず依頼人に詳しい話を聞くために漁師組合の事務所に行ってみた。『釣り命』の看板はちょっと引いた。


「こんちわー。ギルドから討伐依頼受けて来ましたー」


扉を開けながら入ると厳つい海の男たちがこっちを一斉に見た。

一瞬後ずさりそうになったが何とか無反応を装った。


「オメエたちがあの魔獣を相手にするってのか?」


一際大きいオッサンが近付いてきて俺を見下ろした。

値踏みするような目だな。


「ここは託児所じゃねえぞ。冷かしなら帰んなっ」


低くて腹の底に響く威圧感のある声だったが焔ヤンデレモードと比べるとかなり見劣りする。思わず溜息が出そうになる。


「良いから依頼内容を。こっちは仕事で来てるんだ、成功しなかったら報酬払わなくて済むんだから気にしなくて良いだろう」


焔がキレる前にどうにか言いくるめないとな。


「ふん、ガキが生言いや、」

「速く答えてよ。凍が聞いてあなたが答える。他の話なんて要らないよ」


気が付いたら焔の法剣がオッサンの首に巻き付いていた。焔が少しでも引いたら首ズタズタになる。

やっぱこうなったか……


「あ、あの地図に印の場所だ」


完全に焔に呑まれてるな。首ズタズタにされかけてれば当然か。

地図のコピーを借りて現場に向かった。

これが問題にならなきゃ良いけどな…… 


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