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22話 魔王

本編はこれで最終回です


凍「長かったな」

焔「100話記念を忘れたりもしたよねっ」

雷「凍は嘘ついたわよね。成獣するまでしないとか」

花子「どんだ鬼畜野郎になっちゃいましたよね」

凍「そんなに酷いか!?」


酷いです

では、最終話です~

さて、水龍を使って無事に風龍を撃退した俺たちは雷狼に命令した。気は引けるが追撃して黒スライムを吐いてもらわないといけない。

殺す? 無理無理、俺たちの爪とか牙じゃ鱗を突破できないし、水龍の攻撃力じゃ死ぬ前に起きちまう。

さ~て、頑張ってもらわないとな~。


「凍が良い顔してる!」

「絶対酷いこと考えてるわよ、あれ」

「もう何の疑いもありませんね」


酷い嫁たちを無視して雷狼に命令を出す。風龍の腹の上で暴れろという何とも妊婦相手にあるまじき行為をメスの雷狼にさせてみた。もう周りからの目がね、本当に凄いのよ。まるで汚物を見るかのような視線にちょっとヘコム。

雷狼が腹の上で暴れると何度か苦しそうに呻いてた風龍の口から黒スライムがドロドロ出て来た。赤ちゃん大丈夫かな?


「凍が風龍の赤ちゃんの心配するのはおかしいと思うんだ」


五月蠅いよ。


「おい、自分で赤ちゃん攻撃しておいて心配してやがるってよ」

「いや、そう見せかけて少しでも自分の株を回復しようって算段じゃねえか?」

「こらっ、滅多な事を言うと殺されるぞ。嫁の内の誰かに」


王都の兵士たちが心外なことを言いまくってくれている。王子の部下だからある程度は俺たちのことを知っているようで俺たちが家族だと知っているようだ。それにしても酷いこと言ってくれる。

俺が兵士たちを睨んでいる間に花子が黒スライムを消してくれた。余っていた黒スライムも纏めて消してくれたようで時代劇のように居合から納刀するかのようなポーズをしている。

そして悲しいことに風龍の腹の上で暴れていた雷狼はその場で風龍の拷問に遭い死んでしまった。足を1本1本砕き、痛みでのた打ち回る雷狼を嘲笑しながら今度は指先から少しずつ切り落としていった。何が怖いって腹を裂いて中に切り落とした指を突っ込み無理矢理閉じてから、その腹を小突きまくった。風龍の小突くってのは、まあフィニッシュのストレートパンチだと考えてくれ。


【これが私の赤ちゃんが感じた痛み! これも私の赤ちゃんが感じた痛み! そしてこれが、赤ちゃんを殺されかけた私の怒りよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!】


最後に気合を入れてますが、未だに死にかけの雷狼を殴りまくっております。


「……凍、君はいつもいつもボクの不利益になることばかりするけど、今回は特別に酷くないかい?」


難しい顔で近付いてきた霊帝の視線を追ってみると水龍が人化して困った顔で立っていた。というかこの世の終わりかのような顔で立っていた。


「ねえスイ?」

「ああ」

「子供が居たんだ?」

「ああ。できているのは今日初めて知ったが、居てもおかしくは無いと思っていた」


あ、話は長くなりそうですか?


「凍、レイちゃんにとって大事なところなんだから静かにしてよ?」

「でも正直、見ていて面白いことになるかしら?」

「ここに居ても気まずいだけですよね。帝宅に戻りましょうか」


3対1で霊帝と水龍の話は聞かないことにした俺たちは帝宅に戻った。


【その子が旦那様と……】

「おい待て年増! レイに手を出すな」

「こいつがスイを困らせたババア」

【誰がババアだ!】


はあ、これから醜い罵り合いが繰り広げられるんだろうが、俺の知ったことじゃない。今日は色々と疲れたし、もう寝よう。




帝都崩壊から1ヶ月が経った。

え、急? 言っとくが、嫁たちは妊娠したし風龍は出産したし水龍は帝都に住むようになったし王子は国王になったぞ。

ちなみに顔中包帯だらけのババアは色々あってこれから帝都の広場で死刑になります。ザマァ。

帝都の義手はまだ腕や脚といった部位にしか使えない。元々が霊帝の腕用として研究されているから口や臓器とかの機能を持った部位にはまだ使えないらしい。前回の戦争というか、水龍と風龍の大怪獣大決戦で大怪我を負った人間はそれなりに義手で日常生活を遅れているらしい。帝都はその売上げを復興資金に充てることで急速に元に戻っていっている。

さて、そんなババアへの死刑執行は実は俺がすることになっていたりする。


「何か言い残すことはあるか? まあ、言葉が話せればの話だが」

「ほほっへへも、おかへをほほひぃえはる」


何言ってるかさっぱりだが、母音と表情を考えれば『呪ってでもお前を殺してやる』とか言ってんだろうな。物凄い形相で俺を睨んでくれている。

大した抵抗はできないだろうが、帝都とキスタニアの人間たちはババアを縄で拘束していた。魔都の人間は当然のように抵抗したが、俺としてはババアのように行動力のある人間至上主義のリーダーに生きていられると困るのでこのまま死んでもらうことにした。

雷狼、風龍、ジャングルの魔獣、俺の故郷の魔獣たちからも人間に報復したり賠償を求めたりするという話が一部から出たらしい。しかし、俺の言葉でそれなりに報復派は大人しくなったらしい。


『権力争いがしたければ人間のような社会を作ってからにしろよ』


とまあ、報復派に言ったら少しの間考えてから止めた。働くことで得られる間接的な利益とか飯は金で買うとかが魔獣の価値観に合わないから止めたらしい。報復ったって特に何も考えていたわけじゃないらしく、人間の言葉を言ってみたかっただけらしい。

さて、そんなわけでババアと一緒に処刑台の上に登る。ババアは侍に両脇から抱えられるように処刑台の上に持ち上げられ、床に叩き付けるように倒された。スカートが捲れたがババアのシワシワの生足なんて見るだけで気持ち悪くなる。俺の嫌そうな顔に嬉しそうにされて苛ついた。これから死ぬってのに本当、強いババアだ。


「さ~て、これでババアは死ぬ。魔都の連中はよ~く見ておくように。こいつが居なければ魔都は経済的にも立場的にも追い詰められることは無かったんだからな!」


実は無理矢理にも魔獣を使って帝都に攻め込み、その上で戦力が壊滅した魔都は世界中の国や村から見放された。

危険な街だし関わりたくないと今まで魔都に居た冒険者たちは離れていき街の防衛機能は低くなった。主力の騎士たちは大怪獣たちのせいで壊滅状態。今まで海産物や食料品を取引していた商人たちも激減した。

これらの要因からババアは世界史に大変不名誉な名前として刻まれる予定らしい。ちなみに、霊帝は世界で最初の人間を治める魔獣として歴史に存在が残るらしい。

で、俺も残ることになった。


「魔王なんかに、我らの国が……」

「おい、滅多な事を言うな。死ぬぞ」

「でもよぉ!」

「言うな!」


何かシリアスなワンシーンが死刑台から少し離れた所で繰り広げられている。死刑台に近い範囲には帝都の住人やキスタニアの騎士たちが嬉しそうに、後ろの方には数は少ないが魔都縁の人間たちが居るようだ。

魔都の連中の話に出た通り、俺は魔獣たちの代表として魔王の称号を持って歴史に残ることになった。別に魔獣を統べるとかそんなつもりはない。ただ霊帝の友人だったり水龍を前に馬鹿話を繰り広げたり風龍に感謝されたりしている内に人間たちが言い始めた。魔都の連中は俺を『悪魔のような王』として魔王と言っているらしい。原因はお前らだっての。

じゃ、そろそろ始めるか。

未だにスカート捲れた状態で倒れているババアの後ろ首を掴んで持ち上げ、処刑台の柱に叩き付ける。痛みで息を大きく吐いてから挑発的な目で俺を睨む。

『レディは丁重に扱いな』とでも言われてる気分だが、遠くから見ている嫁たちは小声で言いやがった。

雷に見栄えを意識して斧槍を借りる。視線で斧槍を示すと察してくれたみたいで投げ渡してくれた。もうちょっと危なくない渡し方してくれないかね。

左手で銃を抜き、膝を撃ち抜き膝を着かせると頭だけ柱に叩き付ける。ババアが痛めつけられる様子に帝都とキスタニアの人間たちが興奮した様子で歓声を上げ、魔都の人間たちは痛ましそうに視線を逸らした。

痛みで顔を歪めながらも挑発的な表情を崩さないババアに小さく『良い度胸してるよ』と呆れて呟きながら、首を刎ねた。


「お疲れ様っ」

「魔王としての初仕事はどうだったかしら?」

「その前にお父さんとして仕事をしてほしかったです」

「ゴメンゴメン」


歓声に沸く処刑台の周りをさっさと離れ、処刑台が見える帝宅の中の1軒に入ると焔、雷、花子に迎えられた。先に戻っていたらしい。

全員腹が膨らんでいる。いや、風龍を止めた日に3匹に絞り尽くされそうになったんだけど、そこでやっぱり当たったんだよな。狼の妊娠期間は60日、大体半分くらいを過ぎたところだ。


「さて、子供が生まれるまでは帝都で大人しくしておくかね」

「そうね。それに、面白いものも見れるし」

「レイちゃんも大変だよねぇ~」

「フウ子ちゃん、凄いですもんね」


説明しよう、フウ子とは風龍の子供のことで生後2週間だが既に風龍を無視して霊帝に懐きまくっている困った赤ちゃんなのだ。寝るのも食うのもトイレも一緒に行こうとするので霊帝がかなり困っている。何でって、水龍と2匹きりになれないし風龍からは殺人的な嫉妬の視線が来るしで生きた心地がしないからだ。

嫁たちと合流して霊帝の居る本殿に行ってみると霊帝が早速フウ子に絡まれていた。というかよじ登られていた。その横では苦笑した水龍と苛々している風龍が居る。どちらも人化していて人間の家屋の中に納まっている。風龍は長く翡翠のような髪を束ねた、まあちょっと怖い美人だ。でも年増。いくら綺麗でも年増。肌の張りとか弛みとかが気になっていそうだ。


「……ボクは帝都を出るぞ!」

「失敗する未来しか見えない」

「どうせ凍が邪魔するんだ!」

「レイの邪魔をするとは、やはりここで食ってしまうか」

「旦那様、私たちの恩獣を殺すなんて駄目よ?」

「スイは君と婚約しているわけじゃないと思うんだけどね」

「お子ちゃまが、フウ子と旦那様が居なければ食ってやってるところよ」


……まあ良いや。


「俺は嫁たちが出産したら帝都を出るぞ。しばらくは王子と魔都の連中から絞り上げた金でどっかに身を隠す」


実は魔王認定されだのが世界中の狼に広まったみたいでちょっと人間の街を出るだけでもあちこちから狼、というか犬科の魔獣に注目されて困っている。魔獣が居ても問題無い人間の街なら注目されることも無いし、食料も好きな時に手に入る。つまり種族なんて気にしないハワイアン民主国の遊園地が最も注目を集めなくて済むと思われる。

いやはや、俺たちみたいな存在には金社会って便利だよね。王子ってか、国王とか魔都の連中とかからむしり取ればいいんだから。

……山賊と変わらないな。


「本当に色々なことをしたけど、出産するまでは静かにしてられそうね」

「凍の子供……えへへ~、どんな子に育つかな~?」

「凍君みたいにならなければどんな風に育ってくれても良いです」

「ねえ、花子って俺のこと嫌いじゃね? ねえ?」

「愛シテマスヨ、凍君」


うん、あまりの棒読みに膝から崩れ落ちそうになったよ。良い笑顔で何てこと言うのさ。

実はキスタニアの連中は数名が残っていてその中に国王とオッチャンとメイド長が含まれている。今日帰るそうなので焔がメイド長に挨拶したいと言い出し、部屋に行ってみることにした。


「何だ、わざわざ見送りするような律義さがあったのか?」

「いんや、焔がメイド長に挨拶したいって」

「……何故焔があれだけの顔を持っていて女から好かれるか分かった気がする。それから、メイド長ではなく王妃だぞ」


焔って結構マメなんだよな。それから、新国王様は細かいことに五月蠅い性格らしい。

それにしても、オッチャンがずっと部屋の隅でブツブツ暗い。何だ何だ?


「オレッちの戦車、折角作ったのに、折角頑張ったのに、1機も残ってねえ、全部壊れちまった」


キャラに合わねえ暗さを発揮してる!?


「コール!!」

「はい!?」


いきなり大声で呼ぶなっ。


「ちょっと王都まで来い! 今度こそ氷狼の能力に合わせた戦車作ってやる!!」

「魔獣の俺が魔獣に脅威になるものに協力するはずがねえだろ」

「おわっ! 分かった! 悪かったから撃つな!!」


あまりにもムカついたから足元を撃って脅かしたらアクロバティックに壁を三角蹴りして躱された。人間の身体能力としてはかなり鍛えてる方だな。

俺とオッチャンがジャレている間に焔はメイド長と挨拶を済ませ、別れの抱擁も終えたようだ。


「さて、私たちはこれで帰る。貴様はこれからどうするのだ?」

「嫁たちが出産してちょっと落ち着いたら帝都を出るさ。しばらくはノンビリ子育てだな」

「貴様の方が先に父親になったか。私も世継ぎを作るためにも頑張らねばな」

「そういうことは嫁の聞こえない所で言ってやれよ」


恥ずかしさのあまり顔を赤くして俯いているメイド長、それを焔が慰めて国王を睨んだ。一瞬だけブルッと震えた国王は慌てた様子で荷物を持ち上げ部屋の襖を開けた。


「ではな。また会うことがあれば何か頼むかもしれん」

「問題があること前提かよ」

「貴様と私の間に問題が無いなど、想像できん」


否定できない。

形式的に霊帝たちもキスタニア組の見送りに来た。互いに口だけは繁栄を願うと言い合い、霊帝は適当な態度で手を振り、国王はそれなりに真面目な風を装って手を振った。


「ではな」

「ホムラ、またね」

「コール、俺は絶対に諦めねえからな!」


「早く帰れ」

「またね!!」

「さようなら」

「またどこかでお会いしましょう」


去って行くキスタニア組を見送り、振り返ると帝都組が帝宅に戻って行くところだった。しかし霊帝だけは焔に抱き着いた。後ろで変態淑女が焔を睨んでハンカチを噛み締めている。霊帝の背中にはフウ子が引っ付いている。風龍は嫉妬の視線を霊帝に向けている。


「焔も、子供が生まれたらどこかに行くんだね」

「うん……でも、ちゃんと会いに来るよ」


「何だか焔だけ優遇されているみたいで羨ましいわね」

「焔がレイちゃんを奪っちゃいますか?」

「中々難しいわね」


何でどうでも良いことで本気の相談が始まってんだよ。


「何話してんだか詳しくは聞かないけどな、妊娠してんだからさっさと戻るぞ」

「……凍が優しい」

「気味が悪いわ」

「絶対に裏があります!」


「心外過ぎる!!」


まあ、子供ができるんだしもう少しシッカリしようかな。




数年後。


「父ちゃんは酷いから」

「だって父さんは酷いって決まってるし」

「パパだもんね!」


「何でこうなった……」


さて、いつもよりかなり長い文字数に、100話を超える話数にお付き合い頂きありがとうございます


凍「最終章はそれらしく1番長かったよな」

焔「それに総出演に近かったよねっ」

雷「結婚するキャラの多いこと多いこと」

花子「子供ができたキャラも多いですね」


何となく物語の最後って登場人物たちの変化を書きたくなるじゃないですか! そんなこと言ったってしょうがないじゃないか!!


凍「いや、作者の好き嫌いは関係無いから」

花子「別に知りたくも無いですし」

焔「……花子も結構変わったよね?」

雷「作者を少しでも擁護していたあの頃が懐かしいわ」


もう少し労わってくれる時期が長くても良かったと思います


凍「いつの間にか俺にも厳しくなったしな」

花子「嘘吐き冷たくなるのは当然です」

焔「……ノリノリで凍を襲ったような」

雷「焔がツッコミに回る日が来る時点で色々と終わってるわ」


まあ色々とありました

物語の〆を考えるのが本当に苦手な作者の作品がちゃんと最終話を迎えられたのは思った以上にコメントやお気に入り登録をしてくださった読者様方のお陰です


凍「これが最終話でコメントを稼ごうとするセコい作者の実体である」


五月蠅いですよ

では最後の最後にやっとこさ謝辞を

ここまで読んでくれた読者様方、コメントを下さった読者様方、お気に入り登録してくださった読者様方、評価をしてくださった読者様方、本当にありがとうございました!

……感謝する相手が読者しか居ないっていうのはネット小説の特徴かもしれない、そんな風に思ったけんしょ~でした~


……後日裏話くらいは上げる予定ですが、4月中に上げられれば良いな~と思っています

でもこの作品はここで完結とさせていただきます


凍「またどこかでな~」

焔「バイバイ~」

雷「さよなら」

花子「さようなら」


では、さようなら~

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